September 28, 2007

図面って、どない描くねん!LEVEL2

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 【今週の一冊】
 ●『図面って、どない描くねん!LEVEL2』
  現場設計者が教えるはじめての幾何公差

  著:山田 学(日刊工業新聞社)
  2007.4 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『製図の目的は、意思の伝達である。
 
        意思の伝達に一義性を持たせるため、
 
               製図の作法を決めて守ることが重要である』


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 設計者の皆さん!「図面って、どない描いてます?」
 
 計画図(組み図)をバリバリ描いたら、「あとはばらすだけだ~」と安心し
 て、部品図の絵を作って、気の向くままに寸法線を入れていく。
 
 はめあいの公差は「H7」「g6」なんかを多用して、ドンドン書き進む。
 
 ここまでくればもう一息!表面粗さの指示を「12.5S」「6.3S」とかゴリゴリ
 記入すれば、はい一丁あがり!
 
 
 ・・って、なんか忘れていませんか?
 
 そう、「幾何公差」です。
 
 ここまでくると、CADをクリックする手がピタッと止まってしまい、おもむろ
 に過去の図面を引っ張り出して、なんとなく「円筒度」「平行度」を「0.01」
 にする・・。
 
 多かれ少なかれ、身に覚えのある方があるのではないでしょうか。
 
 
 これまで多くの現場では、軸にフランジ状の鍔がついた部品ならば、取り付
 け面の平面はきれいに仕上げて、軸は振れのないように加工するんだな・・
 と、作業者の「深読み」によって良い部品が作られてきました。
 
 しかし部品加工もグローバル調達が当たり前な昨今、暗黙の了解に頼った「
 ものづくり」はもはや通用しません。
 
 そしてISOでは「製品の幾何特性仕様(GPS)」が定義され、幾何公差のない
 図面は「図面として認められない」ことにまでなっています。
 
 この、これまで設計者が目をつぶってきた「幾何公差」を、1から教えてく
 れる頼もしい味方が本書です。
 
 
 幾何公差を設計者が使いこなすには、「この記号はどう使えばいいのか?」
 と記号に合わせて設計するのではなく、自分の意思(組立性への配慮、機能
 上の注意点)を表現する「ツール」として考えることです。
 
 例えば「円筒度」を指示すると、その円柱の「断面の真円度」「母線の真直
 度」「母線の平行度」の3つを同時に規制することができますが、その分、
 加工も検査も大変です。
 
 もし、テーパ状でもよいのであれば、「真直度」のみで表現することができ
 ますし、楕円で良ければ「平行度」で指示すれば無駄な不良を減らすことが
 できます。
 
 
 「設計意図から幾何公差の選択」は、設計の意図を徹底して検討する「手間
 」がかかりますが、それだけ机上で充実した設計が可能となり、「良い製品」
 につながります。
 
 これからのエンジニアにとって、避けて通るどころか、積極的に身につける
 べき「幾何公差」の考え方を、具体的事例と思考練習によって学べる、必携
 のテキストです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 2つの穴を持つ部品と、それと同じピッチの2つのピンを持つ部品の組み立
 ては、互いにはめ合わされる形体の、実寸法と実際の幾何公差との間の関係
 に依存する。
 
 ピン径が最大で穴径が最小、かつピッチ(位置公差)が最大ならば組み立て
 の隙間は最小となり、逆の場合に最大となる。
 
 ならば、はまり合う部品の実寸法が許容範囲であれば、その余裕分は位置公
 差側に振り分けても組み立ては「可能」であり、無駄なNGを減らすことが
 できるはずだ。
 
 こうした考え方を取り入れた公差を「最大実体公差」という。
 
 これをうまく使うと、位置公差を全部寸法公差に割り当てて、「ゼロ位置公
 差」を指示することができる。
 
 公差がゼロなんてありえないと考えがちだが、逆に寸法公差を緩める効果が
 あるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 作業者の「誠意」と「技能」に頼った図面は、もう通用しない。
 誰がどこで作っても、同じ部品が作れる図面を描こう。
 
 設計者は、加工と組み立て、検査方法を理解せよ。
 後工程が分かれば、複雑な幾何公差の「ありがたさ」も自ずと見えてくる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 バラツキって、なんやねん!
 第2部 データムって、なんやねん!
 第3部 幾何特性って、なんやねん!
 第4部 形状公差って、どない使うねん!
 第5部 姿勢公差って、どない使うねん!
 第6部 位置公差って、どない使うねん!
 第7部 振れ公差って、どない使うねん!
 第8部 幾何公差の相互依存って、なんやねん!
 第9部 幾何公差を使ってみたいねん!
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 ラブノーツ
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『図面って、どない描くねん!LEVEL2』
 
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ものづくり経営学

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 【今週の一冊】
 ●『ものづくり経営学』
  製造業を超える生産思想

  著:藤本 隆宏、東京大学21世紀COEものづくり経営研究(光文社)
  2007.3 / ¥1,260

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『20世紀後半の日本企業が、培い確立した「擦り合わせ製品」における
 
   「ものづくり能力」という貴重な知的資産を、最大限に活かしながら、
   
       その上に、一部の欧米企業が持つ「戦略構築能力」を
     
           積み上げることでこそ、21世紀への展望が開ける』


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 「ものづくり」とは何か、と問われれば、その答え方は色々ありますが、筆
 者らは『要素技術をつなぎ、顧客に向かう「流れ」を作り、設計情報を盛り
 込んだ人工物によって顧客を満足させる経済活動』と定義します。
 
 つまり、「ものを作る」プロセスのみではなく、設計情報を人工物(製品)
 に乗せて、お客さんまで届けて価値を生む=満足させるまでの「流れ」全体
 を「ものづくり」と呼んでいます。
 
 
 日本の製造業が強みを発揮する「ものづくり」は、自動車に代表される「擦
 り合せのきいた設計情報を、生産現場で丹念にメディア(鋼板など)に転写
 する」擦り合わせ型の製品であるとされています。
 
 対して、パソコンシステに代表される、機能と構造が1対1で対応する「組
 み合わせ型」の製品については、近年は中国が得意としている「ものづくり
 」と言えるでしょう。
 
 このように、地域特性と製品の設計思想が「相性の良い製品」を選ぶことが、
 まずは競争優位を得るために必要ですが、ことはそう単純ではありません。
 
 
 たとえば、DVDレコーダーは、HDDやDVDドライブといったモジュラ
 ー部品の組合せであり、これら中間製品を組み合わせた典型的な「組み合わ
 せ型製品」です。
 
 しかし、階層を下って光ピックアップをみると、レンズ、レーザーダイオー
 ド、フォトディテクターなどの部品をきめ細かな擦り合わせで設計した部品
 といえます。
 
 また元々、DVDレコーダーの開発から量産が始まった時点では擦り合わせ
 型の製品であり、日本企業の独壇場であったのが、時間の経過と共に製品構
 造が「組み合わせ型」へ推移すると共に、シェアの急落が生じたのです。
 
 つまり製品の「階層」と「時間」により「擦り合わせ型」の日本企業の取る
 べき戦略が変化することが分かり、DVDレコーダーならば、キーデバイス
 である光ピックアップなどの部品供給に集中する、などが考えられます。
 
 
 更に、お客に「設計されたもの」を提供することを「広義のものづくり」と
 考えれば、サービス業も同じ尺度で考えることが可能です。
 
 すなわち、イトーヨーカドーなど小売業、郵便、医療、金融商品、あるいは
 製造業とサービス業の中間に当たるソフトウェア業や建築業にも当てはめる
 ことで、取るべき戦略が見えてきます。
 
 「ものづくり経営学」は今まさに立ち上がった試行的段階であり、未整理な
 部分もありますが、現在の「ものづくり」をこってりと俯瞰できる、興味深
 い一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 DVDレコーダーで日本製品が急速にシェアを落としている現象は、「いつ
 かきた道」だ。
 
 これまでもCD-ROM、CD-R、DVD-ROMなどで、繰り返し起き
 てきたことだ。
 
 デジタル製品は「擦り合わせ」要素がソフトウェアの中に取り込まれており、
 製品が「組み立て型」に推移しやすい傾向にある。
 
 このため、開発のオーバーヘッドを抱えた日本企業は、中国やASEAN各国との
 価格競争に負けてしまうのだ。
 
 これは日本企業特有の現象ではなく、かつてIBMがパソコン市場において
 コンパックやデルの台頭により凋落した姿と全く重なる。
 
 デジタル製品が抱える、共通のジレンマと言えよう。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「資源がないからなんでも作って売れ」という貿易立国論は戦略に欠ける。
 製品の構造と地域性、時代に対応した「ものづくり戦略」が必要だ。
 
 「うちは特殊だから」とトヨタ方式を敬遠するな。
 「形」をまねるのではなく、「思想」を学べ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 ものづくり経営学総論
 第2部 ものづくり経営学各論
 第3部 非製造業のものづくり
 第4部 アジアのものづくり
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 東京大学21世紀COEものづくり経営研究
 ・出版社 光文社
 ・アマゾン 『ものづくり経営学』
 
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August 03, 2007

モノづくりで150億円を生む独創発想術

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 【今週の一冊】
 ●『モノづくりで150億円を生む独創発想術』

  著:中西 幹育(プレジデント社)
  2007.1 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『失敗と挫折は、開発者にとって大切な経験である。
 
          失敗は肥やしになる。
 
                 いや、失敗を肥やしにするのである。』


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 スポーツシューズの靴底に埋めて衝撃を和らげる「αゲル」。
 
 20メートルの高さから「αゲル」の上に玉子を落としても割れないほどの衝
 撃吸収性能は、スペースシャトルの衝撃吸収材にも用いられました。
 
 身近なところでは、皆さんの手に握られたボールペンのグリップにも使われ
 ていますね。
 
 
 携帯電話やクルマのダッシュボードのような、曲面のプラスチック表面に、
 木目などのデザインを印刷する「曲面印刷」。
 
 今では様々な製品に用いられている技術ですが、30年前には「不可能」と考
 えられていた技術です。
 
 この「αゲル」と「曲面印刷」、何の関連性もなさそうな、しかしいずれも
 独創的で、「儲かる」技術を生み出したのは実は同一人物であり、本書の著
 者なのです。
 
 これら2大発明を筆頭として、氏の開発人生の中から導き出した、「独創」
 の秘訣を伺いましょう。
 
 
 αゲル発想のきっかけとなったのが、衝撃吸収材に思い悩んでいるうちに、
 熱を出して寝込んでしまった著者が、溶けた「アイスノン」の感触でした。
 
 早速、スーパーに並んだゲル状の食品―寒天、ゼリー、こんにゃく、プリン
 等々、片っ端から買い込んで、玉子を落とす実験をしたのです。
 
 すると最も優れた衝撃吸収性を示したのが「イチゴゼリー」であり、このゼ
 リーに似た素材を探して作られたのが「αゲル」だったのです。
 
 
 ・・とこのように書くと、いかにも「タナボタ」式にひらめいたり、ちょっ
 と実験して新素材が見つかったかのように思えますが、発想のプロセスを詳
 しく読み解けば、そんなエレガントなものではないと分かります。
 
 筆者は「発想力は感性、観察力、自問力、気力、体力、そして知力から構成
 される総合力だ」と説きます。
 
 発想の発火点はアイスノンの奇妙な感触に触れた「感性」でした。
 
 そこに自ら厨房に立ち、各地の市場を訪ね歩く程、素材に対して好奇心を持
 つ「観察力」と、学生時代、オリンピック候補にまでなったウェイトリフテ
 ィングで鍛えた「気力・体力」が加わり、独創が生まれたのです。
 
 
 こうして生まれた発想を形にするときには、あれこれ批判する前に、すぐさ
 ま得た情報を加工する「行動」に移すことが重要です。
 
 その際「特許公報」を活用し、先人達の膨大な特許の隙間を見つけ出そうと
 する探偵精神で、自らの独自性を付加していくのです。
 
 
 そして「ひらめく人」に終わらず、「ひらめいて、つくって、売る人」こそ
 開発を、そして人生を楽しく豊かにできると氏は説きます。
 
 自らの特許を数々のビジネスに育て上げたエジソンを師と仰ぐ著者が、発想
 力を身につけ、形にし、ビジネスに結びつける道筋を、誰にでも分かりやす
 く著した一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 衝撃吸収に、「イチゴゼリー」が適していることは分かった。
 
 しかしイチゴゼリーを衝撃吸収材にするわけにはいかない。
 
 筆者の関心事は、イチゴゼリーの分子構造に移った。
 
 そこで製造メーカーに熱心に尋ねると、研究所の技術者が丁寧に教えてくれ
 たお陰で、分子構造が網目状に絡み合っていることがポイントだと分かった
 のだ。
 
 
 一般の人にはイチゴゼリーは子供のおやつの一つにすぎない。
 
 この中に、スポーツシューズの靴底の衝撃吸収材から宇宙船の実験装置にま
 で使われるほどの、どんでもない情報が詰まっていると、知りながら食べて
 いる人など皆無だったはずだ。
 
 この瞬間から、イチゴゼリーは筆者にとっては、単なる食べ物ではなく、貴
 重な情報を満載した「モノ」となったのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「誰でも発想の達人にはなれる」≠「何もしないで達人になれる」
 誰にでもできる、努力と創意と工夫を「実行」するかしないかだ。
 
 モノをモノとして見るな。
 モノについている情報を読み取ることが、発想を形にする第一歩だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 発想力は、どうすれば身につくのか?
 第2部 発想力を、「形」にするには!?
 第3部 発想力を、ビジネスにするには!?
 第4部 特別補講
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 中西 幹育
 ・出版社 プレジデント社
 ・アマゾン 『モノづくりで150億円を生む独創発想術』
 
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