能力構築競争
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【今週の一冊】
●『能力構築競争』
日本の自動車産業はなぜ強いのか
著:藤本 隆宏(中央公論新社)
2003.6 / ¥1,008
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◆ 燃える一言 ◆
『二十世紀最後の四半世紀、世界の自動車産業を動かした原動力は、
『能力構築競争』であった。』
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「カンバン」「カイゼン」などの言葉が、そのまま「国際語」として通用し
てしまうほど、トヨタ生産方式に代表される日本の自動車生産システムは、
「グローバルスタンダード」化しています。
また、かつての輸出の主力であった家電や半導体などが勢いを弱め、国際競
争力を失っていく中、自動車産業には独特な「しぶとさ」があります。
なぜ、戦後日本の自動車産業には、こうした特性が備わったのでしょうか。
本書では、そのキーワードとして「能力構築競争」を挙げます。
通常、企業の競争力として観察される指標は、製品の価格や納期、また目に
見える製品の内容です。
これに対し、顧客が直接観察できない、しかし表面の競争力を支える「深層
の競争力」として、生産性や生産リードタイム、開発リードタイム、不良率
などが挙げられます。
こうした顧客が直接評価しない水面下の指標について、お互いにベンチマー
キング(実力の比較調査)しあって競争しあうことを、「能力構築競争」と
呼んでいます。
自動車という製品は、機能と部品とが錯綜した関係を持つ「擦り合わせ型」
であり、また情報を製品に転写しにくい(※「カンドコロ!」コーナーで説
明します)材料でできた「作り込み」が必要な製品です。
日本企業が得意とする、製品開発部門と生産現場・生産技術の緊密な情報共
有は、こうした「擦り合わせて作り込む」製品と相性が良く、更に「深層の
競争力」を競い合って組織能力を進化させてきたのです。
この能力構築の過程は、事前に合理的に蓄積された、というより、「結果的
に合理的になった」=「創発的」なものでした。
たとえば、「忙しかったからその場その場で対処した」ことが「多能工化」
に繋がった「怪我の功名」的な経過も含まれます。
当事者の企業自身でさえ全貌を明らかにできない「創発的」な組織能力です
から、ライバルにとっては認知しにくく、模倣しにくい能力となり、欧米の
自動車メーカーに対して日本企業が優位を保った一つの要因とも言えるので
す。
こうした能力構築競争では、相手が見えないだけに、優位性を求めるあまり
「過剰設計」にエスカレートし、90年代の品種の肥大化などにより、競争力
を低下させるという副作用も生じます。
その後の設計簡素化による大幅コストダウンで、「失われた10年」といわれ
た中でも競争力を発揮し、今なお能力構築競争で切磋琢磨しているのが、自
動車産業なのです。
一方で、せっかく深層の競争力を持ちながら、ブランド構築などの面で欧米
企業の後塵を拝し、「がんばってるけど儲からない」ことが、問題点として
挙げられます。
「儲かった企業は強い」というトートロジー的な評論が多い中、自動車業界
の近代史を紐解きながら、緻密な分析で「ものづくり」の構造を分析した視
点は、実に読み応えがあります。
「能力構築競争」は、日本のものづくり優位性の必要条件であり、自動車産
業以外も、徹底的に学ばねばなりません。
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◇ カンドコロ! ◇
製品とは、「情報+媒体(メディア)」と言える。
製品設計情報が、素材すなわち媒体の中に埋め込まれたものが製品なのだ。
自動車企業は、外観デザインなどの設計情報を、厚さ0.8mmの鋼板という媒体
に乗せて顧客に発信している。
製品開発とは設計情報の創造であり、生産とは工程から製品への設計情報の
転写のことだと言い換えられる。
ソフトウェアなどのデジタルデータは、「書き込みやすい媒体」に、「劣化
しにくい情報」を転写する。
自動車の鋼板は、高価な金型と数千トンのエネルギーを使ってようやく情報
転写(プレス作業)する「書き込みにくい媒体」だ。
また、よほどうまくやらねば歪んだり、破れたり、情報を正確に転写しにく
い。
そして一旦書き込まれたならば、修正が難しく、完成すれば10年は持つ。
つまり「劣化しにくい」。
こうしてみると、日本企業が国際的に見てレベルが高いのは、「書き込みに
くく劣化しにくい」素材に、苦労して設計情報を転写し、顧客に発信する「
作り込み」タイプの業種といえるだろう。
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◆ 熱い行動 ◆
「売れた」「売れない」の上っ面ではなく、「深層の競争力」をベンチマー
キングせよ。
IT、ツールは能力の差を埋めるものではない。
むしろ、能力差を浮き彫りにすると自覚せよ。
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◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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序章 もの造り現場からの産業論
第1章 自動車産業における競争の本質
第2章 能力構築競争とは何か
第3章 なぜ自動車では強かったのか
第4章 もの造り組織能力の解剖学
第5章 能力構築の軌跡―二十世紀後半の自動車産業
第6章 創発的な能力構築の論理
第7章 紛争―脇役としての貿易摩擦
第8章 協調―競争を補完する提携ネットワーク
第9章 欧米の追い上げと日本の軌道修正
第10章 能力構築競争は続く
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Comments
プレス金型の新技術
2ch記事より抜粋
伝統技術で世界最強の日本刀のナノテクノロジーを抽出し先端技術を駆使して日立金属がS-MAGICという金型用鋼を開発した。これは韓国製鉄が出来ない優秀なハイテン(高張力鋼板)を切り裂いたり、曲げたりする金型に応用され自動車などが製造されている。この新素材は方法論としては世界最多の成分種添加による超多元系合金設計によって独自性能が盛り込まれた。こんなことが韓国では出来ないのは切れ味抜群の日本刀のものづくりには美しさと強さの源となっている日本のオリジナル技術がいっぱい詰まっているから。
Posted by: 岡谷鋼機 | April 20, 2008 at 12:24 PM
噂に名高きSKD11に替わる次世代旗艦鋼種ですね。なんだか、大物の斬鉄剣なんか作ってみたくなりますね。
Posted by: ゴエモン | October 08, 2008 at 06:38 PM
日本の特殊鋼の世界的優秀性は、カミソリやピストンリングなどでも聞いたことがあります。
しかし、こんな特殊鋼の原点ともなった日本刀の技術が絶頂期をむかえたのが鎌倉時代らしく、その後はそのレベルに到達することが現代の刀匠の課題らしいです。
技術課題が複雑になると、ものづくりの伝承というのも競争構築能力の中に占めるウェイトが大きいのではないかとも思われます。
Posted by: サムライ | November 21, 2008 at 05:14 AM
その金型用の特殊鋼を開発した人。
薩摩出身者だそうだな。薩摩の人間は西郷隆盛からくる親分肌のイメージが強いが、戦前の陸海軍の大将などの要職に薩摩人が選ばれた理由は、目的遂行のために緻密な計算を行うことで有名で、特に砲術関係の弾道計算に長けていた経歴者が多い。これは薩摩示現流の影響が見過ごせない。
この剣法は切り込まれたときの防御の型が存在せず、最初の一撃でしとめる流派である。つまり一発勝負の必中にたどり着く思考法が弾道計算に生かされたのかもしれない。
翻って考えると弾道計算の最高技術である宇宙ロケットの基地が鹿児島にあるのもそういった流だろうか。
ただし、一度計算による解が確定すると、それこそ自若泰然とした態度で解を実現するために遂行する。東郷元帥(薩摩出身)が日本海海戦で激しい砲撃戦のなかで、至近弾が飛び交う艦橋で部下の働きを見守っていたので、参謀が安全な場所で御指揮くださいといったが、最高指揮官の仕事はここで立って見守ることで、やるべき事は才能あふれ部下たる最高の参謀たちに移ったというようなことをいっている。
Posted by: 右田 | March 18, 2009 at 01:10 AM