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September 28, 2005

テクノロジストの条件

technorogist
 【今週の一冊】
 ●『テクノロジストの条件』
 はじめて読むドラッカー (技術編)

  著:P.F.ドラッカー 翻訳:上田 惇生(ダイヤモンド社)
   2005.7 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『若者のなかでも最も有能な者、最も知的な資質に恵まれた者、
      最も聡明な者にこそ、知識に裏付けられた技能を使う
             テクノロジストとしての能力をもってほしい。』

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 経済や社会学の大家であるドラッカーは、「ものづくりの技術が文明をつく
 る」と説き、技術のマネジメントにも力を入れて著しています。
 
 彼の技術に関する著述をまとめた本書は、理系のためのドラッカー入門であ
 り、同時に文系のための技術論でもあり、それらを包含して「技術」の行く
 先を示す羅針盤となる、貴重な一冊です。
 
 
 今日のIT革命ほど、歴史上かつてないほど進行が早く、大きな影響を与え
 たものはないと考えがちですが、実は、かつての産業革命もほとんど同じス
 ピードで進行していました。
 
 ワットの蒸気機関が、はじめて綿紡績に使われた1785年からの約40年間は、
 産業革命といっても、それまで存在していた製品の機械化だけでした。
 
 ところが1829年に、まったくの新産業として鉄道が現れ、世界の経済、社会、
 そして政治を一変させました。
 
 鉄道こそが心理的な地理を変え、経済を変え、産業革命を真の「革命」にし
 たのです。
 
 
 一方、1940年代半ばにコンピュータが出現して始まったIT革命は、今日ま
 でのプロセスを高速化・ルーティン化したに過ぎず、コンピュータは産業革
 命の蒸気機関に当たるといえます。
 
 ではIT革命における「鉄道」は何でしょう?
 
 それは「eコマース」であり、心理的な地理を消し、あらゆる企業がグロー
 バル化し、経済が変わったのです。
 
 鉄道の誕生後、電報や写真、光学機器や農業機械といった、蒸気機関とは無
 縁の新産業が登場したように、IT革命における新産業は、バイオテクノロ
 ジーのように萌芽を見せているもの以外に、続々と生まれることが予想でき
 るのです。
 
 
 つまり、その新産業=「イノベーション」は、すでに熟知された分野以外で
 起こるのであり、従来のように専門家が研究開発するアプローチでは生まれ
 にくいのです。 
 
 そこで、今日必要とされているのが、科学技術に優れた感性を持ち、知的好
 奇心が旺盛な、専門外の「テクノロジスト(=知識労働と肉体労働の両方を
 行う人)」なのです。
 
 
 そして、技術開発の中心は、一部の天才ではなく、大量の有能な人材と大量
 の資金を有する既存の企業であり、企業はイノベーションを行う組織を構築
 し、技術をマネジメントすることが不可欠となります。
 
 企業が新技術によるイノベーションを興すためには、「技術観察(テクノロ
 ジー・モニタリング)」が重要です。
 
 新技術の影響を事前に予測しようとする「技術評価(テクノロジー・アセス
 メント)」では、間違った技術を奨励したり、有効な技術を抑制する恐れが
 あることを、歴史が物語っています。
 
 
 かつてテイラーの作業分析により、肉体労働の生産性が50倍に増加し、生
 産性革命が起きました。
 
 今後は、イノベーションを行う、知識労働の生産性の向上こそが鍵となりま
 す。
 
 我らテクノロジスト自身が、知能労働者としての知識、責任、生産性を身に
 つけることが、すなわちこれからの50年において、世界をリードする原動力
 となるのです。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 21世紀の工場にも、数多くの機械が並ぶが、工場の本質は機械ではない。
 
 その本質は、4つの新しいコンセプトである。
 
 第1に、統計的品質管理(SQC)が、工場の社会構造を変える。
 
 第2に、活動基準原価計算(ABC)が、製造上の決定を事業上の決定とし
 て行わせる。
 
 第3に、フレキシブル生産が、標準化と柔軟性を同時に実現する。
 
 第4に、システム・アプローチが、物をつくるという物理的プロセスとして
 の製造を、価値創造のプロセス(経済的プロセス)に組み込む。
 
 これらの理論はそれぞれに独自の道具と言語を持つが、これらの4つのコン
 セプトが共に機能するとき、人と機械、時間と金、標準化と柔軟性、機能と
 システムという、これまで工場を悩ませてきた諸々の対立を解決するのだ。


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 ◆ 熱い行動 ◆
 自らをマネジメントし、知識労働の生産性=質の向上に責任を持て。
 
 歴史に学び、社会を知り、明日を「技術」で拓け。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 プロローグ 未知なるものをいかにして体系化するか
 Part1 文明の変革者としての技術
  1章 仕事と道具
  2章 古代の技術改革に学ぶべき教訓
  3章 近代を生み出したものは何か
  4章 IT革命は産業革命になれるか
 Part2 技術のマネジメント
  5章 知識労働の生産性
  6章 ベンチャーのマネジメント
  7章 つくるだけでは終わらない-製造の新理論
  8章 技術をマネジメントする
 Part3 イノベーションの方法論
  9章 方法論としての起業家精神
  10章 イノベーションのための組織と戦略
  11章 既存の企業におけるイノベーション
  12章 イノベーションの機会はどこにあるのか
 Part4 世界観の転換
  13章 分析から知覚へ
  14章 知識の意味を問う
  15章 ポスト資本主義社会の到来
 エピローグ インタビュー「新技術は世界をどう変えつつあるか」

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September 21, 2005

工場を歩く

koujyouwoaruku
 【今週の一冊】
 ●『工場を歩く』
  ものづくり再発見

  著:加藤 正文(文),綱本 武雄(画)(神戸新聞総合出版センター)
   2005.7 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『ものづくりの魂は 自足しない。(小関智弘)』

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 私やまさんは、兵庫県の片隅の工場で、日々汗を流しています。
 
 日ごろは自分の働く現場や、関連工場しか目にすることはありませんが、辺
 りを見渡せば、製菓工場やビール工場、製鉄所や造船所など、多種多様な工
 場で働く「同志」がいることに気づきます。
 
 近くても、なかなか覗くことのできない兵庫県下の「ものづくり」の現場を、
 精緻なペン画のイラストとレポートで、紙上見学会といきましょう。
 
 
 「鉄と船以外はすべて包む」といわれるほど、段ボールのユーザーは、飲料、
 食品、家電、その他あらゆる産業部門を網羅します。
 
 段ボールの生産量は景気のバロメータとしても利用されており、実際2003年
 秋からの生産量は前年を上回り、景気回復を裏付けています。
 
 レンゴー三田工場のラインでは、ロール状の原紙から波状の中芯を作り、表
 と裏にライナーと呼ばれるシートを貼り付けて、実に毎分260mの速さで
 張り合わせていきます。
 
 それを「すべてオーダーメード」といえるほど「多品種“変量”」の形状に
 打ち抜き、1日350品目の注文に即応できる体制をとっています。
 
 しかも段ボールのリサイクル率は9割以上であり、繰り返し再生されている
 環境にやさしい製品なのです。
 
 
 金物の町・三木にある岡田金属工業所は、替え刃式のこぎりのトップメーカ
 ーですが、これまでの栄光にすがることなく、生産性向上に取り組んでいま
 す。
 
 刃の輪郭をつくる「自動ヒガキ目立て機」は、手作りで仕上げていた刃の整
 形を自動化し、更に刃幅の自動測定結果をフィードバックして補正します。
 
 冒頭の言のごとく、現状に満足せず、常に上を求め続けるのが職人の気概で
 あり、ITも道具として有機的に使いこなす柔軟さが必要です。
 
 描きこまれたイラストの、自動研磨機の機構をじっくり眺めると、汎用機に
 はない独特の「知恵」をひしひしと感じ、飽きさせません。
 
 
 また松下電器のパソコン組立のセル生産の様子を描いたイラストには、お金
 をかけずに作業性を上げた道具=「からくり」が紹介され、組立に使うセル
 =屋台が、「整然」でも「雑然」でもなく並べられている様子も表されてい
 ます。
 
 こうしてみてみると、工場内のイラストは、廃れ行く職人芸を味わい深く描
 くため、という「後ろ向き」な意味よりも、最新の生産技術情報を写真では
 流出させられないために絵にした、という「攻め」の意図が感じられます。
 
 
 身近なところで、こんなにも「熱い」ものづくりを仕掛ける工場があること
 に誇りを感じ、同時にイラストや他人の文章ではなく、この目で現場を見た
 くてウズウズしてきます。
 
 見学の申し込み先まで丁寧に記載されているので、関西地区の方、お気に入
 りの工場に、この連休にでもお子さんを連れて、訪れてみてはいかがでしょ
 うか。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 パイプの製法には、鉄板を丸めて溶接する方法と、鉄の棒を伸ばして作る「
 継ぎ目なし(シームレス)」がある。
 
 後者は継ぎ目がない分、作り難いが強度は高い。
 
 「パイプの住金」と呼ばれる住友金属工業のシームレスパイプ製造現場の様
 子が描かれている。
 
 「押し抜き」といわれる製法は、円柱状の鋼塊の中央を芯金で押し、リング
 状の型に押し込んでいく。
 
 型を通すときに、すべりを良くするためにガラス粉をかける。
 
 人が歩くのと同じくらいのスピードで、象の鳴き声のような摩擦音を響かせ
 ながら外周が絞られていく。
 
 一つ目の型を通り抜けたら、鋼塊を引き抜き、通したリングはワイヤで引き
 上げる。
 
 そうして2つ目、3つ目の型に通して、段々と外径を狭めて細くしていく。
 
 文字では分かりにくいが、イラストならば一目で分かる。


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 ◆ 熱い行動 ◆
 地元の工場に、足を運んで、じっくり見てみよう。
 小学生だけに工場見学させていては、もったいない。
 
 現場の「楽しさ」「面白さ」を、文字や絵、言葉を駆使して伝えよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 工場を歩く(55工場の紹介)
 コラム・休憩時間
 1 工都クルージング
 2 工場を歩く装い
 3 働く環境
 4 建築ウォッチングで温故知新
 5 おみやげ
 6 「工場を歩く」メーキング
 インタビュー 小関智弘さんに聞く

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September 14, 2005

図面って、どない描くねん!

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 【今週の一冊】
 ●『図面って、どない描くねん!』
現場設計者が教えるはじめての機械製図

  著:山田 学(日刊工業新聞社)
   2005.08 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『寸法を記入していくには論理が必要です。
   寸法基準や機能基準の決め方から、そこから展開して、機能と加工を
    考慮し論理立てて寸法を記入していけば、図面が完成するのです。』
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 自分でも日々、図面を書きますし、後輩の検図もしているのですが、果たし
 て「正しい」製図ができているかといえば・・はなはだアヤシイ。
 
 照査欄にサインをしたものの、現場のおっちゃんに「なんやねん!この図面
 は!」と怒鳴られて、設計者と頭を下げることも度々です。
 
 むかーし、学生時代に図面の授業で読んで以来、我流で書きなぐってきたこ
 とを反省しつつ、JIS製図の基本を学びたいと思います。
 
 
 CADでの作図が基本となった今、操作方法さえ分かれば「図」そのものは
 比較的簡単に描けます。
 
 しかし、大切なことは、「図」そのものを描くことではなく、「意図」を描
 くこと、つまり設計者の意思を製作者に確実に伝えることです。
 
 なれば、良い図面とは、1.正確に 2.簡潔に 3.平易に 設計情報が
 伝達できるものなのです。
 
 
 まず、「正確」であるために、ルールに従った作図法が必要です。
 
 例えば、かくれ線(破線)を避けるために「断面図」を使う場合でも、JISで
 は「補強のリブ」「軸」「ボルト」「ナット」などは切断しません。
 
 また、表面粗さの表記方法は、02年にJISが改定されていますから、新JIS
 に対応した社外のメーカーに、「▽▽▽」なんていう、昭和の記号を描いて
 出していては伝わりません。(というかハズカシイ。)
 
 
 「正確さ」のキーとなるのが、寸法記入の手順です。
 
 寸法線は、単純に端から順番に記入してはなりません!
 
 まず組立図を見て、自問します。
 
 ・どこが基準か?:一番大事な取り付け面=加工基準面から明示する
 ・どこが機能的に重要か?:機能的に重要な基準を次に描く
 ・加工の順序は?:穴径を決めれば、「その長さは?」と問う
 ・加工方法は?:機能に応じて表面仕上げを都度記入する
 
 本書では、実際に画を描くところから仕上げまで、どのように寸法線を記入
 するか、追体験することで「思考の流れ」を体感できます。
 
 
 「簡潔」であるためには、投影法や断面を利用して、できるだけ少ない図で
 すっきりと書き上げねばなりません。
 
 また、寸法公差をギチギチに入れるのではなく、必要な機能に応じて「幾何
 公差」を駆使することで、設計意図を明確に伝え、余計な手戻りや不具合を
 抑えることも大切です。
 
 
 一方、「平易」であるためには、例えば対象図形で、確かに簡略できる場合
 でも、加工者が「分かりやすく」「勘違いしにくい」ようにと、あえて重複
 する描き方をすることもあります。
 
 テクニックを駆使しつつ、テクニックにおぼれることなく、誰が見ても分か
 る図面を描くことこそが、「目的」に適うのです。
 
 
 今年ももうしばらくすると、私の部署にも新人君が配属されます。
 
 これまでは見よう見真似で覚えてもらっていた製図ですが、これからは「図
 面って、こないして描くねん!」と、本書を渡したいと思います。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ある部品が、図面上で直線、円あるいは平面で示されている場合、加工者は
 できるだけ指示通り加工しようとする。
 
 しかし、完全な直線、円、平面に仕上げることは不可能だ。
 
 そこで、どの程度まで正しく仕上げたらよいか、逆に、どの程度までの狂い
 であれば許されるのか、明確に定義し、許容値を表示したものが「幾何公差
 」だ。
 
 設計をする上で、より高品質・高精度が要求され、かつ開発期間・製造時間
 の短縮や、設計・製図のグローバル化が進んだことで、特に幾何公差の重要
 性が注目されている。
 
 アメリカの大企業では、業務を数日間中断させてまで、技術者に幾何公差の
 講習会を受講させ、レベルアップに努めている。
 
 対して、今の日本企業の多くでは、残念ながら幾何公差の認識は、大きく世
 界から遅れている。


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 ◆ 熱い行動 ◆
 過去の図面に右に倣えでは、「正しい」「良い」図面にならない。
 「なぜ作るか」の信念を、寸法線に語らせろ。
 
 「寸法漏れのチェック」で検図を終わらせるな。
 設計者の「志」を炙り出せ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 第1章 図面って、どない描くねん!
 第2章 寸法線って、どんな種類があるねん!
 第3章 寸法公差ってなんやねん!
 第4章 寸法ってどこから入れたらええねん!
 第5章 幾何公差ってなんやねん!
 第6章 この記号はどない使うねん!
 第7章 こんな図面の描き方がわからへん!
 第8章 図面管理ってなんやねん!

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September 07, 2005

ビルはなぜ建っているか なぜ壊れるか

biruhanazetatteiru
 【今週の一冊】
 ●『ビルはなぜ建っているか なぜ壊れるか』
 現代人のための建築構造入門

  著:望月 重(文藝春秋)
   2003.8 / ¥735

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『建物を見るとき、美しい形態かどうか、と同時に、
       安全な構造かどうかを、見分けることが大切です。
            これこそ建物の本当に知的な見方だと思います。』
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 9月1日は、関東大震災が発生した「防災の日」。
 9月11日は、4年前、ニューヨークでワールドトレードセンターへの航空
 機テロが発生した日。
 そして今、大型台風14号が上陸し、全国で家屋の倒壊や浸水被害が続発し
 ています。
 
 こうしてみると、自然、あるいは人為的な災害に対する「安全な建物」につ
 いて、深く考えさせられます。
 
 建物の安全性を決める、最も重要な要素が、建物の骨格=「構造」です。
 
 日常生活では、概観のユニークさや使い勝手に目が奪われますが、自然の猛
 威を実感しているこんなときこそ、「構造」について学んでみましょう。
 
 
 建物は、「重さとの戦い」といえます。
 
 まず建物の自重(固定荷重)であり、建物に載っている人間や家具の重さ(
 積載荷重)があり、雪の降る地域では屋根の雪の重さ(積雪荷重)がありま
 す。
 
 また、先に述べた風荷重、地震荷重もありますし、地下では土の圧力(土圧)
 や地下水による水圧もかかります。
 
 しかも、荷重の方向(鉛直か水平か)、荷重の時間(固定荷重のように長期
 か、地震のように短期か)、変化の有無(動荷重と静荷重)などが複雑に絡
 み合っています。
 
 建築関係法令で規定されているのは設計の最小値に過ぎず、それぞれの建物
 に応じてこれら荷重を見積もるところから、構造設計は始まります。
 
 
 昔はよく「山の手では土蔵がつぶれる」といわれましたが、これは地盤と、
 堅い土蔵の固有周期が近いために「共振」したことが原因であり、地震被害
 を大きくします。
 
 超高層建築は大丈夫なのか?と心配になりますが、たとえば30階程度で高
 さ100mの鉄骨造の建物ならば、固有周期は3秒程度で、山の手の地盤の
 固有周期0.4秒とは大きく離れており、まず大丈夫。 
 
 
 そして、構造設計を実現するために不可欠なのが材料技術であり、構造と材
 料は一体となって日進月歩しています。
 
 中でも高層建築の実現は、鋼材の材質向上に負うところが大きいことは間違
 いありません。
 
 しかし、阪神大震災では厚さ10cmものH形やロ字型の鋼の柱が破断してしま
 ったり、日本製の鋼材が使われたワールドトレードセンターの柱が火災によ
 り軟化し、ビルが崩壊するという惨事も起きました。
 
 「安全」の基準をどこにとるかは甚だ難しい問題であり、事故が起きてから
 後追いで規定ができているのが、建築の歴史でもあるのです。
 
 
 「建築家」と呼ばれる人に対して「構造技術者」は「縁の下の力持ち」的な
 ところがあり、事故が起きたとき以外は注目されません。
 
 しかし、筆者は「真の設計者は構造設計者」と胸を張るように、人命と財産
 を支える「骨格」の設計と、建築家が連携してこそ、美と実を備えた建築が
 可能となります。
 
 材料力学の基礎から、特徴的な構造の実例紹介まで、幅広く学べる「骨太」
 な一冊です。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 地震計が普及する20世紀半ばまで、地震の震度を知る指標として用いられて
 いたものがある。
 
 それが何と「お墓」なのだ。
 
 墓石の高さをH、転倒したほうの辺の長さをB、墓石の重さをWとし、地震
 の力をPとする。
 
 地震が強いほど重い墓石が倒れるので、P=kWとなり、kは震度を表す。
 (気象庁の震度とは異なる)
 
 地震で墓石が倒れるとき、地震の力のモーメントが墓石の重さによるモーメ
 ントより大きいと考えると、PH>WB。
 
 P=kWを代入すればkWH>WB ∴k>B/H
 
 つまり、地震後の墓石のうち、転倒している墓石の転倒したほうの辺の長さ
 を、墓の高さで割った値の最大値が、地震の震度を表している。
 
 墓地なら日本全国にあるから、これでおおよその震度が簡単に求められる。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「材料力学」「工業材料」を、できるだけ具体的な事例で学ぼう。
 
 家を建てる前に、構造の基礎を学んでから、「構造設計者」と話をしよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 建物を「骨」まで知ろう
 第2章 建物、それは重さとの戦い
 第3章 構造材料さまざま、よしあし
 第4章 なんでだろう?部材の力学
 第5章 基礎―土の中は分からない?
 第6章 見てみよう、正しく美しい建物
 第7章 めざすは地震災害の克服

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