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March 30, 2006

自然に学ぶものづくり

Shizennnimanabu
 【今週の一冊】
 ●『自然に学ぶものづくり』
  生物を観る、知る、創る未来に向けて

  著:赤池 学(東洋経済新報社)
  2005.12 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆

『自然界では、機械も使わずに最低限の力で、
                   自発的にものがつくられています。
                   
   できるだけ単純な仕組みを使って、材料となるものにどのような環境を
     与えれば、必要な構造や機能を自発的に生み出すことができるか。
     
     地球という場の中で、自然にできたものに学ぶ意義は、
                  そこにあるのではないでしょうか。』

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 タイからの帰国の機内の中から、今回はお送りします。
 
 タイの特産品といえば、「タイ・シルク」。
 
 色鮮やかで手触りのよりスカーフが、お土産としてたくさん並べられていま
 した。
 
 
 さて、シルクは蚕が繭として生み出すものですが、思えばわずか体長8セン
 チほどの体から「生産」されるプロセスは、とても人間には真似できません。
 
 シルクはセリシンとフィブロインという2種類のタンパク質からなり、中心
 のフィブロインを4層のセリシンが囲む5層構造です。
 
 しかも各セリシンは熱による溶解性がそれぞれ異なっており、フィブロイン
 の保護、潤滑剤、繊維の固定、繭の構造材という役割を担っています。
 
 小さな体から、常温常圧で、身の回りの酸素、窒素、水素、炭素といった軽
 元素のみで長さ1,500メートルもの長さの絹糸が生み出される、「ハイテク・
 シルク工場」が蚕なのです。
 
 
 この絹タンパクを、繊維ではなく純度の高いタンパク質素材としての利用が
 研究されています。
 
 肌に優しく、生体適合性が高いシルクの性質を活かし、化粧品やコンタクト
 レンズ、人工皮膚などへの応用開発が進んでいます。
 
 更には蚕のゲノムが解読されており、蚕以外の他の生物からも、似た遺伝子
 情報を解明することで、利用価値のあるタンパク質が作り出せるかもしれな
 いのです。
 
 
 こうした自然の持つ潜在的な力を活用し、またその構造や機能を模倣し、そ
 して資源やエネルギーを循環的に活かすものづくりが、本書には紹介されて
 います。
 
 里山で自然と共存し、紙や木や土を生かしたものづくりの歴史を持つ日本こ
 そ、いまなお豊かな自然に囲まれた東南アジアはもちろん、世界に向けて、
 「自然に学ぶものづくり」を発信すべきでしょう。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 セルロースは、木をはじめとする植物繊維の骨格となる成分であり、環境に
 適合する天然高分子として活用されている。
 
 これまでは、木材をパルプとし、更に微細な繊維状にして取り出したセルロ
 ースをもとに材料を開発してきた、いわば「トップダウン方式」だ。
 
 これは植物がエネルギーを使って組み立てた構造を、さらにエネルギーを使
 って崩すことになり、効率が悪い方法だ。
 
 今後重要になるのは、生合成されたセルロースを、種々のサイズ・構造を持
 つ構造体に形成する「ボトムアップ方式」であり、生態系は常にボトムアッ
 プ方式だ。
 
 このようなボトムアップ方式の材料設計が可能な系が、酢酸菌などのバクテ
 リアが産生するセルロースゲルだ。
 
 なんとこのゲルは、あのデザートとしてブームになった「ナタデココ」なの
 だ。
 
 このバクテリアセルロースゲルを利用して、ヘッドホーンの振動板などに用
 いるの強度の高いフィルムが得られ、また液晶ディスプレイなどの無機ガラ
 スに代わる、軽量の高性能ガラスとしての利用が期待されている。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 出力したもののリサイクルの前に、入力を抜本的に見直そう。
 動植物の、身の丈にあった入出力に学ばねばならない。
 
 「虫けら」と、侮ることなかれ。
 数億年前から生き延びた彼らを、人類はまだ解明していない。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 序章 今なぜ、自然に学ぶものづくりなのか
 第1章 「人間力」―生物を観る、知る、創る未来に向けて
 第2章 「植物力」―自然を活かすバイオマスビジネス
 第3章 「昆虫力」―インセクトテクノロジーの台頭
 第4章 「微生物力」―自然に学ぶライフサイエンスの未来
 第5章 「地球力」―命を育む地球生態系に学ぶ
 第6章 「再び人間力」―自然に学ぶ子どもたちを生み出すために
 終章 自然に学ぶものづくり、日本から世界への発信
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 赤池 学
 ・出版社 東洋経済新報社
 ・アマゾン 『自然に学ぶものづくり』

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March 29, 2006

アジア自動車産業の実力

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 【今週の一冊】
 ●『アジア自動車産業の実力』
  世界を制する「アジア・ビッグ4」をめぐる戦い

  著:土屋 勉男, 井上 隆一郎, 大鹿 隆(ダイヤモンド社)
  2006.01 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆

『アジアは、日本企業にとって、米国や欧州と並んで、あるいは
 
     それ以上に今後は収益性の高い地域になる可能性がある。
     
   焦点市場である米国に加えて、アジアで比較優位を発揮した企業が、
   
    今後のグローバル競争における勝者であることは間違いなかろう。』

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 北米、ヨーロッパ、そして日本の自動車販売台数は、それぞれ頭打ちとなっ
 ていますが、グローバルで見ると右肩上がりの傾向がはっきりしています。
 
 それは近年、BRICsと称される新興市場が急激に存在感を増しているか
 らに他なりません。
 
 中でも、I(インド)、C(中国)に、ASEANを加えたアジア市場が、自動車
 メーカにとって魅力の高い市場、というよりも主戦場になってきています。
 
 本書は、今後5~10年後をにらんで、激変するアジア事業、中国事業展開
 の羅針盤となるべく起こされています。
 
 
 中国市場については、著者らが描いたシナリオでは、2010年以降「アジア・
 ビッグ4」時代が出現すると見ます。
 
 厳密に言えば「アジア・ビッグ4」にGM、フォード、VWを加えた「アジ
 ア・ビッグ4、プラス欧米3」時代ですが、なかでもホンダ、トヨタ、日産
 自動車、そして韓国の現代自動車の「アジア・ビッグ4」が中国市場をリー
 ドすると考えます。
 
 ここ数年は、先行したVWにホンダ、GM、現代自動車が急速に追い上げて
 きており、これに加えて05~09年は、出遅れていたトヨタ、日産が総力をか
 けて追いかける展開となります。
 
 これはまさに、80~90年代に米国市場で起こった、グローバル競争時代の再
 現と言えるでしょう。
 
 
 しかしこれら企業の能力増強投資は累計すると異常な規模に膨らんでおり、
 中国の高度成長経済をもってしても、消化しきれない生産能力が計画されて
 います。
 
 これを乗り切るためには、アジア大の視点で製品・部品の国際分業戦略が重
 要となり、中国をASEANと共に、ものづくりの拠点と位置づけて、国際競争力
 のある製品を育て上げる戦略が問われることとなります。
 
 例えば、トヨタ自動車は、新しいピックアップ・トラックと多目的車(IMV)
 を開発する「IMVプロジェクト」を進めており、日本にベース車を持たず、か
 つ日本製部品にほとんど頼らないことなどを特徴としています。
 
 この結果、トヨタのASEANでの生産台数は、04年には前年比28%増となり、05
 年以降もIMVシリーズをタイ、インドネシアを中心として生産能力を拡大する
 勢いです。
 
 
 こうして見ると、BRICsの進出に遅れた日本企業にとって、長期間かけ
 て育成してきたASEAN市場競争でのポジションが、アジア全体をにらんだ戦略
 の中で重要となります。
 
 中国は市場規模も大きいですが、事業リスクも大きいのに対し、ASEANは市場
 規模は中国ほど大きくないものの、日本企業にとってリスクは小さいのが魅
 力です。
 
 アジア各国に長年技術協力をしてきた日本のメーカーにとっては、ようやく
 先行投資の果実を刈り取る絶好のチャンスが到来しているのです。
 
 中国一極集中に相乗りするのではなく、また安易な国内回帰でもなく、「ア
 ジアにおける国際分業」が、これからのものづくりのキーワードといえるか
 もしれません。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 タイはASEANでは最大の自動車市場規模の国だ。
 
 ASEAN諸国の中で最も自由化政策を進めたので、日本・欧米の自動車、部品メ
 ーカーが集中し、「東洋のデトロイト」と呼ばれる。
 
 トヨタ自動車は、前述のIMVの開発・生産拠点としてトヨタタイの工場を位置
 付け、さらにIMVを世界各地10カ国でのグローバル生産車種とする計画だ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 5年後、10年後の姿(市場、製品)を描き出せ。
 最善、最悪、その中間のシナリオを挙げ、対策を講じよ。
 
 自ら、「アジアの時代」を足を運んで目に焼き付けよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1部 アジア自動車産業の成長構造と市場展望
  アジアを取り巻く自動車産業環境の変動
  アジア自動車市場の将来展望
  中国の自動車産業
  ASEANの自動車産業
 第2部 アジアをめぐる自動車産業の実力と日本企業の戦略
  韓国の自動車産業―構造改革とグローバル・リーダー企業の誕生
  アジアが引き金となる国際再編企業ランキング2005
  アジアをめぐる国際競争、国際再編のシナリオと日本企業の戦略
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 土屋 勉男井上 隆一郎
 ・出版社 ダイヤモンド社
 ・アマゾン 『アジア自動車産業の実力』

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March 08, 2006

トヨタ生産方式

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 【今週の一冊】
 ●『トヨタ生産方式』
  脱規模の経営をめざして

  著:大野 耐一(ダイヤモンド社)
  1978.05 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『なお、一部の人たちのこの方式を曲解しての批判に対しては、
                  弁明・釈明は一切しておりません。

       世の中のことはすべて歴史が立証すると確信するからです。』

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 「ものづくり」に関する書籍の中で、これだけは外せない、というものがい
 くつかありますが、本書はその筆頭ともいえます。
 
 30年近く前に刊行されながら、なんと先日、ついに第100刷まで到達した、ロ
 ングセラーです。
 
 それもこれも、トヨタ生産方式の生みの親、大野耐一氏がその「思想」をま
 とめた貴重な一冊であり、冒頭の言葉が示すがごとく、NO.1企業トヨタの源
 流だからです。
 
 
 トヨタ生産方式の2本の柱は「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」。
 
 ではその関係は?
 
 大野氏は、これを野球にたとえて、前者をチームプレー、後者を個人技を高
 めることに当たると説明します。
 
 
 「ジャスト・イン・タイム」によって、生産現場の各工程に当たる、グラウ
 ンドの各選手は、必要なボールをタイミングよくキャッチし、連係プレーで
 ランナーを刺します。
 
 全工程がシステマチックに見事なチーム・プレーを展開するのです。
 
 生産現場の管理・監督者は、野球の監督・コーチに当たります。
 
 強力な野球チームが、どんな事態にも対応できる連係プレーを展開するよう
 に、「ジャスト・イン・タイム」を身につけた生産現場は機能するのです。
 
 
 一方の「自働化」は、重大なムダであるつくり過ぎを排除し、不良品の生産
 を防止する役割を果たします。
 
 そのために平生から各選手の能力=「標準作業」を認識し、これに当てはま
 らない異常事態、つまり選手の能力が発揮されないときには、特訓によって
 その選手本来の姿に戻してやります。
 
 こうして「自働化」によって「目で見る管理」が行き届き、生産現場すなわ
 ちチームの各選手の弱点が浮き彫りにされ、直ちに選手の強化策を講じるこ
 とができるのです。
 
 
 ちょうどWBC真っ盛りですが、強い野球チームは必ずチーム・プレーよし、
 個人技よしであるように、「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の両立
 が、強い現場を生むトヨタ生産方式の真髄です。
 
 
 これら全ては、「原価を下げる」というニーズから生み出されたものであり、
 しかも単なる願望ではなく、自分をぎりぎりの線に追い込んで、掴み取った
 ニーズです。
 
 カンバンや上辺をまねて、おいしいとこ取りしようという浅薄な「ニーズ」
 では、到底理解できない境地です。
 
 「トヨタ生産方式は、考え方を根本から改める、意識革命である」との至言
 を痛感する本書は、ニッポンのものづくり人ならば、必読・必携の書である
 と断言します。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「フォード・システム」と「トヨタ生産方式」。
 
 片やロットを大きく、段取り替えを少なくする方式であり、片やロットを小
 さく(1個流し)、段取り替えをすみやかに行う方法だ。
 
 全く対照的な生産方式だが、意外なことに、大野氏はヘンリー・フォード1
 世に敬服して止まない。
 
 例えば、フォード1世は、「標準」に関して、「相手が国であっても、企業
 トップであっても、どのような上司であっても、上から与えられるものでは
 なく、『標準』を設定するのは生産現場の当事者がせよ」と述べている。
 
 また、「産業の終着点は、人々が頭脳を必要としない、標準化され、自動化
 された世界ではない。その終着点は、人によって頭脳を働かす機械が豊富に
 存在する世界である」とも書き残している。
 
 これらを通して、大野氏は、「ヘンリー・フォード1世がいま生きていたら、
 トヨタ生産方式と同じことをやったに違いない」と言い切る。
 
 フォードの後継者達は、必ずしも彼の意図した生産の流れを作らず、間違っ
 て解釈していたのだ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 「トヨタ生産方式」はツールではない。マインドだ。
 しかも生みの親が数10年かけて浸透させたことを、知らねばならない。
 
 「データ」以上に、「現物」を見よ。
 「原因」ではなく、「真因」を追究せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 第1章 ニーズからの出発
 第2章 トヨタ生産方式の展開
 第3章 トヨタ生産方式の系譜
 第4章 フォード・システムの真意
 第5章 低成長時代を生き抜く
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 大野耐一先生の言葉
 ・出版社 ダイヤモンド社
 ・アマゾン 『トヨタ生産方式』

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March 06, 2006

技術士第二次試験「機械部門」完全対策&キーワード100

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 【今日の一冊】
 ●『技術士第二次試験「機械部門」完全対策&キーワード100』

  著:Net‐P.E.Jp(日刊工業新聞社)
   2006.02 / ¥2,940

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 いよいよ、平成18年度の技術士第2次試験の受験申込書の配布が始まりまし
 た。
 
 早くもインターネットでの受付も開始されています。
 
 ⇒「日本技術士会」
 
 
 今年度は、受験資格をお持ちの方ならば、受験は「必須」です。
 
 というのも、来年度からは試験制度が大きく変わり、これまでの傾向や分析
 で対応できる「最後」の年だからです。
 
 業務の忙しさなどで二の足を踏んでいる方も、この機会を逃す手は無いでし
 ょう。
 
 
 いまからの受験準備、非常に厳しい道のりではありますが、その羅針盤とな
 るテキストが、ついに発刊になりました!
 
  『技術士第二次試験「機械部門」完全対策&キーワード100』
  Net-P.E.Jp 編著(日刊工業新聞社)
 
 受験申込書の記入方法から、過去問題、論文作成の手引き、そして論文解答
 例もふんだんに掲載されています。
 
 もちろん、第1次試験対策に引き続き、択一問題の詳しい解説も満載です。
 
 受験を迷っている方も、今年こそ!と決意を固めている方も、まずは受験申
 込書と本書を取り寄せて、スタートダッシュを切ってください!

 やまさんも、Net-P.E.jpの一員として、執筆に参加していますので、覗いて
 見てくださいね!

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March 01, 2006

金属のおはなし

kinzokunoohanashi
 【今週の一冊】
 ●『金属のおはなし』
  
  著:大澤 直(日本規格協会)
   2006.01 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆

『金属には、対応次第によって千変万化する魔性の力が
 
             潜んでいるかのようにさえ思えてなりません。』

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 日々、鉄や銅と格闘して、切った貼ったを繰り返している やまさん にとっ
 て、金属は魅力半分、小憎らしさ半分で、まさに「魔性の力」に振り回され
 ています。
 
 (なんであの材料はうまく溶接できんのやろ・・ブツブツ・・)
 
 しかし、どんなに文句を言っても、鉄は5,000年、金に至っては6,000年も人
 類と共にあった「腐れ縁」ですから、仲良く付き合うために、彼らの素顔を、
 本書で覗いてみたいと思います。
 
 
 彼らは実に個性豊かで、同じ金属や合金であっても、生い立ち、つまり加工
 や熱処理などの履歴によって、性質が大きく異なります。
 
 一見しただけでは分かりませんが、これらの性質や特徴は、「金属組織」に
 よって支配されています。
 
 多くの結晶粒の集合状態、粒内の格子欠陥の状態、成分原子の配置状態が、
 その金属の性質を変化させるのです。
 
 たとえば、引張強さや硬さ、クリープ強さ、電気伝導度などは金属組織によ
 って影響を受けます。
 
 ところが、融点や密度、ヤング率などは「組織鈍感」な性質で、ほとんど変
 化しないのですから、やはり一面だけで判断しては、本性を見損なってしま
 うのです。
 
 
 顔付きを大きく変化させる金属の代表は、やはり「鉄」でしょう。
 
 炭素鋼が焼入れによって大きく変化することは有名ですが、純鉄も温度変化
 で「同素変態」を起こします。
 
 -273~910℃は体心立方格子の「α鉄」、910~1400℃は面心立方格子の「γ
 鉄」、1400℃~融点までの「δ鉄」と、その姿、性質を変化させます。
 
 ・・あれ?「β鉄」は?
 
 実は、昔は770~910℃を「β鉄」と呼んでいたのですが、770℃は強磁性から
 常磁性に変化する「磁気変態点」で、結晶構造の変化を伴わないので、β鉄
 は「幻の鉄」となったのです。
 
 
 合金となれば、さらに変化の幅は広がります。
 
 お寺の鐘と、チャペルのベルは、共に銅とすずの合金である「青銅」ですが、
 “ゴォ~ン”と“カランカラ~ン”と、全く音色が異なります。
 
 もちろん、形や大きさなどの違いもありますが、最も影響するのが合金組成
 です。
 
 すずが15%以下の青銅はα相の単一相で、粘い性質であるのに対し、すず15
 ~30%では(α+ε)相の硬くてもろい性質になります。
 
 これらの青銅を叩くと、粘いα相は鈍い音、硬い(α+ε)相は甲高い音を
 出します。
 
 東洋の梵鐘はすずが約8~12%のα相が多く用いられ、西洋のベルには約20
 %の(α+ε)相の青銅が多く用いられていることが、あの趣の違いの源な
 のです。
 
 
 金属学の教科書では、理解しにくかった「相律」や「状態図」も、読みやす
 く丁寧な説明で、分かりやすくまとまっていますので、「金属」との付き合
 い方の指南書として、お勧めです。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 高強度なアルミ合金、ジュラルミンの発明者、ドイツのウィルム。
 
 彼はアルミニウム合金も、鋼と同じく焼入れによって硬さが増すのではない
 かと考え、高温から急冷して硬さを調べた。
 
 結果は予想に反して、まったく硬くならず、むしろ柔らかくさえなった。
 
 やはり、非鉄金属材料は焼きが入らないものと、いったんあきらめかけた。
 
 
 しかし念のため、日を置いて再び硬さを測定したところ、硬度計の故障かと
 疑うほど、著しく硬さが増していることを発見した。
 
 これが、焼入れ直後には硬くならず、時間の経過と共に硬くなる現象、すな
 わち「時効硬化現象」の発見だった。
 
 1度であきらめず、再度計測を試みた執念の研究者魂が、大発見を導いたの
 だ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 金属を知るには、「氏」も「育ち」も重要。
 「金属組織」は彼らの「履歴書」だ。
 
 所望の性質を得るために、材料の源流と加工プロセスを全て把握せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 1 金属の科学
  (金属とは やさしい金属学)
 2 金属の材料
  (鉄鋼 銅および銅合金 アルミニウムおよびアルミニウム合金
   貴金属 低融点合金)
 3 金属の加工技術
  (鋳造技術 展伸加工技術 接合技術 めっき技術)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 大澤 直
 ・出版社 日本規格協会
 ・アマゾン 『金属のおはなし』

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