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April 24, 2006

クルマはかくして作られる

Kurumahakakushite
 【今週の一冊】
 ●『クルマはかくして作られる』
  いかにして自動車の部品は設計され生産されているのか

  著:福野 礼一郎(二玄社)
  2001.04 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『革巻きのステアリング、本皮革張りのシート、
    ボックスカーフのかばんにシープスキンのブルゾン。
       私たちは動物の皮革が大好きだ。

                 しかしそれについては何もしらない。』

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 ・・・鼻血が出そうになりました。
 
 
 いや、もう、なんというか、膨大で繊細な写真の数々と、細かなキャプショ
 ン、充実したコラムと、何より福野氏の「熱い」記事に、圧倒されっぱなし
 です。
 
 自動車部品に関わる やまさんとしては、少しは「クルマの作り方」をかじっ
 たつもりでしたが、トンでもない「井の中の蛙」であったと思い知らされま
 した。
 
 
 3万点の部品から構成される「自動車」。
 
 その一つ一つの部品は、いかにして作られるのか。
 
 少々クルマにうるさい方なら、ボディのプレス加工や、インパネなどに使わ
 れる樹脂成型の方法などはご存知でしょう。
 
 では、プレス加工に使う「金型」や、樹脂成型の原料となる「樹脂材料」の
 作り方は?
 
 さらに、プレス加工の原料となる「鉄鋼材料」、あるいはインパネ表面の皺
 のような「シボ加工」の作り方は??
 
 そこまでくると、予想とはかけ離れた、いや予想だにできない「ものづくり
 」の地平が遥かに広がっているのです。
 
 
 一例を挙げれば、「バルブコア」をご存知でしょうか。
 
 別名「ムシ」。
 そう、タイヤのエアバルブの中に入った、直径5.1mm、長さ19.5mm、重量およ
 そ1グラムの小さな部品です。
 
 日本の太平洋工業はバルブコアの世界シェア25%を占めるトップメーカーで
 あり、その生産数は月産4000万個!
 
 しかも「バルブコア」は、さらに小さな7つの部品から構成されているので
 すから、ざっと部品は日産1400万個!!
 
 もちろん、精密に作らねばたちまち「パンク」ですから、精度と速度とコス
 トを究極まで追い求めた姿が、目もくらむ膨大な部品と加工機の写真から、
 ビシビシ伝わってきます。
 
 
 幾度となく撮影禁止が出た中で収められた工場の写真には、各社のものづく
 りの英知がにじみ出ています。
 
 本書は以前から紹介したかった1冊ですが、ひとたび手に取ると、1枚の写
 真でご飯3杯いけそうなくらいの情報量に、おなかが一杯になってしまうた
 め、なかなか取り上げられませんでした。
 
 レザー加工や織物工場まで出てくる本書は、自動車関係だけでなく、ものづ
 くりに関わる方ならば、きっと「目を丸くする」こと請け合いの、おススメ
 の書です。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「バルブコア」太平洋工業の写真には、自動旋盤がズラリと並んだ工場内の
 レイアウトが分かるような写真は「撮影NG」であり、掲載されていない。
 
 それは、機械の台数がカウントできてしまうからだ。
 
 日産本数、工場の稼働時間は公表されているから、メンテナンス等に費やす
 時間がどのくらいのものなのかを知っている人間ならば、1本あたりの切削
 時間が推察できてしまう。
 
 切削は、現物の表面粗度から、だいたいどういう切削条件なのかが見当がつ
 く。
 
 だから、もし1個あたりの切削時間が判明すれば、どんな刃物を何回転で回
 し、だいたいどのくらい切り込んでどのくらいのスピードで送っているのか、
 切削条件が全て分かってしまうも同然だ。
 
 そこにはインチキもウソもなく、バカが付くくらい正直な世界だ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 何気なく手にしているものが、どのように作られているか。
 生産数量と精度とコストから、まじめに試算してみよう。
 
 百聞は一見にしかず。
 ライバル達の熱い現場の記録に轄目せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 はじめに /トヨタ・センチュリー工場 /ウッド・パネル工場 /
 レザー工場 /インストルメントパネル工場 /アルミ鋳鍛工場 /
 内装材専門工場 /ガラス工場 /金型工場 /樹脂成型工場 /
 エアバルブ工場 /塗料工場 /エアコン工場 /ファブリック工場 /
 シボ(エッチング)工場 /キーロック工場 /ワイアハーネス工場 /
 ウェザーストリップ工場 /シートベルト・エアバッグ工場 /製鉄所 /
 ボディ工場 /あとがき
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・バルブコア製造 太平洋工業(株)
 ・出版社 二玄社
 ・アマゾン 『クルマはかくして作られる』

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April 17, 2006

工場はなぜ燃えたか?

 【今週の一冊】
 ●『工場はなぜ燃えたか?』
  危機を救うメンテナンスビジネス

  著:丸田 敬(エネルギーフォーラム)
  2005.12 / 1,995
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 ◆ 燃える一言 ◆


  『メンテナンスは、プロダクション(生産)と同じように重要だ。』

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 「2007年問題」という言葉を耳にする機会が増えています。
 
 いわゆる「団塊の世代」が最も多い1947年生まれの方々が、定年を迎えるこ
 とから、日本の現場を支えてきたベテランの流出が問題となっています。
 
 この「技術伝承」はIT業界を始め、多くの現場に当てはまる問題ですが、
 装置産業においては、更に設備の「老朽化」が重なります。
 
 
 「先進国で最も老朽化したプラントが稼動する」と言われるように、石油精
 製・石油化学などの装置産業は、1960年代後半から70年代前半に建設ラッシ
 ュがあり、これら稼動30年超の設備が、無言の悲鳴を上げながら働いている
 のが、わが国の現状です。
 
 そして日本の製造業では、伝統的に「製造」に重きを置き、順調に働いてい
 るプラントにコストをかけずに「効率化」と称して、メンテナンス費用を抑
 える傾向があります。
 
 つまり、装置産業の現場は今、技能伝承・老朽化・効率化という問題に直面
 しているのです。
 
 
 炎上するプラント、空を焦がす黒煙―。
 
 近年頻発したプラント事故は、これらの問題が表面化した事故と考えられま
 すが、本書には印象的なデータが掲載されています。
 
 平成14年以降の産業事故100件のうち、誤動作・誤判断、マニュアル不備など
 の人的要因が、100件中76件を占め、部品の劣化などの設備的要因はわずか18
 件だったのです。
 
 つまり、「産業事故の4分の3がヒューマンエラーが原因」であり、「老朽
 化」の問題よりもずっと深刻である、ということです。
 
 さらに「人員削減などの人員配置に関する問題」=「効率化」が事故原因と
 したケースは皆無であったという調査結果が出ており、人的要因こそが最大
 の問題であることが明確になっています。
 
 
 この問題の解決には、まず「安全確保は経営責任」であることを、トップが
 認識せねばなりません。
 
 これまでは現場のKKD(勘と経験と度胸)で安全が保たれてきましたが、
 上記の3つの問題がある今日、「現場責任」ではなく、トップダウンにより
 「管理者責任」でメンテナンスを実施すべきと筆者は説きます。
 
 現場からの抵抗は当然ありますが、もはや確実に数年のうちに「タイムリミ
 ット」を迎えるのですから、躊躇している暇はないのです。
 
 
 こうした「プラントの危機」は、見方によってはメンテナンス構造改革のチ
 ャンスでもあります。
 
 更には「メンテナンスビジネス」の好機とみて、新たな市場を切り開く、た
 くましい企業群も紹介されています。
 
 「ものづくり」と「メンテナンス」は主従の関係ではなく、PDCAのサイ
 クルにおいて必要不可欠なプロセスであることを、強く認識させられた一冊
 です。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 有名な「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背景に、29件の軽傷
 事故と300件の「ヒヤリ、ハッと」があるとされる。
 
 「災害ゼロ」から「危険ゼロ」へと発想を転換するためには、「ヒヤリ、ハ
 ッと」した時の対策も重要である。
 
 
 IDECの開発した「3ポジションイネーブルスイッチ」は、ハンディタイ
 プのスイッチだが、軽く握った時だけ、スイッチがオンになる。
 
 スイッチを手放したときはもちろん、強く握ったときにもスイッチがオフに
 なる。
 
 これは人間が、「ヒヤリ、ハッと」した時の反応が、強く握るか手放すかの
 どちらかであることから、軽く握った時だけスイッチがオンになるように設
 計されている。
 
 「ヒヤリ、ハッと」した時に、どのような反応をしてもラインは停止するた
 め、事故は回避されるのだ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 人はミスを犯し、設備は壊れるものだ。
 そのミスを、誰がどのような方法で防止するかを考えよ。
 
 「メンテナンス」=「修理・修繕」では不十分だ。
 壊れる前に予防する、一歩進んだ「メンテナンス」に取り組もう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 今、求められるメンテナンス構造改革
 第2章 工場はなぜ燃えたか?
 第3章 メンテナンスビジネス最前線
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・IDEC(株)3ポジションイネーブルスイッチ
 ・出版社 エネルギーフォーラム
 ・アマゾン 『工場はなぜ燃えたか?』

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April 10, 2006

「段違い品質」を実現する現場力

Danchigaihinnshitu
 【今週の一冊】
 ●『「段違い品質」を実現する現場力』

  著:酒見 和行(日本実業出版社)
  2005.11 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

『品質管理・改善活動は、時代がどんなに変わろうとも
                   「不変のセオリー」があります。

   これらセオリーが活動に十分に反映されない限り、管理・改善効果は
                     期待することができません。』

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 JIS規格に、「品質」とは何か、以下のように定義されています。
 
 「品物又はサービスが、使用目的を満たしているかどうかを決定するための
 評価の対象となる、固有の性質、性能の全体」
 
 つまり、品質には「品物」と「サービス」の二つがあるのです。
 
 
 「品物」とは、ハード面としての「製品」そのものです。
 
 一方、「サービス」とは、換言すれば「仕事」と言えます。
 
 通常、品質=「製品の品質」と考えられ、面倒見るのは品質管理部門と、設
 計や製造部門、となりがちですが、「仕事の品質」と考えれば、あらゆる部
 門で「品質」は作りこまねばならないと分かります。
 
 本書は、品質の厳しさでは有名な、ホンダの現場で35年にわたり鍛えられた
 品質管理のセオリーがまとめられています。
 
 
 一体どんなスゴイノウハウがあるのか気になるところですが、結論から言え
 ば・・
 
 ・セオリー84:品質改善は特別なことをやることではない。
  当たり前のことの積み重ねである。ウルトラCはない。
 
 ・・え、がっかりしました?
 
 しかし、もし素人が「4回転ジャンプ」や「イナバウアー」をやろうとして
 も、ひっくり返ってしまいますが、特別なことをやらないのだから、誰でも、
 どんな現場でも実践できるのです。
 
 
 品質の女神のお住まいは、「現場」です。
 
 そして、彼女は「人の足音」を聞いて育ちます。
 
 設計担当者、金型担当者、設備担当者らが現場に出向き、これらの人の数が
 多く、何度も足音を響かせると、「品質」は育つのです。
 
 
 また、品質の女神は、机の上や、パソコンの前が嫌いだそうです。
 
 パソコンでの報告のマトメ、プレゼン資料作りが忙しければ、現場の実践活
 動時間が減少します。
 
 品質改善活動は現場力の強化の活動ですから、例えば、報告資料作りを廃止
 して、生データ中心の報告を行い、まとめは実務で使ったデータ中心とする
 などの対策が有効でしょう。

 
 「当たり前」「セオリー」を徹底的に理解し、実践するためのガイドとして、
 そして「その場、そのとき」にすぐ適用するために、読みやすい本書を手に
 してみてもよいかもしれません。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 本書巻末に掲載されている、「品質の十戒」を紹介しよう。
 「仕事の品質」が上がること、請け合いだ。
 
 1.やっているはずと言うことなかれ
  ○タラレバ、デモシカ、ハズは禁句
  
 2.言いっぱなしにすることなかれ
  ○指示や評価のフォローを怠るな
 
 3.聞きっぱなしにすることなかれ
  ○指示、アドバイスの放置、忘れることなかれ
 
 4.まかせっぱなしにすることなかれ
  ○確認、管理を怠るな
 
 5.やりっぱなしにすることなかれ
  ○PDCA管理のサークルを回して確かめろ
 
 6.問題の先送り、することなかれ
  ○「日々完結」を基本としろ
 
 7.計画倒れになることなかれ
  ○成功は実行したかどうかが分岐点
 
 8.聞き流しにすることなかれ
  ○指示、アドバイスは無視せず活用しろ
 
 9.ほったらかしにすることなかれ
  ○仕事と環境は「3S」の基本を忘れるな
 
 10.「やってます」に安心することなかれ
  ○中身と精度とスピードが重要
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 現場の3S(整理・整頓・清掃)を徹底せよ。
 仕事も整理(やるべきこと明確化)整頓(進捗管理)清掃(報連相)せよ。
 
 品質の源流は人にある。
 人にある、とは「私のこころ」にある、ということだ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 製品の品質は仕事の品質から
 第2章 現場力の改善から始まる
 第3章 問題解決のための環境づくり
 第4章 改善活動のためのリーダーシップ
 第5章 失敗に学び、失敗を活かす
 第6章 人が育つ、人を育てる
 第7章 行動主義と現場主義が品質を育てる
 第8章 「日々完結」が品質管理・改善の基本
 第9章 衆知を集めて結果を出す
 第10章 当たり前のことを積み重ねる―本書のまとめ
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 日本実業出版社
 ・アマゾン 『「段違い品質」を実現する現場力』

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