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May 17, 2006

キヤノン方式のセル生産で意識が変わる 会社が変わる

Canonhoshiki
 【今週の一冊】
 ●『キヤノン方式のセル生産で意識が変わる 会社が変わる』

  著:酒巻 久(日本能率協会マネジメントセンター)
  2006.03 / ¥2,100

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『極論すれば、生産方式は工場の生産性にはほとんど影響しない。
 
   セル生産は、コンベアラインのように画一的ではないだけに、
                働く人の意識が成果を大きく左右する。
 
             そこがセル生産の強みであり、怖さでもある。』

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 「キヤノンのセル生産」といえば、今や「トヨタ生産方式」と並んで、日本
 の優れたものづくりの代表です。
 
 さぞやセル生産の高い生産性が説かれていると思いきや、子会社キヤノン電
 子でセル生産を押し進めた酒巻社長曰く、
 
 「セル生産とコンベア生産は、純粋に生産効率だけを比較してみれば、それ
  ほど大きな差はない」!
 
 ではなぜ、全社にセル生産を徹底し、実際に7年間で経常利益10倍、利益率
 8.8倍という驚異的な成果が生まれたのでしょうか?
 
 
 それは、同じ作り方を続けていると「垢」が溜まるからです。
 
 かつて効率的であったコンベアラインには、ムダが蓄積し、本質が見えなく
 なっています。
 
 そこで「セル生産」を改革の旗印にし、まずは工場を変え、そして製造に直
 接関わらない開発や営業も含めた、全社的な「意識改革」にまで広めたのが、
 キヤノンにおける「セル生産システム」なのです。
 
 
 あまりの遅さから、社長が「涅槃工場」と呼び、全社一遅かった生産ライン。
 工場の移転によるスペース縮小などをきっかけとし、現場の試行錯誤で独自
 のセル生産を編み出し、ついには3年で一人当たりの出来高が4倍以上に向
 上し、全社一早いラインに生まれ変わります。
 
 また同じく社長から「太極拳工場」と皮肉を言われたラインは、「K-1工場を
 目指そう!」(格闘技のように素早く!)の掛け声の下、目立たないが着実
 な「亀の歩み」で生産性をやはり4倍に伸ばしています。
 
 
 こうした成果は、「ピカ一運動」「朝の挨拶運動」など、精神論とも思える
 地道な活動が源泉です。
 
 「ピカ一運動」は、課や係などのグループ全員が、「出前迅速(すぐやる)
 一番」「朝の出社一番」など、遊び心をもった挑戦テーマに取り組む活動。
 
 また「朝の挨拶運動」は、コミニュケーション不足の風土を変えるべく、ひ
 とりの部長が、朝玄関で「おはようございます!」と声をかけて始まった運
 動で、次第に気持ちのいい挨拶ができる習慣が広まったものです。
 
 これらの活動で、積極性、コミニュケーションの改善が進み、やがては製造
 ラインでの不良率激減(不良率166PPMが、5年で1PPM=100万個に1個!)と
 いう形で現れたのです。
 
 
 セル生産を導入した企業は数あれど、キヤノンのように「企業改革」にまで
 結びつけた事例はわずかです。
 
 目先の成果を求めて、形だけ「狭義の」セル生産を導入するのではなく、ト
 ップから従業員一人ひとりの意識を変革する「カギ」が、セル生産方式であ
 ると気づかされた、目からウロコの一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 現場以上に生産性が低いのが、オフィスの業務だ。
 
 IT化でパソコンに向かっていると、遊んでいるのか仕事をしているのか分
 からない。
 
 そこで、キヤノン電子ではパソコン業務のログ(記録)を取るシステムを自
 社開発した。
 
 
 抜き打ちでログ解析を行ったところ、驚くべき結果が出た。
 
 アダルトサイトを1日3時間以上も見ている社員、9時間近くもチャットを
 続けていた社員、その他、株の売買、ゲーム、ネットオークションなど、業
 務に無関係なパソコン使用の実態が明らかになった。
 
 これではオフィスの生産性が高いはずがない。
 
 
 実態を管理職に明らかにし、直ちに社外のインターネット接続を全面的に停
 止した。
 
 必要な社員のみ申請書を出させたら、半数になった。
 
 半数以上の社員には、業務にインターネットは不要だったのだ。
 
 そして、同じフロア、また上下のフロアの相手とはメールのやり取りを禁じ、
 直接か電話でやり取りするようにした。
 
 くだらないメールに時間を使うより、仕事のスピードは格段に上がったのだ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 生産方式は、「手段」だ。
 手段に合わせて目的を見失わず、かつ新方式の断行で旧習を見直そう。
 
 よその改善事例を、「真似て」みよう。
 机上や耳学問ではなく、足と目と手で学び取ろう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 序章 キヤノン方式のセル生産システムは意識改革のマネジメントである
 第1章 セル方式とコンベア方式の常識を疑え
 第2章 セル生産システムで意識は変わる!
 第3章 最速手組みライン・美里事業所
 第4章 意識改革で工場敷地面積を70%削減・秩父工場
 第5章 オフィスもセル生産で改革せよ!
 終章 セル生産システムで経営を変える!
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・キヤノン電子(株)
 ・出版社 日本能率協会マネジメントセンター
 ・アマゾン 『キヤノン方式のセル生産で意識が変わる 会社が変わる』

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May 10, 2006

修理

Syuuri
 【今週の一冊】
 ●『修理』
  仏像からパイプオルガンまで

  著:足立 紀尚(ポプラ社)
  2004.05 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆


         『 大事に使えばちゃんと壊れる 』

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 盛者必滅、諸行無常・・。
 
 いえ、今週の本は「平家物語」ではありませんよ。
 
 「ものづくり」といえば、素材から製品をつくることに目が向きますが、ど
 んなに丁寧に作ったものでも、形あるものは必ず壊れます。
 
 最近はPSEマークのない中古家電の販売ですったもんだがあったように、
 なにかとリサイクルが注目されるようになりましたが、高度成長期は「使い
 捨てこそ豊かさ」と思われてきました。
 
 しかし元来、「もったいない」の国、日本では、壊れたならば「修理」が当
 たり前でした。
 
 
 例えば、「古文書」と言われる巻物や掛け軸は、文書そのものが書かれた和
 紙(本紙)の裏には、補強と装飾のための「裏紙」が複数枚貼り付けられて
 います。
 
 時間の経過と共に変色したり破れた裏紙を定期的に交換することで、その貴
 重な「本紙」を保存しているのです。
 
 では、どうやって「修理」するのでしょう?
 
 
 古文書の接着には麩糊という小麦粉のデンプンを水で溶いたものが使われて
 おり、水をかければ簡単に剥がれるようになっています。
 
 水をかけてしばらく置くと、裏打ちの紙が浮くので、その上にガラスを載せ
 てから、ひっくり返します。
 
 そしてタイミングよくガラスを外せば、裏打ちされていた紙だけがきれいに
 張り付いてきます。
 
 そうして裏打ち紙を1枚ずつ丁寧に外していくのです。
 
 
 本紙そのものはただの1枚きりの薄い和紙ですから、何百年の雨露や湿気で
 ところどころ欠損しているものもあります。
 
 そんな場合はピンセットと紙ナイフで、同質の紙で裏当てを細かく施すので
 す。
 
 国宝級の現物が一つしかない、そして破れやすく絶対に失敗のきかない紙片
 となれば、神経の使い方は想像を絶します。
 
 そして再び裏打ちをするときには、化学接着剤は一切使わず、やはり麩糊を
 用います。
 
 それが「次」、つまり数百年後にも間違いなく修理が行える、最上の方法だ
 からです。
 
 
 こうした伝統の技から、靴やメガネのような日用品、またカメラやジッポー
 のようなレアものまで、「修理」の現場はいずれもオートメーションとは程
 遠い、人間くさい現場ばかりです。
 
 だからこそ、愛用してくれる人のため、丹念に仕上げる「ものづくり」の本
 質が、「修理」の職人たちには息づいているのではないでしょうか。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 300年も前の「漆器」でも、修理はできる。
 
 よい漆仕上げは、木地の上から直接塗るのではなく、必ず下布が張ってある。
 
 漆を吸わせた薄布の上から、何重にも重ね塗りがしてあるのだ。
 
 修復をするときには、この下布を外してから割れた什器を漆で貼り付け、こ
 の上から漆を塗り重ねて仕上げる。
 
 塗り重ねる、と一口で言うが、木に漆を吸わせる、砂と漆を混ぜて塗るなど、
 何十という工程を経ねばならない。
 
 「うちで仕上げた漆は新品、修理を問わず、30年間はダメになったといって
  うちに持ってこられると困るんです。
 
  そのくらいの気概で日々の仕事に取り組んでいます」
 
 修理職人の一方ならぬこだわりだ。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 直し方を知ることは、作り方を知ることだ。
 丁寧に壊して、丁寧に直してみよう。
 
 使い捨ての時代は終わった。
 直し方を考えた作り方で、製品のライフサイクルに責任を持とう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 実用品―大事に使えばちゃんと壊れる
    (書籍 メガネ ほか)
 第2章 伝統の技―時間を超えて生きている
    (刀剣の研ぎ直し 仏像 ほか)
 第3章 みんなが使う大きなもの―安全のために快適のために
    (神社 赤レンガ建築 ほか)
 第4章 レアモノと愛用品―この世にひとつの大切なもの
    (ライター カメラ ほか)
 第5章 変わったモノ―こんなふうに再生します
    (競輪用フレーム おもちゃ ほか)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 ポプラ社
 ・アマゾン 『修理』

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