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June 27, 2006

ものづくり革命

Monodukurikakumei
 【今週の一冊】
 ●『ものづくり革命』
  パーソナル・ファブリケーションの夜明け

  著:ニール・ガーシェンフェルド 訳:糸川 洋
  (ソフトバンククリエイティブ)
  2006.02 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『この革命は間違いなく起きる。
 
       なぜ確信を持ってそう言えるのかといえば、それが
 
                 「現在に関する予言」であるからだ。』

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 「Web2.0」という言葉が示すがごとく、インターネット上の環境がここ数年
 で変化してきています。
 
 こうして一個人である やまさん が、気軽にメルマガを発行し、ブログをア
 ップしているのも、その一端ですね。
 
 しかし、この変化はあくまでデジタルの、バーチャル空間での変化だとばか
 り思っていましたが、ものづくりという物質の世界にも、新たな「うねり」
 が生まれているのです。
 
 
 著者は、パーソナルコンピュータ(PC)ならぬ、パーソナルファブリケー
 タ(PF)という、世間一般の人がアクセス可能な「機械を作る機械」を提
 唱し、壮大な実験を世界規模で行っています。
 
 ここでいうPFは、三次元の構造物を作り出すだけではなく、ロジック、セ
 ンサー、作動部、表示など、機能するシステムをつくるのに必要な全ての要
 素を統合することを指します。
 
 つまり、欲しいものを探し回ったり注文するのではなく、欲しいものの仕様
 を自分で書いて、設計図と原材料をPFに放り込んで「自分のため」の製品
 を作り出すことになるのです。
 
 
 これを筆者は「ファブラボ」と称し、MITの生徒から始めて、インドの田
 舎、コスタリカ、ノルウェイ北部、ボストンの低所得者居住地、ガーナ等に
 設置し、実験を行います。
 
 すると、インドの村では牛乳の安全性や農機具のエンジン効率を計る測定器
 開発にラボが使われ、ノルウェイの羊飼い達は、動き回る動物のデータ収集
 用の無線ネットワークと無線タグを開発し、ガーナの人達は太陽光を動力と
 する機械を作ることに使ったのです。
 
 この事実は、コンピュータのアクセスに関する「デジタルデバイド」よりも、
 ものづくりのツールへのアクセスに関するデバイドこそ、深刻であることを
 物語っています。
 
 
 こうして工業生産の手段が簡単に入手できるようになり、設計を無償で共有
 できるようになれば、ハードウェアもソフトウェアと同じ進化の道をたどる
 ことでしょう。
 
 今、かつては商用サービスに限られていた高品質の印刷が、インクジェット
 プリンタによって、スピードでは劣っても品質とアクセスしやすさを求める
 家庭用プリンタという市場が生まれました。
 
 パーソナルファブリケーションのツールは、大量生産ではなく、個人の用途
 のために使われ、「製造者」と「消費者」が切れ目なく繋がる連続体となる
 可能性を秘めています。
 
 世界中で起こり始めている、そして実際に起きた「ファブラボ」の事例は、
 来るべき「ものづくり革命」という、第3の波を感じさせる刺激的な記録で
 す。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ファブラボの有力なツールとして「ラピッドプロトタイピング」と呼ばれる
 三次元プリンタがある。
 
 高分子樹脂の入ったタンクにレーザー光線を照射して硬化させる方法や、イ
 ンクジェットプリンタから液状の接着剤の粒子を噴射してパウダーに吹き付
 けて固めるプロセスなどがある。
 
 しかし、作り出すものの中身が空っぽだ。
 
 何かを作ったら、用途に応じた機能を果たす部品をそこに付け加える必要が
 ある。
 
 例えばモータやLED、その配線や回路基盤を埋め込まねばならない。
 
 
 ラピッドプロトタイピングの最終的な目標は、構造材料だけでなく、機能材
 料を使って、完全に機能するシステムをプリントすることだ。
 
 導電性を持ったパウダーやプラスチックを使って配線材をプリントすること
 は可能だし、論理回路を組み込めるプリント可能な半導体もある。
 
 磁性材料を使えばモータを作れるし、化学物質を組み合わせたものでエネル
 ギーを蓄えることもできる。
 
 こうした材料が含まれたプリント可能なインクは、研究室レベルでは既に開
 発されており、実験にも成功している。
 
 それら全てをプリンタに統合することが、何でも作れる一つの機械を作ると
 いう目標への近道だ。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 ビットと原子の境界を突き破れ。
 新たな時代の萌芽を見逃すな。
 
 計画・設計・製造・試験・消費・再生を分断するな。
 「おもちゃ」と「製品」の垣根は、案外低い。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 ものづくりとは(ほぼあらゆる物をつくる)
 過去(ハードウェア)
 現在(鳥と自転車 減算的技法 ほか)
 未来(歓喜)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・ファブラボ MIT The Center for Bits and Atoms
 ・出版社 ソフトバンククリエイティブ
 ・アマゾン 『ものづくり革命』

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June 26, 2006

ロウソクと蛍光灯

Rousoku_keikoutou
 【今週の一冊】
 ●『ロウソクと蛍光灯』
  照明の発達からさぐる快適性

  著:乾 正雄(祥伝社)
  2006.04 / ¥777

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『照明は明るければすむというほど簡単なものではない。
 
      乗り心地、住み心地をもっと一般的にいえば居心地だろうが、
      
          そういうものが照明にはなによりも大事なのである。』

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 「現代の発明品の中で、あなたが最もありがたいと思うものは何ですか」と
 尋ねられたら、何と答えるでしょう。
 
 自動車?電話?テレビ?
 
 20世紀前半に活躍した作家の菊池寛は、「電灯」と答えています。
 
 本読みと原稿書きが生業の作家らしい答えといえますが、なるほどと思わせ
 ます。
 
 
 恩恵を受けながら、ありがたみを意識しない理由の一つとして、筆者は照明
 の発達が早すぎたことを挙げます。
 
 室内環境(明るさ、温かさ、風、音など)を制御する機器の中で、飛び抜け
 て早くから工業化されたのが「照明」です。
 
 太古は照明といえば、太陽と炎であり、特に中世においては「ロウソク」と
 「オイル」が主要な照明光源でした。
 
 産業革命以前は、製法や芯の異なる洋ロウソクと和ロウソク、また豚の油か
 菜種油かの違いはあるものの、文化交流がなかったにもかかわらず、西欧と
 日本の照明がほぼ同程度に進んでいたのは興味深いものがあります。
 
 
 そして産業革命以後、照明の歴史は飛躍的に成長していきます。
 
 オイルランプ、ガス灯、アーク灯、電球、ネオンランプ、蛍光灯と、有能な
 発明発見者らによって、次々と新しい照明が生み出されていきました。
 
 今となっては照明は、「電気」の学問にもほとんど登場しない、先端技術と
 は反対の、超成熟技術となってしまったのです。
 
 
 その間、人工照明の発達の歴史は、ルクス(照度)を高める歴史であり、20
 世紀の始め以来、各国の照明学会が推奨する照度が、いずれの国もほぼ10年
 で倍になるような傾向をとっていることからも分かります。
 
 しかし生物としての人間の眼は、100年やそこらで何ら変わるものではありま
 せんから、推奨照度がそこまで大きく変わるのはおかしなものですが、これ
 も照明器具の発達がもたらした変化といえるでしょう。
 
 もしこの傾向が続くのであれば21世紀半ばには20万ルクスという、太陽の直
 射日光の倍くらいの照度が「推奨」ということになりますが、もちろんそん
 なことにはならず、省エネの影響もあって、1970年ごろで頭打ちとなります。
 
 こうして機能からすれば十分となった照明は、都市や建築に組み込まれ、照
 度よりも快適性を求められるようになります。
 
 そうして行き着いた先が、実は行き過ぎた明るさではなく、ロウソクや暖炉
 のような温かみのある、分散された多灯に「後戻り」している傾向を、筆者
 は指摘しています。
 
 あまりに何気なく扱っている照明の歴史から、人間が求める「快適さ」とは
 なにかを探求する一冊といえるでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 和風建築の採光は、すべて光が「下から上へ」のベクトルを持っている。
 
 屋根は軒を深く出し、日光や空の光の室内への直接の入射を阻む。
 
 犬走りと言われるタタキや、踏み石、沓脱ぎ石は、一種の反射板であろう。
 
 廊下は、白木でなくても艶があるから、はっきり反射板である。
 
 建物の周囲にまく白い石にも似た効果がある。
 
 「新しいほどよい」といわれる新しい畳の反射率は白に近い。
 
 
 広い開口部は床面までいっぱいに開いており、上記の各種反射板からの間接
 光が上方へ向かう。
 
 その光は、畳から直ちに、あるいはさまざまな色のふすま紙、砂壁などを経
 て、天井や床の間の暗部に行き着く。
 
 昔の天井は案外高く、作りによっては光の行き届かない部分もでき、上部ほ
 ど暗い。
 
 つまり、和室の光環境は、自然界の天と地をひっくり返したようなものなの
 だ。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「あたりまえ」にまで成熟した製品は、洗練されている。
 発展の歴史を紐解き、その本質を知ろう。
 
 技術の変化で機能が急上昇しているものは、発展途上だ。
 数値化できない「快適さ」は、温故知新にある。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 太古から産業革命以前までの人間生活と照明
 第2章 寒くて暗い国に起きた産業革命と光源の発達
 第3章 照明採光技法の発達
 第4章 近代以後のビル様式の流れと照明の変遷
 第5章 照明の後戻り
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 乾 正雄
 ・出版社 祥伝社
 ・アマゾン 『ロウソクと蛍光灯』

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June 20, 2006

逆風野郎!ダイソン成功物語

Dyson
 【今週の一冊】
 ●『逆風野郎!ダイソン成功物語』

  著:ジェームズ・ダイソン 訳:樫村 志保(日経BP社)
  2004.05 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『企業を変えるのは、ほかならぬ「あなた」だ!
 
   あなたが社長だろうと部長だろうと、一介の担当者であろうとも、
   
  それぞれが自分の持分を変えていかねば、あなたの会社は変わらない。』

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 家電量販店に行けば、一際異彩を放つ「デザイン」と「カラー」(あとお値
 段)で、目に付いて離れないのが「ダイソン」の掃除機。
 
 (例えばこちら⇒ Dyson サイクロンクリーナー DC-12 )
 
 去年、掃除機を買いに行ったときも気にはなったものの、つい安い国内メー
 カのフィルター式を買ってしまいました。
 
 しかし、吸引力が落ちた掃除機を使いながら、この本を読んだ今となっては、
 「ダイソン欲しい!」と切に感じています。
 
 
 イギリスのジェームズ・ダイソン氏が手がけた発明品は、グラスファイバー
 製の作業船、タイヤが球形樹脂の手押し車、そしてサイクロン式掃除機と、
 およそ無関係と思えるものばかり。
 
 しかしこれらが彼の生涯を紐解くと、見事な関係で結びつき、そしてエンジ
 ニアとしてのこだわりで生産されていたことが分かります。
 
 その過程は、特許権や既存の大企業、マーケッティングや資金繰りといった
 まさに「逆風」の中を自らが切り開いた足跡です。
 
 
 「サイクロン式掃除機」の構造を簡単に説明しましょう。
 
 ファンで吸い込まれたゴミと空気が、円錐の中を回転しながら回転半径を小
 さくしていくと、回転速度が上昇します。
 
 質量の小さいホコリも遠心力で円錐面に寄せられて、空気と分離され、空気
 だけが排気となるのです。
 
 このサイクロンの開発に着手したとき、理論式は全く使い物にならず、彼は
 吸い込み口のサイズ、数、接し方等々、解かねばならない山積みの問題を、
 「エジソン流」=うまくいくまでテストの繰り返しで解決していきます。
 
 その数、5,127台の試作、3年間の時間を要し、しかもたった一人で設計・試
 作・実験・検証を行ったのです。
 
 
 「テストで実証するには一度に一つの要素しか変更してはいけない。それが
 エジソン流」という彼は、実に地道に、根気強く開発していきます。
 
 それを冒頭の言のように語り、イギリス人にはない、日本人の気質として挙
 げ、「彼らは飛躍的発展はきわめて稀だが、不断の開発は最後にはより良い
 製品を生み出すことを良く知っている。」と自分と同じ考えだと述べていま
 す。
 
 
 紆余曲折を経ながらも、その圧倒的な性能で、本国で先行大企業を凌駕し、
 日本にも乗り込んできたダイソンを迎え撃った日本メーカは、まがいものの
 「サイクロン風」掃除機で対抗しました。
 
 果たしてその製品は、彼が褒めた「エジソン流」の開発だったのでしょうか。
 
 安易にネーミングや広告に頼った商売とは一線を画する、ものづくりの本質
 と喜びを呼び覚ましてくれる、熱い一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ダイソン氏が自分のデザイン哲学や発明哲学を、以下のように語っている。
 
 1.製図板を眺めていてもアイデアは生まれない

  外へ出ていろいろなものを見よう。
  そしてアイデアが浮かんだら、それをつかみ、書き留め、うまくいくまで
  いじり回そう。
  
 2.日用品は売れる
 
  成熟市場の製品を改良するのはむずかしいけれど、成功すれば市場を創出
  する必要はない。
  
 3.新しい技術で注意すべきこと
 
  本当の新技術は特許が取れる発明のこと。
  多くの人の「発明」は既存技術の改良に過ぎないから、誰でも合法的に真
  似できる。
 
 4.エジソン流の原則を守る
 
  テストにテストを重ね、ありきたりの手法や他人の意見を取り入れるので
  はなく、自分の目が捕らえた事実のみを信じること。
  
 5.発明はたえまない変革ありき
 
  特許の有効期限は20年間で、思うほど長くない。
  自分の発明を手放したくなければ、絶えず改良を重ねて関連特許にするこ
  と。
  
 6.機能が生み出す表現豊かなデザインを
 
  機能から生まれたデザインは、これは良いよ、買うべきだよとモノが自ら
  語ってくれる。
 
 7.スタミナと確信は必須
 
 8.全てを完全にコントロールする
 
  アイデアを思いついてから、研究開発、テストと試作品の製作、設計、金
  型製造、生産、販売、マーケティング、そして家庭へ。
  最初にビジョンを描いた人が正しく予見していれば、おおかた成功する。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 形から入らず機能から広げよ。
 本質を1点、ハッキリ示すのが良いデザインだ。
 
 地道な「エジソン流」が、近道だ。
 アイデアに自信があれば、じっくり進めるのが一番早い。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 第1部 「僕」自身を発明する
 第2部 最初のひとかじり
 第3部 サイクロンにご用心
 第4部 ダイソンする
 第5部 僕らの進むべき道
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・ダイソン株式会社
 ・出版社 日経BP社
 ・アマゾン 『逆風野郎!ダイソン成功物語』

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June 14, 2006

カイゼン進化論

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 【今週の一冊】
 ●『カイゼン進化論』
  JIT~TOC~SCM

  著:竹之内 隆(日本工業新聞社)
  2005.04 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『企業を変えるのは、ほかならぬ「あなた」だ!
 
   あなたが社長だろうと部長だろうと、一介の担当者であろうとも、
   
  それぞれが自分の持分を変えていかねば、あなたの会社は変わらない。』

-----------------------------------

 TOC、JIT、CRM、ERP、etc.・・・
 
 コンサルタントのセンセイが講釈するカイゼン手法やITは、いかにもエレ
 ガントで、「これを導入すれば御社も在庫が減らせます」の言葉にクラッと
 きます。
 
 しかし、ITやツールを入れれば「劇的ビフォーアフター」となると信じて
 しまうのは、健康器具を買い込んで物干しにしているのと同じです。
 
 いや、物干しにすらならない分、始末が悪いかもしれません。
 
 
 筆者は、カイゼン活動において最も重視すべきは、現場でのトライアル、試
 行プロセスであると断言します。
 
 いかなる戦略もカイゼンも、「あなた」が手を汚し、「論理」や「メカニズ
 ム」に実感を持たねば、継続的に実行されることはないのです。
 
 トライアルからカイゼンを進化させつつ、かつITの適正な使用を促し、真
 の問題解決をすることを、「カイゼン進化」と呼んでいます。
 
 
 そこで、カイゼンを進化させるプロセスを、「カイゼン空間を徐々に拡大し
 ながら、段階に応じて課題にあった管理技術を活用していく」過程として挙
 げています。
 
 「カイゼン空間」とは、始めは「自分の空間」である自職場のコントロール
 から始まり、それが「物理的な空間」と呼ぶ工場全体に広がり、最後に「論
 理的な空間」であるサプライチェーンやビジネスモデルにまで広がっていき
 ます。
 
 
 ここで大切なのは、「うちは、まだそのレベルに達していない」とか、「在
 庫データの精度が悪いから時期尚早」と言って尻込みしてしまわないことで
 す。
 
 逆に、データが歯抜けだから処理できないようなシステムは、到底使えない
 シロモノだということです。
 
 
 現場では不良が発生し、原因追求をすれば標準書やQC工程図に不備が見つ
 かります。
 
 デザインレビューの議事録は残っていても、評価シートは紛失していたり、
 特性データはなくなっていたり・・。
 
 圧倒的な現実に押し潰されそうになります。
 
 だからこそ、「いますぐ」取り掛かるのです。
 
 そして、その時点に応じた手法を、ExcelやAccessの手作りレベルで実践して
 いくのです。
 
 こうして「気づかない、見えない、やれない」という壁を一つ一つ乗り越え
 ていってこそ、現場に根ざした「カイゼン」となるのです。
 
 
 現場のJITにとどまらず、TOCやSCMにまで繋がるカイゼンプロセス
 を、実践で学び取る本書は、単なる理論を解説する他書にないアプローチと
 いえるでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 カイゼンが根付かない理由を、筆者は「芝生」が根付かず枯れる原因と比較
 して説明している。
 
 1.活着不足(根づく前に枯れる)
  カイゼン案がトライアルから実組織に移される前に、担当者の割り振りが
  明確になされなかったり、権限が委譲されなかったりするケース。
  
 2.高温・渇水(散水を怠って枯れる)
  経営が、現場に注目していることを肌で感じさせられないケース。
  ほめて、たたいて鍛える、愛情フォローの欠乏症。
  
 3.物理的なストレス(踏圧や擦り切れ)
  当初の想定を越える業務量や品質低下が発生した場合。
  カイゼン案を実施する以前に擦り切れてしまう。
  
 4.病害・虫害
  反対派がネガティブ・キャンペーンを張る。
  代替案がないにもかかわらず、ガン細胞のようにカイゼン細胞の邪魔をし
  て動き回る。
 
 5.雑草に負けて芝生の占有度が低くなる
  サボり派が芽を出し、真面目なカイゼン担当者がバカを見るような職場。
  やらなくても罰則がない職場。
  
 6.日照不足
  人材投入や予算割り当て、担当者の育成が、継続的、組織的に行われない。
  担当者のヤル気だけに頼っては無理。
  
 7.除草剤を誤ってまきすぎた
  無闇やたらと全自働化すればよいと、過剰にシステム化投資をしたり、ロ
  ボット化してしまうと、カイゼンから生まれる「知恵」そのものが消えて
  しまう。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 ラーメン屋の店主だって、考えれば工程やスループットの改善になる。
 やってみて、事後的にツールも目標も変更すればいい。
 
 リーダーは簡易的なIT、カイゼン手法の理解も必要。
 VBAやAccessで、やりたいことがすぐできる技能を身につけよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 カイゼン進化論とは
  “あなた”のカイゼン・パワーを測定する
  カイゼン空間を段階的に拡大する
  歯抜けデータ・不揃いデータdeドタバタ業革珍道中!? ほか
 第2章 カイゼン進化アプローチ(JITとTOC、SCMの統合)
  カイゼンにも木造軸組み工法や、2×4工法のように“工法”が必要
  儲けをスケジューリングする
 第3章 ビジネス・モデルそのものをカイゼンする
  これを知らないとカイゼンがムダになり、命取りに
   …ビジネス・モデルをカイゼンする
  現実を直視しないで、小手先の手法教育を繰り返す管理職は消え去るのみ
  ギヤーチェンジしよう!
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 竹之内 隆
 ・出版社 日本工業新聞社
 ・アマゾン 『カイゼン進化論』

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June 07, 2006

価格競争なき ものづくり

Kakakukyousounaki
 【今週の一冊】
 ●『価格競争なき ものづくり』

  著:多喜 義彦(日経BP社)
  2006.01 / ¥2,520

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『創造の「創」にはキズの意味があります。

    創造は従来のものを破壊するほどの強い意志が伴う開発行為です。』

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 一部の大手電機メーカや自動車業界は景気回復の波に乗り、好況を呈してい
 ますが、本当に「儲かっているか?」といえば、利益率は、数パーセント。
 
 まして中小企業となれば、原材料費の高騰を受け、青息吐息が実態です。
 
 そんなときに言われる解決策といえば・・
 
 「人と違うことをしろ!」
 「ニッチを狙え!」
 「ナンバーワンよりオンリーワン!」
 
 ・・そりゃ、ごもっとも。 で、どうすんの?
 
 
 本書はそんなアドバイスとは一味違う切り口で、成功事例を挙げます。
 
 まずは「あきらめるな」。
 
 スピードの時代と言われますが、事例を見れば、執念を持って同じところを
 掘り続けている人が、実は成功しています。
 
 例えば、救急車のストレッチャー用の除振台に、磁石の反発を使った製品。
 
 磁石の反発力は距離の関数だからバネ要素になるが、減衰の効果があるとは
 誰も思わないから、「できるはずない」と断言されてしまいます。
 
 しかし試行錯誤でやっていくと、良いデータが出てきたのです。
 
 ところが、救急車に磁石なんて、患者や機器に影響あったらどうするんだ!
 とまたもや大反対を受けます。
 
 では、と調べてみると、携帯電話の方が2倍も危ない、というとんだ「濡れ
 衣」だと分かり、製品化に踏み切ったのです。
 
 「定性的」判断を、「定量的」な裏付けで覆した事例です。
 
 
 次に「こびるな」。
 
 多軸を精密に制御し、転造で研削並みのギアを加工してしまう転造盤を作っ
 たメーカは、あまりにも高効率で高精度な加工ができてしまうため、設備を
 「売らない」という選択をします。
 
 もし外販すれば、全世界の需要を「200台」程度で満たしてしまうほど能力が
 あり、また装置をばらされてコピー品が出てしまうことを怖れたのです。
 
 そこで、ユーザには「使用料」を頂いて加工をし、「所有権」は渡さないこ
 とで、メーカも、ユーザも満足できています。
 
 
 そして「力を抜け」。
 
 これは結構、難しいですが、力のある会社が、あえて力を抜くことで成功し
 た事例です。
 
 たとえば、自動車のパワーウィンドのモータを買ってきて、ちょこっと部品
 を追加してトラック用の自動ドア部品を作ってしまった事例などが紹介され
 ています。
 
 
 いずれも携帯電話や薄型テレビのような派手さはなく、しかも五重苦(少量、
 多品種、異形、不定期、低頻度)を抱えたようなものが目立ちます。
 
 だからこそ、その逆境を切り抜けた一癖ある事例は、エンジニアを元気にさ
 せるパワーに溢れたものばかりです。

-----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 自動車エンジンの常識になってきた樹脂製の吸気マニホールド。
 
 そのキーテクノロジーが、DSI(Die Slide Injection)だ。
 
 射出成型中に金型をずらし、もう一度締め直してまた成型する。
 
 これを開発した張本人は、射出成型の門外漢だった。
 
 もともと組立専門であった彼のアイデアだったが、射出成型の道の常識で考
 えれば、金型をスライドさせるなんて荒唐無稽な提案だ。
 
 細々と研究を進めていたが、3年の後、急に脚光を浴びるようになる。
 
 そして前述のマニホールド、あるいはドアミラーに内蔵されたウィンカーラ
 ンプなど、適用事例がどんどん出てきている。
 
 成熟産業と思われている分野(=ダメだダメだと言っている業界)でも、視
 点を変えれば新しい可能性は広がっているのだ。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 教科書や前例には、「五重苦」を克服する力はない。
 本当に創造的なことに、似た話などありえない。
 
 最初から問題点指摘で進めるのは、大量生産時代。
 問題点があれば走りながら解決するのが、これからだ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 あきらめるな
  (爆発を味方にする―アモルファス
  マニア恐るべし―電動ヘリ
  仲間も営業も敵だけど―防振架台 ほか)
 第2章 こびるな
  (一生ものはこう作る―トイレ浄化
  良いものは売るな―転造盤
  「問答無用」なときもある―コーティング ほか)
 第3章 力を抜け
  (よそ者だからできること―金型内組立
  「ダメもと」が生んだもの―接着性樹脂
  あるものは何でも使え―宅配便用自動ドア ほか)
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・磁気浮上除振台 メディックマスター
 ・転造盤 (株)ニッセー ギャラクシーCNC転造機
 ・出版社 日経BP社
 ・アマゾン 『価格競争なき ものづくり』

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June 01, 2006

目からウロコ 自動車リサイクルでみんなが得する本

 【今週の一冊】
 ●『目からウロコ 自動車リサイクルでみんなが得する本』
  廃車は100%よみがえる

  著:森 剛(ごま書房)
  2004.10 / ¥1,365
-----------------------------------
 ◆ 燃える一言 ◆

 『現状を知り、危機感を持っているものが、
                 いまやらなくてはならないことなのだ。

    だれかがやらねばならない。

      だとしたら、私は喜んで、パイオニアとしての苦しみなど
                        引き受けようと思う。』

-----------------------------------

 昨年から完全施行となった「自動車リサイクル法」。
 
 車検時などにリサイクル料金をすでに納めた方も多いことでしょう。
 
 これは廃車のリサイクル率を、2005年1月1日には85%、2015年
 には95%を自動車メーカーが行なうことを定めています。
 
 ところが、すでにリサイクル率100%を実現している「中古車屋」がある
 のです!
 
 それが、本書の著者、森氏が経営する「オートセンターモリ」です。
 
 
 日本では年間500万台もの自動車が廃棄され、その大半がシュレッダーダスト
 という、細かく砕かれた廃棄ゴミとなって埋め立てられています。
 
 その際、車に使われていた不凍液やオイルが適切に処理されず、垂れ流しと
 なり、自然環境を汚染していることが少なくありません。
 
 この現状を食い止め、きれいな地球を取り戻す―こうした使命感に突き動か
 され、森氏は「自動車の100%リサイクル事業」という「正売」を始めた
 のです。
 
 
 リサイクルの流れは、独自に構築したシステムにより、まず中古車の年式や
 傷の程度から、商品としての価値を評価します。
 
 そこで自動車、あるいは部品が販売できるかを判断し、どこにも売れず、し
 かも素材にすれば合計○○円で売れる、と判断したら、車を会社に持ち込み
 ます。
 
 そしてコンピュータの指示に基づいて、部品を「手作業で」外していくので
 す。
 
 解体は一人屋台方式(セル方式)で、処理終了まではたった1時間!
 
 しかも、従来はニブラという破砕機で破砕した後、取り外す部品は50品目以
 下であったのに対し、200品目もの部品を解体、いや再生部品として「生産」
 しているのです。
 
 丁寧に部品を外したあとのボディは純度の高い鉄くずとなり、やがて鉄の原
 材料として完全にリサイクルされるのです。
 
 
 不用になったものを浄化したり、新たに蘇らせる「静脈」産業は、循環型社
 会実現に必要でありながら、未だ模索状態です。
 
 森氏が事業を軌道に乗せるまでの苦労は一方ならぬものでしたが、中古車業
 を通して、自動車を「ゆりかごから墓場まで・・・そして墓地から蘇らせる」
 ことを“使命”とした信念が、大きな潮流となっていることを感じます。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 車のシートは、硬質ウレタンを土台としており、10年使ってもほとんどヘタ
 リがこないほど耐久性が高い。
 
 また、人が長時間座ることを前提とし、疲れないよう人間工学的に研究され
 て作られている。
 
 しかも普通のソファには絶対ついていないヘッドレストまで着いている。
 
 このような優れた性能を備えたシートを捨ててしまってはもったいないと、
 応接セットとして活用することを、森氏は思い立った。
 
 まずシートの汚れを取り、サンドペーパーで丁寧に磨き、ニス塗りをする。
 
 この後、大工や木工所の協力で、仕上げていく。
 
 こうして、運転席や助手席のシートからは一人掛けの椅子が、後部座席から
 は二人掛け、三人掛けのソファができる。
 
 あるみにシアターでは、全座席を自動車シートで作り、好評だという。
 
 自動車部品を、カーグッズ以外へのリサイクルも考える視点が、今後廃棄車
 両の利用価値を高めていくことになるのである。
 
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 ◆ 熱い行動 ◆
 リサイクルはボランティアではなく、事業だ。
 カイゼン・5Sを徹底し、ムダとりで効率は上げられる。
 
 信念は、人を動かし、会社を動かし、国を動かす。
 熱い使命感が、困難を克服する原動力だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 プロローグ 日本を、地球を甦らせるビジネスとは…
  ―私が自分の人生を、自動車再生に賭けたわけ
 第1章 ただの商売ではない、「正売」だ
  ―人権と環境を結びつける
 第2章 世界に誇る、自動車解体・再生の技術革命
  ―技術と理念が結びついたとき
 第3章 人が好き、車が好き
  ―だから、いろいろな思い出のつまった車を「廃車」にしない
 第4章 「やっぱりモリは違う!」その一言のために
  ―お客様は神様、そして社員は宝
 エピローグ 夢は、「世界再生」に向けて羽ばたく
  ―「静脈」が機能すれば、地球も人間も元気になる
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・オートセンターモリ
 ・出版社 ごま書房
 ・アマゾン 『目からウロコ 自動車リサイクルでみんなが得する本』

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