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July 26, 2006

本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録

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 【今週の一冊】
 ●『本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録』
  人生に「自分の哲学を持つ人」になれ!

  著:岩倉信弥(三笠書房)
  2006.06 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『君たちは、腹が減って死にそうな人に、
 
          『すき焼きの肉を買いに行きます』なんて言うのか!』

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 2006年も半分を過ぎました。
 
 当然、年初に立てた目標も、半分以上達成している・・はずですが・・。
 
 未達成な人も、取り組めてない人も、はたまた目標を忘れてしまった人も、
 ここは一つ、中だるみを反省して、本田先生に叱って頂きましょう。
 
 
 冒頭の言は、自動車のデザインを担当していた筆者が、ホンダが勢いを失っ
 ていた時に、宗一郎に一喝された言葉です。
 
 当時、上級車志向が進んでいたときで、ホンダは従来よりも高性能なクルマ
 や、アメリカ向けの大型車を日本市場に投入しており、お客様の動向をとら
 え切れていませんでした。 
 
 「腹が減っている人には、先々の『すき焼き』より、いまの『おにぎり』だ。
 
  やれ技術だ、性能だなどと頭でっかちになって、今この瞬間にお客さんが
  本当に欲しいと思っているものを、提供できていない!」
 
 という、的確な鋭い指摘に、著者は「モヤモヤが一掃され」、以後、仕事が
 うまくいかなくなると、「おにぎり」「おにぎり」と言いまくったそうです。
 
 
 また、筆者がデザインした試作車を、宗一郎が「格好悪い!」と言い、早速
 呼びつけられたときのこと。
 
 「ずっと見ていたんだろう?」と問われ、「いえ、はじめてです」と答える
 と、「すぐ直すんだ!」と怒り爆発。部屋を飛び出していきました。
 
 筆者がデザインしたモデルとは試作車は格好が異なっており、設計者に噛み
 つくと、モデルは人や荷物の乗った状態であって、試作車とは車高が異なる
 ことが原因と分かりました。
 
 こんなクルマのイロハも知らなかったことを恥じるとともに、宗一郎の怒り
 は、試作の過程を「見ていない」点にあったことに気付きます。
 
 自分の仕事は「モデルまで」と思っていた筆者に、「会社で働いているもの
 は、全員が商品に責任を持っている」のだから、完成車になるまで自分の目
 で確かめるのが責任だと、痛切に教えられたのです。
 
 
 「君は人殺しか!」
 
 強烈なカミナリは、接合に使うハンダを削る作業を、宗一郎が見た時に落ち
 ました。
 
 デザイン上、表面の凹凸は削らねばならず、また他社もやっていることでし
 たが、ハンダの削りカスの鉛の粉塵が、職人の肺を悪くすると感じた本田は
 黙っていませんでした。
 
 今から思えば、環境問題への取り組みの走りとも言えますが、彼はただただ、
 人間を愛し、従業員の身体を心配しただけなのです。
 
 
 人間関係が希薄になり、殺伐としたニュースがめぐる今、身体を震わせるほ
 ど真っ赤になって叱ってくれる人があるでしょうか。
 
 本田宗一郎が生まれて100年。
 
 彼のきつく、暖かい「叱咤激励」に、我々も耳を傾けましょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 本田は、「叱り上手」であると同時に「たとえ話上手」でもあった。
 
 「スタイルの基本は、やっぱり四角だな。
 
  世の中には『形』は3つしかないんだ。丸と三角と四角だよ。
  
  『丸』は円満、『三角』は革新を連想させるよな。
  
  それでいうと『四角』は堅実な感じがする。
  
  企業の経営も、円満だけでは会社はつぶれる。
  
  革新だけを追い求めるのも危険だ。
  
  やはり、基本は堅実で、そのうえで時代の動きをよく見て、円満さや革新
  を適量混ぜ合わせていくことが大事なんだよ」
  
 一見、本田は「革新」のイメージだが、実際は「堅実」に「円満」、「革新」
 を混ぜ合わせるさじ加減に心を砕いていた。
 
 名車シビックのデザインは、基本の四角に、丸、三角を取り入れた、宗一郎
 お気に入りのバランスだった。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 言い訳の前に、現物を見よ!
 手を動かす前に、考えよ!
 
 叱ってもらって喜べるほど、素直な人間はいない。
 しかし、叱ってもらえることは、喜ぶべきことだ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 1章 仕事には「哲学」が必要だ
   ―原理原則の貫き方を覚える
 2章 「見ていて飽きないもの」をつくれ
   ―「人間好き」がいい仕事をする
 3章 本当にそういうことをしたいと思っているのか
   ―考えて考えて、考え抜く
 4章 自分が感動できないものは、人を感動させられない
   ―「夢と目標と志」は高く、大きく!
 5章 一歩先でなく半歩先
   ―大事なのは、先見、先取、先進!
 6章 休みの日には「高いもの」を見てこい
   ―現場・現物・現実がすべて
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 岩倉信弥
 ・出版社 三笠書房
 ・アマゾン 『本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録』

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July 20, 2006

ロボットの天才

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 【今週の一冊】
 ●『ロボットの天才』

  著:高橋智隆(メディアファクトリー)
  2006.06 / ¥1,365

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『工芸の緻密な技と工学の技術、斬新な芸術性を兼ね備え、
 
       開発過程の執念が見るからに伝わるようなモノを、

                        私は愛してやまない。』

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  「ニッポン!ドイツW杯、優勝おめでとう!!」
 
 
 ・・え、あほなこと言いなさんなって?
 
 失礼しました。
 正しくは「ニッポンのTeam OSAKA!ドイツ ロボカップ、優勝おめでとう!」
 でした。
 
 まさに世界中の眼がドイツに集まっている今、6月14~18日に同じく、
 ドイツで「もう一つのW杯」自律ロボットによるサッカー競技大会、ロボカ
 ップの世界大会が行われました。
 
 中でも注目のヒューマノイド・リーグで、3年連続の優勝を果たしたのが、
 CMにも出演していた「Team OSAKA」のロボット、「VisiON TRYZ(ヴィジオ
 ン トライズ)」であり、その一員が今回の書籍の著者、高橋氏です。
 
 
 高橋氏は、京大内ベンチャーの第1号として、「ロボ・ガレージ」を起こし、
 オリジナルのロボットを生み出す「ロボットクリエイター」です。
 
 彼の生み出す人型ロボットは、鉄腕アトムに触発されたと語る通り、まるで
 アニメや漫画から飛び出てきたような、美しいシルエットと、滑らかなアク
 ションを兼ね備えています。
 
 最近、テレビでも手作りロボットの格闘技(?)を観ますが、それらとは一
 線を隔した造形美です。
 
 実は高橋氏は、この高いクオリティーのロボットの、構想・開発・デザイン
 ・設計・加工・プログラミング、果てはプロモーションまでを「一人」で実
 現しているのです。
 
 
 今までのロボット研究は、数値化できるような性能の追及や学術的な意義に
 重点を置き、○○理論とかを謳って、珍妙な動きをするものでした。
 
 また、構造もブロックを積み重ね、フレームと配線に覆われた無骨なものば
 かりです。
 
 しかし、我々はロボットを外から見て、外観や動きを捉えているのであり、
 一般の人にとって中身はどうでもよいことです。
 
 そこで彼は、親しみやすいデザインや動きという「外」のために、それを実
 現する「中」の研究をするという、従来と逆のアプローチをしているのです。
 
 
 ロボットのニーズといえば、介護用や救助用などが話題になりますが、それ
 らは「特殊」分野であり、高橋氏は、「家庭用が本流」と言い切ります。
 
 一家に一台、となるためには、人間型こそ感情移入ができ、相手が機械であ
 ることを理解しつつも、コミニュケーションができる重要な要素です。
 
 そのためには、外観とモーションのデザインは重要な機能であり、従来の自
 動車や家電のデザインとは異なる要求なのです。
 
 
 ロボット史の1ページを切り開きつつある高橋氏は、ひょっとすると、自身
 もあこがれる、アトムを生んだ「天馬博士」になるやもしれません。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 高橋氏の生み出した「クロイノ」に代表されるロボットの動きが魅力的なの
 は、ひざを伸ばして歩く、自然な姿勢にある。
 
 これは「SHIN-Walk」と名づけられた特許技術だ。
 
 
 今までのロボットは、歩行の際、ひざが曲がったままだった。
 
 これは、ロボット業界では避けて通れない問題とされてきた。
 
 しかし、高橋氏はその理由を、足の長さと重心の関係だと考えた。
 
 
 ロボットが片方の足を踏み出すとき、もう片方の足は体重が乗る「軸足」と
 なるので、身体の真下になければならない。
 
 しかし、そのままでは前に出した足が地面に届かない。
 
 そこで、軸足のほうのひざを少し曲げることで、前に出した足を地面に着く
 ようにする。
 
 これを繰り返すため、結果的にひざが曲がったままになってしまうのだ。
 
 
 「SHIN-Walk」では、足の付け根のロール軸と、足首のロール軸をずらすこ
 とで、歩く際の足の長さのバランスを取ることに成功した。
 
 結局のところ、歩行時にロボットのひざが曲がる最大の原因は、単純な図形
 問題だったのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 フェチともいえるこだわりが、魅力を生む。
 マスプロ・大量生産にはできない「ものづくり」を見直そう。
 
 アトム、ガンダム、レゴブロック。
 かつての遊びや夢を、夢のままで終わらせるな!
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 1 ひとりロボット工場―ロボットクリエイターという仕事
 2 ドロップアウト―就職活動の失敗がスタートだった
 3 2度目の大学時代―京大で見つけたロボットという夢
 4 ロボ・ガレージ始動―産学官連携の追い風の中で
 5 世界への挑戦―日本代表サッカーロボット・王者への道
 6 ロボット・スター化計画―ロボプロという戦略
 7 明日、ロボットがやってくる―1家に1台、ロボットと暮らす未来
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 高橋智隆「ロボ・ガレージ」
 ・出版社 メディアファクトリー
 ・アマゾン 『ロボットの天才』

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July 11, 2006

あなたの機械設計ココが足りない!

Kikaisekkeikokogatarinai
 【今週の一冊】
 ●『あなたの機械設計ココが足りない!』
  潜在技術力アップのための実務対策ヒント集

  著:和田 肇(日刊工業新聞社)
  2006.05 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『製図からはじまり、ものづくりは「理論+鈍臭い知識と知恵」により
 
                       良い製品が生まれます。』

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 「機械設計」と一言では言うものの、その中身たるや、広く深いものです。
 
 歯車やバネのような機械要素一つでも、分厚い専門書がゴロゴロあり、材料
 はお馴染みの鉄系から樹脂、流体や接着剤と多種多様。
 
 それらを構成して、所望の動作をさせ、様々な使用環境で評価し、しかもコ
 ストは削らねばならない。
 
 まさに逆立ちで綱渡りをするような、ギリギリのバランス感覚の持ち主でな
 ければ務まらないオシゴトです。
 
 いきおい、「前例」や「習慣」で設計してしまい、トラブルが発生すること
 も、うなずける気がします。
 
 
 しかし、エレベータ事故の例を挙げるまでもなく、一度世に製品が出てしま
 えば、もはや設計者個人の問題では収まりません。
 
 なればこそ、現場の目線で、設計者のスキルアップに直結する、本書のよう
 な「よきアドバイス」が必要になります。
 
 長年、カーステレオのテープの駆動機構やCDドライブなどの設計に従事し
 た筆者の経験からの「使える」事例から、大いに学ばせてもらいましょう。
 
 
 車載用CDチェンジャーのメカニズムユニットの駆動部が、錆びついて動作
 しなくなるトラブルが発生しました。
 
 元素分析の結果、当該箇所に「食塩」があったことが分かり、関係すると思
 われる洗浄液やグリース、切削油など調査しましたが、いずれからも塩素・
 ナトリウムは検出されません。
 
 履歴を追うと、不具合品は特定の3日に生産したことを突き止めました。
 
 探偵のように調査した結果、この3日は工場近くは海からの強風が吹いてい
 たことが分かり、海風の塩分が原因と分かったのです。
 
 
 こう書くとスムーズに原因究明されたように思いますが、関係者は「その道
 」の人間ですから、工程中の要因に眼が行き、実際は測候所へ過去録を問い
 合わせるには、なかなか至りませんでした。
 
 もし、「その道」の見方でもっともらしい原因が成立してしまうと、検討が
 終了してしまい、再び忘れた頃に同じ問題を起こすことになります。
 
 「経験」も、「現場現物現実」も、問題解決には重要なことを気付かせてく
 れる教訓です。
 
 
 また、「ジャイロ効果とCDドライブの関係」「フライス加工で生じる膨ら
 み」「公称寸法と損得勘定」などの知識を「雑学」と呼び、専門書ではとっ
 つきにくい歯車やネジの実用的なオリジナル計算式を紹介しているのも、面
 白いところです。
 
 もちろん、これらで「機械設計」が網羅できることは到底ありません。
 
 しかし、筆者の「観て、感じて、考え、実行」した末の様々な事例から、機
 械設計者のあるべき姿を学ぶことで、自身の「足りない」点は、きっと補え
 ることでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 よく事故の説明に「スイスチーズ・モデル」が使われる。
 温度測定に用いる「熱電対」を使った経験のある人は多いだろう。
 
 しかし、その使用方法を正しく理解しているだろうか。
 
 異なる2本の金属線を接合し、接合点に温度を与えると線間に電圧が発生す
 る「ゼーベック効果」を利用したのが熱電対だ。
 
 200℃くらいまでの場合は、2本の線をねじって測定箇所に貼り付けたりする
 が、測定される温度は「ねじり部の測定器側位置」の温度だ。
 
 つまり、5mmの長さでねじって、先端を測定物に取り付けても、測定して
 いるのは測定物から5mm離れた位置になってしまう。
 
 
 また、200℃を超える温度の場合、溶接した熱電対接合部の玉を、測定物にス
 ポット溶接したりするが、これが至難の業だ。
 
 溶接どころか、熱電対の玉を飛び散らせてしまう。
 
 しかし、熱電対の原理を考えれば、別に熱電対を接合してから溶接する必要
 はない。
 
 2本の線を、少し離してそれぞれ接合しても構わないわけだ。
 
 これまでの熱電対のイメージから離れ、原理に立脚して考えると、意外に簡
 単な方法に行き着くことが理解できるだろう。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 自分の知恵と工夫を書きとめて、「ノウハウ集」を作ろう。
 まとめようとすることで、気付きが増える。
 
 知恵を絞って、適材適所の測定法を考え出そう。
 「測れないものは作れない」。学術ではなく、現場に合う測定器を作ろう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 まずはここから設計を変えよう
 第2章 数値の意味を知ろう
 第3章 メカニズムの要素設計を成功と失敗の事例で見直そう
 第4章 知恵を絞って測定法を考え出そう
 第5章 加工法に雑学を加えよう
 第6章 図面についての雑学で得をしよう
 第7章 補助的材料の性質を実感しよう
 第8章 長年の知恵による問題解決法で技術力を付けよう
 第9章 生産ラインに関心を持とう
 第10章 設計者サイドの特許出願を知ろう
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 和田 肇
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『あなたの機械設計ココが足りない!』

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July 07, 2006

安全と安心の科学

Anzentoanshinnokagaku
 【今週の一冊】
 ●『安全と安心の科学』

  著:村上 陽一郎(集英社)
  2005.01 / ¥714

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『言い古された決まり文句を使えば「初心忘るべからず」です。
 
   いかなる領域といえども、ものごとがルーティン化し、
      
     安全に推移するのが当然と思われ始めた瞬間に、安全は崩壊する、
     
             ということはどうやら確かなことのようです。』

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 扉が開いたまま上昇したエレベーターに、高校生が挟まれて死亡するという、
 痛ましい事故が起きてしまいました。
 
 ようやくエレベータメーカーが謝罪をしましたが、事故原因については「製
 造側の問題ではなく、保守が悪い」との姿勢は崩しません。
 
 管理会社も「点検マニュアルがなく、最近請け負ったばかり」と、メーカー
 の責任を強調します。
 
 まるで被害者や住民の感情を逆撫でするような対応が、繰り返し報道されて
 います。
 
 
 しかし、全国、全世界のエレベータは、こうしている間にも、毎日、何千万、
 何億もの人命を乗せて動き続けているのですから、急がねばならないのは「
 責任の追及」よりも、「原因の究明」です。
 
 本書で筆者は繰り返し、「事故情報は宝」と言います。
 
 何が、いつ、どこで、どのようにして起こったのか、これを何分の一秒単位
 で、詳細に突き止める。
 
 例えば、そこに人間の誤判断や誤操作(ヒューマン・エラー)があったとし
 ても、それを非難したり、責任を問う前に、確実に起こったことの詳細を把
 握する。
 
 それが、今後同じような事態になったときに、悪い結果を起こさせないよう
 な対策を講じるために、決定的に重要な材料なのです。
 
 
 また、エレベータの設置当初、施工会社が管理を行っていた時の費用は、年
 間360万円でした。
 
 その後、05年に保守業務を委託した管理会社の費用は、およそ半分の170万円
 であり、更に06年度に再度委託先を変更し、年間120万円の管理費用で契約し
 ています。
 
 筆者は、「安全が達成された瞬間から、安全の崩壊は始まる」と指摘します。
 
 安全が当たり前のことであればあるほど、なお安全へのインセンティブを、
 自らの中にかき立てなければならないのです。
 
 これは言うは易く、行うのは難いことだからこそ、「安全第一」を標語にと
 どめず、外部の規制や内部監査(ホイッスル・ブローイングを含めて)を有
 効に機能させねばならないでしょう。
 
 
 事故は「思いがけぬとき、思いがけないこと」が起きます。
 
 なれば、事故情報は、人間の想像力を補ってくれる、まさに「宝」です。
 
 この宝物から、「フール・プルーフ(ミスをカバーする)」や「フェイル・
 セーフ(ミスがあっても安全)」の仕組みを前進させねばなりません。
 
 医療事故や原子力の問題などを通して、安全と安心を説く本書から、我々技
 術者が学ぶことは多いでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 よく事故の説明に「スイスチーズ・モデル」が使われる。
 
 穴の開いたチーズのスライスを何枚も重ねれば、普通は穴が通ってしまうこ
 とはない。
 
 しかし、何かの拍子でそれぞれのスライスの穴の部分が重なってしまうと、
 穴が貫通する。
 
 つまりスライスは、事故防止のための一つ一つの手立てで、一つがすり抜け
 られても、次の一つ、あるいは次の次で食い止められるはずなのに、何かの
 拍子で穴が重なって全部が通ってしまうと、事故が起こる、という喩えだ。
 
 ミス(穴)が少なくすることも大切だが、より重要なシステムでは、防護対
 策を重ねることが有効なことを表している。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「責任追求」と「原因究明」を切り分けろ。
 事故の隠蔽は、「宝」を失う社会的な損失だ。
 
 安易なVA、設計変更は事故・不良の元。
 「なぜそうしたか」設計の意図を伝承しよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 序論 「安全学」の試み
 第1章 交通と安全―事故の「責任追及」と「原因究明」
 第2章 医療と安全―インシデント情報の開示と事故情報
 第3章 原子力と安全―過ちに学ぶ「安全文化」の確立
 第4章 安全の設計―リスクの認知とリスク・マネジメント
 第5章 安全の戦略―ヒューマン・エラーに対する安全戦略
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 村上陽一郎
 ・出版社 集英社
 ・アマゾン 『安全と安心の科学』

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

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