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August 10, 2006

危険学のすすめ

Kikenngakunosusume
 【今週の一冊】
 ●『危険学のすすめ』
  ドアプロジェクトに学ぶ

  著:畑村 洋太郎 (講談社)
  2006.07 / \1,470

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『死亡事故のようにあってはならない失敗を防ぐには
 
     従来の「失敗学」では不十分で、そこから一段進化させた
 
          「危険学」に必然的に行かざるを得なかったのである』

-----------------------------------

 例年、夏休みには水の災害が報じられますが、7月31日に埼玉県で起きた、市
 営プールでの事故は、例年の事故とは大きく異なるものでした。
 
 流水プールの給水口に小学2年生の女の子が「吸い込まれ」、水死ではなく
 頭部を流路の壁に強打したために亡くなったのです。
 
 楽しいはずの夏休みが、「考えられないような不注意」により、悲劇に転じ
 てしまいました。
 
 
 今回の書籍は、今だ記憶に新しい、六本木ヒルズの回転ドアで起きた6歳の
 少年の事故死をきっかけに、「失敗学」の提唱者である畑村教授が立ち上げ
 た「ドアプロジェクト」の記録です。
 
 この事故も、観光名所にまでなっている「日常」の中に、恐ろしい危険性が
 潜んでいたことを白日の下にした事件でした。
 
 こうした「つまらない失敗」が元で人が亡くなるような事故は、経験すべき
 ではない失敗であり、「失敗から学ぶ」という従来の失敗学の考えでは不十
 分でした。
 
 そこで、何かの行動を起こした結果としての失敗ではなく、結果に至る前の
 「現に存在している危険」に焦点を当てた「危険学」が生まれたのです。
 
 
 なぜ、安全が実現できないのか。
 
 それは、安全を実現するための「方法論」に問題がある、と畑村教授は指摘
 します。
 
 従来の責任追及型の調査では、「正しいやり方をしていないから事故が起こ
 った」と結論付けることが多くあるように、今までの安全の考え方は「過去
 にうまくいった手順を繰り返そう」とします。
 
 これがマニュアルやノウハウですが、逆に「安全なやり方」しか知らないこ
 とになり、不測の事態に対応できず、トラブルが起きるのです。
 
 
 例えば、子供が指を切らないように、鉛筆を削るナイフを取り上げてしまえ
 ば、確かに事故は起きませんが、危険を教えない教育を続けている限り、危
 機回避の能力を養うことはできません。
 
 これは子供だけではなく、大人にも言えることであり、予測される危険のあ
 りかを明らかにし、それに柔軟に対応することによって、事故や失敗を防ご
 うとするのが「危険学」なのです。
 
 これは、ものを「つくる」側にも「使う」側にも当てはまることであり、も
 のづくりに携わるエンジニアも身につけねばならない考え方です。
 
 
 流水プールの事故は、冒頭には「考えられない不注意」と書きましたが、「
 危険学」的に考えれば、十分に予想でき、未然に防げた事故だったと言わざ
 るを得ません。
 
 最近のエレベータ事故や給湯器の一酸化炭素中毒、トヨタのリレーロッド破
 損問題など、ひとくくりで語るのは乱暴ですが、いずれも予兆の段階で「危
 険」が予測できたことは共通しています。
 
 同じ過ちを繰り返さぬため、「ドアプロジェクト」と「危険学」に、我々エ
 ンジニアは、特に深く学ばねばなりません。

-----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 回転ドアの事故をきっかけに発足した「ドアプロジェクト」。
 
 その対象は回転ドアにとどまらず、「すべてのドア」であった。
 
 調査の中で、エレベータやスライドの自動ドアの挟み力が、非常に「小さな
 力」であることが分かった。
 
 それは、このようなドアの設計には「10J(ジュール)則」という暗黙知があ
 ることも関係している。
 
 ドアの移動質量のエネルギーが10Jを超えると、人間を負傷させる可能性があ
 るため、それ以下に抑えるのが暗黙の知識となっているのだ。
 
 
 ところが、回転ドアにはその思想が全く伝わっていなかった。
 
 事故の起きた大型自動回転ドアは、エレベータのドアなどとは比べ物になら
 ない挟み力を持つ、「殺人機械」とでも言うべき代物だったのだ。
 
 回転ドアは、人工物として未発達な、「街中にノコノコ進出していいような
 ものではない」というのが、実験結果を目の当たりにした畑村教授の感想だ。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 あり得ることは起こる。
 考えにくいが考えられる不具合こそ、起きたときの被害は甚大だ。
 
 自分で失敗しなくとも、教訓は得られる。
 過去のトラブル、隣の業界の情報に、広く学ぼう。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 「失敗学」から「危険学」へ
 第2章 「プロジェクト」発足
 第3章 ドアプロジェクトの手法
 第4章 実験でわかった真相1
 第5章 技術の系譜
 第6章 実験でわかった真相2
 第7章 「勝手連事故調」の勝利
 第8章 その後のドアプロジェクト
 第9章 「危険学」をどう生かすか
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・失敗学会
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『危険学のすすめ』
 
----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

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Comments

こんにちわ。
ご紹介の書籍は読んでいませんが、プール事故、回転ドア事故も含めて、総監技術である安全管理のリスクマネジメントが十分ではなかったと思います。
「はさまれ・巻き込まれ」は典型的な労災の一つですし、排水溝への吸い込まれもプールの事故を事前にリストアップすれば上位に上がっていたと思います。ですので、FEMAやFTAを使うまでもなく、安価で効果的な対策が考えられたと思います。

Posted by: CAN | August 26, 2006 at 04:16 PM

この本をよみましたが、内容はともかく私如きが語る低いレベルでないので書かずに起きます。ここで注目したいのは探求に関わるセンサーメーカーさん(知人の名前があたのはぶっ飛んだ)と知識人かを早速集めて即実行する。学者らしくない活動力であるですね。

ただこの方、某電気会社の研究員から来た人だということを考えると、学校の論理に浸りこまずPDCAをきっちりする「技術者」&「探求者」ということになるわけですね。

Posted by: デハボ1000 | May 25, 2007 at 05:52 AM

デハボ1000さん、こんにちは。

確かに畑村先生は、学者というよりエンジニアという印象が強いですね。
一方で企業というしがらみがない分、より「現実」に即した行動ができるという面では、学者としてのスタンスをうまく使っています。

自ら考え、行動し、検証し、世に問い掛ける。

立場は違えど、大いに学びたい姿勢だと思います。

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