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September 20, 2006

自動車と私 カール・ベンツ自伝

Karlbenz
 【今週の一冊】
 ●『自動車と私 カール・ベンツ自伝』

  著:カール・ベンツ 訳:藤川芳郎(草思社)
  2005.10 / \1,785

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『どうか信じていただきたいのだが、
 
   私にとって「発明の成果」よりも「発明すること」の方が
                     はるかにすばらしいのだ。
   
    ああ!もしも必要ならもう一度最初からだって喜んで始めるだろう』

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 燃料電池車が開発され、ハイブリッドカーの生産が急増している現在でも、
 「自動車」の基本は、エンジンで生み出した動力で「走る」「曲がる」「止
 まる」機能を備えた機械です。
 
 その実用的な「自動車」を120年前に生み出した、偉大なる発明家「カール・
 ベンツ」氏の自伝を紹介しましょう。
 
 
 高等工業学校で、機械の理論と実習を学びながら、彼はすでに「馬なしで走
 る車」を作り上げるという「とてつもない」目標を胸に抱きます。
 
 そのため、自ら技能を修得するため工場労働者として、薄暗い現場で12時間、
 旋盤や研磨の腕を磨きつつ、「線路のない機関車」の構想を練っていきます。
 
 そして次に働いた設計事務所で、製図の経験を積んだ上で、いよいよ「ガス
 エンジン(内燃機関)」の製造に取りかかります。
 
 奥さんとの必死の開発により、定置式の2サイクルエンジンは完成し、事業
 は軌道に乗ります。
 
 そしていよいよ、念願のエンジン駆動車の開発に着手したのです。
 
 
 最重要課題は、軽量で高回転なエンジンを製造することでした。
 
 ここでベンツ氏は、複雑な2サイクルエンジンから軽量化が可能な4サイク
 ルエンジンに変更し、そして「電気火花式」の点火装置を発明します。
 
 これはバッテリーの電圧を昇圧して、プラグの電極間に火花を飛ばすという、
 まさに現在のエンジンの技術そのものでした。
 
 さらに、ガソリンを適度に気化させるキャブレータ、そして高温のエンジン
 を冷ます水冷の冷却器という基礎技術も、彼は発明しています。
 
 
 そして動力伝達に不可欠なクラッチや、前輪操舵のためのアッカーマン・ス
 テアリング、ゴムタイヤなども、既に盛り込まれていました。
 
 圧巻は、デファレンシャル・ギア(差動装置)です。
 
 自動車の後輪は、曲がる際には内側と外側で移動距離が変わるため、その差
 を調整する必要があり、これを解決するための機構が差動装置であり、これ
 こそ現在の自動車にも不可欠な技術です。
 
 これらの機構がすでに「最初の自動車」に搭載されていたことを、文章と写
 真から見るにつけ、ベンツ博士の卓抜した想像力と、「自動車」の安全に当
 初から配慮した先見性に、ただ恐れ入るばかりです。
 
 
 こうした新技術の開発もさることながら、これまでにない移動手段を世に送
 り出したときの嘲笑や非難、警察や法律の壁などを乗り越えていった「信念
 」に、また驚かされます。
 
 その熱き想いは、ひとえに「人類に新しい交通手段をプレゼントしたい」と
 生み出した、自動車に対する自信、確信から溢れ出ていたのです。
 
 
 最後に、偉大な発明家であり、そして技術者であった氏から、若きエンジニ
 アへのメッセージを挙げましょう。
 
 「どうか立派な技術者になってください!
 
  なぜなら技術者は―哲学かぶれの連中や言葉の軽業師とは異なり―よりよ
  き未来の開拓者なのです」

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 最初の自動車は、3輪車であった。
 
 当初から4輪車をベンツ氏は作りたかったが、運転の安全性が難問だった。
 
 馬車のように、車軸全体を動かす方法はには、彼は反対だったのだ。
 
 その理由の一つは、馬車方式では、カーブを曲がるときに極めて大きな摩擦
 が生じ、運転に大きな力を必要とするからである。
 
 もう一つの理由は、4輪で直進する場合は4隅に車輪があって安定するが、
 曲がろうと前の軸を動かすと、4つの車輪が乗り物を支える面が3角形に近
 づき、安定性が低下するからだ。
 
 自分の車は街角に差しかかるたびに途方に暮れるような未完成なものにした
 くない。
 
 そこで完全に正しい解決法が見つかるまで、運転に申し分のない3輪自動車
 を彼は作り続けたのである。
 
 やがてこの問題を解決する、アッカーマン・ステアリング方式を実用化する
 ことで、「自動車の基本的な技術は完成した。」
 
 さらっと彼は書いているが、この一文の意義は極めて深い。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 発明の発想という壁、その実現化という壁。
 そして世の中の「常識」という壁。3枚の壁を突き破るのは信念だ。
 
 起こりうることに細心の注意を払い、対策を講じよ。
 そこに発明(特許)のタネがある。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 村の鍛冶屋の炎に照らされて
 父と母
 幼年時代のカール
 夏休みの楽しみ
 ギムナジウム時代
 「若いころはおいらも怖いもの知らずで、途轍もない目標を心に秘め、つぶ
 らな瞳で人生を覗いていたものさ」
 遍歴時代
 ボーン・シェイカー型自転車に乗って
 自分の家と作業場
 生涯で最高の大晦日〔ほか〕
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・メルセデスベンツ
 ・出版社 草思社
 ・アマゾン 『自動車と私 カール・ベンツ自伝』
 
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現場はもっと強くなる

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 【今週の一冊】
 ●『現場はもっと強くなる』
  超トヨタ式・チーム力最大化の技術

  著:村上 豊
  2006.07 / \1,575

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『諦めることは誰でもできる。
 
   誰でもできることは、誰もができる程度の結果しか生まない。
   
     誰もができないことをやろうとするからこそ、他の人には
      真似ができないような素晴らしい結果を生み出すことができる』

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 いまや世界一の座が射程に見えてきたトヨタ自動車。
 
 そのトヨタを、そして世界中の自動車メーカーを支える世界最大の部品メー
 カー「デンソー」もまた、「トヨタ生産方式」を基に、日々カイゼンを続け
 ています。
 
 本書は、著者のデンソーでの30年の経験を基に、限界を超えて改善し続ける、
 その生産方式の秘訣を探っています。
 
 
 現在のデンソー社長・深谷氏はかつて、「一人光る、皆光る、何もかも光る
 」とのメッセージを投げかけ、筆者はそこに「マインド」の大切さを知りま
 す。
 
 つまり、トヨタ生産方式は、成果やスキルの向上だけではなく、そのベース
 となる「マインド」の成長を共に進めるシステムなのです。
 
 
 例えば、仕事の進め方の基本である「PDCA」。
 
 言うまでもなく、「P(計画の作成)」「D(計画の実行)」「C(進捗の
 確認)」「A(計画の見直し)」の一連の流れを指しています。
 
 ここに加えて、それぞれを遂行する上での「マインド」として、「思いやり
 」「学び」「反省」「向上心」というキーワードを当てて、スキルの向上と
 人間的な成長を共に勧めています。
 
 この、スキルとマインドの成長サイクルを、共に回すのがポイントです。
 
 
 このように書くと、「PDCA?ああ、知っている」という気になりますが、
 分かったつもりが一番危険だと、著者は指摘します。
 
 トヨタグループが強いのは、スーパーマン的な人が多数いるから、ではなく、
 基本中の基本であるPDCAを、明けても暮れても、飽きもせずに、ひたす
 ら地道に取り組んでいるからです。
 
 「当たり前」にやるべきことを、毎日毎日きっちりと、着実にやり遂げてい
 る「だけ」なのです。
 
 
  “おそろしや たゆまぬ歩み カタツムリ”
 
 トヨタ式は、PDCAに始まり、PDCAに終わるといっても過言ではない、
 と語られるように、形だけではなく、心からの「トヨタ生産方式」ほど、恐
 ろしい、そして頼もしいカイゼンはないのでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 一人ひとりが成長サイクルを回したとしても、各自がばらばらでは、職場全
 体としての成長はありえない。
 
 「環境・風土」が大切だ。
 
 
 「麻の中の蓬(よもぎ)」という例えがある。
 
 麻は生育するときは、天に向かってまっすぐに伸びる。
 
 蓬は「もち草」ともいわれ、若葉が草もちに使われる植物だ。
 
 蓬は麻の中で育てると、麻と同じようにまっすぐ天に向かって育つという。
 
 生育が周りの環境・風土の影響を受けることはもちろん、方向性の影響も受
 けるのだ。
 
 
 職場の環境・風土も、方向性の合致した「成長」を進める上で、きわめて重
 要な要素なのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 新入社員に語る理念を、中堅もベテランにも語れ。
 「絵に描いた餅」を、噛み付きたくなるほどリアルに描け。
 
 計画して実行だけでは、カルシウム(Ca)不足。
 骨が折れないように、チェックと見直しが不可欠だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 火 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 強い現場とは何か
 第2章 強い現場のつくり方―成果と成長のマネジメント
 第3章 「ユートピア指数と自己実現力」の総合診断(ワークシート)
 第4章 超「トヨタ式」改善活動の実践ノウハウ
 第5章 職場の「磁場」の整え方
 第6章 成果を出すための心のマネジメント
 第7章 職場ユートピア、リーダーの使命
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・アマゾン 『現場はもっと強くなる』
 
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September 12, 2006

戦艦大和復元プロジェクト

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 【今週の一冊】
 ●『戦艦大和復元プロジェクト』

  著:戸高 一成(角川書店)
  2005.04 / ¥760

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『大和が世界一といわれる理由は、
            そのスケールが世界一だったというだけではない。
 
     現実にあれほどの艦を造れたことこそが世界一なのではないか。』

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 終戦記念日を迎え、何かと「太平洋戦争」を考えさせられるニュースが飛び
 交っています。
 
 昨年、広島県呉市にオープンした歴史科学館「大和ミュージアム」には、先
 の戦争の象徴ともいえる「戦艦大和」が、1/10スケールで復元された模型が
 展示されています。
 
 本書は、この「大和復元」にまつわるエピソードが、実際の大和に関する考
 証と共にまとめられています。
 
 
 一口に「1/10スケール」と言いますが、何しろ大和そのものが世界一の巨艦
 ですから、実に全長26メートル、総重量30トンにも及ぶ「船」なのです。
 
 実際に、船体は造船所で製造されて進水式も行い、「ミュージアム」建造後
 では屋内に入れられないため、建物の建造中に重機で搬入されました。
 
 
 また、1/10ということは、実際で1センチのものは、模型では1ミリになり、
 確実に工作対象になってしまいます。
 
 つまり、1/10で大和を再現するためには、実物の大和を1センチ単位で解析
 できるだけの資料が必要になる、ということなのです。
 
 ところが残された図面は決して多くはなく、関係者が復元した図や写真でも
 分からない箇所が多々あり、実物の再現は困難を極めます。
 
 そこで、沖縄戦で海底に沈んだ実物の大和を撮影した、海底調査のビデオを
 詳細にチェックし、2,000枚もの画像をキャプチャして資料を補い、これまで
 明らかにされていなかった大和の姿を復元していったのです。
 
 
 特に模型の工作レベルを決めたのが木甲板です。
 
 当初、造船メーカーではベニヤ板に墨で筋を線引きしようとしましたが、本
 物にこだわる筆者の熱意により、最終的には海軍工廠で実際に働いていた棟
 梁が昔ながらの方法で造ることにしました。
 
 それは、15ミリほどの角材を、端から一本一本、継ぎ目が揃うように貼って
 いく、伝統工芸のような「作品」となったのです。
 
 この木甲板に合わせるように、鉄製の甲板には滑り止め用の細長い鉄板を再
 現するため、数千枚の小さな板を、一枚一枚、手で張っていくという、気の
 遠くなる作業までなされたのです。
 (しかも、完成したら見えなくなるような場所まで!)
 
 
 模型の大和に情熱を込めるほど、本物の大和を知ることで、当時の技術や社
 会、大和を造らねばならなかった国際状況までも知らされたと筆者は語りま
 す。
 
 どんな技術も、それを実際に運用するのは人間であり、使い方によってすば
 らしい結果を得ることもできるが、一歩間違えば悲惨な結果を招く。
 
 戦艦大和は、技術のすばらしさを伝えると同時に、技術の持つ悲劇的な歴史
 も教えてくれます。
 
 大和ミュージアム、行ってみたいですね。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 設計する能力と、造る能力は異なる。
 
 当時、アメリカやイギリス、ドイツでも50センチ砲戦艦など、設計はできた
 が、造れなかった。
 
 なぜなら、製造施設から造らねばならないからだ。
 
 ところが、呉工廠は、明治時代にすでに大和が入るだけのドックを造り、ま
 た46センチ砲を造れるだけの施設があった。
 
 
 また、技術者の水準も高かった。
 
 工員が休憩時間に暇つぶしに、鉄板の切りくずを加工して遊ぶ。
 
 桜の形の穴を鉄板にヤスリで開け、それから棒を桜の形に作る。
 
 工廠省から視察にきたものが見つけて入れさせてみると、するっと入ってピ
 タッと止まる。
 
 雑巾でぬぐうと継ぎ目が見えなくなったという。
 
 
 この設備、技術力からくる自信が、大和建造、そして開戦へと舵が切られて
 いく一因となったといえるだろう。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「ウソモノ」では、熱意は伝わらない。
 「ホンモノ」に極限まで似せた「ニセモノ」を狙え。
 
 科学・技術に善悪はない。
 技術を使う人間の責任を教えた教科書が「戦艦大和」だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 大和を造ろう!
 第2章 造るのは模型ではない、十分の一の大和だ
 第3章 大和研究に懸ける
 第4章 戦艦大和が遺したもの
 第5章 生き続ける大和
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・大和ミュージアム
 ・出版社 角川書店
 ・アマゾン 『戦艦大和復元プロジェクト』
 
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