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October 25, 2006

原価計算だけで満足していませんか!

Genkakeisan
 【今週の一冊】
 ●『原価計算だけで満足していませんか!』
  利用目的別原価管理のすすめ

  著:堀口 敬(日刊工業新聞社)
  2006.5 / ¥2,520

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『原価管理は経理担当や原価管理担当の方だけのものではない。
 
      もし、経理や原価担当のものと思っている方がいたら、
   
                 まずそこから考え直していただきたい』

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 ものづくり大好きなエンジニアにとって、強度計算はお手のものでも、「原
 価管理」となると、同じ数字でも元気が出ないのはなぜでしょう。
 
 結局、エクセルに並んだ数字を見ても実感が沸かず、「だからなんやねん!」
 というのが正直な感想ではないでしょうか。
 
 しかし、趣味と違って、ものづくりの現場では、「なんぼ儲かるか」こそが
 重要なのですから、原価管理は必要不可欠です。
 
 そんな、大切だけど活かしきれていない「原価管理」に潜むワナを、本書か
 ら学んでいきましょう。
 
 
 集計した原価の資料は、一体何に使っているでしょうか。
 
 最も活躍するのは、経営幹部への報告資料でしょう。
 
 細かく色分けされたグラフやプレゼンテーションの資料の中で数字は踊りま
 すが、その資料を作ることで「コストダウン」は進むでしょうか?
 
 また、常に最新の原価を知りたがる経営者のために、原価のうちわずか数%
 にしかならない組み立てコストを正確にはじこうと、人を使って分析ばかり
 していないでしょうか?
 
 
 それは、原価「集計」をすることが、原価「管理」だと勘違いしているから
 です。
 
 原価を集計した結果を使って、「コストダウン活動」を行い、その結果「利
 益アップ、コストダウン」の成果を上げることで、始めて「原価管理」と言
 えるのです。
 
 原価集計は過去のデータであるのに対し、原価管理は「開発段階での原価見
 積」、「コストダウン活動の効果予測」という未来のデータなのです。
 
 ちょうど、バックミラーで後ろの様子(過去のデータ)を見ながら、ヘッド
 ライトで前(未来のデータ)を照らして、利益が出る方向へ運転することに
 当たります。
 
 
 この目的に向かって、具体的な原価管理の方法は、見込生産か受注生産か、
 組立中心か加工中心かなど、企業のタイプに応じて変わってきます。
 
 本書には、タイプ別・段階別に原価管理の実践方法が、分かりやすくまとめ
 られています。
 
 大切なことは、「儲けるため」にすることであることを忘れず、過剰な管理
 や、「計算のための計算」に終わらないことです。
 
 数字の裏に、現場があることを意識すれば、レート(時間単価)が無味乾燥
 なデータが、日々の生産活動の指針として命を持つことでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 A君「先月は段取作業の改善が成功して、今まで「2人がかりで4時間」の
  作業を、「1人で4時間」に短縮することができました。そのため、設備
  稼働時の監視人数も2人から1人に減ります。
  
  これで加工費が半減できました!」
 
 上司「それはすばらしい!ところで作業員が半分になると、1人は暇になる
  のではないか?」
 
 A君「仕事が楽になって、コストダウンもできれば一石二鳥ですよ!」
 
 上司「・・・・」
 
 こんな見せかけの工程改善で、原価をはじいても、実際のコストダウン効果
 はもちろん「ゼロ」だ。
 
 暇になった人員を検査要員に充てたとしても、工場のコストは全く変わらな
 い。
 
 この場合、期間工やパートタイマーの活用、また外注品の内製化などで、「
 真の」コストダウンを行わねばならない。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 必要に応じた原価「管理」を行おう。
 立派なシステムや詳細な分析よりも、使えるならば「エイヤ」でいい。
 
 全ての仕事を「なぜ必要か?」と問おう。
 自分がいないことが、一番のコストダウンと言われないように。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 序章 この本を読んでほしい方
 第1章 原価管理のワナ(原価管理の失敗事例集)
 第2章 自社のタイプをチェックする(受注生産と見込生産)
 第3章 自社の原価管理レベルをチェックする
 第4章 まずは製品別の原価集計から(原価管理レベルを1から2に上げるための
    ポイント)
 第5章 原価集計から原価管理にレベルアップ(原価管理レベルを2から3以上に
    上げるためのポイント)
 第6章 目的別の原価管理手法(原価管理を何のために使うかを確認し、そのた
    めの手法を理解する)
 第7章 企業タイプ別の「原価管理の導入ポイントと導入プロセス」
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 堀口 敬
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『原価計算だけで満足していませんか!』
 
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October 18, 2006

もっと長い橋、もっと丈夫なビル

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 【今週の一冊】
 ●『もっと長い橋、もっと丈夫なビル』
  未知の領域に挑んだ技術者たちの物語

  著:ヘンリー ペトロスキー(朝日新聞社)
  2006.8 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『大建造物や大計画の物語は、人々の物語でもあり、
 
   多くは、他の人々が不可能に決まっていると言っていたことを、
   
     反対をものともせず、あくまで実現しようとした人々の物語だ。』

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 「9.11」から、5年が過ぎました。
 
 生々しすぎる当時の映像は、今、テレビで流れることはほとんどありません
 が、我々の脳裏にははっきりと刻み込まれています。
 
 あの攻撃は、世界貿易センターをなぎ倒しただけではなく、巨大建造物の計
 画・設計・建設の「常識」も打ち砕く、破壊力を持っていました。
 
 高層ビルの技術者・建築家、そして使用者の誰もを納得させる答えは、簡単
 にはだせそうにありません。
 
 しかし、より安全な、より丈夫な建造物を目指す建築家の挑戦は、絶えず続
 いていくことでしょう。
 
 本書は、より長い橋、より高い高層建築に挑んだ技術者達の歴史と、今を綴
 っています。
 
 
 「摩天楼(スカイ・スクレーパー)」をは、文字通り「天を擦る建物」とい
 う意味ですが、その高さは70階から80階あたりに制限されていました。
 
 それ以上の高さになると、従来の高層ビルでは、エレベーター用の空間が建
 物全体の25パーセント以上の体積を占めてしまい、賃貸用の空間が減るた
 め、資金の投入に合わなくなってしまうからでした。
 
 実際に、世界貿易センターの二つのタワーは110階ありましたが、床面積
 の30パーセント近くが賃貸スペースからなくなってしまい、民間ではなく
 「公社」によって建設されたのでした。
 
 
 その狭い空間をできるだけ広く、かつ柱の少ないオフィス空間として使用す
 る、そして資材をできるだけ少なく、軽くするためのアイデアが「筒状構造
 原理」です。
 
 これは当時、鋼鉄ビルで世界NO.1だったシカゴのシアーズ・タワーの構造設
 計者、ファズラー・カーンが「最も経済的なビルの構造」として提唱したも
 ので、世界一の記録を塗り替えるビルの基本構造となっています。
 
 間隔の狭い鋼製の骨格が、中心部分と外周のチューブを構成する構造ですが、
 ここに突っ込んだジェット旅客機の燃料が燃え、骨格が軟化したことで「潰
 れた」のが、ビル崩壊の原因と考えられています。
 
 こうして、あれ以来、少なくともアメリカで計画中だった超高層ビルの計画
 は、中断され、再検討されることが多くなってしまったのです。
 
 
 筆者は、摩天楼が再び西洋で立ち上がるのは、最低一世代ほどかかる、と見
 ていますが、その間、元気のいい極東地域では「世界一」は塗り替えられて
 いくことでしょう。
 
 構造と美観、経済性に加えて、「極度の」安全性を求められるようになった、
 21世紀の建築設計。
 
 エンジニアの悩みは、尽きそうもありません。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
  世界最長の吊橋といえば「明石海峡大橋」。
 
 吊り下げられる橋桁の全長は3,911メートルもあり、建設中に起きた阪神大震
 災にも耐え、設計の万全さを証明することになった。
 
 
 しかし、世界にはもっと驚くべき計画が存在する。
 
 「ジブラルタル海峡」を渡す超大型橋梁だ。
 
 地中海の入口を渡って、アフリカとヨーロッパを繋ぐ「大陸間連結橋」。
 
 現在、設置ルートを検討中だが、深さ350メートル以下の水深の海上を、30
 キロほど渡す案が採られている。
 
 実際に事業が姿を見せてくると、技術的にも、資金的にも、そして政治的に
 も不確定要素が拡大している。
 
 果たして、実現できるだろうか。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 同じ橋、同じ建物はない。
 環境・技術・資本・ニーズに応じた選択をするのも、技術者の仕事だ。
 
 沈んで屈するな、浮かんで奢るな。
 逆境だからと言って腐らず、困難を技術と熱意で乗り切れ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 火 |   | (炎3つが満点)
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 橋―BRIDGES
  (鋼鉄の芸術―芸術家を魅了した橋、芸術家が造った橋
   アメリカの橋さまざま―人々が描いた夢
   ベンジャミン・フランクリン橋―大きな橋を架ける前に
   浮体橋―長い橋を手早く架ける ほか)
 その他もろもろ―AND OTHER THINGS
  (ドルトン・アリーナ―引張りあって立つ建造物
   ビルバオ―地域再生の象徴
   サンチャゴ・カラトラバ―公共空間の造形家
   ファズラー・カーン―アメリカでの挑戦 ほか)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 朝日新聞社
 ・アマゾン 『もっと長い橋、もっと丈夫なビル』
 
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October 04, 2006

あしたの発想学

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 【今週の一冊】
 ●『あしたの発想学』

  著:岡野 雅行(リヨン社)
  2006.8 / ¥893(新書)

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『不可能なんて冗談じゃないよ。
 
   所詮、人間が判断したことで不可能なんてことは、実は、
   
     この世の中にはあまり多くないようにあたしは思うんだけどねぇ』

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 「痛くない注射器」という画期的な製品を生み出したことで有名な、岡野工
 業の岡野社長。
 
 金型とプレス機という、どこの工場にもある設備から、想像を超えた製品を
 生み出す「発想」は、どこから生まれてくるのでしょうか。
 
 名物社長、いや自称「代表社員」の岡野雅行氏に尋ねてみましょう。
 
 
 岡野工業の代名詞ともなった「痛くない注射器」とは、外径200μm、従来の
 2/3の太さで、かつ従来と同じ注射液を流せる注射針です。
 
 これまでの針はパイプを細かく切っていましたが、これでは内径に凹凸が大
 きく、また細くすれば流量が落ちてしまうため、「皮膚に刺さる部分は細く、
 それ以外は太い」針を思いつきます。
 
 これを実現するまで、1年半、岡野氏は自ら試行錯誤を繰り返し、失敗を重
 ね、寝る間も惜しんで考えて、ついに「板を丸めて針をつくる」という発想
 にたどり着くのです。
 
 
 では、ここまで種明かしをされれば、誰でもこの注射針を作れるのでしょう
 か?
 
 否、それを実現するための技術こそ、それまでに蓄積された「プレス技術」
 の賜物です。
 
 プレスに必要なものといえば、材料である板金、金型、そしてプレス機、と
 考えますが、実はミソは「潤滑油」にあるのです。
 
 例えば、もう一つ岡野工業で有名な「リチウムイオン電池のケース」は、伸
 びの悪いSUS304に2μmの厚みのニッケルメッキが張られた材料を、
 そのメッキがはがれないように「深絞り」したものです。
 
 岡野社長はこの潤滑油も、スイスなどから取り寄せた油を自らブレンドして、
 こうした難加工を実現しているのです。
 
 
 更に、注射針は当然、液漏れがあってはなりませんから、プレスで丸めた後
 どの部分もぴったりくっつくようにするために、あらかじめ切断しておく形
 状を決めるのは至難の業です。
 
 その計算には、あまりに加工の精度が高いため、パソコンでは計算の桁数が
 足りず、スーパーコンピューターまで引っ張り出してきたのです。
 
 ローテク、手の技術ばかりと思いきや、社長曰く、「必要とあらばスーパー
 コンピューターだって何だって使うよ。コンピューターだって道具の一つな
 んだから」。
 
 
 若い頃に十分遊んだから、今は仕事より楽しいことはないという岡野氏にと
 って、他の誰もができないことを自らの手で現実化すること以上の喜びはあ
 りません。
 
 モーレツ、気合、根性、根気、勤勉。
 そして正直、誠意、義理、本気。
 
 根っからの職人気質の岡野氏の、「絶対につくってみせる!」という信念と
 不断の努力、長年の技術の蓄積が、夢の製品を生み出す秘訣なのです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 岡野工業は、難しい仕事や値段の高い仕事しかしていないように思われてい
 るが、決してそんなことはない。
 
 安くて人がやらない仕事もやっている。
 
 ただし、頭を使って儲かるようにしている。
 
 たとえば、1個1円の利益にしかならないプレス製品でも、毎月100万個つく
 れば1年で1,200万円になる。
 
 しかし、今までのやり方では採算が合わないから、工程を減らしたり工夫す
 る。
 
 最もいいのは自動機をつくることだ。
 
 ローレット加工という、円柱に筋をつけていく加工の場合、熟練工でも3分
 も4分もかかる作業だが、それを他社の半分の工賃で受けたこともあった。
 
 それも、やはり自動機を開発したお陰で、材料を入れてスイッチを入れれば
 1秒足らずで加工できるようになった。
 
 時間は1/200、しかもパートの主婦でもできるから一石二鳥の自動機となった。
 
 安い仕事でも利益を上げる構造を組み立てて仕事をしているから、新しい技
 術の開発に挑戦する資金的な余裕も生まれるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 ものづくりの技術力は、企業の大きさに比例しない。
 現実に向き合う技術者の信念とは、大きく関係する。
 
 現場は「4K」たれ。
 「根気」「根性」「勘」「渾身」さえ実行すれば、道は開ける。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 発想と応用―なぜ、可能になるのか?
 自由気まま―不真面目と莫迦は似て非なるもの
 打破―世の中には最初から実績のあるやつなんていない
 習慣―つくる発想、できる発想
 周期―いま取り組んでいるものが未来をつくる
 反骨―手を動かせば解決方法が見えてくる
 勘―図面がないとできないのは本当の職人ではない
 縁―その名人は無名人
 忍耐―転んでもただでは起きない
 秘守―人気のラーメン屋がスープの秘密を教えるわけがない〔ほか〕
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・岡野工業株式会社
 ・出版社 リヨン社
 ・アマゾン 『あしたの発想学』
 
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