« October 2006 | Main | December 2006 »

November 29, 2006

知られていない 原油価格高騰の謎

Genyukakaku
 【今週の一冊】
 ●『知られていない 原油価格高騰の謎』

  著:芥田 知至(技術評論社)
  2006.04 / ¥1,449

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『原油から得られるエネルギーやプラスチック製品がなければ、
                現代社会は、まず成り立たないであろう。
 
    そういう意味では、誰もが原油を利用している。
    
      しかし、誰もが原油のことをよく知っているかというと、
                         答えはNOであろう』

-----------------------------------

 数年前にはリッター90円でも「高い!」と思っていたのが、今では140円を
 下回ってさえ「安い!」と思ってしまうガソリン価格。
 
 今回の書籍によれば、原油高の影響で、光熱費やガソリン代の上昇により、
 04年に比べて年間26,000円も家計が圧迫されている計算になるそうです。
 
 ものづくりにおいても欠かせない、身近な「石油」ですが、意外と知らない
 実態に迫ってみましょう。
 
 
 そもそも「石油」とは原油、ガソリン、灯油などの総称であり、油田から汲
 み上げた原油を原材料として、精製して得られる製品がガソリンや灯油です。
 
 精製した炭化水素は、炭素量の少ない順に天然ガス・プロパンガス・ガソリ
 ン・灯油・軽油・重油・アスファルトといったおなじみの製品名で呼ばれま
 す。
 
 またガソリンとして製品化される前の中間製品である「ナフサ」は、プラス
 チックや合成繊維などの原料であり、石油化学工業で生み出される製品は、
 もはや無数といってもよいでしょう。
 
 
 さて、原油の生産地、といえば中東、というイメージがありますが、中東国家
 が中心のOPEC(石油輸出国機構)の生産量は、世界の40%程度に過ぎず、最大
 の産油国サウジアラビアに次ぐ生産国はロシア、そして米国です。
 
 かつてはOPECのシェアは50%を超え、原油価格の決定権を持ち、その決定によ
 って価格が吊り上げられたのが第1次、第2次石油危機でした。
 
 しかし、その後非OPEC諸国の生産量が増えたことから、現在の原油価格は、市
 場メカニズムで決まるようになっています。
 
 
 では、今回の原油価格高騰は、一体なぜ起きたのでしょうか。
 
 原油は価格の上下によって、使用量を極端に多くも少なくもできない「必需
 品」であり、また簡単に増産・減産できるものでもありません。
 
 また、現時点では世界の原油在庫量(=供給-需要)は増加しており、供給
 が極端に不足しているわけでもありません。
 
 価格上昇の原因は、足元の原油需給ではなく、「近い将来に需給が逼迫する
 かもしれない」という不安が大きくなったことにあると考えられます。
 
 
 供給側から言うと、特にOPECで油田の開発があまり進んでおらず、埋蔵量が
 十分あっても供給量が伸びていないことが挙げられます。
 
 また、せっかく原油の供給があっても、米国の製油所が老朽化し、フル生産
 しても能力が不足していることから、石油製品の値段が上がってしまうこと
 も原因です。
 
 そして需要は新興国を中心に伸び続けており、日本を含めた先進国の代替燃
 料へのシフトが十分進んでいないことも、今後の原油不足懸念となっていま
 す。
 
 
 今後はむしろ、「原油の枯渇」ではなく、「地球温暖化」という環境問題が、
 原油使用量、そして原油価格を左右する因子となると、筆者は指摘します。
 
 1円でも安いガソリンスタンドを探しつつ、この「液体」を取り巻く複雑な
 環境から、世界の今と未来が見えてきます。

-----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 石油は何から生まれたのだろうか。
 
 大昔の堆積物に含まれる生物起源の有機物が、移動・集積してガス層や油層
 を形成した、とする「有機説」が有名で、世界の主流の説である。
 
 これに対して、「無機起源説」もある。
 
 これは、宇宙で地球が形成されたときの成分にメタンガスが大量に含まれて
 おり、地球の内部にはそのときのメタンガスが閉じ込められている、という
 発想が元にある。
 
 メタンガスが地球内部の高い圧力の下で、石油に変化してその一部が地表近
 くに染み出してきている、というのが無機起源説だ。
 
 最近になって、無機説を支持するようなタイプの油田が発見されたり、すで
 に開発された油田の埋蔵量の回復が観察されたりしていることから、無機説
 も完全には否定できないといわれている。
 
 無機起源説の立場からは、現在の可採埋蔵よりも膨大なものになる可能性が
 ある。
 
 しかし、たとえ無機起源説が正しく、埋蔵量が多くても、人類がそれを使い
 続けることは、環境問題の面からできなくなったといえる。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 省エネルギーに終わりはない。
 原油・素材高騰の今こそ、省資源化のチャンスだ。
 
 「ものづくり」は物理法則でできるが、「価格」は人がつくる。
 エンジニアも、社会学・経済学に関心を持て。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 急騰した原油価格
 第2章 原油を生産する国
 第3章 原油の輸入国
 第4章 原油市場
 第5章 世界景気失速懸念とオイルマネーの奔流
 第6章 将来の原油価格は上がる?下がる?
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 芥田 知至「原油レポート」
 ・出版社 技術評論社
 ・アマゾン 『知られていない 原油価格高騰の謎』
 
----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

| | Comments (45) | TrackBack (0)

« October 2006 | Main | December 2006 »