強い工場のしくみ
【今週の一冊】
●『ものづくりの教科書 強い工場のしくみ』
編:日経ものづくり(日経BP社)
2006.10 / ¥2,940
----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----
◆ 燃える一言 ◆
『日本の工場に求められる役割
――それは、高付加価値の製品を顧客に素早く供給すること、
さらには海外工場のお手本になる高い生産性で生産することだ。
そして、現在高収益を上げている“強い工場”は、
それを実現する“しくみ”を確立している。』
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「いざなぎ超え」もついに実現し、今や国内の景気、そしてものづくりの勢
いは完全に回復しました。
しかし、この波に乗っているだけでは、やがて今後行き詰るのは目に見えて
います。
グローバル企業との競争、環境や安全など新技術への対応、高年齢化による
労働力不足・・。
今こそ、工場から徹底的にムダを取り除き、ものづくりを進化させる取り組
みが必要です。
世界に誇る、日本の強い50の工場の事例から、そのヒントを掴み取りまし
ょう。
まず第1の特集は、やはり「トヨタ生産方式(TPS)」。
これまで自動車組立工程に代表される、BtoC製品に主に適用されてきたTP
Sが、上流の部品・ユニットなどの半完成品にも広がってきています。
「造り過ぎのムダ」を省くため、「後工程が引き取った分だけ前工程が補充
するプル生産」が基本となりますが、バッチ処理の工程がある部品には向か
ないように思われていました。
しかし、「流せるところは流し、流せないところはストア(棚)を設置」が
最近の時流です。
もちろん、ストアには番地制で決められた場所に決められた数しか置けない
ようにして、前工程の押し込みを防ぐ仕組みが必要です。
第2は「セル生産」。
多品種少量生産に向き、生産量の変動にも強いとされるセル生産についても、
「急激な増産には対応できない」「部品の在庫が増える」「作業ペースが個
人任せで管理しにくい」などの問題を解決せねばなりません。
急増する生産を、熟練者と同様にパートや請負作業者がセルで対応するのは
困難ですから、ピーク時にはベルトコンベアの併用、あるいは変動分をセル
で対応など、各社工夫を凝らしています。
多品種に対応するため、増える部品在庫を削減するため、セル内に小型の樹
脂成形機を取り込み、部品を「原料」で保管するアイデアも光ります。
作業者任せとなりがちなペースを制御するためには、ここもコンベア方式の
併用や、ITを駆使した作業通知システムなど、まだまだ改善の余地があり
ます。
いずれもいずれも、教科書通りやコンサルタントの定番メニューだけではな
く、自ら考えたコンセプトを、地道に実行し、改善した積み重ねが花開き、
大きな果実となっています。
月刊誌「日経ものづくり」で折々に登場している事例を納めた本書は、現時
点で最新の、工場改善のノウハウ集といえるでしょう。
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◇ カンドコロ! ◇
IDECの「アセンブルショップ」は、人間に代わりロボットがセル生産を
行う組立ラインだ。
長く連続したラインではなく、水平多関節ロボットと垂直多関節ロボットの
2台を中心とした「組立セル」が基本となっている。
ロボットハンドの先は部品に合わせてチャックが変化するため、複数の保持
具を環状に搭載でき、手首の回転でそれらを切り替えられる構造だ。
従来の人手に頼ったセル生産では、使えるのは作業者の腕2本。
多くの部品を組み立てるためには、何度も部品とレート製品の間を作業者の
手が往復しなければならない。
一方、アセンブルショップは、複数部品を一気に掴んで一気に組み立てられ
る。
セル生産の概念を大きく変えるもので「千手観音モデル」と言われている。
今後も日本で継続的に生産していける究極の設備を目指し、更に進化は続い
ている。
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◆ 熱い行動 ◆
動き続ける企業は、更に先に行く。
基本と最新事例を学んだら、早速実践だ。
中小企業こそ、ITを駆使せよ。
これほど安価に、高性能なツールが使えるのを、黙って見過ごすな。
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◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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第1章 これからのニッポンの工場
第2章 トヨタ生産方式
第3章 セル生産
第4章 IT活用
第5章 自動化
第6章 生産性向上
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◆ 関連ページ ◆
・日経ものづくり
・出版社 日経BP
・アマゾン 『ものづくりの教科書 強い工場のしくみ』
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