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December 28, 2006

強い工場のしくみ

Tuyoikoujyou_1
 【今週の一冊】
 ●『ものづくりの教科書 強い工場のしくみ』

  編:日経ものづくり(日経BP社)
  2006.10 / ¥2,940

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『日本の工場に求められる役割
 
   ――それは、高付加価値の製品を顧客に素早く供給すること、
   
     さらには海外工場のお手本になる高い生産性で生産することだ。
    
   そして、現在高収益を上げている“強い工場”は、
   
              それを実現する“しくみ”を確立している。』

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 「いざなぎ超え」もついに実現し、今や国内の景気、そしてものづくりの勢
 いは完全に回復しました。
 
 しかし、この波に乗っているだけでは、やがて今後行き詰るのは目に見えて
 います。
 
 グローバル企業との競争、環境や安全など新技術への対応、高年齢化による
 労働力不足・・。
 
 今こそ、工場から徹底的にムダを取り除き、ものづくりを進化させる取り組
 みが必要です。
 
 世界に誇る、日本の強い50の工場の事例から、そのヒントを掴み取りまし
 ょう。
 
 
 まず第1の特集は、やはり「トヨタ生産方式(TPS)」。
 
 これまで自動車組立工程に代表される、BtoC製品に主に適用されてきたTP
 Sが、上流の部品・ユニットなどの半完成品にも広がってきています。
 
 「造り過ぎのムダ」を省くため、「後工程が引き取った分だけ前工程が補充
 するプル生産」が基本となりますが、バッチ処理の工程がある部品には向か
 ないように思われていました。
 
 しかし、「流せるところは流し、流せないところはストア(棚)を設置」が
 最近の時流です。
 
 もちろん、ストアには番地制で決められた場所に決められた数しか置けない
 ようにして、前工程の押し込みを防ぐ仕組みが必要です。
 
 
 第2は「セル生産」。
 
 多品種少量生産に向き、生産量の変動にも強いとされるセル生産についても、
 「急激な増産には対応できない」「部品の在庫が増える」「作業ペースが個
 人任せで管理しにくい」などの問題を解決せねばなりません。
 
 急増する生産を、熟練者と同様にパートや請負作業者がセルで対応するのは
 困難ですから、ピーク時にはベルトコンベアの併用、あるいは変動分をセル
 で対応など、各社工夫を凝らしています。
 
 多品種に対応するため、増える部品在庫を削減するため、セル内に小型の樹
 脂成形機を取り込み、部品を「原料」で保管するアイデアも光ります。
 
 作業者任せとなりがちなペースを制御するためには、ここもコンベア方式の
 併用や、ITを駆使した作業通知システムなど、まだまだ改善の余地があり
 ます。
 
 
 いずれもいずれも、教科書通りやコンサルタントの定番メニューだけではな
 く、自ら考えたコンセプトを、地道に実行し、改善した積み重ねが花開き、
 大きな果実となっています。
 
 月刊誌「日経ものづくり」で折々に登場している事例を納めた本書は、現時
 点で最新の、工場改善のノウハウ集といえるでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 IDECの「アセンブルショップ」は、人間に代わりロボットがセル生産を
 行う組立ラインだ。
 
 長く連続したラインではなく、水平多関節ロボットと垂直多関節ロボットの
 2台を中心とした「組立セル」が基本となっている。
 
 ロボットハンドの先は部品に合わせてチャックが変化するため、複数の保持
 具を環状に搭載でき、手首の回転でそれらを切り替えられる構造だ。
 
 
 従来の人手に頼ったセル生産では、使えるのは作業者の腕2本。
 
 多くの部品を組み立てるためには、何度も部品とレート製品の間を作業者の
 手が往復しなければならない。
 
 一方、アセンブルショップは、複数部品を一気に掴んで一気に組み立てられ
 る。
 
 セル生産の概念を大きく変えるもので「千手観音モデル」と言われている。
 
 
 今後も日本で継続的に生産していける究極の設備を目指し、更に進化は続い
 ている。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 動き続ける企業は、更に先に行く。
 基本と最新事例を学んだら、早速実践だ。
 
 中小企業こそ、ITを駆使せよ。
 これほど安価に、高性能なツールが使えるのを、黙って見過ごすな。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 これからのニッポンの工場
 第2章 トヨタ生産方式
 第3章 セル生産
 第4章 IT活用
 第5章 自動化
 第6章 生産性向上
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・日経ものづくり
 ・出版社 日経BP
 ・アマゾン 『ものづくりの教科書 強い工場のしくみ』
 
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December 27, 2006

大工道具の日本史

Daikudougu
 【今週の一冊】
 ●『大工道具の日本史』

  著:渡邉 晶(吉川弘文館)
  2004.11 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『手道具の刃先を通して伝わってくる、個性ある木材繊維の多様性を
 
     知ることは、木の建築を生産するうえで、
     
              最も基本に据えるべき経験ではないだろうか』


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 日ごろは金属や樹脂の加工に追われている やまさん ですが、今回は「木」
 の加工、大工道具の歴史を取り上げてみましょう。
 
 人類が木材の加工に用いた最初の道具は、言わずもがな、石器であり、今日
 の道具の区分で言えば、「斧」と「鑿(のみ)」です。
 
 縄文時代の約6000年前から、4000年前にかけて、平地形式や高床式の建築が
 これらの道具によって作られました。
 
 
 弥生時代には斧と鑿の材質が、石から鉄に移り変わり、生産性が飛躍的に向
 上します。
 
 実験によると、径20センチメートルの松を石斧で伐ると12分かかったところ
 が、鉄斧では3分で伐採できたそうですから、この生産性は、以後19世紀に
 至るまでほとんど変化がなかった程の飛躍だったのです。
 
 
 そして、6世紀後半に伝来した、仏教建築をつくる主要な道具として、鉄斧
 と鉄鑿のほかに、鋸とカンナ(槍鉋)が加わり、早くも基本的な道具の編成
 が確立したのです。
 
 これらの道具が揃ったことで、中世にかけて接合法(継ぎ手)も進歩を遂げ、
 現在にも残る仏教建築のように、材料を節約しつつ強固な接合方法が編み出
 されていったのです。
 
 
 木材加工道具のもう一つのトピックは、中世の14世紀から15世紀にかけて、
 素材加工において使われた「オガ」です。
 
 それまでは斧や鑿と楔を使って、原木を割って角材を作っていたのに対し、
 二人一組で使う大型製材鋸(オガ)を使う製材へと、技術革新が進み、幅広
 な薄板材や正確な角材を作り出すことが可能となりました。
 
 また、この時期、カンナも剣状の刃を押して使う槍鉋と、現在のようにカン
 ナ身を溝に押し込んで使う「鉋(つきがんな)」に分化し、加工精度が上が
 っていったのです。
 
 
 近世の18世紀後半から19世紀始めにかけては、鋸・鑿・鉋の加工精度は更に
 高まり、生産効率を上げるために作業姿勢が「座位」から「立位」へと移行
 していきます。
 
 ちなみに、こうして生産性が上昇する一方で、大工の実質賃金は、15世紀か
 ら19世紀までで、約4分の1にまで減少してしまい、19世紀前半の大工は、
 エンゲル係数(食費の割合)が70と、食べるのがやっと、という状況でした。
 効率アップと賃金カット。
 このころから「技術者」は、厳しい仕事をしていたようです・・。
 
 
 そして、近代、19世紀末から20世紀前半にかけて、木の建築を作る技術は、
 加工の精度において最高の水準に達し、一人前の建築大工が使う標準道具は、
 約180点を数えるまでに、多様に分化したのです。
 
 現在は、電動工具が建築現場に入り込み、これらの道具も使われないものが
 現れてきています。
 
 しかし、わずか数十年の電動工具の歴史の前に、先人が木のぬくもりを大切
 に築いてきた「道具」の変遷を知ることは、木工建築には欠かせないのでは
 ないでしょうか。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 17世紀始めの古典建築書『匠明』の中に、建築専門工人の指導者が見につけ
 る能力や技術に関して、「五意達者にして、昼夜不怠(おこたらず)」とい
 う記述がある。
 
 「五意」とは、「式尺の墨かね」「算合」「手仕事」「絵用」「彫物」のこ
 とを指す。
 
 ・「式尺」は、設計上の基準である木割
 ・「墨かね」は、部材に対する墨付けの技術
 ・「算合」は、積算
 ・「手仕事」は、道具を使いこなす技術
 ・「絵用」と「彫物」は、建築装飾の下絵を描き、それを彫り上げる技術
 
 をそれぞれ表現している。
 
 「式尺」「墨かね」「算合」は数理的能力、「絵用」は芸術的能力、「手仕
 事」「彫物」は手をはじめとする身体能力を必要としていることが分かる。
 
 「五意」が文字として明文化されたのは近世であるが、建築専門工人が出現
 した当初から、工人のリーダーには高い能力・技術が求められていたのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 道具に歴史あり。
 数千年前の技術者に敬意を表し、淘汰・洗練された道具の理屈を知ろう。
 
 電動化・自動化で「五意」を忘れるな。
 切れ味、手触りを忘れたものづくりは、必ず衰えていく。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 火 |   | (炎3つが満点)
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 手道具の歴史と人類の未来―プロローグ
 木の建築をつくる技術と道具
 大工道具の誕生―旧石器から縄文時代
 鉄器の導入と大工道具の発展―弥生・古墳時代
 渡来した新しい建築技術―古代・中世
 大工たちの近世
 多様化する大工道具と技術
 大工道具の一万年―エピローグ
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者所属 竹中大工道具館
 ・出版社 吉川弘文館
 ・アマゾン 『大工道具の日本史』
 
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December 21, 2006

設計の英語って、どない使うねん!

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 【今週の一冊】
 ●『設計の英語って、どない使うねん!』
  現場設計者が教える実務で使う技術英語術

  著:山田 学(日刊工業新聞社)
  2006.8 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『パターンを覚えるだけでは、相手に意思を正確に伝えることはできません。
 
    設計者の意思を正確に伝える手段が、外国人との接し方であり、
 
           技術資料における言葉の使い方であり、
 
                   製品設計への取り組みなのです。』

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 昨年末と今年初め、海外出張して、英語力の必要性を痛感した、やまさんで
 した。
 
 そういえば、今年の目標を「TOEIC ○○点UP!」と宣言したような…。
 
 喉元過ぎればなんとやらで、すっかり日々の業務の中で、関西弁オンリーの
 世界に埋もれてしまっていますが、ここらで本書をきっかけに、「英語って、
 どない使うねん!」と仕切り直したいと思います。
 
 
 ビジネス英語、といえば「空港での挨拶」や「電話のかけかた」などが出て
 きますが、我々エンジニアにとっては、「仕様書の書き方」や「梱包方法」
 などの方が、より切実に知りたいことです。
 
 例えば、英文の仕様書は“shall”を用いることが多いようです。
 
 仕様書は製品説明を、正確・確実に伝える必要があることから、簡潔な文章
 とする必要があるからです。
 
 同様にISOなどの規格も shall が多く用いられています。
 
 一方、取扱説明書にはshallではなく、shouldが多いのは、過去形にすると動
 詞は意味が弱まり、口調が柔らかくなるからでしょう。
 
 例:Installation Procedures:Upon receiving the unit,the user should
  examine the unit to verify that all I/O channels are operetional.
  (据付要領:ユニットを受け取る際、ユーザーは、全ての入出力チャンネ
   ルが操作できることを確かめるためにユニットを調べるべきです)
 
 
 海外に輸送する場合の手続きも、分かりにくく、しかしエンジニアが携わら
 ねばならない大事な業務です。
 
 梱包は、船便でコンテナ輸送であれば、風雨の影響はないから安心だろう、
 と考えるのは早計です。
 
 ヨーロッパやアメリカへ輸送する際、長期間、猛暑の海上を運んでいると、
 コンテナ内のパレット等の木材から、天井にびっしり水滴がつくほど湿気が
 出るのです!
 
 ですから、製品は乾燥剤同封でビニールシートで覆い、その後真空引きする
 のが「セオリー」です。
 
 
 また、輸送業者も日本のように丁寧に扱ってはくれませんから、安全チェッ
 クのためにSHOCKWATCHといわれる衝撃検知センサや、傾斜センサを貼付する
 ことが有効になります。
 
 また、木材梱包材は、病害虫を持ち込む恐れがあるために、各国で検疫上の
 規制が厳しくなっていますから、知らずに従わなかった場合、積戻しや廃棄
 の可能性があり、要注意です。
 
 そして荷物の送り状に当たるINVOICEとPACKING LISTの作り方も、慣れない者
 にとっては、本書のような指南書が必携でしょう。
 
 
 学生時代のような「S+V+O+C」などの構文や「冠詞の使い方」などの
 文法はもちろんのこと、上記のような「かゆいところに手が届く」本書は、
 海外業務に関わるエンジニアには、座右の書となるでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 海外でビジネスをする上で、特にPL(製造物責任)対策は重要だ。
 
 これをPLP(Product Liability Provention:製造物責任予防)といい、
 設計上の対策、製造上の対策、そして警告表示上の対策が講じられる。
 
 製品の安全確保の原則は安全設計にあるが、技術面での対応を補完するのが
 「警告表示」だ。
 
 警告表示は、製品使用時において一般消費者が回避すべき危険情報を、認知
 しやすい方法で行われるべきで、製品本体への表示が基本となる。
 
 表示内容は
 ・DANGER(危険)、WARNING(警告)、CAUTION(注意)などの警告表現
 ・絵表示による危険な状態の表示
 ・文章による危険な状態、避けるべき使用方法の指示(説明)など
 からなる。
 
 
 さすがは訴訟大国、を感じさせるメッセージ文を紹介しよう。
 
 ・Do not eat toner.(トナーを食べないで下さい)
  ⇒A toner cartridge for laser printer(レーザプリンタのトナーカー
  トリッジ)
 
 ・Do not use orally.(口に使用しないで下さい)
  ⇒A toilet bowl cleaning brush(トイレの掃除ブラシ)
 
 ・Remove infant before folding for storage.(格納のため折りたたむ前に
  幼児を取り除いてください)
  ⇒A portable stroller(携帯乳母車)

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 ◆ 熱い行動 ◆
 知らなかった、では済まされない。
 国内にいても、海外との対応策を学ばねば、仕事はできない。
 
 英語はツールだ。
 学ぶのではなく、使ってこそ身につけよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 1 技術英語って、どない使うねん!
 2 海外とのアクセス、どないするねん!
 3 設計のやり取り、どないすんねん!
 4 技術文書って、どない作るねん!
 5 どないして、モノ送ったらええねん!
 6 安全対策って、どないすんねん!
 7 技術英語って、どんなんがあんねん!
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 山田 学
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『設計の英語って、どない使うねん!』
 
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December 13, 2006

トヨタの口ぐせ

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 【今週の一冊】
 ●『トヨタの口ぐせ』

  OJTソリューションズ (中経出版)
  2006.9 / ¥1,365

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『製造現場にいるわれわれは商売人じゃないのです。
 
         安く仕入れることが仕事ではありません。
 
                  安くものをつくることが仕事です。』

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 「習慣」には、力があります。
 
 生活習慣病、なんていうのは、まさに悪い習慣が蓄積された、恐ろしい結果
 ですよね。
 
 良きにつけ、悪しきにつけ、身についた習慣はなかなか離れるものではあり
 ませんから、積み重ねた結果は、大きな差が生まれてくるものです。
 
 世界No.1を伺うトヨタの「言葉の習慣」=「口ぐせ」は、ほんの一言で
 はあっても、おらが会社との大きな差を生む「分岐点」かもしれません。
 
 
 例えば、冒頭の言葉は、「一円でも安く、ものができんか」という口ぐせに
 ついて加えられたコメント。
 
 トヨタと言えば原価低減が有名ですが、それは「材料を一円でも安く仕入れ
 ろ」という意味ではありません。
 
 むしろ、カイゼンの着眼点として「材料のグレードアップをして寿命を延命
 できないか」という項目が明記されているほどであり、材料費高騰でヒーヒ
 ーいって買い叩く姿勢とは一線を画します。
 
 ちょっとした知恵を加えることで、つくり方によってコストを下げるのがト
 ヨタ流であり、一方では壊れた設備を自分たちで徹底的に直し、再利用する
 ことなどで原価低減を進めているのです。
 
 
 現地・現物・現実を大切にせよ、という意味の「三現主義」は、色々なとこ
 ろで聞きますが、それを表す「口ぐせ」に、「者に聞くな、物に聞け」があ
 ります。
 
 現場の班長が作業者からトラブルの報告を受け、それを監督者に報告すると、
 トヨタの監督者は「本当にそうか?」と聞きます。
 
 そこで「たぶん・・・でしょう」という曖昧な言葉が出てくると、すぐに現
 場に行き、実際に現場が異なっていると「自分で見ろ!」と大目玉を食らう
 ことになるのです。
 
 
 そして「三現主義」を身につかせるために言われる口ぐせが「マルを描いて
 立っていろ!」
 
 班長を指導するときに、監督者は工場内に直径1メートルほどの「マル」を
 描き、「ここに立っていろ!」と言うのです。
 
 30分ほど立って現場をじっとみていると、動いていると見えない、作業の
 ムダやムリが見えてくるのです。
 
 こうしたものの見方を、トヨタでは端的な言葉で脈々と伝えているのです。
 
 
 「トヨタ生産方式」「カンバン方式」では分からない、トヨタの強さの源泉
 は、実はこうした言葉が自然と出てくる「習慣」にこそあると気付かされる
 一冊でしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 2S(整理・整頓)とか、5S(+清掃・清潔・躾)も、現場の基本として
 言われるが、分かりにくい。
 
 トヨタの口ぐせはこうだ。
 
 
 『1週間ものが動かんかったら捨てろ』
 
 
 「整理」とは、現場でいるものといらないものを区別し、いらないものはす
 ぐに廃棄すること。
 
 「整頓」とは、いるものとして残したものを、必要なときに必要なだけをす
 ぐに取り出せるようにすること。
 具体的には、所・番地を定めて並べることである。
 
 端的な言葉で表すことで、ハッキリとしたイメージと、何をすべきかが伝わ
 る「口ぐせ」だ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 本質は細部に宿る。
 たかが口ぐせと侮るな。口ぐせになるほど実践している恐ろしさを知れ。
 
 現場を変えたければ、「口ぐせ」を作れ。
 口ぐせになるほど繰り返し言い続ければ、必ず変わる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 「リーダー」を育てるトヨタの口ぐせ
  (おまえ、あそこ行ったか俺は行ってきたぞ/者に聞くな、物に聞け ほか)
 第2章 「できる人」を育てるトヨタの口ぐせ
  (あなたは、誰から給料をもらうの?/何もしないより何かやって失敗した
  ほうがいい ほか)
 第3章 「コミュニケーション」をよくするトヨタの口ぐせ
  (陸上のバトンリレーのようにやりなさい/横展しよう ほか)
 第4章 「問題」を解決するトヨタの口ぐせ
  (マルを描いて立ってろ/モグラがよく出るところからまず手をつけなさい
   ほか)
 第5章 「会社」をよくするトヨタの口ぐせ
  (売れるスピードより速くつくらない/一円でも安く、ものができんか
   ほか)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 OJTソリューションズ
 ・出版社 中経出版
 ・アマゾン 『トヨタの口ぐせ』
 
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December 12, 2006

Make

Make
 【今週の一冊】
 ●『Make』
  Technology on Your Time Volume 01

  編:オライリー・ジャパン(オライリー・ジャパン)
  2006.8 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『コンピュータプログラムを作成することと機械を組み立てることの
 
       大きな違いは、機械には「コピーアンドペースト」や
 
               「取り消し」が利かないことです。
 
             一部でも動かない場合は、作り直す必要がある』

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 壊れたラジオや自転車を分解するのが(たとえ元に戻らなくても!)好きだ
 った人、手を上げて!
 
 ・・はい、たくさんの手が上がりましたね!
 
 やっぱりこのブログの読者の9割は、やんちゃな「えんぢに屋」のようですね。
 
 そんなテクノロジーを創造するえんぢに屋=「Maker」のための雑誌、
 「Make」の日本語版を紹介しましょう。
 
 
 最近は音楽CDやDVDも、自由に編集し、個人の好みで編集できるのが当
 たり前になりました。
 
 ブログやSNS、ポッドキャストなどで、メディアまでも自分で生み出す時
 代です。
 
 ところが、「ハード」については、既製品は「分解」や「改造」を拒む強固
 なカバーで覆われ、実装された基板はおいそれと手を出せません。
 
 そんなお仕着せの「モノ」を、自分達の手で自分の生活の中に取り込むため
 に、「ハック」してしまおう!というのが本書の記事です。
 
 
 実用的なところ?では、「カイトフォト」が興味をそそります。
 
 航空写真ほど高くはなく、さりとて目線よりは高い、高度10mほどの高さ
 から見下ろす写真をとる方法として、凧にぶら下げたカメラで写す「カイト
 フォト」があります。
 
 まるで鳥の目から眺めたような写真の数々は、新鮮な驚きです。
 
 さぞや立派な無線装置やジャイロシステムなどが搭載されているのかと思い
 きや、インスタントカメラと木工細工(!)で手作りする方法がこと細かに
 紹介されており、遊び心がビンビン刺激されます。
 
 特に、ダンパーとゴムでできた「粘性タイマー」シャッターのアイデアには
 にやりとさせられます。
 
 
 ジャンクパーツで金をかけずに作る「ハイテクガラクタ」こそ、手作りの醍
 醐味でしょう。
 
 秀逸なのが、ビデオデッキで作る「猫の給餌機」。
 
 古いビデオのヘッド用モーターを、配線はそのまま取り出し、減速ギアを介
 して、肉ひき機のような、らせん状押し出し部を接続します。
 
 すると、ビデオの録画タイマーで、好きな時間に自動的に餌を押し出す「給
 餌機」の出来上がり!
 
 録画時間の長さで、餌の量までコントロールできるスグレモノ。
 
 笑ってしまうようなガラクタですが、面白くて、安上がりで・・ついでにち
 ゃんと動くのです!
 
 
 以前に紹介した、物質世界を「プログラム」するMITのファブラボの活動
 も紹介されており、これから訪れる「Monozukuri 2.0」を覗き見る、ユーモ
 アと好奇心にあふれた一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「電気自動車(EV)」は、環境負荷の低い自動車として昔から注目はされ
 ているが、普及には至っていない。
 
 それは、ガソリンエンジンの自動車に比べ、走行可能距離が極端に短いから
 だ。
 
 大企業がEVを世に出そうとすれば、これを解決すべく、巨大なバッテリー
 を搭載し、そのために内部の空間は占領され、過大な重量となるのだ。
 
 
 ところが、EVを「ガレージ」で作る人たちは、そんな失敗はしない。
 
 現在のバッテリー技術の限界を認識し、重量と費用を低減して、走行性能を
 引き出すために、走行距離は犠牲にする。
 
 それでも日常生活には十分なのだ。
 
 彼らは5,000ドルから10,000ドルの費用で、エンジンや燃料タンクを放り出し
 て、バッテリーとモータを積み込んだ、快適なEVを作ってしまう。
 
 まるで携帯電話やiPodのように充電したEVで、颯爽とガソリンスタンドの
 横を通り過ぎながら、優越感たっぷりに彼らは言う。
 
 「中東の石油?あぁ、燃やすのに使っていたよ。でももうやめた」

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 ◆ 熱い行動 ◆
 我々はテクノロジーを消費するだけの存在ではない。
 テクノロジーを創造する「えんぢに屋=Maker」になろう。
 
 粗大ゴミの家電を、ばらしてみよう。
 子供の好奇心と、技術者の知恵で、オリジナルの「モノ」を作ってみよう。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 Make創刊に寄せて
 ユーザーがモノを作る時
 News From Future(ティム・オライリー)
 ライフハック:ヤク毛刈り
 Made On Earth
 Maker:現実世界を「プログラム」するところ、ファブラボにようこそ
 Maker:すべての家庭に核融合炉を
 Proto:ビットと生身の肉体の出会い
 エアルームテクノロジー:過去の遺産の継承
 ダ・ヴィンチに息づくコード(ブルース・スターリング)
 ミスター・ジャロピーのガレージ
 世界最大のMP3プレイヤー
 エンジニア最後の世代(コリィ・ドクトロウ) (ほか)
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・カイトフォト 日本カイトフォトグラフィー協会
 ・出版社 オライリー・ジャパン
 ・アマゾン 『Make』
 
----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

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