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January 31, 2007

世界の自動車を造った男

Sekainojidousya
 【今週の一冊】
 ●『世界の自動車を造った男』
  荻原映久、50年のモノづくり人生

  著:生江 有二(日刊工業新聞社)
  2006.10 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『技術は日々、先進する。
 
    コストを下げることを忘れ、研究に力を注がず、
           現状に満足していると、すぐに追い抜かれてしまう。
  
      前進か死か。
  
               これは製造業の全てにいえることなんです』

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 2004年に世界各国で生産された自動車台数は63,956,415台(日本自動車工業
 会調べ)。
 
 この年、世界では8億3681万台の車が走っており、これは世界の人口で7.5人
 に1台の割合です。
 
 その8億台あまりのクルマのうち、1億台を越える車を日本の1つの会社が
 造っていることを、ご存知でしょうか。
 
 
 その会社とは、金型メーカ「オギハラ」。
 
 正確には、「オギハラの製作した金型でボディを製造した車が1億台以上」
 ということです。
 
 この途方もない膨大な自動車生産を支えるために、オギハラは、日本、アメ
 リカは当然として、実に5大陸全てに工場を構える、グローバル企業なので
 す。
 
 オギハラと、その金型技術を支えた荻原映久氏の技術者の半世紀は、世界の
 中の日本のものづくりを語るに欠かせない、貴重な歴史です。
 
 
 オギハラの海外進出第1号は、意外なことにオーストラリアでした。
 
 昭和39年、当時のフォードオーストラリアの金型は、主に米国から輸入して
 おり、日本で100万円程度の型が800万から1,000万円ほどしていたため、日本
 の金型メーカが注目されていました。
 
 通常の3倍ほどの見積価格にしても安すぎると疑問に思われ、現場まで見に
 来た上での受注となったのでした。
 
 このときに、米国等に通用する、インチ単位の図面や部品のノウハウを手に
 したことが、後の海外進出の足がかりとなったのです。
 
 
 更にその後、旧ソ連の自動車メーカにトラック用の金型を納め、アメリカの
 現地工場立ち上げ、BIG3との丁々発止の交渉、中国・台湾・韓国の急成
 長との格闘など、めまぐるしい世界展開が続きます。
 
 更にはタイ、インド、そして南アフリカ、メキシコなど、ごく最近注目され
 始めた国々にも、「声がかかった翌朝の出社時間までに飛んでいく」ほどの
 フットワークで営業・進出を繰り返し、今日の「オギハラ」となったのです。
 
 
 しかし、グローバル化の波は、日本的な家族経営のオギハラも飲み込み、20
 03年に外資との提携直前まで追い込まれ、結局、大和証券による資本参加と
 なったことは、記憶に新しいところです。
 
 最新加工機で無人24時間加工が可能な、大手自動車メーカの金型技術、また
 躍進著しい新興国の安価な金型など、オギハラの優位は脅かされつつありま
 す。
 
 綺麗事ばかりではない、グローバルなものづくりの「過去・現在・未来」が
 見える一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 70年前まで、職人の「手作り」で金型は造られた。
 
 一体、数トンにも及ぶ鉄の塊から、どうやって「手作り」するのか。
 
 特殊な鋳物でできたカマボコ型の金型の原材に、タガネを用いて、深さ5ミ
 リ程度の溝を約100ミリピッチで縦横につけていく。
 
 溝と溝の間は100ミリ×100ミリ程度の切り餅大の山が残るが、これを再びタ
 ガネ(多くは鉄砲と呼んだエアコンプレッサを使った自動タガネ)で削り取
 っていく。
 
 おそろしく地味な作業だ。
 
 しかも1000分の1ミリ以下の誤差で削らないと、プレス機にかけてから鉄板
 が裂けたり、皺ができたりすることになる。
 
 それを手作業で作り出してきた時代が長く続いていたのである。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「グローバル化」は、日米欧だけではない。
 BRICs、東南アジア、そしてアフリカの「今」を知れ。
 
 ものづくりも、ビジネスも、「人と人」がつくる。
 本音で付き合わなければ、いいもの、いい仕事はできない。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 ビッグ3
 第2章 鉄工所の映画館
 第3章 初受注
 第4章 海を越えて
 第5章 紊乱のデトロイト
 第6章 TJ、世界自動車市場を行く
 第7章 中台韓・激動するアジア市場
 第8章 五大陸に吹く風―南ア、メキシコ
 第9章 環境へのまなざし
 第10章 世界市場、ふたたび
 終章(あとがきに代えて) 培った技を継承するまで
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・オギハラ
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『世界の自動車を造った男』
 
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January 24, 2007

絵とき ポカミス撲滅大全

Pokamiss
 【今週の一冊】
 ●『絵とき ポカミス撲滅大全』

  著:エスピイエス経営研究所(日刊工業新聞社)
  2001.9 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『実際に品質改善をすすめていくには、現場をよく知っている貴方が
 
                       やってみせることである。
 
   ワンタッチゲージやポカミス対策ができるようになったら、
   
               仲間を増やすこと・・・それが仕事である』


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 月曜日、会社に行くと時々、作業着ではなくGパンを履いた人が、バツの悪
 そうな顔で朝礼に出てくることがあります。
 
 そう、洗濯した作業着を「うっかり」忘れてくるのです。
 
 うっかり寝過ごしたり、うっかり落し物をしたり。
 
 我々は、日頃、数えられないほど「うっかり」を繰り返している「八兵衛」
 です。
 
 しかし、ものづくりの現場では、一度「うっかり」=ポカミスをやらかし、
 流出してしまうと、品質を損ない、ユーザーを傷付け、企業に甚大な損害を
 もたらすことに繋がります。
 
 この「ポカミス」を「よける」、「ポカヨケ」のノウハウをまとめた指南書
 が、今回取り上げる書籍です。
 
 
 「ポカミス」は「間違い」と「忘れる」の二つに大別できます。
 
 これらは確かにオペレータのヒューマン・エラーとして計上されますが、果
 たしてオペレータだけの問題なのでしょうか。
 
 「なぜ、間違うのか?」
 
 それは、見にくい・小さい・似ている・並んでいる・動きが大きすぎる・中
 断・壊れている・記憶・騒音・照明、などに原因があります。
 
 「なぜ、忘れるのか?」
 
 それは、疲れている・記憶力、注意力の低下・集中力がなくなる・作業の中
 断・慣れ・惰性、などに原因があるのです。
 
 これらの問題を引き起こす状況、環境を具体的に調べてみることで、ポカミ
 スの真因を洗い出し、対策へと繋がっていきます。
 
 
 ここで、不良の原因を潰すことが重要なのであり、ブザーやカウンタ・ゲー
 トを作ることは「手段」であることを忘れてはなりません。
 
 すなわち、どんな良いポカヨケを設置しても、良品・不良品はラインでの工
 程、作業、設備で決まります。
 
 ポカヨケでは、不良流出防止はできても、決して良い製品を作ることはでき
 ないことを、ハッキリ認識せねばなりません。
 
 
 安価で簡単なポカヨケを設置して、不良を選別することは、カイゼンのステ
 ップです。
 
 そして、源流の品質改善を実施して、早くポカヨケを外せるようにすること
 こそ、ポカヨケを設置する真の目的と言えるでしょう。
 
 本書に掲載された多彩なポカヨケのアイデアは、そのカイゼンステップを、
 ぐっと加速させる知恵の結晶の数々です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 組立作業では、左手を治具にしている場合が多い。
 
 手は治具にあらず。
 
 本来「治具」とは、投げ込めば「治(おさ)め具」にセットされるべきもの
 である。
 
 すなわち、ラフガイドと本セットの二段構えの治具にすべきである。
 
 そこにポカヨケなり、検査装置なり、跳ね出しの道具なりの知恵をつけて、
 ノウハウにすることが求められている。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 ポカヨケを積極的に取り入れよ。
 次にポカヨケがいらない(ポカが起きない)状態に、源流を改善せよ。
 
 5Sのないところに、現場改善は始まらない。
 徹底的に実施すれば、次々にやるべきことが「看えて」くる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 1 ポカミスとは、ポカヨケの真の狙いとは
 2 ポカミスの真因に迫り、ポカヨケ対策の根本を考える
 3 ポカミス撲滅のための体質改善と仕組みづくり
 4 チェックシートによる改善着眼の仕方
 5 フローチャートによるポカミス対策・改善の進め方
 6 センシング機器を活用した簡便ポカヨケ
 7 絵で見るポカミス撲滅事例
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『絵とき ポカミス撲滅大全』
 
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January 19, 2007

誰が本当の発明者か

Daregahontounohatumeisyaka
 【今週の一冊】
 ●『誰が本当の発明者か』
  発明をめぐる栄光と挫折の物語

  著:志村 幸雄(講談社)
  2006.8 / ¥987

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『我々は発明の恩恵によらねば生きてゆけないのであり、
 
     単に既になされた発明に依存するだけでなく、
        
       新しい未だ存在しない未来の発明の見込みにも依存している』

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 これまで、各国毎に出願しなければならなかった特許について、相互認証す
 るための検討が始まろうとしています。
 
 日欧の「先願主義」に対し、アメリカの「先発明主義」が大きく制度が異な
 っていましたが、前者への統一が図られようとしています。
 
 今後の紆余曲折が予想されますが、発明者にとって、企業にとって、大きな
 ニュースとなっています。
 
 
 ところで、「発明者」とは、一体誰のことでしょう?
 
 「そんなん、最初に発明したもんのことやないけ!」と怒られそうですが、
 そう簡単に特定できないことが、本書を読めば分かります。
 
 きらびやかな発明家の裏に見え隠れする、人間臭く、利害が複雑に絡んだ舞
 台裏を覗いてみましょう。
 
 
 まず、「発見」と「発明」、また「発明」と「改良」が明確でないことに、
 理由の一つがあります。
 
 一般には、科学的な新知見が発見、技術的な新規物が発明とされますが、科
 学技術が深化、多様化している今日では、科学と技術は互いに接近し、その
 境界は明確ではなくなっています。
 
 例えば、「青色発光ダイオード」で一躍名を馳せた、中村修二氏の場合、最
 初に窒化ガリウムで発光現象を確認した、赤碕勇氏と、実用化に供した中村
 氏の役割の評価は、難しいところです。
 
 
 また、世界を変えるような大発明が、異なる発明者によってほぼ同時期に、
 まったく別々に成し遂げられることがあります。
 
 例えば、ダイムラーとベンツが、同じドイツの100キロ程しか離れていないと
 ころで、ほぼ同時期にガソリンエンジン車を発明しています。
 
 また、電話の発明と言えばベルの名が挙がりますが、同じ米国内で独自に電
 話を考案したグレイが、ベルと同日にわずか2時間遅れで特許を申請してい
 るのです。
 
 さらに無線電信の発明者についても、西(イタリア)のマルコーニか、東(
 ロシア)のポポフか、先行性が議論されるところです。
 
 このように、同じ頃に同じ発明がなされるのは、単なる偶然の一致というよ
 り、その時代ならではのシーズ(種)とニーズ(要求)に根ざした必然的な
 出来事とも捉えられるでしょう。
 
 
 エジソンやアークライトなど歴史上「発明者」と呼ばれる人たちの裏側や、
 日本が誇る発明家でありながら、しいたげられた高峰譲吉や西澤潤一など、
 古今東西の特許論議は、一読の価値ありです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 本当の発明者は誰かという議論になって、よく異論・反論が出るのが「映画
 」である。
 
 米国人ならば「エジソン」と答えるが、フランスでは「リュミエール兄弟」
 と主張して譲らない。
 
 エジソンは、ローラにかかったフィルムを回して覗き込む「覗き箱方式」の
 発明者とされ、一方、今日の映画の方式である「映写方式」はリュミエール
 兄弟が発明者とされる。
 
 
 ところが、エジソンにもリュミエール兄弟にも、その下地となった先見的発
 明があった。
 
 英国の写真研究家、エドワード・マイブリッジは、競馬審判用に競争路の片
 側に12台のカメラを並べ、馬がその前を通ると順次糸が切れ、シャッター
 が連続的に切れる仕掛けを作った。
 
 マイブリッジはこの成果を全米講演旅行で披露し、その途中でエジソンを訪
 問しているのだ。
 
 
 また、フランスのエティンヌ・マレーは、円形の写真乾板を回転写真を撮る
 「マレーの写真銃」を発明している。
 
 引き金を引くと乾板が間欠的に回転し、被写体を撮影する仕組みで、映写機
 にかけると文字通り「動く写真」となり、原理的には世界最初の「映画」で
 ある。
 
 発明から4年後、マレーはこのカメラを携えてエジソンを訪問し、その詳細
 を語りつくし、エジソンに数日貸し出しまでしているのである。
 
 
 こうした一連の出来事が、エジソンの発明に無関係だったはずはない。
 
 しかし、今日では、マイブリッジもマレーも、映画の発明者とはされていな
 い。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 発明は、発明者の情熱と、「時代」が生む。
 時には非情とも思える「同期性」を持って。
 
 あなたが今、考えていることを、きっと誰かも考えている。
 オリジナリティとスピードで、出願を急げ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 序章 なぜ発明者の特定がむずかしいのか
 第1章 発明か改良かをめぐる攻防
 第2章 特許裁判が分けた明暗
 第3章 巨人の影に泣いた男たち
 第4章 国の威信をかけた先陣争い
 第5章 並び立つ発明者
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 志村 幸雄
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『誰が本当の発明者か』
 
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January 18, 2007

時計屋が育てた世界のベストセラーマシン

Cincom
 【今週の一冊】
 ●『時計屋が育てた世界のベストセラーマシン』
  シチズン「Cincom」物語

  著:春田 博(日刊工業新聞社)
  2006.10 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『低迷する日本のモノ作りに必要なのは、作り手の「美学」である。
 
   「美学」とはイコール、人の「器」のことであり、
                   「器」とは「魂」のことである。
 
       この「魂」が今、日本経済を支える技術者に求められている』

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 「シチズン」といえば、もちろん「時計」。
 
 一方、精密な時計を作るためには、当然精密な加工機械が必要であり、その
 自動機を内製し、そして外販していることは、一般的にはあまり知られてい
 ません。
 
 加工機械専門メーカーがしのぎを削る中で、その「時計屋」シチズンが世に
 送り出した自動旋盤「Cincom(シンコム)」シリーズが、世界の40%以上
 というトップシェアに至ったのはなぜか。
 
 その秘密を探ってみましょう。
 
 
 今でこそ日本の工作機械は、世界をリードする力強いマザーマシンとしての
 地位を築いていますが、半世紀前までは欧米の力は抜きん出ていました。
 
 シチズンは創業時から時計製造用の工作機械を作っていましたが、いずれも
 基本コンセプトは外国機械の模倣でした。
 
 「こんなことをしていては、将来も夢もない」と奮起し、未だ国内の専業工
 作機械業界でもNC(数値制御)工作機械の開拓期であった1962年、自前の
 NC機械の開発を始めました。
 
 NC工作機械の対象に選んだのは、時計製造用自動機に多数使用されていた
 「カム」を加工する、カム成形機であり、65年に国内屈指の早さで市場に送
 り出したのでした。
 
 
 当時、カム式自動旋盤を外販していたシチズンでしたが、カム式は段取替が
 頻繁であり、複雑な形状を一気に加工するには限界がありました。
 
 そこで、「カム式自動旋盤からカムをなくそう」を合言葉に、「夢」に挑戦
 したのです。
 
 「カム」の加工を近代化するために開発したNC技術を活用し、「カム」を
 なくす自動旋盤の開発に取り組むという、皮肉な展開であり、「NC化して
 も上手くいかない」というのが世の定説でしたが、これが新しい「工作機械
 NC時代」の幕開けとなりました。
 
 
 後に「ドリームマシン」といわれた名機「シンコムF-12」は、五角形の回転
 刃物台を2個対向位置に配置し、一方のタレットに取り付けた切削工具で加
 工中に、他方のタレットで次の切削工具の選択を行い待機し、非加工時間を
 最小とする工夫が凝らされていました。
 
 その他独特の構造で、剛性と精度の向上を図り、またこれまでの工作機械に
 ない清潔感ある斬新なデザインが受け、シチズンシンコムは量産体制が間に
 合わないほどの大ブレイクを迎えたのです。
 
 
 その後、専門工作機メーカーもこぞってNC化を進めてきたことはご承知の
 通りですが、シンコムは同一シリーズで累計5万台を間もなく迎える、工作
 機械としては異例のベストセラーとして君臨しています。
 
 汎用機が自動旋盤に近づいてきた昨今、かつてカム式からNC化に進んだよ
 うな画期的な技術開発ができるのか。
 
 シチズンのエンジニアたちは新たな「夢」を描き、実現するために模索を続
 けています。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 シチズンの軽井沢工場は、工場そのものを展示場とし、日常業務を全てオー
 プンとしている。
 
 中でも見ものなのが「きさげ」だ。
 
 「きさげ」は仕上げ面をさらに精密に仕上げるために、手作業で凸部分を削
 り取っていく作業だ。
 
 大きく分けて、日本式の「腰で押す」方法と、欧州式の「腕で引く」方法と
 がある。
 
 どちらの方が仕上がり具合がよいかは別として、日本では珍しい欧州式も含
 めて、シチズンでは両方の技術を修得している。
 
 
 工作機械に「きさげ」が必要なのは言うまでもないが、この技術を独学で身
 に付けることは難しい。
 
 匠の代表格と言われるだけに、技能伝承なくして覚えられるものではない。
 
 シチズンでは「きさげ」担当者が4名おり、40年近く取り組んできたベテ
 ランが、30代、20代の後進を、やってみせ、やらせて指導している。
 
 現在は作業全体にしめる「きさげ」の比率はわずか数%で、「きさげ」を必
 要としない機械が多くなっているが、担当者に「手当て」を支給してまで、
 この技能を伝承することを大切にしているのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 技術者は、自由な発想で「夢」を語れ。
 「夢」-「現実」=「今、取り組むべき仕事」と考えよ。
 
 「汎用品」をブラックボックスで使うな。
 内製化して取り込むことで、機械がレベルアップできる余地がある。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 火 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 シチズンは元々工作機械屋だった
 第2章 シチズン精機設立と軽井沢工場
 第3章 シンコムを売りまくろう
 第4章 会社を変える、工場を変える
 第5章 次の一手は海外にある
 第6章 名実ともに世界ナンバーワンにしたい
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・シチズン工作機械 Cincom
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『時計屋が育てた世界のベストセラーマシン』
 
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January 11, 2007

この国の魂

Konokuninotamashii
 【今週の一冊】
 ●『この国の魂』
  技術屋が日本をつくる

  著:立花 啓毅(二玄社)
  2006.10 / ¥1,260

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『低迷する日本のモノ作りに必要なのは、作り手の「美学」である。
 
   「美学」とはイコール、人の「器」のことであり、
                   「器」とは「魂」のことである。
 
       この「魂」が今、日本経済を支える技術者に求められている』

-----------------------------------

 以前、米経済紙『ビジネスウィーク』に、「日本車は日本人のイメージとそ
 っくりで、おもしろくない」と書かれたことがあるそうです。
 
 それこそ「おもしろくない」記事ですが、レクサスが苦戦し、欧米高級車が
 依然、人気を誇っている現状を見及ぶに、頷かざるを得ない部分もあります。
 
 筆者は、「我々自身が面白みや文化、哲学を持たないからクルマもそうなっ
 てしまう」と断じます。
 
 日本車の中でも名車と謳われる、ユーノス・ロードスターやRX-7のプロジェ
 クトリーダーを歴任した筆者ならではの、辛口「ものづくり」論に耳を傾け
 てみましょう。
 
 
 繊維産業はイギリスの産業革命を機に機械化され、大量生産されるようにな
 ると、イギリスからコストの安いアメリカ東海岸に移りました。
 
 次に西海岸へ、そして日本へ。更に韓国、中国へと移行しました。
 
 家電も同じ運命をたどっているように、商品は完成域に達すると、人件費の
 安い地域へ流れていきます。
 
 これを「商品循環論」といい、この風は否応なく世界中に吹き荒れています。
 
 
 クルマも技術的には完成域に達しており、ヨーロッパでは影の薄いメーカー
 は姿を消し、アメリカではビッグスリーも苦境に立たされています。
 
 では日本のメーカーがこの「商品循環論」の風に吹き消されないためには、
 どうすればよいのか。
 
 今や中国の独壇場となった繊維産業であっても、西陣織や紬など、個性や文
 化的背景のあるものは生き残り、世界から尊敬されています。
 
 この個性や文化こそ、「美学」であり「魂」です。
 
 世界一の品質と生産台数を誇る日本車に足りないもの、それがこの「魂」だ
 と筆者は声高に叫んでいるのです。
 
 
 過去の実績の積み重ねから、コンピュータの解析で試作車の完成度は、初め
 から80%程度にまで到達できるようになりました。
 
 しかし、「ニッパチの法則」と言われるように、残りの2割を高めるには、
 8割の力が必要とされ、現在のクルマは、まさに最後の詰めにエネルギーを
 かけるか否かで決まります。
 
 最後の20%を持ち上げる力こそが、技術屋の「魂」であり、クルマを総合
 的に判断できるセンスなのです。
 
 
 筆者はこの「魂」を、教育論や国家論まで掘り下げて語っているように、も
 のづくりの原点は、小手先ではない、人間性に深く根ざしたものであること
 を気付かせてくれる一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 デザインとは、「行動原理」に沿ったものでなければならない。
 
 「行動原理」とは、例えば次のようなことだ。
 
 ドアのインナーハンドルを搭乗者により近づけると、使い勝手は悪いが、身
 体をひねってドアを開けようとする。
 
 すると上半身が後ろを向き、自然に後方を確認してからドアを開くことにな
 る。
 
 意識せずとも安全を確認することができるわけだ。
 
 デザインとは、人の動きの中に溶け込んだ造詣でなければならないのだ。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 流行を追うな。大衆に媚びるな。
 人の意見を取り入れすぎると、平均点のつまらないものにしかならない。
 
 器は感動の量に比例する。
 器は愛することの喜びと、悔し涙の回数に比例するのだ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 モノってなんだろう?
 第2章 魂あるクルマ
 第3章 モノ作りの要諦
 第4章 日本は腑抜けになった
 第5章 オトコとしての価値
 第6章 視点を変えると世界が見える
 第7章 作り手としてのプライドを見せよ
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・マツダ ロードスター
 ・出版社 二玄社
 ・アマゾン 『この国の魂』
 
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