発明家たちの思考回路
【今週の一冊】
●『発明家たちの思考回路』
奇抜なアイデアを生み出す技術
著:エヴァン・I・シュワルツ (訳)桃井緑美子(ランダムハウス講談社)
2006.1 / ¥1,995
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◆ 燃える一言 ◆
『知性にパワーをそそぐエネルギーを誰でも同じだけもっている。
それを正しい経路に導き、
思いがけない神経回路の結合をつくりつづければ、
発明という特別な創造性が生まれるのだ』
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エジソンよりも数ヶ月も先に、スワンが白熱電球の実演をしてみせたのは、
有名な話です。
しかし、白熱電球の「発明者」として、富と名声を受けたのがエジソンであ
ったのはなぜでしょうか。
一般に発明家とは、ヒット製品のアイデアを最初に思いついた人と思われて
いますが、筆者は「さまざまな分野からさまざまなアイデアを集めて、他人
の思い描いたことを実現するもののことだ」と言います。
だから、発明とは特定の分野の科学者やエンジニアだけの才能ではなく、「
発明は学び取ってどんな領域にも応用できる分野」と考えるべきであり、そ
の手法を、古今東西の事例から本書は紹介しています。
発明は「解決する問題」が新しくなくてもかまわないのです。
新しくなければならないのは、「問題のとらえ方」です。
例えば、電話があったら便利だ、と最初に気付いたのはグラハム・ベルでは
なく、ベルが通話に成功する15年も前から、電話をつくろうとしていた発明
家たちがいました。
しかし、彼らは「トン・ツー」の電信装置の延長に考えていたため、複雑で
振幅のある人間の話し声を送信することはできませんでした。
一方、ベルは電気や電信の知識はなかったものの、耳の不自由な母をもった
ために、「耳と音」を理解しようとする欲求から、音の振動を「連続した」
電流のパターンで遅れることを発見したのです。
また、すばらしい可能性を創出し、解決すべき問題を正しく突きとめても、
問題解決への正しい道を知っているとは限りません。
発明家はこのような窮状をバネとして、同じ障害に取り組んだ者が試みて行
き詰った原因を調べ、前進します。
古くは、ライト兄弟は初飛行を成功させるまでに、あらゆる飛行に関する文
献を調査し、問題は「動力」ではなく「制御とバランスの維持」であると気
づき、翼の位置を制御する「たわみ翼」を発明しました。
最近の事例であれば、CTスキャン装置は従来、全身を走査するのに何分も
かかり、患者が呼吸をするだけで画像が乱れるやっかいな代物でした。
その解決策は「X線検出装置を増やすか、検出器の速度を上げる」ことと考
えられていましたが、カール・クロフォードは、「間を空けて1枚ずつ断層
撮影するのではなく、らせん状に検出器を回転させて連続的に撮影する」新
たな方法に置き換えました。
それは次なる新たなデータ処理方法という問題を生みましたが、これらの壁
をよじ登ってこそ、世の中を変える「発明」となったのです。
「イノベーション」が合言葉のようになっている今こそ、「研究・開発」の
前に、「発明」を積極的に生み出す努力が求められています。
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◇ カンドコロ! ◇
「アナロジー(類推)」は、発明家の発想のエネルギーだ。
問題の解決(ターゲット)に、過去の類似した経験や知識(ベース)を利用
するのがアナロジーの応用だ。
発明家はこの対応付けが得意だが、パターン認識ができれば誰にでもできる。
レオナルド・ダ・ヴィンチが思いついた「空飛ぶ機械」は、回転して木材を
持ち上げる「ねじ」のアナロジーで、「エアスクリュー(プロペラ)」の着
想を得た。
ウディ・ノリスはオーディオシステムに最後に残った機械部品、「スピーカ
ー」をなくすための方法を、アナロジーで探した。
そして持ち込んだのは、アートの分野からだった。
画家が絵の具を混ぜて新しい色を作り出す、「混ぜる」と言う行為から、空
気中で音を作るには、周波数の異なる「音」を混ぜて新しい音波をつくれば
いい、と考えた。
10万ヘルツと10万1,000ヘルツの超音波を足したら、可聴域の1,000ヘルツの
音が作れないかと。
もちろん、テストは簡単にはできず、同じ着想で研究した大企業は次々と断
念したが、ついにノリスは二つの超音波発信器からなる、スピーカーの一切
ない「ハイパーソニック・サウンド」を作り出したのだ。
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◆ 熱い行動 ◆
「必要は発明の母」ではない。「発明は必要の母」だ。
問題を感じていないところに問題を見つけてこそ、必要が明らかになる。
「インスピレーション」も「セレンディピティ」も偶然ではない。
偶然は準備のできている者だけに訪れる。
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◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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発明の原動力は何か
可能性を創出する
問題をつきとめる
パターンを認識する
チャンスを引き寄せる
境界を横断する
障害を見極める
アナロジーを応用する
完成図を視覚化する
失敗を糧にする
アイデアを積み重ねる
システムとして考える
エピローグ―もっと上を、もっと外をめざして
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◆ 関連ページ ◆
・ハイパーソニック・サウンド
・出版社 ランダムハウス講談社
・アマゾン 『発明家たちの思考回路』
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