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February 21, 2007

発明家たちの思考回路

Hatumeikatashinosikoukairo
 【今週の一冊】
 ●『発明家たちの思考回路』
  奇抜なアイデアを生み出す技術

  著:エヴァン・I・シュワルツ (訳)桃井緑美子(ランダムハウス講談社)
  2006.1 / ¥1,995

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『知性にパワーをそそぐエネルギーを誰でも同じだけもっている。
   
     それを正しい経路に導き、
          思いがけない神経回路の結合をつくりつづければ、
  
                発明という特別な創造性が生まれるのだ』


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 エジソンよりも数ヶ月も先に、スワンが白熱電球の実演をしてみせたのは、
 有名な話です。
 
 しかし、白熱電球の「発明者」として、富と名声を受けたのがエジソンであ
 ったのはなぜでしょうか。
 
 一般に発明家とは、ヒット製品のアイデアを最初に思いついた人と思われて
 いますが、筆者は「さまざまな分野からさまざまなアイデアを集めて、他人
 の思い描いたことを実現するもののことだ」と言います。
 
 だから、発明とは特定の分野の科学者やエンジニアだけの才能ではなく、「
 発明は学び取ってどんな領域にも応用できる分野」と考えるべきであり、そ
 の手法を、古今東西の事例から本書は紹介しています。
 
 
 発明は「解決する問題」が新しくなくてもかまわないのです。
 
 新しくなければならないのは、「問題のとらえ方」です。
 
 例えば、電話があったら便利だ、と最初に気付いたのはグラハム・ベルでは
 なく、ベルが通話に成功する15年も前から、電話をつくろうとしていた発明
 家たちがいました。
 
 しかし、彼らは「トン・ツー」の電信装置の延長に考えていたため、複雑で
 振幅のある人間の話し声を送信することはできませんでした。
 
 一方、ベルは電気や電信の知識はなかったものの、耳の不自由な母をもった
 ために、「耳と音」を理解しようとする欲求から、音の振動を「連続した」
 電流のパターンで遅れることを発見したのです。
 
 
 また、すばらしい可能性を創出し、解決すべき問題を正しく突きとめても、
 問題解決への正しい道を知っているとは限りません。
 
 発明家はこのような窮状をバネとして、同じ障害に取り組んだ者が試みて行
 き詰った原因を調べ、前進します。
 
 古くは、ライト兄弟は初飛行を成功させるまでに、あらゆる飛行に関する文
 献を調査し、問題は「動力」ではなく「制御とバランスの維持」であると気
 づき、翼の位置を制御する「たわみ翼」を発明しました。
 
 最近の事例であれば、CTスキャン装置は従来、全身を走査するのに何分も
 かかり、患者が呼吸をするだけで画像が乱れるやっかいな代物でした。
 
 その解決策は「X線検出装置を増やすか、検出器の速度を上げる」ことと考
 えられていましたが、カール・クロフォードは、「間を空けて1枚ずつ断層
 撮影するのではなく、らせん状に検出器を回転させて連続的に撮影する」新
 たな方法に置き換えました。
 
 それは次なる新たなデータ処理方法という問題を生みましたが、これらの壁
 をよじ登ってこそ、世の中を変える「発明」となったのです。
 
 
 「イノベーション」が合言葉のようになっている今こそ、「研究・開発」の
 前に、「発明」を積極的に生み出す努力が求められています。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「アナロジー(類推)」は、発明家の発想のエネルギーだ。
 
 問題の解決(ターゲット)に、過去の類似した経験や知識(ベース)を利用
 するのがアナロジーの応用だ。
 
 発明家はこの対応付けが得意だが、パターン認識ができれば誰にでもできる。
 
 レオナルド・ダ・ヴィンチが思いついた「空飛ぶ機械」は、回転して木材を
 持ち上げる「ねじ」のアナロジーで、「エアスクリュー(プロペラ)」の着
 想を得た。
 
 ウディ・ノリスはオーディオシステムに最後に残った機械部品、「スピーカ
 ー」をなくすための方法を、アナロジーで探した。
 
 そして持ち込んだのは、アートの分野からだった。
 
 画家が絵の具を混ぜて新しい色を作り出す、「混ぜる」と言う行為から、空
 気中で音を作るには、周波数の異なる「音」を混ぜて新しい音波をつくれば
 いい、と考えた。
 
 10万ヘルツと10万1,000ヘルツの超音波を足したら、可聴域の1,000ヘルツの
 音が作れないかと。
 
 もちろん、テストは簡単にはできず、同じ着想で研究した大企業は次々と断
 念したが、ついにノリスは二つの超音波発信器からなる、スピーカーの一切
 ない「ハイパーソニック・サウンド」を作り出したのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「必要は発明の母」ではない。「発明は必要の母」だ。
 問題を感じていないところに問題を見つけてこそ、必要が明らかになる。
 
 「インスピレーション」も「セレンディピティ」も偶然ではない。
 偶然は準備のできている者だけに訪れる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 発明の原動力は何か
 可能性を創出する
 問題をつきとめる
 パターンを認識する
 チャンスを引き寄せる
 境界を横断する
 障害を見極める
 アナロジーを応用する
 完成図を視覚化する
 失敗を糧にする
 アイデアを積み重ねる
 システムとして考える
 エピローグ―もっと上を、もっと外をめざして
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・ハイパーソニック・サウンド
 ・出版社 ランダムハウス講談社
 ・アマゾン 『発明家たちの思考回路』
 
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February 15, 2007

負けるな町工場

Makerunamachikoujyo
 【今週の一冊】
 ●『負けるな町工場』
  ハンデをプラスに変える発想法

  著:中里 良一(日刊工業新聞社)
  2002.6 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『今日、長引いた不況で町工場の経営に夢も希望も
 
              なくしている経営者は大いに違いない。
   
  しかし、町工場の一番大きな財産は、
  
    “小さいからこそ自分の好きな夢がみられる”ことであろう。
      
                     その夢をなくしてはいけない』

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 「町工場」と聞いて、イメージするのはどんな姿でしょうか。
 
 狭い路地裏にある油にまみれた薄暗い工場。
 納期に追われ、薄汚れた作業服で、黙々と働く年老いた社員。
 仕事量の確保や、資金繰りに汲々とする経営者―。
 
 そんな、夢も希望もない、いわゆる「3K(暗い、汚い、きつい)」職場の
 代表のように描かれることが多いことでしょう。
 
 しかし、本書の著者が経営する「中里スプリング」は、規模こそ「町工場」
 ではあるものの、どんな大企業にも劣らない「楽しい、夢の溢れる」工場で
 す。
 
 
 例えば、一年間で最も頑張った社員に対する報酬は、金一封、なんてもので
 はなく、「会社の設備と材料を自由に使って自分の好きなものを作ることが
 できる権利」が一つです。
 
 ばね材料を利用して、ロボットやカブトムシなど自由に作って良い権利であ
 り、これが新たに「ワイヤーアート」という新しい事業のベースにもなって
 いるのです。
 
 さらにもう一つ与えられる権利が、自分の担当しているお客さんの中で、自
 分が親しみを持てない取引先を「リストラ」する権利です。
 
 ちょっと驚くべきことですが、これも社員が楽しく仕事をするためであり、
 「取引先は取引額でなく、好き嫌いで判断する」のが中里流なのです。
 
 
 また、コンサルタントのセンセイに言わせれば、町工場は「作業環境が悪い」
 「整理が悪い」「いい設備がない」など問題点だらけですが、それを「欠点
 だらけ」ではなく「個性に溢れている」のだと、発想の転換を促します。
 
 もし小さくて薄汚いけれど行列のできるウマいラーメン屋と、オシャレで広
 々としているが、食べに行ってもこれといった特徴のないレストランとであ
 れば、多くの人は前者に行くでしょう。
 
 町工場も、同じ労力をかけるのならば、不慣れな社員教育や生産管理に向け
 るより、徹底して得意な分野を盛り上げていった方が社員も楽しいし、変に
 ぎくしゃくしたところがなくなります。
 
 本当に優秀な技術や製品ならば、町工場のつまらない欠点なんか、どうでも
 いいのです。
 
 
 町工場が本当に何とかしなくてはいけない「3K」とは、「企画力がない」
 「既成概念から抜け出せない」「希望がない」の3つであり、この3Kから
 抜け出すことが、町工場の未来を拓くのです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ハンデをプラスに変える発想法は、「負けるな町工場!勝ち上れ!」
 
  負 負の連鎖から抜け出し
  け 健全な経営をして
  る 留守番役の脇役で終わるのではなく
  な なるほどと思わせる技術を持ち
  町 町にとって必要不可欠な大きな歯車となり
  工 工程を楽しむモノづくりを行う
  場 場所であると自覚すべし
  ! !
  勝 勝利を目指して
  ち 力を合わせて
  上 上昇気流の風を呼び寄せ
  れ 劣等感を自信に変えよう
  ! !

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 ◆ 熱い行動 ◆
 ステレオタイプな批評や講釈は、現場では間に合わない。
 「中小企業だから」「下請けだから」と、愚痴をこぼさず汗こぼせ。
 
 ものづくり、人づくりは楽しいもの、楽しませるものだ。
 会社を大きくするのは、金を儲けるのは何のためか。原点を忘れるな。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 生きている町工場
 第2章 求められる経営者像
 第3章 小さな会社がやるべきこと
 第4章 情報化時代の町工場
 第5章 負けるな町工場
 第6章 五〇音別経営名言集
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 中里スプリング
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『負けるな町工場』
 
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February 14, 2007

日本ものづくり優良企業の実力

Nipponnmonodukueiyuuryoukigyou
 【今週の一冊】
 ●『日本ものづくり優良企業の実力』
  新しいコーポレート・ガバナンスの論理

  著:土屋勉男(東洋経済新報社)
  2006.11 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『日本経営は、ものづくり現場における業務執行能力を生かした
 
      経営が基本であり、人間を大切にし、その能力を組織的に
 
                      改善することを重視する。

       それが差別化された価値創造の源泉であることは間違いない』

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 ※本記事は07年初にメルマガで配信した内容です。

  明けて2007年、穏やかな正月休暇を過ごされた方も多いことでしょう。
 
 新年にあたり、「ものづくり」を大所高所から眺めるべく、今回は日本のも
 のづくり優良企業の「経営」にスポットを当てた書籍を紹介しましょう。
 
 
 SOX法やTOC、ブルーオーシャン戦略…
 
 アメリカ発の企業経営の法律や手法は、手を変え品を変え色々出てきます。
 
 しかし、トヨタやホンダ、キヤノンや松下電器など、日本を代表する「もの
 づくり」企業は、決して米国型の経営手法を真似たものではありません。
 
 
 米国型の企業統治が、社外取締役が中心になって経営者(CEO)を監督す
 るのに対して、日本型は経営監督と執行が未分化であることが「弱点」と指
 摘されることがあります。
 
 また戦略面でも、戦略立案と執行が明確に分離された米国に対し、日本では
 執行役が経営方針を決議しつつ執行する、これも未分離な体制となっていま
 す。
 
 ところが、上記に代表される優良企業は、その弱点とされる監督と執行、戦
 略と執行が未分離である体制を活かし、本業に軸足を置き、「現場」を知り
 抜いた社内取締役が中心となったコーポレート・ガバナンスを実現している
 のです。
 
 
 例えば、キヤノンは取締役25名に対し、社外取締役は採用していません。
 
 高度に多角化した技術分野の経営判断を、月1度程度の取締役会に社外から
 参加しても、適切な経営判断や監督機能が発揮できないと判断し、実質は、
 年40~50回に及ぶ経営会議などで常時審議されるのです。
 
 経営の重要事項に対して適切な経営判断を行うためには、役員同士の価値観
 や経営理念の共有が不可欠です。
 
 そこで、同社では社長や役員を中心に「毎日」朝8時から9時まで「朝会」
 が開催され、そこで経営判断のための情報収集や、役員の育成が行われます。
 
 これが米国流とは異なる「キヤノン流のコーポレート・ガバナンス」の仕組
 みの一つとなっているのです。
 
 加えて、部門毎による事業の執行に対し、内部統制を図る全社横断的な委員
 会等の組織(企業倫理委員会、情報開示委員会など)によって横串を通し、
 トップの方針を浸透させる仕組みをとっていることも特徴の一つです。
 

 日本企業の強みといえば、ものづくり現場の能力構築能力であると分析され
 てきましたが、更にその執行・統治においても、日本独自のスタイルを磨き
 上げた企業こそが、ものづくり力を活かし切れるのです。
 
 この「日本型の強み」を基盤としつつも、米国型のよさを学習し、経営手法
 そのものを「カイゼン」することこそ、今後の突破力の源泉であることを、
 最後に筆者は指摘しています。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ホンダは創業以来、経営理念先導型、それも創業者「本田宗一郎」の経営理
 念に先導されたユニークな企業としての特徴を持っている。
 
 近年、本田宗一郎と同じ釜の飯を食った仲間は、少しずつ引退し、今では経
 営の役員層や高齢層の一部に限られてきているのが実情である。
 
 それでも、創業者の経営理念を誇りとして大事に守り、それを経営に生かす
 不断の努力を続けている。
 
 それが結果として、同社を他社と差別化されたユニークな経営スタイルを持
 つ企業に育て上げてきた。
 
 その経営理念は「ホンダフィロソフィ」として、基本理念、社是、運営方針
 からなる企業哲学に体系化されている。
 
 そして、難しい経営判断の局面では、この「ホンダフィロソフィ」を拠り所
 とし、共通の「創業者」経営理念のもとで各取締役が「ワイガヤ」の精神に
 則って喧々諤々の議論を行うことで、経営判断の精度を上げているのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 マネジメントもガバナンスも、時代や流行に振り回されるな。
 短期的な利益や評価のために、自社の強みを殺すことになる。
 
 現場のものづくりと経営は不可分だ。
 戦略と執行のPDCAを速やかに回す「しくみ」づくりがキモだ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 日本経営の本当の「強み」
 1 日本企業が直面している課題
 2 コーポレート・ガバナンスとは何か
 3 日本のものづくり優良企業のコーポレート・ガバナンス事例研究
 4 日本経営の戦略とコーポレート・ガバナンス―その特性と相互連関性
 5 日本経営のコーポレート・ガバナンス―今後の展望と課題
 補論 日本ものづくり優良企業の新しい戦略構想
  ―自動車メーカーの垂直統合型モデルの考え方
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 土屋勉男
 ・キヤノン
 ・本田技研工業
 ・出版社 東洋経済新報社
 ・アマゾン 『日本ものづくり優良企業の実力』
 
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February 07, 2007

こんなものまでつくれるの?

Konnamonomadetukureruno
 【今週の一冊】
 ●『こんなものまでつくれるの?』
  身近な材料を使ったものづくり

  編:日本機械学会, 日本産業技術教育学会(技報堂出版)
  2006.10 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『「先生!固定の大切さを実感しました。
 
             やはり、体験するとしっかり理解できます」
   
  「そうだニャ!ものづくりのポイントは、
  
           『しっかりけがく、しっかり固定する』だニャ!!』

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 ※本記事は06年末にメルマガで配信した内容です。

 年も押し迫り、子供さんが冬休みに入ったお父さんもたくさんおられること
 でしょう。
 
 恒例の(?)長期休暇企画、「こどもと学ぶものづくり」本を今回も紹介致
 しましょう。
 
 といっても、本書は大人でもなかなか歯ごたえのある、一ひねりしたネタが
 満載です。
 
 
 なにしろ、丸太のベンチを作るために、まず材木の伐採から!始めます。
 
 「倒したい方向にのこぎりとなたで切り込みを入れ、3分の1くらいまで入
  ったら、今度は逆側からのこぎりで切って・・」と、気合が入ってます。
 
 けがきの方法として「墨つぼ」も登場してきますから、下手な日曜大工では
 間に合わないくらい本格的です。
 
 
 更に、古代の「銅鏡」を再現しよう!というコーナーでは、銅板を切り出し
 て磨くのかと思いきや、なんと「鋳造」から始める、これまた本格的な造り
 方です。
 
 しかし、平易な言葉で砂型作りを説明してくれているお陰で、鋳造の基礎知
 識(抜き勾配のつけ方、砂型の固め方等)を、実感を持って理解することが
 できます。
 
 ネコのキャラクターに、「鋳込みのポイントは、あわてないことニャ。湯の
 温度が少し下がるのを待ってから流し込むんニャ」とか、ノウハウを解説さ
 れるとは、恐れ入ってしまいます。
 
 
 また、動力も、定番の直流モータのみならず、形状記憶合金を用いたエンジ
 ンやスターリングエンジン、更に蒸気タービンまで手作りしてしまいます。
 
 正直、熱力学や電磁気の得意でない やまさん としては、こうした「工作」
 レベルのものづくりこそが、原理を「体感」できる最短コースのように感じ
 ます。
 
 
 「科学技術立国」を標榜する日本において、実は義務教育においてものづく
 り教育はほとんど行われておらず、世界的にみて後進国の中に入っているの
 が現状です。
 
 この現状の打開策の一つとして企画されたのが本書ですが、こんな楽しく、
 工夫の余地がたくさんある「ものづくり」を小中学生が経験したならば、き
 っと彼らの人生に、大きな変化が起きるのではないか―
 
 そんな可能性を感じさせる、最新の「ものづくりの教科書」です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「手づくり磁石」を作ろう、というコーナーがある。
 
 原材料は酸化鉄の粉(バリウム・フェライト磁性粉末)95gと粘土粉末5g、そ
 して20ccの水だ。
 
 粉を混ぜて水を加えて練り固め、好きな形にしてから焼き固める。
 
 その後、着磁をすれば完成だ。
 
 これは工業的には「加圧成形」するところを「バインダ混合」「粘土成形」
 に置き換えただけで、その他は基本的に同じだ。
 
 特に上記の配分で「焼き固める」と、粘土が溶けて磁性粉末の「焼結」がで
 きる。
 
 しかもこの粘土の抜けた空隙を利用して、色が塗れる楽しい「磁石」が作れ
 るのだ。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 複雑な機械も、原理はシンプルだ。
 手づくりで体験したことが、設計・製造技術の基礎となる。
 
 木材のぬくもり、金属の光沢、切削の難しさ。
 こどもの生々しい体験が、未来の「えんぢに屋」を育てる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 古代の鏡をつくって顔を映そう
 丸太のベンチをつくろう
 暖めるだけで動くエンジンをつくろう
 形状記憶合金で車が走る
 ペットボトル風力発電機でLEDを光らせよう
 線にそって走る車をつくろう
 自然に優しい木のおもちゃをつくって遊ぼう
 アルミ缶で飛行機をつくろう
 自分だけの手づくり磁石をつくろう
 磁石の列をたどって走る車をつくろう〔ほか〕
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・日本機械学会
 ・日本産業技術教育学会
 ・出版社 技報堂出版
 ・アマゾン 『こんなものまでつくれるの?』
 
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February 01, 2007

「ひらめき」の設計図

Hiramekinosekkeizu
 【今週の一冊】
 ●『「ひらめき」の設計図』

  著:久米 是志(小学館)
  2006.6 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『いくら先を見つめたって、そんなところに未来はない。
 
      未来を見たければ、自分たちの過去を探しなさい。
   
            過去の失敗の泥の中に、未来を開く“鍵”がある』

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 ホンダの歴史の中で、陰と陽のように語られる製品があります。
 
 「陰」とは、エンジンの冷却を水冷ではなく、空冷式にしてコンパクト化を
 試み、結果として「アイデア一杯、トラブル一杯」と揶揄された小型自動車
 「H1300」。
 
 一方「陽」は、当時、それまでの1/10まで排ガスを清浄化することを義
 務付けた「マスキー法」を、世界で最初にクリアした「CVCCエンジン」。
 
 このいずれもに、設計者として参画し、1人の天才「本田宗一郎」に代わっ
 て、「凡人の集まりを束ねて創造する」方法を創り出したのが、本田技研工
 業3代目社長の、筆者 久米是志氏です。
 
 
 空冷式のH1300のエンジンは、単体ではトラブルなく動作したものの、自動車
 というシステムの中では、許容できない「発熱」が、様々なトラブルを引き
 起こしました。
 
 なぜ、失敗したのか?
 
 それは「集団による創造術」が分からず、「やりもせんで、何がわかる?」
 という宗一郎氏の口ぐせに突き動かされ、猪突猛進した結果でした。
 
 この経験と、軍事的な戦術などから類推し、久米氏は開発を「航海」に例え
 て、一連の方法論を創り出します。
 
 
 まず、「宝物を運ぶ航海に、探す航海を混在させない」。
 
 貴重な宝物をたくさん載せた航海、つまり新製品を開発する航海を安全確実
 にするため、宝物=新技術は、前もって宝探しの航海をして準備しておかね
 ばなりません。
 
 具体的には、研究開発が完了していない技術を、製品開発に持ち込むことを
 禁制としたのです。
 
 
 次に、「段階に分けて航海する」。
 
 最初は宝島のある海域に到達する航路を見つけ(原理の見極め)、次にそこ
 から島や暗礁を抜けて宝島に到達する航路を探し出し(部分の検討)、それ
 が見つかったらその周辺の様子を調査して(周辺関係の調査)、宝島へやっ
 てくる商船隊に「頼りになる海図」を提供するのです。
 
 行き詰ったら一旦引き返し、進路を見定めることが必要です。
 
 
 そして、「航海の指針を作る」。
 
 目的には「将来かくありたい」という「行動」の結果もたらされるはずの理
 想像が表現されることが肝心です。
 
 「何のために」「どのような状態になりたい」のかを明確にし、そのために
 は「どうすべきか」を細部まで落とし込いでいきます。
 
 
 最後に、「航海のチームを作る」。
 
 異質なもの同士が目的実現のために、お互い遠慮なく平等な立場で意見をぶ
 つける「チーム」が必要です。
 
 
 こうした思考の上に造られた、新しい「航海術」の実践が、CVCCエンジ
 ンであり、ホンダの創造的な組織運営の基礎となっています。
 
 その他、最近の「失敗学」にも通じる示唆にも富み、ものづくりに関して非
 常にたくさんの「気付き」を与えてくれました。
 
 尊敬する上司から借りて一気に読みましたが、手元に置きたくてすぐ買い求
 めた、2006年「イチ押し」の一冊でした。

-----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 筆者が続発する市場での不具合を教訓に、自らの経験から作り出し実行して
 きた「クレーム解決のための5原則」がある。
 
 1.事実の把握
  「知られていなかった事実」を「確実なものとして知られている事実」と
  して認識する作業。
  
  先入観のある推論を入り込ませず、何が、いつ、どこで、どのような現象
  を起こしたのか、関わり合いがあるであろう情報を集められるだけ集める
  ことが重要だ。
 
 2.原因の解明
  過去の経験や知識に基づいた推理によって、現象が起きた理由を見つける
  必要はない。
  
  どのような「もの」がどのような使用条件で、どのような「不具合現象」
  を起こしているのかという問いに、収集された事実の中から、それぞれに
  ついて何が共通であるかを抽出することだ。
  
 3.適切な対策
  原因が解明されれば、そこで見出された因果関係が働かないようにするた
  めの「適切な対策」を作り出せる。
  
 4.再発の監視
  「適切と考えられた対策」が実行された後で、実際の市場で同じような不
  具合が再発しないことを確かめる。
  
 5.源流へのフィードバック
  新しい製品開発をする技術者に、具体的事例に基づいた情報を与え、再発
  を防止するための検証の関門の供給などをフィードバックする。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「やってみもせんで、何がわかる!」
 やって(行動)みて(結果を検討)、気付くことが「創造」だ。
 
 不具合は「そんなことが起こるとは思わなかった」ものだ。
 後付けの理由ではなく、そこに至る「主観的」プロセスを追え。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 創造ということ
 第2章 嵐の中の航海
 第3章 霧の中の航海
 第4章 風を探る航海
 第5章 創造の構図
 対談 久米是志×夢枕獏―創造の舞台裏・異種格闘技的対論
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・本田技研工業
 ・出版社 小学館
 ・アマゾン 『「ひらめき」の設計図』
 
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