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March 29, 2007

これからはじめる!設計者のための機械工学

Sekkeisyanotamenokikaikougaku
 【今週の一冊】
 ●『これからはじめる!設計者のための機械工学』

  著:青木 正博、関野 知、杉山 龍夫(日刊工業新聞社)
  2006.12 / ¥1,995

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『アインシュタインの有名な言葉に、
 
  「学べば学ぶほど、私は何も知らないことが分かる。
     自分が無知だと知れば知るほど、私は学びたくなる」
                       というものがあります。

     その言葉の中に、学者や技術者の活力の源があるように感じます』

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 大学の「工学部 機械学科」で、まず学ぶ「4力学」といえば、材料力学、
 熱力学、流体力学に機械力学。
 
 これだけでもかなり歯ごたえがありますが、実際に「機械設計」を行うとな
 れば、とても知識が足りません。
 
 大は原子力発電所や大型タンカーから、小はICの微細加工やマイクロマシ
 ンまで、機械工学が扱う対象は多種多彩です。
 
 本書は、主に機械設計の初心者を対象に、「機械工学とはなんぞや?」を、
 身近な事例や最新の話題を織り交ぜて紹介しています。
 
 
 機械工学を学ぶ学生や技術者が、最初につまづくポイントは、おおよそ決ま
 っています。
 
 熱力学ならば「エントロピー」、流体工学ならば「ナビエ・ストークスの方
 程式」か「無次元数」、機械力学ならば「振動」が主なところでしょう。
 
 いずれも概念が抽象的で、数式ばかりに目が行きがちですが、その意味する
 ところを「理解」することが重要です。
 
 
 例えば、振動学で登場する「自励振動」。
 
 教科書的には「振動的ではないエネルギーが振動エネルギーに変換されて生
 じる振動」のことですが・・分かったようで分からない。
 
 日常的な例では、黒板にチョークで線を引いたときに、「キ~!」と不快な
 音が鳴ることがあります。
 
 あれはチョークと黒板が固着と滑り(スティック・スリップ)が短時間に繰
 り返され、それが高周波の振動音となって発生しているのです。
 
 つまりは、腕から「直線的」に加えたエネルギーが、黒板上で「振動」エネ
 ルギーに変換された「自励振動」なのです。
 
 こう説明されれば、あの鳥肌立つ音を思い出して、ハッキリ理解できること
 でしょう。
 
 
 他にも機械屋が身につけるべき基礎知識として、鉄鋼に代表される材料知識、
 ギアやアクチュエータなどの機械要素、様々な工作機械と加工法、また制御
 工学が挙げられます。
 
 一方で、「機械工学」という学問では収まらない、周辺知識と融合したメカ
 トロニクスやバイオエンジニアリング、更に「現場」で問題となる知的財産
 や技術者倫理も、これからの「ものづくり」には欠かせない話題です。
 
 やまさんもよく知る現役で活躍する若き筆者らの、「現場」に即した機械工
 学概論です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 生体を模倣しながらその優れた機能を獲得しようとする技術分野を、バイオ
 ミメティクス(生体模倣技術)という。
 
 サルモネラ菌は、自分の身体から生える「べん毛」を、プロペラのように回
 転させて動き回ることができる。
 
 この「べん毛モータ」は、以下のような性能がある。
 
 1.超微細:べん毛の直径 約20nm、モータ部 40~50nm
 2.超高速回転:約20,000rpm
 3.高効率:エネルギー変換効率 約80%
 4.保全機能:代謝により古い部品を更新
 
 いずれも現代の我々の技術では到底作れない。
 
 しかし、サルモネラ菌自身は、特許出願はしていないようだ。
 
 ならば、どんどん真似をしていこう。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 難しく感じる原理は、身近な事例で理解せよ。
 基本原理は、必ず製品機能に盛り込まれている。
 
 原理を知らねばものづくりはできないが、原理だけではものは作れない。
 マネジメントや法律、倫理も、「ものづくり」の一翼だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 機械工学って何だろう
 機械屋さんてどんな人
 人類はいつから機械を作り出したのだろう…機械の歴史
 物理学と数学これを知らなきゃ…
 熱力学
 流体力学―私のまわりの流体現象
 材料力学―あんな物でも変形する
 機械力学―機械も大地も振動する
 機械は何から作るのか
 機械要素
 機械設計
 計測工学 測ることも機械屋の仕事
 加工と工作機械 機械をつくる機械
 制御工学 機械を操る (他)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 Net-P.E.Jp
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『これからはじめる!設計者のための機械工学』
 
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March 07, 2007

なぜおいしいアイスクリームが売れないの?

Nazeoishiice
 【今週の一冊】
 ●『なぜおいしいアイスクリームが売れないの?』
  ダメな会社をよみがえらせる3つのレッスン

  著:S. チョウドリ (訳)中山 宥(講談社)
  2006.11 / ¥1,260

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『たいがいの人間は、現実を眺めて“なぜこうなのか?”と問う。
   
      しかし自分は、まだ現実になっていない事柄を見すえて

                “なぜ現実化できないのか?”と考える』


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 『今回、契約を取り付けられるかどうかは、うちの会社の死活問題だ。
  どうしても、契約を結ばねば!』
 
 「デイリー・クリーム」という小さなアイスクリーム会社で工場長を務める
 ピーターは、人気スーパーマーケットの「ナチュラル・フーズ」に体当たり
 の営業に飛び込むところから、この物語は始まります。
 
 「ナチュラル・フーズ」の店長マイクは、「デイリー・クリーム」のアイス
 を仕入れない理由を尋ねられ、こう答えています。
 
 『きみの会社の場合、はたして品質が“売り”なんだろうか?
 
  社内の努力をすべて品質向上に向けているだろうか?』
 
 こうして、マイクの指導を仰ぎながら、ピーターは「デイリー・クリーム」
 の建て直しに着手するのです。
 
 
 まず、「質の高さ」の土台は「部下を大切にすること」とマイクは説きます。
 
 部下に責任を与えて、ビジネスの大事な一部分として扱えば、それにふさわ
 しい反応が返ってくる。
 
 そして部下を大切にすればするほど、部下たちは例外なく、客を大切にする
 ようになる、と。
 
 
 この「質の高さ」を企業文化として根づかせるのが「LEO」です。
 
 Liten(聞く)、Enrich(価値を高める)、Optimize(最適化する)の頭文字
 であり、客の声をよく聞く、製品やサービスを強化する、客が完全に満足で
 きるように最適化する。
 
 これらを丁寧に実行したピーターの下で、「デイリー・クリーム」は徐々に
 変化を遂げていくのです。
 
 
 本書のテーマである「品質」について、最初にマイクが語った言葉が印象的
 です。
 
 『“品質重視”はアメリカ社会のDNAに組み込まれていない。しかし、日本企
  業のDNAには組み込まれている。最近は韓国の企業のDNAにも組み込まれつ
  つある。だから、アメリカ企業がつねに新製品を作り、新市場を切り開く
  のに、結局はよその国に負けてしまう』
  
 デイリー・クリームと同じお菓子製造の、老舗の日本企業で起きた不祥事を
 目の当たりにすると、果たして日本企業のDNAには、本当に「品質重視」が組
 み込まれているのか、不安になります。
 
 「シックス・シグマ」の著者として有名な筆者による、この読みやすい物語
 から、今、我々は「品質」の意義を学ばねばなりません。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 業務を最適化するためには、「失敗の代償」を認識することが重要だ。
 
 もし失敗したならば、どれだけ悲惨な状態になり、お金が無駄になるかを考
 えれば、失敗なんかできないぞと死にもの狂いになれる。
 
 スペースシャトル「チャレンジャー号」を思い出すといい。
 
 アメリカきっての優秀な人材が莫大な時間を費やし、20億ドルの資金を使
 って、あのスペースシャトルを完成させた。
 
 ところが、たった900ドルのOリングが不良品だったせいで、7人の宇宙飛行
 士の命を含め、すべてを失った。
 
 エンジニアが事前に警告したのに、改良には費用がかかりすぎるという懸念
 から、無視された。
 
 しかし結局、「チャレンジャー号」の事故の原因調査と部品回収だけで5億
 ドルかかった。
 
 Oリングが50万個以上買える金額だ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「質の高さ」を最優先せよ。
 目先の奇抜さや新規さはすぐ陳腐化する。
 
 結果ではなく、努力に意識を集中せよ。
 改善の結果はすぐには現れないが、種さえ蒔けば芽は生える。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 緊急事態
 第2章 聞き上手になれ
 第3章 「LEO」がカギになる
 第4章 スティーブ・ジョブズは必要ない
 第5章 「完璧」への長い道のり
 第6章 持ち帰ってもいいですか?
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『なぜおいしいアイスクリームが売れないの?』
 
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