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August 03, 2007

モノづくりで150億円を生む独創発想術

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 【今週の一冊】
 ●『モノづくりで150億円を生む独創発想術』

  著:中西 幹育(プレジデント社)
  2007.1 / ¥1,470

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆


 『失敗と挫折は、開発者にとって大切な経験である。
 
          失敗は肥やしになる。
 
                 いや、失敗を肥やしにするのである。』


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 スポーツシューズの靴底に埋めて衝撃を和らげる「αゲル」。
 
 20メートルの高さから「αゲル」の上に玉子を落としても割れないほどの衝
 撃吸収性能は、スペースシャトルの衝撃吸収材にも用いられました。
 
 身近なところでは、皆さんの手に握られたボールペンのグリップにも使われ
 ていますね。
 
 
 携帯電話やクルマのダッシュボードのような、曲面のプラスチック表面に、
 木目などのデザインを印刷する「曲面印刷」。
 
 今では様々な製品に用いられている技術ですが、30年前には「不可能」と考
 えられていた技術です。
 
 この「αゲル」と「曲面印刷」、何の関連性もなさそうな、しかしいずれも
 独創的で、「儲かる」技術を生み出したのは実は同一人物であり、本書の著
 者なのです。
 
 これら2大発明を筆頭として、氏の開発人生の中から導き出した、「独創」
 の秘訣を伺いましょう。
 
 
 αゲル発想のきっかけとなったのが、衝撃吸収材に思い悩んでいるうちに、
 熱を出して寝込んでしまった著者が、溶けた「アイスノン」の感触でした。
 
 早速、スーパーに並んだゲル状の食品―寒天、ゼリー、こんにゃく、プリン
 等々、片っ端から買い込んで、玉子を落とす実験をしたのです。
 
 すると最も優れた衝撃吸収性を示したのが「イチゴゼリー」であり、このゼ
 リーに似た素材を探して作られたのが「αゲル」だったのです。
 
 
 ・・とこのように書くと、いかにも「タナボタ」式にひらめいたり、ちょっ
 と実験して新素材が見つかったかのように思えますが、発想のプロセスを詳
 しく読み解けば、そんなエレガントなものではないと分かります。
 
 筆者は「発想力は感性、観察力、自問力、気力、体力、そして知力から構成
 される総合力だ」と説きます。
 
 発想の発火点はアイスノンの奇妙な感触に触れた「感性」でした。
 
 そこに自ら厨房に立ち、各地の市場を訪ね歩く程、素材に対して好奇心を持
 つ「観察力」と、学生時代、オリンピック候補にまでなったウェイトリフテ
 ィングで鍛えた「気力・体力」が加わり、独創が生まれたのです。
 
 
 こうして生まれた発想を形にするときには、あれこれ批判する前に、すぐさ
 ま得た情報を加工する「行動」に移すことが重要です。
 
 その際「特許公報」を活用し、先人達の膨大な特許の隙間を見つけ出そうと
 する探偵精神で、自らの独自性を付加していくのです。
 
 
 そして「ひらめく人」に終わらず、「ひらめいて、つくって、売る人」こそ
 開発を、そして人生を楽しく豊かにできると氏は説きます。
 
 自らの特許を数々のビジネスに育て上げたエジソンを師と仰ぐ著者が、発想
 力を身につけ、形にし、ビジネスに結びつける道筋を、誰にでも分かりやす
 く著した一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 衝撃吸収に、「イチゴゼリー」が適していることは分かった。
 
 しかしイチゴゼリーを衝撃吸収材にするわけにはいかない。
 
 筆者の関心事は、イチゴゼリーの分子構造に移った。
 
 そこで製造メーカーに熱心に尋ねると、研究所の技術者が丁寧に教えてくれ
 たお陰で、分子構造が網目状に絡み合っていることがポイントだと分かった
 のだ。
 
 
 一般の人にはイチゴゼリーは子供のおやつの一つにすぎない。
 
 この中に、スポーツシューズの靴底の衝撃吸収材から宇宙船の実験装置にま
 で使われるほどの、どんでもない情報が詰まっていると、知りながら食べて
 いる人など皆無だったはずだ。
 
 この瞬間から、イチゴゼリーは筆者にとっては、単なる食べ物ではなく、貴
 重な情報を満載した「モノ」となったのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「誰でも発想の達人にはなれる」≠「何もしないで達人になれる」
 誰にでもできる、努力と創意と工夫を「実行」するかしないかだ。
 
 モノをモノとして見るな。
 モノについている情報を読み取ることが、発想を形にする第一歩だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 発想力は、どうすれば身につくのか?
 第2部 発想力を、「形」にするには!?
 第3部 発想力を、ビジネスにするには!?
 第4部 特別補講
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 中西 幹育
 ・出版社 プレジデント社
 ・アマゾン 『モノづくりで150億円を生む独創発想術』
 
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