May 10, 2007

レアメタル・パニック

Raremetalpanic
 【今週の一冊】
 ●『レアメタル・パニック』

  中村 繁夫(光文社)
  2007.1 / ¥1,000

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆


 『このレアメタル高騰は、25年に1度の大きな波である可能性が高く、
 
     「レアメタル・パニック」はこれから本格化するだろう。
 
          その甚大な影響は「石油ショック」をも超えるだろう』


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 マンホールの蓋や水道の蛇口、果ては公園の滑り台まで、各地で「金属泥棒
 」が頻発しています。
 
 かくまで「珍事」が起きるほど、今、金属材料が異常なほど値上がりしてい
 ます。
 
 その大きな要因が、本書で指摘する「レアメタル」の高騰です。
 
 
 「レアメタル」とは、希少金属のことで、ニッケル、コバルト、タングステ
 ンなど比較的よく知られたものから、インジウム、タンタルなど生産量の極
 めて少ないものまで含み、計31種類あります。
 
 レアメタルは、その名の通り地球上に埋蔵量が少ないもの、もしくは埋蔵量
 は多くても経済的・技術的に純粋なものを取り出すのが難しいため「希少」
 となるものがあります。
 
 そして、今や我々の生活は、「レアメタル」なしには成り立たないのです。
 
 
 例えば液晶テレビの生産工程では、「インジウム」がパネルの透明電極とし
 て使用されます。
 
 リチウムイオン電池にはリチウムやコバルトが、蛍光体にはイットリウムや
 ユーロピウムが原料となります。
 
 そして電子機器や自動車などのモーターに使われる「ネオジム系焼結磁石」
 の原料としてネオジムやサマリウムが用いられ、今後需要が高まる勢いを見
 せています。
 
 つまり最先端の製品が高い性能を発揮するためにはレアメタルは必要不可欠
 であり、そうした製品を多数生産する日本は、世界のレアメタルの25%を消
 費する、世界最大の「レアメタル消費国」なのです。
 
 
 ところが、そのレアメタルの需給バランスが崩れ、市場からなくなっている
 のです。
 
 2003年以降の3年間で、タングステンやバナジウムは約6倍、モリブデンは
 6倍、インジウムに至っては10倍近くまで高騰しています。
 
 この原因は、中国をはじめとする「BRICs」や「Next11」と呼ばれる新興国の
 経済発展にあります。
 
 これまで先進国で分配していたレアメタル資源を、これらの国を含めて分配
 することになり、資源消費マップが大きく塗り替えられているのです。
 
 
 特にこれまでレアメタルの輸出国であった中国が、国内需要の高まりと国家
 戦略により、輸入、更には世界中のレアメタルの「独占」を狙い始めている
 動きに注視せねばなりません。
 
 筆者をはじめ、世界を股にかける「山師」のような商社マンが動かす「レア
 メタル市場」が、日本のものづくりの今後を大きく左右することは間違いな
 さそうです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 レアメタルが激しい値動きを示す理由として、埋蔵量が少ないことに加えて
 偏在していることが挙げられる。
 
 可採埋蔵量を見ると、ニオブはブラジルに約98%、タンタルは豪州に約93%、
 白金族は南アに約89%、リチウムはチリに約73%とその多くが特定の国に偏
 在している。
 
 また、生産量では、中国が希土類元素(レアアース)で約95%、タングステ
 ンで約83%、アンチモンで約82%を生産し、南アがプラチナで約72%、クロ
 ムで約50%、豪州がタンタルで約67%、チタンで約31%を生産している。
 
 これに対して、日本で操業している鉱山は菱刈金山のみ。
 
 日本は「レアメタル」の争奪戦で、圧倒的不利な状況にあるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 設計者は安易に「レアメタル」に依存するな。
 数円のVAではカバーできない変動が、レアメタルには付き物だ。
 
 環境技術でレアメタル産出国に貢献せよ。
 中国に偏らず、中央アジア、東南アジアなど広く供給先を確保せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 世界のレアメタルを中国が食い尽くす
 第2章 決して終わらない世界各国の争奪戦
 第3章 世界経済はレアメタルによって作られる
 第4章 なんでもありの商社で世界を駆け巡る
 第5章 独占に次ぐ独占、そして大損のレアメタル商史
 第6章 資源貧国・日本の生きる道
 第7章 探検商社の船出
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 アドバンストマテリアルジャパン
 ・出版社 光文社
 ・アマゾン 『レアメタル・パニック』
 
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November 29, 2006

知られていない 原油価格高騰の謎

Genyukakaku
 【今週の一冊】
 ●『知られていない 原油価格高騰の謎』

  著:芥田 知至(技術評論社)
  2006.04 / ¥1,449

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『原油から得られるエネルギーやプラスチック製品がなければ、
                現代社会は、まず成り立たないであろう。
 
    そういう意味では、誰もが原油を利用している。
    
      しかし、誰もが原油のことをよく知っているかというと、
                         答えはNOであろう』

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 数年前にはリッター90円でも「高い!」と思っていたのが、今では140円を
 下回ってさえ「安い!」と思ってしまうガソリン価格。
 
 今回の書籍によれば、原油高の影響で、光熱費やガソリン代の上昇により、
 04年に比べて年間26,000円も家計が圧迫されている計算になるそうです。
 
 ものづくりにおいても欠かせない、身近な「石油」ですが、意外と知らない
 実態に迫ってみましょう。
 
 
 そもそも「石油」とは原油、ガソリン、灯油などの総称であり、油田から汲
 み上げた原油を原材料として、精製して得られる製品がガソリンや灯油です。
 
 精製した炭化水素は、炭素量の少ない順に天然ガス・プロパンガス・ガソリ
 ン・灯油・軽油・重油・アスファルトといったおなじみの製品名で呼ばれま
 す。
 
 またガソリンとして製品化される前の中間製品である「ナフサ」は、プラス
 チックや合成繊維などの原料であり、石油化学工業で生み出される製品は、
 もはや無数といってもよいでしょう。
 
 
 さて、原油の生産地、といえば中東、というイメージがありますが、中東国家
 が中心のOPEC(石油輸出国機構)の生産量は、世界の40%程度に過ぎず、最大
 の産油国サウジアラビアに次ぐ生産国はロシア、そして米国です。
 
 かつてはOPECのシェアは50%を超え、原油価格の決定権を持ち、その決定によ
 って価格が吊り上げられたのが第1次、第2次石油危機でした。
 
 しかし、その後非OPEC諸国の生産量が増えたことから、現在の原油価格は、市
 場メカニズムで決まるようになっています。
 
 
 では、今回の原油価格高騰は、一体なぜ起きたのでしょうか。
 
 原油は価格の上下によって、使用量を極端に多くも少なくもできない「必需
 品」であり、また簡単に増産・減産できるものでもありません。
 
 また、現時点では世界の原油在庫量(=供給-需要)は増加しており、供給
 が極端に不足しているわけでもありません。
 
 価格上昇の原因は、足元の原油需給ではなく、「近い将来に需給が逼迫する
 かもしれない」という不安が大きくなったことにあると考えられます。
 
 
 供給側から言うと、特にOPECで油田の開発があまり進んでおらず、埋蔵量が
 十分あっても供給量が伸びていないことが挙げられます。
 
 また、せっかく原油の供給があっても、米国の製油所が老朽化し、フル生産
 しても能力が不足していることから、石油製品の値段が上がってしまうこと
 も原因です。
 
 そして需要は新興国を中心に伸び続けており、日本を含めた先進国の代替燃
 料へのシフトが十分進んでいないことも、今後の原油不足懸念となっていま
 す。
 
 
 今後はむしろ、「原油の枯渇」ではなく、「地球温暖化」という環境問題が、
 原油使用量、そして原油価格を左右する因子となると、筆者は指摘します。
 
 1円でも安いガソリンスタンドを探しつつ、この「液体」を取り巻く複雑な
 環境から、世界の今と未来が見えてきます。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 石油は何から生まれたのだろうか。
 
 大昔の堆積物に含まれる生物起源の有機物が、移動・集積してガス層や油層
 を形成した、とする「有機説」が有名で、世界の主流の説である。
 
 これに対して、「無機起源説」もある。
 
 これは、宇宙で地球が形成されたときの成分にメタンガスが大量に含まれて
 おり、地球の内部にはそのときのメタンガスが閉じ込められている、という
 発想が元にある。
 
 メタンガスが地球内部の高い圧力の下で、石油に変化してその一部が地表近
 くに染み出してきている、というのが無機起源説だ。
 
 最近になって、無機説を支持するようなタイプの油田が発見されたり、すで
 に開発された油田の埋蔵量の回復が観察されたりしていることから、無機説
 も完全には否定できないといわれている。
 
 無機起源説の立場からは、現在の可採埋蔵よりも膨大なものになる可能性が
 ある。
 
 しかし、たとえ無機起源説が正しく、埋蔵量が多くても、人類がそれを使い
 続けることは、環境問題の面からできなくなったといえる。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 省エネルギーに終わりはない。
 原油・素材高騰の今こそ、省資源化のチャンスだ。
 
 「ものづくり」は物理法則でできるが、「価格」は人がつくる。
 エンジニアも、社会学・経済学に関心を持て。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 急騰した原油価格
 第2章 原油を生産する国
 第3章 原油の輸入国
 第4章 原油市場
 第5章 世界景気失速懸念とオイルマネーの奔流
 第6章 将来の原油価格は上がる?下がる?
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 芥田 知至「原油レポート」
 ・出版社 技術評論社
 ・アマゾン 『知られていない 原油価格高騰の謎』
 
----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

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January 05, 2005

徹底予測2005

tetteiyosoku2005
 【今週の一冊】
 ●『日経ビジネス総力編集 徹底予測2005』

  日経ビジネス アソシエ増刊号(日経BP社)
   2004.12 / ¥650

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『成長持続は単なる継続を意味するものではない。
  不断の革新がなければ売上や利益の持続的な成長は手に入れられない。』
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 年始に当たり、今年の「ものづくり」の動向を予測してみましょう。
 
 表紙には「日本経済、大転換点へ。」の文字が躍ります。
 04年、日本経済は長いトンネルを抜け出し、復活の歩みを始めました。
 
 今年のキーワードは「復活から持続へ」。
 本書では主要な業種の動向や、昨年のアンケート結果からみる未来予想を展
 開しています。
 
 この中で、製造業において重要な視点を3つ挙げるとすると、以下が読み取
 れます。
 
 (1)資源・エネルギーの供給不足
 
  鉄鋼材料の不足により、自動車メーカのラインが停止し、銅やアルミニウ
  ムも需給が逼迫しています。
  
  原油価格も右肩上がりに上昇しており、イラクの情勢不安などもあり、今
  年も高値で推移するという予測もあります。
  
 (2)“消費地”中国
 
  これまで、世界の工場であった中国が、市場としての存在感を急激に強め
  ています。
  
  資源やエネルギーも、中国ががぶ飲みしており、すでに発電所の容量は日
  本を越え、2020年には更に倍以上になると見込まれています。
  
  国内需要が減少する中、重電メーカはこぞって中国へ進出する模様です。
  
 (3)不断の「革新」
 
  DVD、薄型テレビに代表されるデジタル家電は、04年後半には既に過当
  競争の様相を呈しており、価格下落による勝敗が現れています。
  
  デジタルカメラや携帯電話も市場が成熟し、技術革新の踊り場に来ていま
  す。
  
  また、京都議定書が発行され、これまで以上に省エネルギー・低燃費な製
  品と、製造工程やリサイクル方法が必要です。
 
 これら3項目は互いにリンクしており、経営者はもちろん、現場の技術者に
 とって避けては通れない課題でしょう。
 
 一方、興味深い記事として、青色LED特許に関する「中村裁判」の背後に
 「技術者の士気低下」がある、というレポートが掲載されています。
 
 この5年で士気が低下していると約6割の技術者が感じ、会社への不満や不
 信感が満ちており、このまま看過すれば、「技術立国ニッポン」は画餅に終
 わります。
 
 しかし、成果に対する報酬だけをエンジニアが求めているのはなく、それ以
 上に「専門性を生かせる」「技術戦略の先見性がある」場合には、士気が高
 まるという集計もあります。
 
 「大転換」の時代だからこそ、そのターニングポイントの鍵を握るのは、我
 ら現場の「えんぢに屋」です。
 
 眼差しを高く上げ、変化を先取りし、自らの智恵と行動で、「ものづくり」
 を通して世界を明るく、元気にしようではありませんか!
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 ◆ 熱い行動 ◆
 「エネルギー」「中国」「技術革新」それぞれ自分の業務に求められる対応
 を思いつく限り挙げてみよう。
 
 今年の目標を机の前と手帳に大書して、行動計画を立てよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 ・賢者と読み解く2005年の日本と世界「復活から持続へ」
 ・主要30業種 激戦の焦点
 ・厳選22問 3分で未来が読めるQ&A
 ・日経ビジネス独自のランキングデータ集
 ・日本の今と明日を知る必須キーワード20題
 ・戦後史略年表&主要経済データ
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 ● ひとこと ●
 短い正月休暇を終え、仕事始めを迎えた方も多いことと思います。
 
 せっかくの年初め、まっさらな気持ちで今年の目標を家族や同僚に宣言して
 はいかがでしょうか。
 
 私も、毎週「燃える100冊」をお届けすること、そしてブログをメルマガ以
 外に必ず更新する事を、まずは宣言いたします!
 
 今年も、どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

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