千年、働いてきました
【今週の一冊】
●『千年、働いてきました』
老舗企業大国ニッポン
著:野村 進(角川書店)
2006.11 / ¥740
----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----
◆ 燃える一言 ◆
『ケータイという現代の「新しさ」の粋を集めた製品を
見えないところで支えているのは、
実は「古くさい」と思われがちな老舗企業の力だと言ったら
言いすぎでしょうか』
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「現存する、世界最古の会社」といえば、なんとなくイギリスやドイツなど
ヨーロッパあたりにありそうな感じがします。
しかし、実はここ日本にあります。
しかも、その「創業」は、江戸時代でも、室町時代でも、平安時代でもあり
ません。
なんと・・「西暦578年」聖徳太子の飛鳥時代なのです!
大阪の「金剛組」という建築会社で、難波の四天王寺を完成させたのが、最
初の仕事だったとか。
日本には実に10万社以上あると推定される、創業100年以上の「老舗」と
言われる会社、その中の「ものづくり」企業にこだわった本書を紐解いてみ
ましょう。
冒頭の言のように、皆さんお持ちの「ケータイ」は、日本の老舗企業の底力
なくしては、全く機能しないと言えるでしょう。
例えば、二つ折り携帯の折り曲げ部分、電気メッキされた銅箔や、電磁波シ
ールド用の銀入り塗料を作る「福田金属箔粉工業」の創業は、元禄時代、赤
穂浪士の討ち入り2年前。
もともと屏風や蒔絵に使われた、金箔や粉を作っていた福田金属は、「金属
の箔や粉」という「コア・ミッション」から外れることなく生き延び、今の
事業に結びついています。
明治24年(1891年)設立の東洋通信機の流れを組むエプソントヨコムは、携
帯電話の心臓部、「人工水晶」を世界最大手のノキアにも供給しています。
天然物の水晶が数百万年かかるのに対し、エプソントヨコムの技術により数
ヶ月で一度に3トンもの水晶が生産できるようになったのです。
かつて軍艦や戦闘機に搭載される無線機を製造していた同社が、その技術を
「より小さく、より安定したもの」へと突き詰めた末にたどり着いた技術が
「人工水晶」の工業化だったのです。
こうした「老舗」企業群の姿からは、変わらない偏屈な「静」のイメージで
はなく、柔軟性と即応性の富んだ「動」の組織が見えてきます。
しかし一方では、創業以来の家業の部分は、たとえ利益には直接結びつかず
とも、頑なに守り抜く「頑固さ」も併せ持っています。
バブル期に土地転がしや多角化によって消えていった企業とは、一線を画し
ているのです。
「会社の寿命は30年」と言われる中、脈々と受け継がれる「老舗」のもの
づくりには、学ぶべき「技術」と「哲学」が流れています。
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◇ カンドコロ! ◇
液体窒素の零下196度の世界に一週間放置されても、90度の熱湯に一時間漬け
ても、純度100%のエチルアルコールに1週間入れても、はたまた17年間も乾
燥したままであっても「死なない」生き物がいる。
「ネムリユスリカ」をいうアフリカ中部に住む蚊の一種だ。
その驚異的な生命力の最大の理由が、「トレハロース」という糖を自分の体
内で作り出し、一つ一つの細胞を守っているからだ。
この「トレハロース」の大量生産に世界で初めて成功したのが、創業123年の
「林原」である。
甘味だけではなく、乾燥や冷凍にも強い特長を生かして、菓子類はもとより、
様々な食品の砂糖やブドウ糖が、近年トレハロースに置き換わっている。
トレハロース自体は昔から発見されてはいたが、抽出が極めて難しく、「夢
の糖」とまで言われていた。
その量産化に林原が成功したのは、同族経営の老舗企業の強みである、長期
的でハイリスク・ハイリターンな研究開発に投資ができたお陰だと言えるだ
ろう。
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◆ 熱い行動 ◆
あなたの仕事の「コア・ミッション」は何だろう。
目先の利益ではない、「利他」の使命でなければ100年は続かない。
軸足を据えて、もう片足を広げよう。
じっとしたままでは進歩はないが、一足飛びでは進めない。
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◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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◎ 目 次 ◎
プロローグ 手のひらのケータイから
第1章 老舗企業大国ニッポン
第2章 ケータイに生きる老舗企業の知恵
第3章 敗者復活
第4章 日本型バイオテクノロジーの発明
第5章 “和風”の長い旅
第6章 町工場 ミクロの闘い
第7章 地域の“顔”になった老舗企業
エピローグ 世界最古の会社は死なず
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◆ 関連ページ ◆
・金剛組
・福田金属箔粉工業 金属粉末、箔
・エプソントヨコム 水晶デバイス
・林原 トレハロース
・出版社 角川書店
・アマゾン 『千年、働いてきました』
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