September 28, 2007

ものづくり経営学

Monodukurikeieigaku
 【今週の一冊】
 ●『ものづくり経営学』
  製造業を超える生産思想

  著:藤本 隆宏、東京大学21世紀COEものづくり経営研究(光文社)
  2007.3 / ¥1,260

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『20世紀後半の日本企業が、培い確立した「擦り合わせ製品」における
 
   「ものづくり能力」という貴重な知的資産を、最大限に活かしながら、
   
       その上に、一部の欧米企業が持つ「戦略構築能力」を
     
           積み上げることでこそ、21世紀への展望が開ける』


-----------------------------------

 「ものづくり」とは何か、と問われれば、その答え方は色々ありますが、筆
 者らは『要素技術をつなぎ、顧客に向かう「流れ」を作り、設計情報を盛り
 込んだ人工物によって顧客を満足させる経済活動』と定義します。
 
 つまり、「ものを作る」プロセスのみではなく、設計情報を人工物(製品)
 に乗せて、お客さんまで届けて価値を生む=満足させるまでの「流れ」全体
 を「ものづくり」と呼んでいます。
 
 
 日本の製造業が強みを発揮する「ものづくり」は、自動車に代表される「擦
 り合せのきいた設計情報を、生産現場で丹念にメディア(鋼板など)に転写
 する」擦り合わせ型の製品であるとされています。
 
 対して、パソコンシステに代表される、機能と構造が1対1で対応する「組
 み合わせ型」の製品については、近年は中国が得意としている「ものづくり
 」と言えるでしょう。
 
 このように、地域特性と製品の設計思想が「相性の良い製品」を選ぶことが、
 まずは競争優位を得るために必要ですが、ことはそう単純ではありません。
 
 
 たとえば、DVDレコーダーは、HDDやDVDドライブといったモジュラ
 ー部品の組合せであり、これら中間製品を組み合わせた典型的な「組み合わ
 せ型製品」です。
 
 しかし、階層を下って光ピックアップをみると、レンズ、レーザーダイオー
 ド、フォトディテクターなどの部品をきめ細かな擦り合わせで設計した部品
 といえます。
 
 また元々、DVDレコーダーの開発から量産が始まった時点では擦り合わせ
 型の製品であり、日本企業の独壇場であったのが、時間の経過と共に製品構
 造が「組み合わせ型」へ推移すると共に、シェアの急落が生じたのです。
 
 つまり製品の「階層」と「時間」により「擦り合わせ型」の日本企業の取る
 べき戦略が変化することが分かり、DVDレコーダーならば、キーデバイス
 である光ピックアップなどの部品供給に集中する、などが考えられます。
 
 
 更に、お客に「設計されたもの」を提供することを「広義のものづくり」と
 考えれば、サービス業も同じ尺度で考えることが可能です。
 
 すなわち、イトーヨーカドーなど小売業、郵便、医療、金融商品、あるいは
 製造業とサービス業の中間に当たるソフトウェア業や建築業にも当てはめる
 ことで、取るべき戦略が見えてきます。
 
 「ものづくり経営学」は今まさに立ち上がった試行的段階であり、未整理な
 部分もありますが、現在の「ものづくり」をこってりと俯瞰できる、興味深
 い一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 DVDレコーダーで日本製品が急速にシェアを落としている現象は、「いつ
 かきた道」だ。
 
 これまでもCD-ROM、CD-R、DVD-ROMなどで、繰り返し起き
 てきたことだ。
 
 デジタル製品は「擦り合わせ」要素がソフトウェアの中に取り込まれており、
 製品が「組み立て型」に推移しやすい傾向にある。
 
 このため、開発のオーバーヘッドを抱えた日本企業は、中国やASEAN各国との
 価格競争に負けてしまうのだ。
 
 これは日本企業特有の現象ではなく、かつてIBMがパソコン市場において
 コンパックやデルの台頭により凋落した姿と全く重なる。
 
 デジタル製品が抱える、共通のジレンマと言えよう。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「資源がないからなんでも作って売れ」という貿易立国論は戦略に欠ける。
 製品の構造と地域性、時代に対応した「ものづくり戦略」が必要だ。
 
 「うちは特殊だから」とトヨタ方式を敬遠するな。
 「形」をまねるのではなく、「思想」を学べ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 ものづくり経営学総論
 第2部 ものづくり経営学各論
 第3部 非製造業のものづくり
 第4部 アジアのものづくり
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 東京大学21世紀COEものづくり経営研究
 ・出版社 光文社
 ・アマゾン 『ものづくり経営学』
 
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June 27, 2007

未来を創る力「ものづくり」のすすめ

Miraiwotukurutikara
 【今週の一冊】
 ●『未来を創る力「ものづくり」のすすめ』

  著:梅原 猛,西沢 潤一,永 六輔,野田 一夫 (講談社)
  2002.12 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『人間というのは、あまりしょっちゅう道を踏み間違えては
                          いないわけです。
 
   ちょっと失敗したというようなことが、後になって必ず生きてくる。
   
    人生においては、失敗の体験を次に生かすことが実は大事なのです』

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 ※本記事は07/4/4発行のメルマガの内容です。

 新年度を迎え、新たな社会人として社長や先輩の訓示を受けた方も多くいる
 ことでしょう。
 
 ウン十年前に、かつて「新人」であった方も含め、桜舞い散る新たな門出の
 とき、改めて「ものづくり」の意義を確認する良い機会です。
 
 日本を代表する文化人の方々に、熱く「ものづくり」の素晴らしさを語って
 頂きましょう。
 
 
 全国を旅し、各地の職人と交流が深い永六輔氏は、「計量法反対運動」に乗
 り出したことがあります。
 
 尺貫法からメートル法に改定したこの法律では、定規や升を製造販売するこ
 とに懲役や罰金という「罰則規定」を定めていました。
 
 このため例えば大工道具である「曲尺(かねじゃく)」が職人の手に入らな
 くなったため、永氏は曲尺を堂々と「密造」し、それを各地の警察署に「自
 首」して回る、という運動に乗り出したのです。
 
 この悪法はその後改定されるようになりましたが、その間、肝心の職人さん
 達が自ら声を上げ、意見を言うことがありませんでした。
 
 また、職人の仕事は、一人で完結するものではなく、道具を作る人、更にそ
 の道具の材料を作る人が連綿とつながっていますが、その一部が欠けたがた
 めに、絶滅の危機に瀕している「職人技」が多数あります。
 
 こうした経験から、職人が立ち上がり、横のつながりを持つためのネットワ
 ークづくりを提言しています。
 
 
 ダイオードや半導体レーザー、光ファイバーという光通信に欠かせない技術
 を一人で考案し、実用化の糸口を開いた西澤潤一氏は、「独創性」の大切さ
 を叫びます。
 
 トランジスタの発明の際、実験材料も乏しい中で西澤氏が取った方法は、「
 午前中はしゃにむに論文を読め。午後になったら、何が何でもとにかく実験
 を繰り返せ。夜になったら、昼間にかせぎためた実験結果を整理してみる」
 という、とある先生の教えの実践でした。
 
 「なぜだろう」ということをとことん突き詰めていくと、論文の一つひとつ
 に直接の答えはなくとも、「ははん」と思う一節に巡り合い、大きな発見の
 きっかけとなったと言います。
 
 「できないことをできないと証明するのは難しい。根拠なしにできないと言
 うな!失敗など恐れずおやりなさい」と、氏は若き研究者、技術者へメッセ
 ージを送っています。
 
 
 その他、「経営とものづくり」を語る野田一夫氏、そして思想家 梅原猛氏と
 いう日本を代表する文化人による、「ものつくり大学」での講義内容をまと
 めた本書は、新人のみならず、我らエンジニアの襟を正す示唆に富んでいま
 す。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 太平洋の底に沈められ、世界の通信をつなぐ「光ファイバーケーブル」。
 
 1本20μmのガラス繊維を束ねて、プラスチックのようなもので覆って海底
 に沈められているが、実際に通信を始めようとすると「事故」が起きた。
 
 そのケーブルをサメが噛み切ってしまったのだ。
 
 そこでいろいろと調べて、サメが嫌いな材料は何かを試験を繰り返し、よう
 やくサメの嗜好に「合わない」材料を見つけた。
 
 近代的な光通信においても、最後まで問題になったのは、極めて原始的とい
 ってもいい問題だったのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「職人技」は守らねばならないが、「職人気質」だけでは続かない。
 後進の育成を含めて、ネットワークを構築せよ。
 
 「できる、できる、必ずできる!!」
 ひたすら唱えて、一つ所に命を懸けよ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 伝えたい職人の技と心意気(永六輔)
 独創性ある人、出でよ(西沢潤一)
 経営というものづくり(野田一夫)
 ものづくりは日本の誇り(梅原猛)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・ものつくり大学
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『未来を創る力「ものづくり」のすすめ』
 
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May 24, 2007

ゼムクリップから技術の世界が見える

Zemuclip
 【今週の一冊】
 ●『ゼムクリップから技術の世界が見える』
  アイデアが形になるまで

  著:ヘンリー・ペトロスキー 訳:忠平 美幸(朝日新聞社)
  2003.8 / ¥1,365

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『われわれは、自然界や既存の人工物について考えをめぐらせ、
 
   それらをどう作り変えたり改善したりすれば人類に有益な目標を
   
    よりよく達成できるか、という問いに答えを出さなければならない』


-----------------------------------

 今、皆さんの目の前にあるもので、「人工物」にどんなものがあるでしょう
 か?
 
 そもそも、この文章を目にしているのはPCのモニターや携帯電話のはずで、
 間違いなく100%、工学的な製品です。
 
 いや、おそらくは部屋の片隅の観葉植物と「人間」以外は、ほとんど人工的
 なものばかりでしょう。
 
 本書では、ごくごく身近な文具やアルミ缶から始まり、橋や高層建築に至る
 まで、それらを生み出した「工学」的な背景を、描き出しています。
 
 
 おそらく今、机上で最も単純な「製品」の一つが「ゼムクリップ」でしょう。
 
 あまりに単純で、クリップの「取扱説明書」なんて見たこともないような分
 かりきった製品ですが、クリップが「機能」するために必要な「弾性」が明
 確に理解されたのは、さほど昔のことではありません。
 
 ロバート・フックが「張力は力に比例する」という「フックの法則」発見し
 たのは1660年のことであり、クリップのみならず、橋や飛行機の翼、高層ビ
 ルなど、技術者が設計するほとんど全ての構造物に影響しています。
 
 
 この弾性を超えて、長さ10センチ程の針金を3回折り曲げたらクリップは出
 来上がりですが、これで「紙を留める」製品として「完成」した、とは言え
 ません。
 
 おそらく、だれでも取り出そうとしたクリップが絡まったり、クリップの針
 金の先で紙を破った経験はあるでしょう。
 
 こうした「欠点」をあげつらって、「改良した」と言い張るのが「発明」で
 あり、事実、これまでにゼムクリップを批判し、特許を取得した「クリップ
 」は、何百もあります。
 
 針金の先で紙を破る対策としては、針先を丸くつぶす、先をリング状に丸め
 る、針の足をクリップの円弧よりも長くする・・などなど、枚挙に暇があり
 ません。
 
 逆に言えば、最良の「クリップ」の探求が、今もって困難であることは明ら
 かであり、複数の相容れない目的の「妥協案」を提供することが、ものづく
 りであると言えるでしょう。
 
 
 クリップやジッパー、アルミ缶などを通じて語られる材料力学や発明、加工
 機械や環境への影響など、製品と我々エンジニアを取り巻く世界を知る一冊
 です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 シャープペンシルの芯や、削ったばかりの鉛筆の芯がポキポキ折れることほ
 どイライラするものはない。
 
 カリフォルニアの工学者ドン・クロンキストも手書きレポートを仕上げる間
 に何度もこのイライラに遭遇した。
 
 レポートを書き終えて机の上を見ると、鉛筆の折れた芯先がたくさん転がっ
 ているのを見つけた。
 
 彼の目を引いたのは、その数の多さではなく、「どれもこれも大きさと形が
 ほぼ同じだったことだ」。
 
 そこでこの理由を、彼は「円錐形の片持ち梁」のモデルを作って計算してみ
 た。
 
 すると、なるほど計算した「折れた鉛筆の芯」の大きさは、机の上で見つけ
 た「芯」の大きさにごく近かった。
 
 しかし、彼は破断面が「傾いている」ことは満足のいく説明をしておらず、
 吟味した人々も気に留めていなかった。
 
 それは鉛筆の幅方向に加わる「せん断力」を考慮しなかったことが原因であ
 ったが、解析の前提となるモデルの「仮定」が間違っていたためだ。
 
 同じような怠慢による過誤は、分析に取り組む「方法」がどんなに精巧なコ
 ンピュータ・モデルを使うようになっても、起こりえるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 机の上の文房具を、どう作っているか考察せよ。
 その構造を、力学的に記述してみよう。
 
 「ゼムクリップ」より作りやすく、使いやすいクリップを考案せよ。
 「鉛筆の折れた芯」の大きさを計算せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 1 ペーパークリップと設計
 2 鉛筆の先と分析
 3 ジッパーと開発
 4 アルミニウム缶と失敗
 5 ファクシミリとネットワーク
 6 飛行機とコンピュータ
 7 水と社会
 8 橋と政治
 9 建物とシステム
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 朝日新聞社
 ・アマゾン 『ゼムクリップから技術の世界が見える』
 
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February 01, 2007

「ひらめき」の設計図

Hiramekinosekkeizu
 【今週の一冊】
 ●『「ひらめき」の設計図』

  著:久米 是志(小学館)
  2006.6 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『いくら先を見つめたって、そんなところに未来はない。
 
      未来を見たければ、自分たちの過去を探しなさい。
   
            過去の失敗の泥の中に、未来を開く“鍵”がある』

-----------------------------------

 ホンダの歴史の中で、陰と陽のように語られる製品があります。
 
 「陰」とは、エンジンの冷却を水冷ではなく、空冷式にしてコンパクト化を
 試み、結果として「アイデア一杯、トラブル一杯」と揶揄された小型自動車
 「H1300」。
 
 一方「陽」は、当時、それまでの1/10まで排ガスを清浄化することを義
 務付けた「マスキー法」を、世界で最初にクリアした「CVCCエンジン」。
 
 このいずれもに、設計者として参画し、1人の天才「本田宗一郎」に代わっ
 て、「凡人の集まりを束ねて創造する」方法を創り出したのが、本田技研工
 業3代目社長の、筆者 久米是志氏です。
 
 
 空冷式のH1300のエンジンは、単体ではトラブルなく動作したものの、自動車
 というシステムの中では、許容できない「発熱」が、様々なトラブルを引き
 起こしました。
 
 なぜ、失敗したのか?
 
 それは「集団による創造術」が分からず、「やりもせんで、何がわかる?」
 という宗一郎氏の口ぐせに突き動かされ、猪突猛進した結果でした。
 
 この経験と、軍事的な戦術などから類推し、久米氏は開発を「航海」に例え
 て、一連の方法論を創り出します。
 
 
 まず、「宝物を運ぶ航海に、探す航海を混在させない」。
 
 貴重な宝物をたくさん載せた航海、つまり新製品を開発する航海を安全確実
 にするため、宝物=新技術は、前もって宝探しの航海をして準備しておかね
 ばなりません。
 
 具体的には、研究開発が完了していない技術を、製品開発に持ち込むことを
 禁制としたのです。
 
 
 次に、「段階に分けて航海する」。
 
 最初は宝島のある海域に到達する航路を見つけ(原理の見極め)、次にそこ
 から島や暗礁を抜けて宝島に到達する航路を探し出し(部分の検討)、それ
 が見つかったらその周辺の様子を調査して(周辺関係の調査)、宝島へやっ
 てくる商船隊に「頼りになる海図」を提供するのです。
 
 行き詰ったら一旦引き返し、進路を見定めることが必要です。
 
 
 そして、「航海の指針を作る」。
 
 目的には「将来かくありたい」という「行動」の結果もたらされるはずの理
 想像が表現されることが肝心です。
 
 「何のために」「どのような状態になりたい」のかを明確にし、そのために
 は「どうすべきか」を細部まで落とし込いでいきます。
 
 
 最後に、「航海のチームを作る」。
 
 異質なもの同士が目的実現のために、お互い遠慮なく平等な立場で意見をぶ
 つける「チーム」が必要です。
 
 
 こうした思考の上に造られた、新しい「航海術」の実践が、CVCCエンジ
 ンであり、ホンダの創造的な組織運営の基礎となっています。
 
 その他、最近の「失敗学」にも通じる示唆にも富み、ものづくりに関して非
 常にたくさんの「気付き」を与えてくれました。
 
 尊敬する上司から借りて一気に読みましたが、手元に置きたくてすぐ買い求
 めた、2006年「イチ押し」の一冊でした。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 筆者が続発する市場での不具合を教訓に、自らの経験から作り出し実行して
 きた「クレーム解決のための5原則」がある。
 
 1.事実の把握
  「知られていなかった事実」を「確実なものとして知られている事実」と
  して認識する作業。
  
  先入観のある推論を入り込ませず、何が、いつ、どこで、どのような現象
  を起こしたのか、関わり合いがあるであろう情報を集められるだけ集める
  ことが重要だ。
 
 2.原因の解明
  過去の経験や知識に基づいた推理によって、現象が起きた理由を見つける
  必要はない。
  
  どのような「もの」がどのような使用条件で、どのような「不具合現象」
  を起こしているのかという問いに、収集された事実の中から、それぞれに
  ついて何が共通であるかを抽出することだ。
  
 3.適切な対策
  原因が解明されれば、そこで見出された因果関係が働かないようにするた
  めの「適切な対策」を作り出せる。
  
 4.再発の監視
  「適切と考えられた対策」が実行された後で、実際の市場で同じような不
  具合が再発しないことを確かめる。
  
 5.源流へのフィードバック
  新しい製品開発をする技術者に、具体的事例に基づいた情報を与え、再発
  を防止するための検証の関門の供給などをフィードバックする。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「やってみもせんで、何がわかる!」
 やって(行動)みて(結果を検討)、気付くことが「創造」だ。
 
 不具合は「そんなことが起こるとは思わなかった」ものだ。
 後付けの理由ではなく、そこに至る「主観的」プロセスを追え。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 創造ということ
 第2章 嵐の中の航海
 第3章 霧の中の航海
 第4章 風を探る航海
 第5章 創造の構図
 対談 久米是志×夢枕獏―創造の舞台裏・異種格闘技的対論
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・本田技研工業
 ・出版社 小学館
 ・アマゾン 『「ひらめき」の設計図』
 
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June 27, 2006

ものづくり革命

Monodukurikakumei
 【今週の一冊】
 ●『ものづくり革命』
  パーソナル・ファブリケーションの夜明け

  著:ニール・ガーシェンフェルド 訳:糸川 洋
  (ソフトバンククリエイティブ)
  2006.02 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『この革命は間違いなく起きる。
 
       なぜ確信を持ってそう言えるのかといえば、それが
 
                 「現在に関する予言」であるからだ。』

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 「Web2.0」という言葉が示すがごとく、インターネット上の環境がここ数年
 で変化してきています。
 
 こうして一個人である やまさん が、気軽にメルマガを発行し、ブログをア
 ップしているのも、その一端ですね。
 
 しかし、この変化はあくまでデジタルの、バーチャル空間での変化だとばか
 り思っていましたが、ものづくりという物質の世界にも、新たな「うねり」
 が生まれているのです。
 
 
 著者は、パーソナルコンピュータ(PC)ならぬ、パーソナルファブリケー
 タ(PF)という、世間一般の人がアクセス可能な「機械を作る機械」を提
 唱し、壮大な実験を世界規模で行っています。
 
 ここでいうPFは、三次元の構造物を作り出すだけではなく、ロジック、セ
 ンサー、作動部、表示など、機能するシステムをつくるのに必要な全ての要
 素を統合することを指します。
 
 つまり、欲しいものを探し回ったり注文するのではなく、欲しいものの仕様
 を自分で書いて、設計図と原材料をPFに放り込んで「自分のため」の製品
 を作り出すことになるのです。
 
 
 これを筆者は「ファブラボ」と称し、MITの生徒から始めて、インドの田
 舎、コスタリカ、ノルウェイ北部、ボストンの低所得者居住地、ガーナ等に
 設置し、実験を行います。
 
 すると、インドの村では牛乳の安全性や農機具のエンジン効率を計る測定器
 開発にラボが使われ、ノルウェイの羊飼い達は、動き回る動物のデータ収集
 用の無線ネットワークと無線タグを開発し、ガーナの人達は太陽光を動力と
 する機械を作ることに使ったのです。
 
 この事実は、コンピュータのアクセスに関する「デジタルデバイド」よりも、
 ものづくりのツールへのアクセスに関するデバイドこそ、深刻であることを
 物語っています。
 
 
 こうして工業生産の手段が簡単に入手できるようになり、設計を無償で共有
 できるようになれば、ハードウェアもソフトウェアと同じ進化の道をたどる
 ことでしょう。
 
 今、かつては商用サービスに限られていた高品質の印刷が、インクジェット
 プリンタによって、スピードでは劣っても品質とアクセスしやすさを求める
 家庭用プリンタという市場が生まれました。
 
 パーソナルファブリケーションのツールは、大量生産ではなく、個人の用途
 のために使われ、「製造者」と「消費者」が切れ目なく繋がる連続体となる
 可能性を秘めています。
 
 世界中で起こり始めている、そして実際に起きた「ファブラボ」の事例は、
 来るべき「ものづくり革命」という、第3の波を感じさせる刺激的な記録で
 す。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ファブラボの有力なツールとして「ラピッドプロトタイピング」と呼ばれる
 三次元プリンタがある。
 
 高分子樹脂の入ったタンクにレーザー光線を照射して硬化させる方法や、イ
 ンクジェットプリンタから液状の接着剤の粒子を噴射してパウダーに吹き付
 けて固めるプロセスなどがある。
 
 しかし、作り出すものの中身が空っぽだ。
 
 何かを作ったら、用途に応じた機能を果たす部品をそこに付け加える必要が
 ある。
 
 例えばモータやLED、その配線や回路基盤を埋め込まねばならない。
 
 
 ラピッドプロトタイピングの最終的な目標は、構造材料だけでなく、機能材
 料を使って、完全に機能するシステムをプリントすることだ。
 
 導電性を持ったパウダーやプラスチックを使って配線材をプリントすること
 は可能だし、論理回路を組み込めるプリント可能な半導体もある。
 
 磁性材料を使えばモータを作れるし、化学物質を組み合わせたものでエネル
 ギーを蓄えることもできる。
 
 こうした材料が含まれたプリント可能なインクは、研究室レベルでは既に開
 発されており、実験にも成功している。
 
 それら全てをプリンタに統合することが、何でも作れる一つの機械を作ると
 いう目標への近道だ。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 ビットと原子の境界を突き破れ。
 新たな時代の萌芽を見逃すな。
 
 計画・設計・製造・試験・消費・再生を分断するな。
 「おもちゃ」と「製品」の垣根は、案外低い。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ものづくりとは(ほぼあらゆる物をつくる)
 過去(ハードウェア)
 現在(鳥と自転車 減算的技法 ほか)
 未来(歓喜)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・ファブラボ MIT The Center for Bits and Atoms
 ・出版社 ソフトバンククリエイティブ
 ・アマゾン 『ものづくり革命』

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March 30, 2006

自然に学ぶものづくり

Shizennnimanabu
 【今週の一冊】
 ●『自然に学ぶものづくり』
  生物を観る、知る、創る未来に向けて

  著:赤池 学(東洋経済新報社)
  2005.12 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆

『自然界では、機械も使わずに最低限の力で、
                   自発的にものがつくられています。
                   
   できるだけ単純な仕組みを使って、材料となるものにどのような環境を
     与えれば、必要な構造や機能を自発的に生み出すことができるか。
     
     地球という場の中で、自然にできたものに学ぶ意義は、
                  そこにあるのではないでしょうか。』

-----------------------------------
 タイからの帰国の機内の中から、今回はお送りします。
 
 タイの特産品といえば、「タイ・シルク」。
 
 色鮮やかで手触りのよりスカーフが、お土産としてたくさん並べられていま
 した。
 
 
 さて、シルクは蚕が繭として生み出すものですが、思えばわずか体長8セン
 チほどの体から「生産」されるプロセスは、とても人間には真似できません。
 
 シルクはセリシンとフィブロインという2種類のタンパク質からなり、中心
 のフィブロインを4層のセリシンが囲む5層構造です。
 
 しかも各セリシンは熱による溶解性がそれぞれ異なっており、フィブロイン
 の保護、潤滑剤、繊維の固定、繭の構造材という役割を担っています。
 
 小さな体から、常温常圧で、身の回りの酸素、窒素、水素、炭素といった軽
 元素のみで長さ1,500メートルもの長さの絹糸が生み出される、「ハイテク・
 シルク工場」が蚕なのです。
 
 
 この絹タンパクを、繊維ではなく純度の高いタンパク質素材としての利用が
 研究されています。
 
 肌に優しく、生体適合性が高いシルクの性質を活かし、化粧品やコンタクト
 レンズ、人工皮膚などへの応用開発が進んでいます。
 
 更には蚕のゲノムが解読されており、蚕以外の他の生物からも、似た遺伝子
 情報を解明することで、利用価値のあるタンパク質が作り出せるかもしれな
 いのです。
 
 
 こうした自然の持つ潜在的な力を活用し、またその構造や機能を模倣し、そ
 して資源やエネルギーを循環的に活かすものづくりが、本書には紹介されて
 います。
 
 里山で自然と共存し、紙や木や土を生かしたものづくりの歴史を持つ日本こ
 そ、いまなお豊かな自然に囲まれた東南アジアはもちろん、世界に向けて、
 「自然に学ぶものづくり」を発信すべきでしょう。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 セルロースは、木をはじめとする植物繊維の骨格となる成分であり、環境に
 適合する天然高分子として活用されている。
 
 これまでは、木材をパルプとし、更に微細な繊維状にして取り出したセルロ
 ースをもとに材料を開発してきた、いわば「トップダウン方式」だ。
 
 これは植物がエネルギーを使って組み立てた構造を、さらにエネルギーを使
 って崩すことになり、効率が悪い方法だ。
 
 今後重要になるのは、生合成されたセルロースを、種々のサイズ・構造を持
 つ構造体に形成する「ボトムアップ方式」であり、生態系は常にボトムアッ
 プ方式だ。
 
 このようなボトムアップ方式の材料設計が可能な系が、酢酸菌などのバクテ
 リアが産生するセルロースゲルだ。
 
 なんとこのゲルは、あのデザートとしてブームになった「ナタデココ」なの
 だ。
 
 このバクテリアセルロースゲルを利用して、ヘッドホーンの振動板などに用
 いるの強度の高いフィルムが得られ、また液晶ディスプレイなどの無機ガラ
 スに代わる、軽量の高性能ガラスとしての利用が期待されている。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 出力したもののリサイクルの前に、入力を抜本的に見直そう。
 動植物の、身の丈にあった入出力に学ばねばならない。
 
 「虫けら」と、侮ることなかれ。
 数億年前から生き延びた彼らを、人類はまだ解明していない。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 序章 今なぜ、自然に学ぶものづくりなのか
 第1章 「人間力」―生物を観る、知る、創る未来に向けて
 第2章 「植物力」―自然を活かすバイオマスビジネス
 第3章 「昆虫力」―インセクトテクノロジーの台頭
 第4章 「微生物力」―自然に学ぶライフサイエンスの未来
 第5章 「地球力」―命を育む地球生態系に学ぶ
 第6章 「再び人間力」―自然に学ぶ子どもたちを生み出すために
 終章 自然に学ぶものづくり、日本から世界への発信
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 赤池 学
 ・出版社 東洋経済新報社
 ・アマゾン 『自然に学ぶものづくり』

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March 08, 2006

トヨタ生産方式

toyotaseisannhoushiki
 【今週の一冊】
 ●『トヨタ生産方式』
  脱規模の経営をめざして

  著:大野 耐一(ダイヤモンド社)
  1978.05 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『なお、一部の人たちのこの方式を曲解しての批判に対しては、
                  弁明・釈明は一切しておりません。

       世の中のことはすべて歴史が立証すると確信するからです。』

-----------------------------------
 「ものづくり」に関する書籍の中で、これだけは外せない、というものがい
 くつかありますが、本書はその筆頭ともいえます。
 
 30年近く前に刊行されながら、なんと先日、ついに第100刷まで到達した、ロ
 ングセラーです。
 
 それもこれも、トヨタ生産方式の生みの親、大野耐一氏がその「思想」をま
 とめた貴重な一冊であり、冒頭の言葉が示すがごとく、NO.1企業トヨタの源
 流だからです。
 
 
 トヨタ生産方式の2本の柱は「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」。
 
 ではその関係は?
 
 大野氏は、これを野球にたとえて、前者をチームプレー、後者を個人技を高
 めることに当たると説明します。
 
 
 「ジャスト・イン・タイム」によって、生産現場の各工程に当たる、グラウ
 ンドの各選手は、必要なボールをタイミングよくキャッチし、連係プレーで
 ランナーを刺します。
 
 全工程がシステマチックに見事なチーム・プレーを展開するのです。
 
 生産現場の管理・監督者は、野球の監督・コーチに当たります。
 
 強力な野球チームが、どんな事態にも対応できる連係プレーを展開するよう
 に、「ジャスト・イン・タイム」を身につけた生産現場は機能するのです。
 
 
 一方の「自働化」は、重大なムダであるつくり過ぎを排除し、不良品の生産
 を防止する役割を果たします。
 
 そのために平生から各選手の能力=「標準作業」を認識し、これに当てはま
 らない異常事態、つまり選手の能力が発揮されないときには、特訓によって
 その選手本来の姿に戻してやります。
 
 こうして「自働化」によって「目で見る管理」が行き届き、生産現場すなわ
 ちチームの各選手の弱点が浮き彫りにされ、直ちに選手の強化策を講じるこ
 とができるのです。
 
 
 ちょうどWBC真っ盛りですが、強い野球チームは必ずチーム・プレーよし、
 個人技よしであるように、「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の両立
 が、強い現場を生むトヨタ生産方式の真髄です。
 
 
 これら全ては、「原価を下げる」というニーズから生み出されたものであり、
 しかも単なる願望ではなく、自分をぎりぎりの線に追い込んで、掴み取った
 ニーズです。
 
 カンバンや上辺をまねて、おいしいとこ取りしようという浅薄な「ニーズ」
 では、到底理解できない境地です。
 
 「トヨタ生産方式は、考え方を根本から改める、意識革命である」との至言
 を痛感する本書は、ニッポンのものづくり人ならば、必読・必携の書である
 と断言します。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「フォード・システム」と「トヨタ生産方式」。
 
 片やロットを大きく、段取り替えを少なくする方式であり、片やロットを小
 さく(1個流し)、段取り替えをすみやかに行う方法だ。
 
 全く対照的な生産方式だが、意外なことに、大野氏はヘンリー・フォード1
 世に敬服して止まない。
 
 例えば、フォード1世は、「標準」に関して、「相手が国であっても、企業
 トップであっても、どのような上司であっても、上から与えられるものでは
 なく、『標準』を設定するのは生産現場の当事者がせよ」と述べている。
 
 また、「産業の終着点は、人々が頭脳を必要としない、標準化され、自動化
 された世界ではない。その終着点は、人によって頭脳を働かす機械が豊富に
 存在する世界である」とも書き残している。
 
 これらを通して、大野氏は、「ヘンリー・フォード1世がいま生きていたら、
 トヨタ生産方式と同じことをやったに違いない」と言い切る。
 
 フォードの後継者達は、必ずしも彼の意図した生産の流れを作らず、間違っ
 て解釈していたのだ。
 
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「トヨタ生産方式」はツールではない。マインドだ。
 しかも生みの親が数10年かけて浸透させたことを、知らねばならない。
 
 「データ」以上に、「現物」を見よ。
 「原因」ではなく、「真因」を追究せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 第1章 ニーズからの出発
 第2章 トヨタ生産方式の展開
 第3章 トヨタ生産方式の系譜
 第4章 フォード・システムの真意
 第5章 低成長時代を生き抜く
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 大野耐一先生の言葉
 ・出版社 ダイヤモンド社
 ・アマゾン 『トヨタ生産方式』

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January 05, 2006

物の見方 考え方

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 【今週の一冊】
 ●『物の見方 考え方』

  著:松下幸之助(実業之日本社)
   2001.03 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『われわれの前には、無限の仕事が課せられているのである。
 
    人間として宿命的に、そういう使命を果たすべき立場に、
         われわれはおかれているという自覚を持ちたいと思う。』

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 光のどけき新春に、心新たに一年の計を律する方も多いことでしょう。
 
 温故知新、ここは一つ、幸之助翁に「ものづくり」の初心を尋ねてみましょ
 う。
 
 
 われわれが「ものづくり」をするのは、何のためでしょう?
 
 自分が食べていくため?給料をたくさん得るため?
 
 もちろん待遇も必要ですが、もっと大きな「ものづくり」の使命があると、
 彼は言います。
 
 それは「いろいろの物をつくって社会の多くの人たちの経済生活を、日一日
 と向上させていく」ことです。
 
 
 それを実現する理念を、水道水に例えます。
 
 幸之助氏の若かりし頃、大阪天王寺の場末の町の共同水道で、荷車を引いて
 きた人が喉の渇きを癒しているのを見ます。
 
 水道は飲めるように加工するのに料金を払っているのだから、ただではない
 が、無断で飲んでいても誰もとがめない。
 
 それは、いかに大切なものであっても、ひとしく大量にある水は、ただに等
 しいからであると気がつきます。
 
 
 人間にとって、冷蔵庫や、衣料、その他あらゆるものは、水のように必要な
 ものに違いない。
 
 それらが水道の水のように、何でも欲しいだけ、ただのごとくあれば、この
 世に「貧」も、「貧」から生まれる犯罪もなくなるのでないか。
 
 そうすると、私(松下幸之助)の使命は、水道の水のように、電気器具をつ
 くることであり、そこに自分の「ものづくり」の使命があると知るのです。
 
 
 これは当然、簡単なことではありませんが、究極の目的です。
 
 日本だけではなく、全世界の共通の力で物資をだんだん安くしていき、満ち
 足りた世の中にしていく。
 
 現に水道水が、そうなっているように。
 
 これが、幸之助氏の「水道哲学」です。
 
 
 そう考えれば、勇気が出てくるではないですか。
 
 金儲けとか、個人の成功とかは、(もちろんそれも感情的にはうれしいこと
 だけど)尊い使命を果たすことと比べれば、問題にならない。
 
 心魂を打ち込んでやるという正義感と希望が生まれてくるのです。
 
 
 そのため我らエンジニアができることは――。
 
 冒頭の言のように、「無限の仕事」が広がっています。
 
 さあ、志を高く、今年も熱き「ものづくり」に燃え上がりましょう!
 
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 本当に役に立つ人は、「仕事に熱心な人」、「熱のある人」。
 
 幸之助氏がいろいろな人を見てきた中での実感だ。
 
 例えば、二階に昇りたい、何とかして昇りたい、という熱のある人はハシゴ
 を考える。
 
 昇りたいなあ、くらいの人ならハシゴまで考えない。
 
 その人の才能が優れているからハシゴを考えるということもあるが、やはり
 熱意である。
 
 人間の才能や知識も、熱意があって初めて生きてくる。
 
 だからといって、家庭の妻や子を忘れろというのではない。
 
 そういう仕事に熱意のある人は、家庭生活の設計にも熱が入る人だ。
 
 そして、多くの人から喜ばれている。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 あなたは何のために働いているか。
 何のために「ものづくり」をするのか。
 あなたの「使命」は何だろうか。
 
 この問いかけに、答えなければならない。

-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 会社経営のカンどころ/責任の持ち方/金だけが目的で仕事はできぬ/
 事業に失敗したらどうする!?/長期勤続のちから/伸びる会社・伸びる社員
 /難局を切り抜ける条件/事志に反す/私の軍師・加藤大観/
 私のアメリカ土産/ものの見方考え方/商売の道/役に立つ人間/
 「のれん」の精神/オランダに学ぶ/心の持ち方/私の学校教育論/
 お金のかからぬアメリカ/経営についての考え方/
 日本の経営者、アメリカの経営者/功ある人には禄を与える/
 人多くして人なし/「運」について考える

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December 28, 2005

日本のもの造り哲学

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 【今週の一冊】
 ●『日本のもの造り哲学』

  著:藤本 隆宏(日本経済新聞社)
   2004.06 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆


   『ちょっとやそっとではぶれない、もの造り現場発の戦略論。』


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 海外出張に行っていたこともあり、「日本のものづくり」について考え直す
 機会となる書籍を最近特に紹介してきましたが、今回紹介の一冊は、まさに
 その「決定版」とも言えます。
 
 やまさんもつい、「最近、日本のものづくりが勢いを取り戻した」という書
 き方をしていしまいますが、それは収益力と競争力を混同した、後追い的な
 説明になっていないでしょうか。
 
 また、「日本の…」とまとめてしまうこと自体、ものづくり現場の実力を見
 誤り、視点がぶれてしまいます。
 
 筆者は長年の産業分析から、重厚な「ものづくり現場発の戦略論」を展開し
 ています。
 
 
 以前に紹介した「能力構築競争」 にもあるように、「ものづくりの組織能力
 」を「設計情報を上手に作り、製品として転写し、流す能力」と考えます。
 
 そして、設計情報が顧客に届くまでを追いかけることで、製品機能を部品に
 振り分ける設計思想=「アーキテクチャ」により、既存の産業分類にこだわ
 らない分析を試みます。
 
 その代表が、製品機能が部品と1対1に対応するパソコンのような「組合せ
 型(モジュラー型)」の製品と、機能と部品の関係が複雑に絡んだ自動車の
 ような「擦り合わせ型(インテグラル型)」という分類です。
 
 
 戦後の日本は「人が足りない、モノが足りない、お金が足りない、という中
 で競争し成長せざるを得なかった」ために、現場組織のチームワークでムダ
 を最小化し、設計情報を高精度・高密度で転写する「統合型ものづくり」を
 鍛えました。
 
 これが「擦り合わせ型アーキテクチャ」の製品と相性が良かったことが、自
 動車産業を始めとする、日本のものづくり現場の競争力の源泉であったと説
 きます。
 
 
 一方、「構想力」のアメリカが知識集約的なモジュラー製品を得意とし、「
 動員力」の中国が労働集約的なモジュラー製品と相性が良く、これら「モジ
 ュラー大国」に挟まれた日本が取るべき戦略を挙げます。
 
 特に中国は、日本の擦り合わせ製品を、擬似的にモジュラー化(コピー品)
 としてしまうスピードと低価格化の強みを持ちます。
 
 そこで例えば、日本はエンジンのみを「パワード・バイ・ホンダ」としてコ
 ンポーネントで売り込む、といった、アーキテクチャに応じた戦略も考えら
 れるのです。
 
 
 そして、せっかくの組織能力や現場のものづくり能力を「収益」に結びつけ
 るためには、「アーキテクチャの位置取り」がポイントとなります。
 
 自動車部品メーカのように、自分も顧客も擦り合わせという位置取りは、組
 織能力を鍛える「道場」としては最高ですが、決して楽に儲かりません。
 
 この位置は「擦り合わせ過剰」であり、「現場は強いが会社は儲からない」
 状態に陥ります。
 
 そこで、インテルのMPUのように「インテグラルな部品をモジュラーとして売
 り込む」、あるいは「モジュラーな製品をインテグラルに使わせる」といっ
 た、境界上のビジネスに高収益のチャンスがあるのです。
 
 
 こうして、高度数万メートルから日本を俯瞰するような経済論でもなく、高
 度1.5mの現場目線そのものでもない、工場の天井裏から現場を覗く「高度10
 mの世界」から見た「ものづくり論」は、骨太で地に足の着いた内容です。
 
 産業に関わらず、ものづくりに関わる方ならば、自身の立場と進むべき道を
 考える、大きな刺激となる、冬休みお勧めの一冊です。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 フロントランナー企業は、一番強い向かい風を受けている。
 
 では、日本のフロントランナー「トヨタ」が問題としていることは何か。
 
 
 第一は、コスト管理の見直し。
 
 これまでは生産性や歩留まりといった「原単位」に注目していたが、今後は
 賃金や設備単価といった「レート」を含めた原価管理が重要だ。
 
 第二は、生産変動や少量生産に強い生産システムの再構築。
 
 第三は、「トヨタ・ウェイ」の海外拠点への浸透。
 
 第四は、不透明な値引き体質から脱却し、国内販売を改善すること。
 
 第五は、「イライラさせない」車作りに加えた「ワクワクする」車作り。
 
 第六は、燃料電池やITSといった、自動車のアーキテクチャ変動への対応。
 
 第七は、「強い」だけではない、顧客や従業員、社会から「尊敬される企業
 」を目指すこと。
 
 
 これらの課題が、いずれ他の会社に問題になる可能性があることは明らかだ。
 
 問題そのものも当然だが、問題を発見し対策を打つプロセスそのものにも、
 深く学ばねばならない。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 自社のものづくりの「アーキテクチャ」を明らかにしよう。
 
 ものづくりの能力構築に終わりはない。
 体力を鍛えるとともに、頭も鍛えて「現場と本社」を両立させよう。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 第1章 迷走した日本のもの造り論
 第2章 「強い工場・強い本社」への道
 第3章 もの造りの組織能力―トヨタを例として
 第4章 相性のよいアーキテクチャで勝負せよ
 第5章 アーキテクチャの産業地政学
 第6章 中国との戦略的つきあい方
 第7章 もの造りの力を利益に結びつけよ
 第8章 もの造り日本の進路

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December 07, 2005

日米・技術覇権の攻防

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 【今週の一冊】
 ●『日米・技術覇権の攻防』
  IT時代の主役はだれか

  著:森谷 正規(PHP新書)
   2000.02 / ¥693

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『21世紀の技術進展を広く展望することによって、産業列国の中で
   日本が米国と競って強い技術力を発揮していく新たな方向が見える。
   
  それは、大量消費を超えて、環境、エネルギー、都市、情報、人間、自然
   などの多分野において、全方位に日本の技術開発を展開していくことだ』

-----------------------------------
 日本のものづくりの力、技術力・開発力は、今、強いのでしょうか。
 
 これに答えるのは容易ではありませんが、本書では、過去を振り返った時間
 軸上、また他国、特にアメリカとの比較による空間軸上の位置付けを探るこ
 とを試みています。
 
 
 日本とアメリカのものづくりには、「大量生産」を指向する共通点がありま
 すが、一方で、「革新」を目指すアメリカと、「応用」に強い日本と、性格
 をはっきり異にする面があります。
 
 筆者はこれを、「開拓者の米国」と「一所懸命の日本」の差であると説明し
 ます。
 
 
 アメリカでは、建国した庶民が、自らの生活や仕事のために必要に迫られ、
 欧州にはなかった、大量生産システムという革新的な手法を創り上げました。
 
 その象徴が、20世紀前半のT型フォードのライン生産システムです。
 
 第2次大戦の後、トランジスタやナイロン、ジェット旅客機といった革新技
 術というフロンティアを開拓した後は、宇宙開発・軍事技術にアメリカは突
 き進みます。
 
 アポロ計画には最盛期、20万人ものパワーを動員しましたが、その結果在来
 技術には人も金も投入されず、そして60年代以降、革新的な技術は生まれな
 くなったのです。
 
 
 その後の技術進展は、LSIや超LSI、またCCDや液晶といった、応用開発が中心
 となり、粘り強く、コツコツと性能を上げてコストを下げる開発努力のため
 に、一所に懸命となる日本企業の躍進が始まります。
 
 狭い国土で同じ業界にひしめき合って切磋琢磨する日本企業のあまりのスピ
 ードと努力に、開拓のチャンスが得られなくなると、逆に保守的となる米国
 人は驚き、呆れました。
 
 
 ところが80年代になると、大量生産が成熟してしまい、今度は日本企業が技
 術力を揮える場がなくなってしまいます。
 
 そこで今度は、情報技術という未開の大陸を発見した米国人は、持ち前の開
 拓者精神を発揮し、ベンチャー企業による躍進で、再び日本を追い抜いたの
 です。
 
 
 最近になって、また再び日本が攻勢を取り戻しつつありますが、こうして見
 ると、今後日本の行く末として、取るべき道をここでは3つ挙げられていま
 す。
 
 まず第一は、「20世紀の後始末」。
 
 つまり、環境破壊に代表される、大量消費社会のツケをきちんと払って、教
 育や医療を含めた、社会問題の解決の道です。
 
 第二は、高度情報化であり、20世紀末に起こったうねりが、さらに加速して
 いくことは間違いありません。
 
 そして三番目が、がんの治療や砂漠の緑化といった、人間や生物を含めた、
 自然に関する技術の進展です。
 
 
 これらの新たな方向で、「一所懸命」に技術を高度化することが、これから
 の日本の「ものづくり」の強みとなるのです。
 
 長い不況を脱し、現場に力強さが戻った今こそ、かつてのバブルのように己
 を見失わないために、行く末を見定めた地に足のついた「ものづくり」の実
 践が、肝要なのです。!
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 70~80年代に開花した日本の技術の典型が、CCDだ。
 
 画素が数百、数千の段階から始めて、万になって画像らしきものが撮れるよ
 うになり、10万を超えてビデオカメラに使えるレベルに到達した。
 
 一方で、歩留まりを上げるのに懸命の努力をしてコストを下げて、大衆製品
 であるビデオカメラに採用できるようになったのだ。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「フロンティア」達に煽られて、「一所懸命」を忘れていないか。
 
 昨日、今日に囚われて、わが身を見失っていないか。
 遥かな時空の中の自己を知り、明日を創造せよ。

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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 高度成長で米国に追いつく―50~60年代
 第2章 米国に追いついて技術強国になる―70~80年代
 第3章 情報技術で米国に再び抜かれた―90年代
 第4章 二十一世紀の技術進展
 第5章 産業列国事情を読む
 第6章 日本の技術力を発揮する新分野
 第7章 技術力を発揮する方向と戦略

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November 24, 2005

日本人の技術はどこから来たか

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 【今週の一冊】
 ●『日本人の技術はどこから来たか』

  石井威望(PHP研究所)
   1997.10 / ¥690

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『法隆寺や伊勢神宮の一コマ一コマには、伝統的な美意識に
 
       裏打ちされたモノづくりの神髄が秘められているのである。』

-----------------------------------
 来月やまさんは、設備の立ち上げのために海外出張に行く予定です。
 
 「ニッポンのものづくりを応援!」と銘打っているのが「えんぢに屋本舗」
 ですから、ここは一丁、日本の技術者代表の意気込みで頑張ります!
 
 ところで、その「ニッポンのものづくり」の特徴とは、一体なんでしょう?
 
 今回は、温故知新、日本の技術の源流を、歴史に学んでみましょう。
 
 
 キーワードの一つが、「不易と流行」です。
 
 「不易」とは、基本的永続性をもつ「変わらないもの」であるのに対し、「
 流行」は、その時代の新しい風、「変わるもの」を表します。
 
 この二つの矛盾が同時に存在するところに芸術性があり、生命のメカニズム
 にも通ずるものがあります。
 
 
 「不易と流行」の象徴が、1,300年前からの伝統を守る「伊勢神宮」です。
 
 伊勢は伝統を継承して「変わらない」ために、あえて20年ごとに社殿や鳥居
 など一式を作り変える「式年遷宮」を行い、職人の業を脈々と受け継いでい
 ます。
 
 様式というソフトウェアが「不易」であるが故に、建物というハードウェア
 は「流行」に乗って新陳代謝する。
 
 宮大工をはじめとする工人たちが、先代の技術を受け継ぎ、やがて各地の伝
 統工芸に根差す「ものづくり」を支える力となったのです。
 
 
 戦後の日本が、欧米に追いつこうとキャッチアップし、わずか30年で追い越
 してしまったこの「速さ」は驚異的です。
 
 これは戦後に限ったことではなく、16世紀に種子島に伝来した、たった2挺
 の火縄銃が、あっという間に全国に伝わったように、日本人は異質で高度な
 文明を、素直に評価して猛烈な勢いで取り入れる「潜在能力」があります。
 
 この「能力」に通じる、芸事の基本が「守・破・離」です。
 
 まず伝統的な方法を「守って」徹底して学び、基本を十分にマスターしたら
 次の段階で伝統的な方法を「破り」、やがて学んだものから「離れて」、全
 く独創的な方法を確立する。
 
 
 このように、日本人には徹底して「真似る」=「学ぶ」姿勢こそが、独創性
 を発揮する大前提であるとする歴史があったのです。
 
 しかも、明治維新では文明開化といいながら「和魂洋才」という言葉で「大
 和魂」が強調されたように、すべてを「真似る」のではなく、日本に合うよ
 うに取捨選択します。
 
 「もの真似上手」といわれることに過度のコンプレックスを抱くことなく、
 キャッチアップの速さを生かして、「和魂」によって先例を破り、離れてい
 けばよいのです。
 
 
 一方、戦前の陸軍では、技術の現場の意向を無視して、指導部は運びやすさ
 と安さに目を奪われて、軽量な戦車ばかり作ってしまい、ソ連軍に大敗する
 憂き目を見ました。
 
 指導部が現場を知らずに差配する、というのは、鎌倉時代の守護地頭の関係
 から、今日の官僚と企業の関係まで続く、悪しき日本の遺伝子です。
 
 
 こうした日本技術の潮流を前半に記し、後半は信長の鉄砲による「イノベー
 ション」や平賀源内に見る「ベンチャー精神」といった、日本の技術史に一
 石を投じた人たちの足跡が綴られています。
 
 歴史の教科書とも、いわゆる「技術史」とも違いますが、ジャパニーズ・エ
 ンジニアの先達と自分の関係を知る一冊となるでしょう。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 一般に、「からくり人形」といえば、西洋から渡来したゼンマイ仕掛けの時
 計を応用し、木と鯨の髭でつくった精巧な自動人形、というイメージがある。
 
 それは一応、正しい見方だが、つい忘れがちになるのは「糸を使っている」
 ということだ。
 
 なぜ、糸が重要だったか。
 
 一つは、「からくり」のメカニズムが一目で理解しやすいということだ。
 
 ゼンマイ時計のメカニズムを一目で理解するのは難しい。
 
 それに対して「からくり人形」は、糸を使って各部が動力源と結ばれている。
 そして、その糸の繋がりを見ることで、人形が動くメカニズムがよくわかる
 仕掛けになっている。
 
 もう一つは、糸を使うと、無理に引っ張ると糸が切れるから、動力学も問題
 を解決せねばからくりを動かせない点だ。
 
 「からくり人形」の製作者たちは、人形を作りながら歯車やゼンマイの組み
 合わせ方はもちろんのこと、機械技術の基本となる動力学を、ごく自然にマ
 スターしていったのだ。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 何が「不易」(変えてはならない)で、何が「流行」(変えるべき)か。
 その見極めが必要だ。
 
 はやりの横文字を、大和言葉で言い換えて、ニッポンのものづくりへ昇華せ
 よ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1部 日本技術の個性と思想
    (不易と流行の二重構造―伊勢神宮と法隆寺
    「鉄がつくった国」の知恵
    もの真似上手・創造上手の日本技術 ほか)
 第2部 近代技術の源流
    (織田信長と鉄砲―技術は乱世に成熟する
    本阿弥光悦と平賀源内―元祖・マルチ人間の日本的技術思想
    三井高利と経営技術―再出発を支える知的資源の蓄積

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October 26, 2005

現場力を鍛える

genbaryoku_kitaeru
 【今週の一冊】
 ●『現場力を鍛える』
  「強い現場」をつくる7つの条件

  著:遠藤 功(東洋経済新報社)
   2004.2 / ¥1,680

-----------------------------------
 ◆ 燃える一言 ◆

 『すべての業種、すべての機能に「現場力」は存在する。
 
          そして、その優劣が企業の競争力を大きく左右する。』

-----------------------------------
 「トヨタではどうして改善提案が年間61万件も出され、その91%が実行
 されているのだろう?」
 
 「多くの企業で鳴り物入りで始まった全社改革運動が、途中で頓挫し根付か
 ないのはどうしてだろう?」
 
 実に素朴な、しかし誰もが知りたい疑問です。
 
 筆者曰く、「その答えは『現場力』にある。」
 
 
 まず、それぞれの企業が、身の丈にあった「正しい戦略」を持つことが必要
 ですが、その戦略を「正しくやりきる」のが「経営」です。
 
 しかし、真に「強い企業」を目指すためには、「正しいことを正しくやりき
 る」だけでは不十分なのです。
 
 それは、市場や環境、顧客の変化に伴って、「正しいこと」自体が変化して
 いくからです。
 
 環境が変わろうと、従業員が変わろうと、常に「正しいこと」を見極め、そ
 して「正しくやり続ける」努力を惜しまない企業こそ、「強い企業」です。
 
 
 では、「正しい戦略」を「正しくやり続ける」主体は誰でしょうか。
 
 もちろん、その実行主体は「現場」です。
 
 この現場という組織自身が、打ち出された戦略を咀嚼し、具体的な戦略に落
 とし込んで実行し、そして起こる様々な問題を能動的に発見し、解決する。
 
 この力こそが「現場力」なのです。
 
 
 現場力は、プロジェクトXのような大型案件を、信じられない短期間で完遂
 する、といった「火事場の馬鹿力」だけではありません。
 
 むしろ、日常業務の現場でこそ、問題点に鋭敏に反応する感受性と実践する
 行動力を、意識的に鍛え上げねばなりません。
 
 現場力欠乏症の症状は、「無知・無視・無関心」の三無状態。
 
 一方、進化する現場には「問題発見」「問題提起」「問題解決」の能力が備
 わっています。
 
 
 「後工程は前工程のお客様」と意識されている現場では、「後工程は前工程
 に文句を言うのが仕事」だと理解され、前工程の不手際を指摘し、共に改善
 することが後工程の義務なのです。
 
 意見の対立でギクシャクしたりすることを恐れず、健全な意見の対立があっ
 てこそ、現場力を高める起爆剤です。
 
 そして自らの業務の失敗から学び、また現状を否定することから改善のアイ
 デアを紡ぎ、実践するサイクルを根付かせることで、現場は進化します。
 
 
 コンサルティングを通してあらゆる業種の現場を観察した著者が、現場の目
 線から経営を捕らえようとまとめられた内容は、おそらく誰もが「知ってい
 る」「分かっている」ことです。
 
 しかし、現場の当事者自らが、愚直なまでに「実行」「続行」しているかど
 うかが、決定的な差となります。
 
 景気が回復している今こそ、掲げられた「強い現場」を作る条件を、徹底的
 に追い求めていくチャンスであるといえるでしょう。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「正しくやりきる」とは、「当たり前」のことを全員が最後まできちんとや
 りきることである。
 
 「当たり前」のこととは、次の5つだ。
 
 1.結果を出すのは自分たちだという強い自負・誇り・当事者意識を現場が
   持っている。
   
 2.現場が会社の戦略うあ方針を正しく理解・納得し、自分たちの役割をき
   ちんと認識している。
   
 3.結果を出すために、組織の壁を越えて結束・協力し、知恵を出し合う。
 
 4.結果が出るまで努力を続け、決してあきらめない。
 
 5.結果を出しても奢らず、新たな目標に向かってチャレンジし続ける。
 
 まるで小学校の標語のように、きわめて陳腐で常識的なことだ。
 
 しかし、この「当たり前」のことができずに、苦しんでいる企業が多いのが
 実態なのである。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 自分の目で見て、自分の耳で聴き、自分の肌で感じ、自分の頭で考えろ。
 
 「過去」を否定するな。
 「未来」の視点から、「現在」を前向きに否定しろ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 序章  素朴な疑問
 第1章 「強い現場」とは何か
 第2章 「強い現場」の七つの条件
 第3章 「強い現場」をどうつくるのか

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September 28, 2005

テクノロジストの条件

technorogist
 【今週の一冊】
 ●『テクノロジストの条件』
 はじめて読むドラッカー (技術編)

  著:P.F.ドラッカー 翻訳:上田 惇生(ダイヤモンド社)
   2005.7 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『若者のなかでも最も有能な者、最も知的な資質に恵まれた者、
      最も聡明な者にこそ、知識に裏付けられた技能を使う
             テクノロジストとしての能力をもってほしい。』

-----------------------------------
 経済や社会学の大家であるドラッカーは、「ものづくりの技術が文明をつく
 る」と説き、技術のマネジメントにも力を入れて著しています。
 
 彼の技術に関する著述をまとめた本書は、理系のためのドラッカー入門であ
 り、同時に文系のための技術論でもあり、それらを包含して「技術」の行く
 先を示す羅針盤となる、貴重な一冊です。
 
 
 今日のIT革命ほど、歴史上かつてないほど進行が早く、大きな影響を与え
 たものはないと考えがちですが、実は、かつての産業革命もほとんど同じス
 ピードで進行していました。
 
 ワットの蒸気機関が、はじめて綿紡績に使われた1785年からの約40年間は、
 産業革命といっても、それまで存在していた製品の機械化だけでした。
 
 ところが1829年に、まったくの新産業として鉄道が現れ、世界の経済、社会、
 そして政治を一変させました。
 
 鉄道こそが心理的な地理を変え、経済を変え、産業革命を真の「革命」にし
 たのです。
 
 
 一方、1940年代半ばにコンピュータが出現して始まったIT革命は、今日ま
 でのプロセスを高速化・ルーティン化したに過ぎず、コンピュータは産業革
 命の蒸気機関に当たるといえます。
 
 ではIT革命における「鉄道」は何でしょう?
 
 それは「eコマース」であり、心理的な地理を消し、あらゆる企業がグロー
 バル化し、経済が変わったのです。
 
 鉄道の誕生後、電報や写真、光学機器や農業機械といった、蒸気機関とは無
 縁の新産業が登場したように、IT革命における新産業は、バイオテクノロ
 ジーのように萌芽を見せているもの以外に、続々と生まれることが予想でき
 るのです。
 
 
 つまり、その新産業=「イノベーション」は、すでに熟知された分野以外で
 起こるのであり、従来のように専門家が研究開発するアプローチでは生まれ
 にくいのです。 
 
 そこで、今日必要とされているのが、科学技術に優れた感性を持ち、知的好
 奇心が旺盛な、専門外の「テクノロジスト(=知識労働と肉体労働の両方を
 行う人)」なのです。
 
 
 そして、技術開発の中心は、一部の天才ではなく、大量の有能な人材と大量
 の資金を有する既存の企業であり、企業はイノベーションを行う組織を構築
 し、技術をマネジメントすることが不可欠となります。
 
 企業が新技術によるイノベーションを興すためには、「技術観察(テクノロ
 ジー・モニタリング)」が重要です。
 
 新技術の影響を事前に予測しようとする「技術評価(テクノロジー・アセス
 メント)」では、間違った技術を奨励したり、有効な技術を抑制する恐れが
 あることを、歴史が物語っています。
 
 
 かつてテイラーの作業分析により、肉体労働の生産性が50倍に増加し、生
 産性革命が起きました。
 
 今後は、イノベーションを行う、知識労働の生産性の向上こそが鍵となりま
 す。
 
 我らテクノロジスト自身が、知能労働者としての知識、責任、生産性を身に
 つけることが、すなわちこれからの50年において、世界をリードする原動力
 となるのです。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 21世紀の工場にも、数多くの機械が並ぶが、工場の本質は機械ではない。
 
 その本質は、4つの新しいコンセプトである。
 
 第1に、統計的品質管理(SQC)が、工場の社会構造を変える。
 
 第2に、活動基準原価計算(ABC)が、製造上の決定を事業上の決定とし
 て行わせる。
 
 第3に、フレキシブル生産が、標準化と柔軟性を同時に実現する。
 
 第4に、システム・アプローチが、物をつくるという物理的プロセスとして
 の製造を、価値創造のプロセス(経済的プロセス)に組み込む。
 
 これらの理論はそれぞれに独自の道具と言語を持つが、これらの4つのコン
 セプトが共に機能するとき、人と機械、時間と金、標準化と柔軟性、機能と
 システムという、これまで工場を悩ませてきた諸々の対立を解決するのだ。


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 ◆ 熱い行動 ◆
 自らをマネジメントし、知識労働の生産性=質の向上に責任を持て。
 
 歴史に学び、社会を知り、明日を「技術」で拓け。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 プロローグ 未知なるものをいかにして体系化するか
 Part1 文明の変革者としての技術
  1章 仕事と道具
  2章 古代の技術改革に学ぶべき教訓
  3章 近代を生み出したものは何か
  4章 IT革命は産業革命になれるか
 Part2 技術のマネジメント
  5章 知識労働の生産性
  6章 ベンチャーのマネジメント
  7章 つくるだけでは終わらない-製造の新理論
  8章 技術をマネジメントする
 Part3 イノベーションの方法論
  9章 方法論としての起業家精神
  10章 イノベーションのための組織と戦略
  11章 既存の企業におけるイノベーション
  12章 イノベーションの機会はどこにあるのか
 Part4 世界観の転換
  13章 分析から知覚へ
  14章 知識の意味を問う
  15章 ポスト資本主義社会の到来
 エピローグ インタビュー「新技術は世界をどう変えつつあるか」

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August 24, 2005

能力構築競争

nouryokukouchiku
 【今週の一冊】
 ●『能力構築競争』
 日本の自動車産業はなぜ強いのか

  著:藤本 隆宏(中央公論新社)
   2003.6 / ¥1,008

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『二十世紀最後の四半世紀、世界の自動車産業を動かした原動力は、
                     『能力構築競争』であった。』
-----------------------------------
 「カンバン」「カイゼン」などの言葉が、そのまま「国際語」として通用し
 てしまうほど、トヨタ生産方式に代表される日本の自動車生産システムは、
 「グローバルスタンダード」化しています。
 
 また、かつての輸出の主力であった家電や半導体などが勢いを弱め、国際競
 争力を失っていく中、自動車産業には独特な「しぶとさ」があります。
 
 なぜ、戦後日本の自動車産業には、こうした特性が備わったのでしょうか。
 
 
 本書では、そのキーワードとして「能力構築競争」を挙げます。
 
 通常、企業の競争力として観察される指標は、製品の価格や納期、また目に
 見える製品の内容です。
 
 これに対し、顧客が直接観察できない、しかし表面の競争力を支える「深層
 の競争力」として、生産性や生産リードタイム、開発リードタイム、不良率
 などが挙げられます。
 
 こうした顧客が直接評価しない水面下の指標について、お互いにベンチマー
 キング(実力の比較調査)しあって競争しあうことを、「能力構築競争」と
 呼んでいます。
 
 
 自動車という製品は、機能と部品とが錯綜した関係を持つ「擦り合わせ型」
 であり、また情報を製品に転写しにくい(※「カンドコロ!」コーナーで説
 明します)材料でできた「作り込み」が必要な製品です。
 
 日本企業が得意とする、製品開発部門と生産現場・生産技術の緊密な情報共
 有は、こうした「擦り合わせて作り込む」製品と相性が良く、更に「深層の
 競争力」を競い合って組織能力を進化させてきたのです。
 
 
 この能力構築の過程は、事前に合理的に蓄積された、というより、「結果的
 に合理的になった」=「創発的」なものでした。
 
 たとえば、「忙しかったからその場その場で対処した」ことが「多能工化」
 に繋がった「怪我の功名」的な経過も含まれます。
 
 当事者の企業自身でさえ全貌を明らかにできない「創発的」な組織能力です
 から、ライバルにとっては認知しにくく、模倣しにくい能力となり、欧米の
 自動車メーカーに対して日本企業が優位を保った一つの要因とも言えるので
 す。
 
 
 こうした能力構築競争では、相手が見えないだけに、優位性を求めるあまり
 「過剰設計」にエスカレートし、90年代の品種の肥大化などにより、競争力
 を低下させるという副作用も生じます。
 
 その後の設計簡素化による大幅コストダウンで、「失われた10年」といわれ
 た中でも競争力を発揮し、今なお能力構築競争で切磋琢磨しているのが、自
 動車産業なのです。
 
 一方で、せっかく深層の競争力を持ちながら、ブランド構築などの面で欧米
 企業の後塵を拝し、「がんばってるけど儲からない」ことが、問題点として
 挙げられます。
 
 
 「儲かった企業は強い」というトートロジー的な評論が多い中、自動車業界
 の近代史を紐解きながら、緻密な分析で「ものづくり」の構造を分析した視
 点は、実に読み応えがあります。
 
 「能力構築競争」は、日本のものづくり優位性の必要条件であり、自動車産
 業以外も、徹底的に学ばねばなりません。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 製品とは、「情報+媒体(メディア)」と言える。
 
 製品設計情報が、素材すなわち媒体の中に埋め込まれたものが製品なのだ。
 
 自動車企業は、外観デザインなどの設計情報を、厚さ0.8mmの鋼板という媒体
 に乗せて顧客に発信している。
 
 製品開発とは設計情報の創造であり、生産とは工程から製品への設計情報の
 転写のことだと言い換えられる。
 
 ソフトウェアなどのデジタルデータは、「書き込みやすい媒体」に、「劣化
 しにくい情報」を転写する。
 
 自動車の鋼板は、高価な金型と数千トンのエネルギーを使ってようやく情報
 転写(プレス作業)する「書き込みにくい媒体」だ。
 
 また、よほどうまくやらねば歪んだり、破れたり、情報を正確に転写しにく
 い。
 
 そして一旦書き込まれたならば、修正が難しく、完成すれば10年は持つ。
 つまり「劣化しにくい」。
 
 こうしてみると、日本企業が国際的に見てレベルが高いのは、「書き込みに
 くく劣化しにくい」素材に、苦労して設計情報を転写し、顧客に発信する「
 作り込み」タイプの業種といえるだろう。


───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「売れた」「売れない」の上っ面ではなく、「深層の競争力」をベンチマー
 キングせよ。
 
 IT、ツールは能力の差を埋めるものではない。
 むしろ、能力差を浮き彫りにすると自覚せよ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 序章 もの造り現場からの産業論
 第1章 自動車産業における競争の本質
 第2章 能力構築競争とは何か
 第3章 なぜ自動車では強かったのか
 第4章 もの造り組織能力の解剖学
 第5章 能力構築の軌跡―二十世紀後半の自動車産業
 第6章 創発的な能力構築の論理
 第7章 紛争―脇役としての貿易摩擦
 第8章 協調―競争を補完する提携ネットワーク
 第9章 欧米の追い上げと日本の軌道修正
 第10章 能力構築競争は続く

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May 25, 2005

現場発 ニッポン空洞化を超えて

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 【今週の一冊】
 ●『現場発 ニッポン空洞化を超えて』

  著:関 満博(日本経済新聞社)
   2003.5 / ¥780

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『「空洞化」の時代とは、私たちの創造性を必要とする時代
                        ということでもある。
  そして、この刺激的なテーマを受けて「アジアの時代」と「地域の時代」
        にエネルギーを蓄えて踏み込んでいかなくてはならない。』
-----------------------------------
 「ニッポン空洞化」というタイトルを見て、一時期雪崩を打ったかのように
 中国に進出していた企業が、最近日本に戻りつつある昨今の情勢に合わない
 かな?と思いつつ、ページをめくっていきました。
 
 ところが、「現場の空洞化」とは、そんな目先の問題ではなく、日本の、そ
 してアジアのものづくりの根幹にかかわる、根深い潮流であることを知らさ
 れました。
 
 
 空洞化の議論では、「国内は高付加価値産業へ転換し、低付加価値部門をア
 ジア諸国へ展開する」という意見が聞かれます。
 
 しかし現実には、2つの大きな問題が挙がります。
 
 まず、国内の大多数の中高年や、下請け中小企業にとって、「高付加価値産
 業」に必要な知識や技術は持ち合わせていない可能性が高く、現実には弱い
 部分を「踏み潰して」次の局面へ移行することになります。
 
 また、アジアの中で日本が先頭を走ろうとするのは、すでに「思い上がり」
 であり、気がつけば誰も後をついて来ません。
 
 最近の中国の反日デモも、そんな気分と無関係ではないはずです。
 
 
 空洞化の問題は、「技術の空洞化」と「地域の空洞化」にあるのです。
 
 脚光を浴びる高付加価値の「ハイテク技術」といわれるものは、光技術やバ
 イオテクノロジー、情報通信技術などさまざまですが、それらの基盤となる
 技術は、共通した「機械金属工業」です。
 
 この基盤の上に生産技術が形成され、その上にそれぞれの特殊技術が構成さ
 れる「技術の集積構造」を考えたとき、根底の基盤技術が、歯槽膿漏のよう
 に危機に瀕しており、「技術の空洞化」が進行しています。
 
 また、全国の地方企業がそれぞれに形成した「企業城下町」は、単純労働を
 提供するだけではアジア諸国との競争には打ち勝てないことは明らかです。
 
 
 著者は採るべき道の考え方として、「マニュファクチュアリング・ミニマム
 」を提唱します。
 
 これは、「創造的なものづくりを行うための最低限の加工機能の集合」を意
 味し、上記の「技術の集積構造」の土台を、より広く安定したものにするこ
 とを指します。
 
 かつては大企業を誘致することが、地方の生き残る道と考えられていました
 が、それでは早晩、海外との競争に敗れます。
 
 地方でものづくりの基盤を育て、不足したものづくりの機能を周辺企業や、
 他の地域と補完し合い、切磋琢磨することで強靭な足腰を作り上げる。
 
 更には、「東アジア」という規模の地域で、技術の集積構造をネットワーク
 化するという姿勢で、日本は貢献することが望まれます。
 
 
 産業構造の分析や、地方・アジアのものづくりの現場を、実地に調べた緻密
 な研究成果は、今後10年間は指針として有用です。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 メッキはかつては装飾と防錆が主な用途であったが、近年はエレクトロニク
 ス関連で新たな役割を担っている。
 
 半導体の貴金属による端子メッキや、プリント基板のメッキ処理がそれだ。
 
 他方、メッキ工場は「公害」の典型であり、廃水処理には生産設備の投資に
 匹敵する投資が必要だ。
 
 また、先端技術に用いるための膜厚等の測定設備の負担も増している。
 
 そして、「3K」のイメージから、若者が寄り付かない。
 
 こうして、ニーズは高いが、工場は大幅に減少している。
 
 地方や海外に進出したエレクトロニクス企業にとって、メッキ工場がないこ
 とが、最大のネックとなる。
 
 基盤となる「機械金属工業」が失われている、顕著な例だ。
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 自身の企業がおかれた立場を、「技術の集積構造」の中で分析しよう。
 「弱み」と「強み」が分かる。
 
 アジアの「熱い風」を感じて、ものづくりの「志」を取り戻せ。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 ◎ 目 次 ◎
 プロローグ 空洞化の連立方程式を解く
 第1章 産業空洞化、何が問題なのか
 第2章 技術基盤が失われている
 第3章 モノづくり現場からの視点
 第4章 地域の空洞化、技術の空洞化
 第5章 加速する東アジア進出と技術移転
 第6章 アジア経済の自立にどうかかわるか
 エピローグ 空洞化は超えられたか

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April 27, 2005

タグチメソッド わが発想法

taguchimetod
 【今週の一冊】
 ●『タグチメソッド わが発想法』
  なぜ私がアメリカを蘇らせた男なのか

  著:田口玄一(経済界)
   1999.10 / ¥1,400

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『技術者は問題が出ないうちに設計を変えて、比較をしなければならない。
  その設計が市場でトラブルを生まないかどうかを、
                事前に予測することが重要なのである。』
-----------------------------------
 筆者は1997年、日本人としては本田宗一郎、豊田英二に次いで3人目のアメ
 リカ自動車殿堂入りを果しました。
 
 ホンダ、トヨタの社長である二人と比べて、知名度では劣る田口氏が選ばれ
 たことに当時のマスコミでは「なぜ?」という反応もありました。
 
 受賞の理由は、氏が提唱した「品質工学(タグチメソッド)」によって、当
 時日本の自動車業界に比べて、品質改善の取り組みが遅れていた、フォード
 やGMに著しく貢献したことが認められたのです。
 
 
 それほどインパクトのある「タグチメソッド」ですが、一方で拒否反応を示
 す人が多いのも事実です。
 
 それは、直行表やSN比など、やや難解な理論が展開されることが一つであ
 り、更に、一見これまでの常識に反するような考え方が飛び出してくるから
 です。
 
 
 例えば、冒頭のコメントに対し、技術者は「問題があるかどうか分からない
 のだから設計をどう変えていいか分からない!」と言います。
 
 田口氏の答えは、「勝手にどんどん変えて、ばらつきを比較しなさい」。
 
 問題が出てからそれを直す設計変更を繰り返す「モグラ叩き」では、効果的
 な改善には結びつきません。
 
 自分で自由に決められる設計条件をできるだけ多く選んで、それらを組み合
 せて実験を行い、その使用条件を変えてばらつきの大きさを比較することで
 、市場でのトラブルを予測してしまうのです。
 
 その組み合わせを効率的に行う道具が「直行表」であり、ばらつきの比較方
 法が「SN比」と呼ばれるものです。
 
 
 本書は品質工学のテキストではなく、田口氏が独特の手法を考案するに至っ
 た背景を軸に著されています。
 
 現NTT、以前の電電公社の管理下にあった電気通信研究所で、実験計画法
 の専門家として、所内の研究者に指導を行い、後にアメリカのベル研究所で
 通信理論と実験計画法の研究を行います。
 
 通信の世界では、測定機の機能を示す尺度として信号対雑音比(Signal
 Noise Ratio=SN比)が用いられます。
 
 このSN比の考えを全ての技術分野で使えるように発展させたことが、田口
 氏のお手柄なのです。
 
 
 例えば、車のハンドルを切るという「信号」に対し、路面の差という「ノイ
 ズ」があっても、車の曲がり方という「出力」が影響されにくいのが良い設
 計です。
 
 これを濡れた路面ではどうか、雪道ではどうか、と一つ一つの問題を「モグ
 ラ叩き」で設計していては、あらゆる環境での機能評価を行うことは困難で
 す。
 
 SN比を機能の良し悪しを表す尺度として、設計研究することで、ユーザー
 の多様な使用条件を考えた設計が可能となるのです。
 
 
 やまさん自身が最近、タグチメソッドを業務に使い始めているところで、実
 に印象的に田口氏のエピソードを楽しむことができました。
 
 これからタグチメソッドを学ぶ入門書として、またかつて取り組んだけど挫
 折した人の再挑戦のきっかけとしても、一読をお勧めします。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 工程能力指数と損失関数は数学的には同等の関係にある。
 
 ただし、工程能力指数は「1」や「1.33」を尺度にするが、0.98と1.00では
 どう違うのか、実感できない。
 
 損失関数は、この工程能力指数に経済的な根拠を与えたものだ。
 
 ばらつきが少なくなったことが金額で表されるため、改善にかけたコストと
 の比較ができる。
 
 効果が実感できれば、自発的な改善に繋がるのだ。
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「特性」「寸法」の結果の測定だけではなく、「SN比」の機能評価を取り
 入れよう。
 
 問題が出てからの対策で忙しいから、新しい手法が学べない。
 この「悪循環」から早く抜け出そう。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 ◎ 目 次 ◎
 アメリカ発『タグチメソッド』
 統計学との出合い
 実験計画法の専門家として
 「直交表」を効果的に応用
 アメリカでの研究生活を通して
 QCRGと品質管理
 青山学院大学での日々
 アジア諸国とのかかわり
 SN比マニュアル分科会の発足
 品質とコストのバランスを考える損失関数
 進化する総合計測法「MTS法」
 デトロイト復活とアメリカでの「論争」
 二十一世紀への提言
───────────────────────────────────
 ◇ 関連blog ◇
 ・『神戸の技術士 鈴木裕のブログ』 
  やまさんと同じ技術士(機械部門)の方のblogで、本書の書評をされてい
  ました。奇遇ですね~!
 ・『1000冊の本で幸せな成功をつかもう!』
  品質工学の基本書ともいえる「開発・設計段階の品質工学」の書評です。
  タグチメソッドを使ったblogのアクセス数アップに成功されています!

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March 23, 2005

機械部品の幕の内弁当

kikaibuhin_makunouti
 【今週の一冊】
 ●『機械部品の幕の内弁当』
  ロボット博士の創造への扉

  著:森 政弘(オーム社)
   2003.01 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『すべては役に立つのです。万一役に立たないものが現れたときには、
            本当に役に立っていないのは、あなたの頭です。』
-----------------------------------
 愛知万博の開催まであと2日と迫り、報道も熱を帯びてきましたね。
 
 トヨタグループを始めとして、多彩なロボットが展示の目玉であり、最近は
 テレビでも手作りロボットによるバトルが注目を集めています。
 
 ロボット競技といえば、NHKの「ロボットコンテスト(ロボコン)」が有
 名ですが、そのロボコンの生みの親とも呼ぶべき著者が、創造的なものづく
 りについて熱く語っています。
 
 独特な創造法として、まず「三性の理」という考え方が提示されています。
 
 CDやDVDに静電気でほこりが付着するのは困ったことで、帯電を防止す
 るための対策を考えることになります。
 
 ところがかつて、コピー機の開発に取り組んでいた技術者が、良い案が出ず
 に気晴らしに聴いたレコードに付着したほこりを見て、そのとたん!閃きま
 した。
 
 そう、ほこりをほこりと見ず、文字や絵に見えたところから、トナーを静電
 気で吸着する電子コピーを発明したのです。
 
 ここで、レコードのほこりは「悪」、コピーの吸着は「善」ですが、実はど
 ちらも「プラスチックに粉体が静電気で付着する」という物理現象であり、
 善でも悪でもない、「無記」なのです。
 
 役に立つとか立たないというのは、自分が勝手に価値をくっつけたものであ
 り、この価値を脱落させた「無記」の観点に立つと、問題を抱えて考え抜い
 ているときには、あらゆるものがヒントとして見えてきます。
 
 「善・無記・悪」を三性といい、静電気のように、本来「無記」なものを制
 御をすれば善として作用し、制御が外れれば悪として作用する、というのが
 三性の理を心得た智恵なのです。
 
 こうした創造の方法を多々紹介されている中で、「生涯で創造できた最大の
 もの」がロボットコンテストであると述懐しています。
 
 東京工業大学の教授であった頃、学生達が無気力な、とろーんとした眼をし
 ていることに危機を感じ、その打破を目指して始めた試みが、その後のロボ
 コンの先駆けでした。
 
 大学から高等専門学校へ広がり、更に中学校にも波及し、全国約2,000校の中
 学校の技術科の授業に取り入れられています。
 
 既にロボコン歴10年の青森の八戸三中は、八戸市内で最も荒れた中学校でし
 たが、「登校拒否を下校拒否に変えるロボットコンテスト」という標語がで
 きるほど、生徒達は目を輝かせてロボット作りに熱中したのです。
 
 ある生徒は、コンテスト終了後の感想文に「ロボコンで周りを見る目が変わ
 った。ねじの山が少しでもつぶれているとナットが入らない。ねじやナット
 を見てもものの見方が変わる。ものを大切にすることができる。ものを大切
 にできるということは、人の気持ちが分かり、友達も増え、学校に来るのも
 楽しみになる。」と書いています。
 
 そして最後に、指導してくれた先生に向けた、「下山先生にあえてよかった
 です」の一言は、「ごくせん」にも勝る、泣ける感謝の言葉です。
 
 まさに、「ものづくりは人づくり」であることを知らされました。
 ----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 創造性を発揮するためには、まねをしない。
 
 そのためには、「調査をしない」。
 
 「誰かがやったことを繰り返すのは無駄」と思うが、創造性を発揮するため
 には、危険だ。
 
 それは、立派な先例を知ると、その知識に囚われてしまうから。
 
 知識は得るもの(外から内)であり、知恵は出すもの(内から外)。
 
 知識を得たことで知恵が出なくなるのは、創造性の大損害だ。
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 いま、目の前のあらゆるものは、先人のつくり出したものばかり。
 なぜ、そうなっているのか。必ず意味があるはずだ。考えてみよう。
 
 「エンジンやオールなどを使わず、川の流れの力で川をさかのぼる船」は作
 れるだろうか?アイデアを自由に、たくさん出してみよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 エンジンなしで川をさかのぼる船
 アイデアを豊富に―流ちょうに出す
 今に生きる三五年前のテレビのアイデア―ブレインストーミングの醍醐味
 目的を変えれば、失敗がそのまま成功になる
 役立たないものを役立てる方法(説教強盗の教訓)
 制御すると善になる
 名前による束縛
 外側だけにとらわれるな
 逆説の練習
 四角からの脱却
 身近なものに発見を〔ほか〕

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March 09, 2005

職人学

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 【今週の一冊】
 ●『職人学』

  著:小関 智弘(講談社)
   2003.11 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『夢中になって、できるものやらできないものやら分からない仕事を、
      突っつきまわしているうちに、ああ、どうにかできちゃった
              っていうのが、いちばんの喜びなんだよねえ』
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 「職人」とは、なんぞや?
 
 昔気質で頑固者、ITやパソコンに背を向けて、しかめっ面で黙々と、頼む
 は使い古した道具と腕一つ。芸の為なら女も泣かす。男は黙って黒ラベル。
 
 そんなイメージだけならば、本書に登場する多才な「職人」には不足です。
 
 自身が旋盤工であった筆者は、「ものを作る手だてを考え、そのための道具
 を工夫する人」が職人と説きます。
 
 旋盤、溶接から人工衛星の組立まで、それぞれの技能の間口は広く、奥は深
 いものです。
 
 間口の広さに甘んじて、ただ手馴れただけでは作業要員でしかなく、その奥
 行きを確かめようと努力する人だけが職人なのです。
 
 真面目な顔で作業をしていても、自分の機械に手を加えず、ちょっと故障す
 れば腕を組んでいるしかないのは半人前。
 
 「邪道だけどね」「我流さ」と照れ笑いしながらも、マニュアルにも載って
 いない使い方で、機械の能力を引き出す「機械にニンベンをつけた」仕事を
 するのが一流の職人。
 
 また、自分の舌を肥やさなければ、良い料理が作れないように、感性を豊か
 にすることが、ものづくりの技を身に付ける第一条件です。

 金属を削る旋盤工やフライス盤工は、鉄にわずか混ざる夾雑物が、切削の発
 熱で漂わせる「鉄の匂い」で材料を嗅ぎ分ける。

 あるメッキ工場の社長は、メッキに使う酸の配合を、ぺろりと舐めて確かめ
 て、大学教授も見抜けなかった配合間違いを言い当ててしまいます。
 
 これは彼らの特殊能力ではなく、本来誰もが持っている感覚です。
 
 例えば、「指先で100分の1ミリを見分ける」と聞くと驚きますが、男の剛毛
 と女性のしなやかな髪の差は、ほぼ100分の1ミリ。
 
 この感覚をものづくりに活かし、現場で研ぎ澄ませるかどうかが差であり、
 測定器の原器を作る職人は、1万分の1ミリの凹凸もない平面までも創出し
 ます。
 
 「ものの言葉を聴く感覚」と「道具を味わい尽くす工夫」から、超一流の技
 が現出するのです。
 
 工業製品は、限りなく没個性で、設計に忠実でなければなりませんが、もの
 が完成するギリギリ一歩手前まで、それを作り出すための段取りや治具に超
 一流の個性を発揮するのが、工場で輝く「職人」の姿です。
 
 “超”や“難”の付く仕事、「そんなものはできない」と断られ続けた仕事
 を、職人は「菓子折りつきの仕事」と呼び、課題を与えてくれる人が最高の
 お客だと言い切ります。
 
 そんな面倒な仕事に、時間も空腹も忘れてのめり込む瞬間は、苦しいようで
 、彼らには至福の時です。
 
 自分の技にこだわり、不可能に挑戦し、製品に誇りを持つ「職人魂」は、古
 い伝統技能ではなく、新時代のものづくりにこそ不可欠なのです。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 NC旋盤やマシニングセンタなどの加工機が並ぶラインでは、安全や切削油
 の飛散防止のために、カバーで覆われている。
 
 言うなれば、切削過程のブラックボックス化。
 
 見えない、聞こえないから、気付きも工夫もない。
 
 そこで「見える機械」に改善することにした。
 
 切削油や切り粉の飛散を最小限にするなど、大変な苦労を要したが、自分た
 ちの手で改善することで、腕が上がり、意欲も出た。
 
 加工状態がスッキリ見える状態になったときには、出来高は1.7倍になった。
 
 現場の作業者には、誇らしげな笑顔があった。
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 ◆ 熱い行動 ◆
 現場で、現物が語りかけるメッセージを、五感全てで受け止めよう。
 
 「ヘンコなおっさん」が定年で去る前に、怒鳴られてでも教わろう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 序章 職人の条件
 第1章 身につける
 第2章 場数を踏む
 第3章 ものを見る目を養う
 第4章 熟練工は一品料理を熟す
 第5章 超一流に挑戦する
 第6章 仕事を通して徳を積む
 第7章 職人の喜びと誇り

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March 02, 2005

大野耐一の現場経営

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 【今週の一冊】
 ●『大野耐一の現場経営』

  著:大野耐一(日本能率協会マネジメントセンター)
   2001.5 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『かくすれば、かくなるものと分かりなば、
               やむにやまれぬ改善魂(トヨタダマシイ)』
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 今年3月での通期の純利益に、1兆2,000億円を見込むトヨタ自動車。
 販売台数では世界一のGMに対し、利益は3倍に達する勢いです。
 どこまで強いのか!と世界が注目する「トヨタウェイ(トヨタ生産方式)」
 の生みの親が、大野耐一氏です。
 
 今でこそ「トヨタ方式」と言ってはばかりませんが、大野氏が立ち上げた当
 時は、あくまで「大野方式」と呼ばれていました。
 
 ジャスト・イン・タイム、かんばん方式という「危なっかしい」「一つ間違
 えば会社が潰れる」方法を、「腹切る覚悟で」完遂するために、自らの名前
 を冠して実行したのです。
 
 大野氏の眼には、現場の「常識」の中に潜む「錯覚」が映ります。

 量産すれば原価は下がる、というのは「適正な量」の場合であり、ほとんど
 の場合、増産すると「高くつく」。

 極端な例では、100個しか使わないのに、200個作る能力があるから、「たく
 さん作った方が安くなる」と信じて在庫を積み上げてしまう。
 
 「できちゃった」から、在庫を管理するために倉庫を作る。

 どこに何があるか分からないから、自動取り出し設備を追加する・・・。

 「要るものを要るときに要るだけ、できるだけ安く」作るための理屈で考え
 れば、錯覚がムダを産む温床になっていると気付きます。

 逆に少量生産は高コスト、という「常識」があるから、安く作って儲ける。
 
 そのためには、仕事ができない時間を極力排除するのが「理屈」であり、段
 取り替え時間の短縮が必須になります。
 
 結局、量の多少にかかわらず、「限量生産」(限られた量を、できるだけ安
 くつくる)のための理屈から、「大野方式」を考え出したのです。
 
 だから「理屈」が分からずに、中途半端にかんばん方式を使うことを禁じ、
 分からせるためには工場長自らが、現場の班長に語りかけ徹底します。
 
 限量のための理屈だから、今のトヨタのように大量生産ではなく、生産量の
 少ない中企業にこそトヨタ方式は相応しい、というのが大野氏の主張です。
 
 たいしてデメリットもないがメリットもないことを、錯覚の固まり同士が、
 こうなるより仕方ないと「常識化」したものが相当あります。
 
 「脱常識」のためには、議論や数字の上で侃侃諤諤やっても埒があかない。
 
 大きなメリットには必ず大きなデメリットがあるから「やらない」のではな
 く、デメリットの大きな口を塞いでしまえば大きなメリットだけ残る、と考
 え方をひっくり返す「意識改革」が必要なのです。
 
 「トヨタ本」は、あまた世に溢れていますし、大野氏自らが語りかける本書
 は、体系化されておらず、読みやすい文章でもありません。
 
 しかし、現場=会社を変える「トヨタ方式」の原点であり、世界随一のもの
 づくりの智恵と経験が散りばめられた、必読の一冊です。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 「自動停止装置付きの機械を自働機という」というのが、ニンベンの付いた
 「自働機」の定義。
 
 不良が出ても、止まらずに「自動」でつくるのは働いたことにならない。
 
 不良を減らせば、原価が安くなる。だから止める。
 
 自動で止まらなければ、ストップボタンをたくさんつけて、作業者が遠慮な
 く止める。
 
 止められたら困ると考えるのが、品質改善にどんどんつながる。
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 ◆ 熱い行動 ◆
 算術や常識に惑わされず、「こうあるべき」から発想する。
 
 あるべき姿を試してみて、自分の目の前で「失敗」してみよう。
 
 失敗したら、する前より、もう一つ改善すればいい。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 君子豹変す
 間違ったら素直に認める
 錯覚が能率を下げる
 失敗は目で確かめる
 常識の中にひそむ錯覚
 算術計算の盲点
 機会損失を恐れるな
 限量経営とは安くつくること
 在庫減の仕掛増
 量産は安いという錯覚〔ほか〕

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December 01, 2004

製品開発の知識

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 【今週の一冊】
 ●『製品開発の知識』

  著:延岡 健太郎(日本経済新聞社)
   2002.09 / ¥903

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『製品開発の現場では、マニュアル的な知識よりも
        深く考えるための基礎となる知識の方が重要となります。』
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 「プロジェクトX」をはじめとして、個々の商品開発の舞台裏を描いたスト
 ーリーは、共感を呼びやすく、本屋の書棚にもよく見かけます。
 
 面白いと思う反面、あくまで個別の事象であって、自身の開発に反映させる
 には普遍性がありません。
 
 一方、「組織論」や「マーケティング論」も専門書が多々ありますが、製造
 業にとって要(かなめ)である「製品開発」という横串で語られたことは、
 あまりありません。
 
 本書は、文庫本で、かつ読みやすい文体で書かれているものの、ありそうで
 なかった「製品開発論」の格好の教科書です。
 
 いわゆる「ヒット商品」を作ることが大事だ、と考えがちですが、それはサ
 ッカーや野球で言えば、ある一試合に勝つことに過ぎません。
 
 一つの試合の勝ち負けよりも、「強いチーム」を作ることが重要であり、つ
 まり「製品開発に強い企業・条件とは何か」が問題となります。
 
 これを「製品開発能力の差異化」と呼び、製品開発能力とは、大きく以下の
 3点となります。
 
 1.技術力:他社を寄せ付けない技術力があれば、優位に立てます。
 
  しかし特許を駆使しても、まねされない技術は簡単には生まれません。
  
  そこで、特定技術に資源を集中して、技術開発と製品開発を相互に繰り返
  し、他社と差異化する「コア技術戦略」を紹介しています。
 
 2.組織プロセス能力:競合よりも短期間・省工数で高い品質の開発を実現
  する組織能力のことです。
  
  例えば、組織体系としては、「設計」「実験」など、機能で分けた体制が
  通常用いられますが、製品開発に特化した、横断的なプロジェクトも有効
  です。
  
  自社の製品開発には、どんな組織がふさわしいのか?
  プロジェクトマネージャの権限と責任の範囲は?
  
  製品開発プロセスが同じような企業群の中で、これらの解が適切に出せれ
  ば、頭一つ抜け出した組織能力が発揮できます。
 
 3.価値創造能力:製品や市場戦略に関する能力と、関連する企業等を含め
  た独自のビジネスシステムを構築し、活用する能力です。
  
  一つ目の、製品・市場戦略の代表は、顧客のニーズに合致した製品を開発
  する能力です。
  
  例えば、キーエンスやロームのように、製品を標準化しつつ、個々の要望
  に合致させる独自の仕組みを持つと、大きな付加価値を上げられます
  
  二つ目は、企業間の結びつきの独自性で付加価値を上げる能力であり、パ
  ソコンのデバイスを世界で最適調達するデルや、開発初期から部品製造と
  共同で(同部屋で!)設計する自動車メーカなどが良い例でしょう。
 
 それぞれの項目について、細かく噛み砕いて分析・説明が述べられており、
 挿入された分かりやすく簡潔な図解も、本書の特徴です。
 
 例えば、2.で挙げた開発組織の選択について、製品の技術特性との関係を
 以下のように図解しています。(テキストでは分かりにくいかな?)
 
                 │
        高  機能重視  │(ハイブリッド型)
  要素技術の          │
  革新性と   ────────┼─────────
  変化速度           │
        低        │プロジェクト重視
                 │
            低         高
 
            機能部門間の相互依存性
 
 例えば、医薬品の開発は機能重視型、自動車の開発にはプロジェクト重視型
 が適当であることが分かります。
 
 また、要素技術の革新性と、機能部門間の依存性の程度に応じて、ハイブリ
 ッド型組織の軸足の置き方も変わってくると言えるでしょう。
 
 
 製品開発のマネジメントは難しく、重要だからこそ、その運営次第で業績に
 大きな差が出ます。
 
 若手もベテランも、事務系も技術者も、自身の立ち位置を確認し、製品開発
 の進むべき方向を考えるヒントが満載の一冊です。
───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 製品開発プロセスの中で、自分の果たすべき役割を認識しよう。
 
 複雑な問題を、マトリクスに切り分けてスッキリ図解してみよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 1 製品開発の本質
 2 製品開発とイノベーション
 3 製品戦略
 4 製品開発のプロセス
 5 製品開発組織のデザイン
 6 製品開発プロセスのマネジメント
 7 企業間関係のマネジメント
 8 持続的な製品開発能力の構築
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 ● ひとこと ●
 急に技術用語を英訳する必要に迫られて、あたふたと検索していたら、便利
 なサイトを見つけました!
 
 ・設計・製造技術用語集
 
 手元に辞書がないときは、無料でこれくらい詳しいと助かります。
 
 先生も走る12月。04年の仕上げと05年の助走を始めましょう!!

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October 06, 2004

技士道~「ものづくり道」から

本日(10/6)紹介した、「ものづくり道」にて、西堀氏が提唱されている「技士道」15項を紹介します。
技術者がよるべき道徳律、技術者としてのあるべき姿、良心に恥じないための行動体系として提唱されています。
企業や学協会の企業倫理にも多く通ずるところがあり、それぞれの意味するところは「ものづくり道」に詳しく述べられています。

1.技術に携わる者は、「大自然」の法則に背いては何もできないことを認識する。
2.技術に携わる者は、感謝して自然の恵みを受ける。
3.技術に携わる者は、論理的、唯物論的になりやすい傾向をもつ。したがって、特に精神的に向上するよう精進する。
4.技術に携わる者は、技術の結果が未来社会、および子々孫々にいかに影響を及ぼすのか、公害、安全、資源などから洞察予見する任務を負う。
5.技術に携わる者は、企業の発展において技術がいかに大切であるかを認識し、経済への影響を考える。
6.技術に携わる者は、常に顧客指向であらねばならない。
7.技術に携わる者は、人倫に背く目的には毅然とした態度で臨み、いかなることがあっても屈してはならない。
8.技術に携わる者は、互いに「良心」の養育に努める。
9.技術に携わる者は、創造性、とくに独創性を尊び、科学・技術の全分野に注目する。
10.技術に携わる者は勇気をもち、技術の開発に精進する。
11.技術に携わる者は強い「仕事愛」をもって、常に精進する。骨惜しみ、取り越し苦労を戒め、困難を克服する事を喜びとする。
12.技術に携わる者は常に注意深く、微かな異変、差異をも見逃さない。
13.技術に携わる者は、責任転嫁を許さない。
14.技術に携わる者は常に楽観的で、「禍い転じて福と為す」の諺のように失敗を恐れず、それを成功にもっていく術を身につけねばならない。
15.技術に携わる者は何事をなすにも「仁」の精神で、他の技術に関わる者を尊敬して、相互援助の実をあげる。

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ものづくり道

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 【今週の一冊】
 ●『ものづくり道』

  著:西堀 榮三郎(ワック)
   2004.07 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『遠い将来の子孫が、「あのとき作ってくれて本当によかったなあ」
     と思えるような事物を作ることが真の技術だと、私は思っている』
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 量産真空管の発明、原子力の研究や原子力船「むつ」の建造、また統計的品
 質管理手法を全国に広めるなど、西堀氏が戦後日本のものづくりに残した功
 績は多大です。
 
 一方で、南極観測隊やヒマラヤ登山の隊長を務め、探検家としても一流であ
 り、極寒の極限状態での体験談などが、本書にも記されています。
 
 うーん、なんてバイタリティに富んだ「えんぢに屋」なんだ!
 
 一見すると無関係に思える科学と探検ですが、「未知への探究」という点で
 共通しています。
 
 「いったい、この先はどうなっているのか」という探究心が、氏は人一倍強
 かったようです。
 
 この知的分野と自然界に対する探求の過程から、「オリジナリティの発揮方
 法」「チームワーク・リーダーシップ論」、また「統計的品質管理の手法」
 などが、展開されます。
 
 それらは、単なるノウハウ集や、欧米の安易な真似ではなく、「虚心坦懐な
 観察」と知識に裏付けられており、説得力を持って迫ってきます。
 
 特に、「人類の福祉のために、大自然の恵みを感謝して受ける」姿勢の重要
 性が、ひしひしと伝わってきます。
 
 ものづくりのみならず、人類の活動の目的は、「人類の福祉」。
 
 科学とは、大自然(天然だけではない、人間も含む森羅万象)の探求。
 
 そして技術とは、感謝の念を持って、大自然の恵みを頂くこと。
 
 このような観点に立てば、作る側本位の「画一的な大量生産」ではなく、お
 客さんの要求・バラツキを考慮した作り方が必要になります。
 
 作り手の配慮は魅力となり、お客さんの愛着が深まれば、製品の寿命も自ず
 と長くなるでしょう。
 
 あるいは、生産方式について考えると、分業で「つくる人」「検査する人」
 がハッキリ分かれると、能率は上がっても、「良いものを作ろう」という生
 産者が持つ生産意欲の向上は望めません。
 
 西堀氏は、人が人を使うのではなく、自分の作ったものを自分で検査する
 「信頼による管理」を提唱し、効果を上げています。
 
 最近の流行で言えば、循環型社会やユニバーサルデザイン、セル生産などの
 言葉があたりますが、その「志(こころざし)」は、氏が説くところにある
 のではないでしょうか。
 
 技術者が心得るべき志を、「技士道」と称して列記されています。
 
 手練手管ではなく、ものづくりの哲学を、技術者一人ひとりの胸に刻み込む
 ことが、今、求められています。
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 ◆ 熱い行動 ◆
 工場にはびこる「迷信」を廃し、虚心坦懐に観察し、現場・現物の声に耳を
 傾けよう。
 自然の恵みを、技術の介添えで、夢の実現に結びつけよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1章 オリジナリティのつくり方
 第2章 異質×異質
 第3章 価値を生む術
 第4章 現場にあるアイデア
 第5章 大自然と経験と
 第6章 ものづくり道

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