April 18, 2007

組織を強くする技術の伝え方

Sosikiwotuyokusuru
 【今週の一冊】
 ●『組織を強くする技術の伝え方』

  著:畑村 洋太郎(講談社)
  2006.12 / ¥735

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『技術は、要求される機能や制約条件の変化によって、
 
             時代と共にダイナミックに変化します。
 
    しかしその本質部分がきちんと伝わらないと、
 
                 大きな変化にも対応ができないのです』

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 数年前から「ものづくりの現場の危機」と目されてきた「2007年問題」。
 
 これまで現場を支えてきた、いわゆる「団塊の世代」が退職を迎えることで、
 技術が伝わらずに途絶えてしまうことが危惧され、また頻発する品質問題な
 どの形で表面化しています。
 
 しかし、「技術の伝達」は、なにも今年だけの問題ではなく、人事異動や新
 人の研修、生産の海外移転や技術導入など、複数の人が「技術」に携わる限
 り、絶え間なく発生している課題です。
 
 
 本書では、技術を「正しく」伝えるためのポイントを、5つにまとめて示し
 ています。
 
 一つ目は「まず体験させろ」。
 
 うまくいくコツ、方法を教える前に、まずやらせてみるのです。
 
 当然最初はうまくいきませんが、それによりもっと知りたい、できるように
 なりたいと、受け手の頭の中に受け入れの素地が出来上がれば、その後の伝
 達がスムーズに進むのです。
 
 
 二つ目は「はじめに全体を見せろ」。
 
 これは最初からすべてを理解させるという意味ではなく、自分がこれから学
 ぶことの全体の中での役割を意識させるためです。
 
 「自分が何のために学ぶか」を知ることで、モチベーションが上がり、これ
 も「受け入れの素地」を作ることに役立つのです。
 
 
 三つ目が「やらせたことの結果を必ず確認しろ」です。
 
 多くの場合、伝える側は何らかの方法で技術を伝達したら、「これで自分の
 役割は終わった」と思い込み、理解できないのは相手の責任と考えます。
 
 しかし、「伝える」とは、相手が伝えた内容と同じ行動がとれるかどうか、
 その結果でしか判断できません。
 
 だから結果を確認し、良ければ褒め、悪ければ、伝える側の問題点も含めて
 検証する必要があります。
 
 
 四つ目のポイントは「一度に全部を伝える必要はない」。
 
 知識には階層性があり、吸収できる素地もレベルによって異なるので、相手
 のレベルに応じたやり方をすべきです。
 
 そして最後は「個はそれぞれ違うことを認めろ」です。
 
 これは意外に伝える側に意識されていませんが、伝える側の論理だけで伝達
 を行っている限り、知識が正しく伝わることはありません。
 
 そのためには、技術を伝えたい相手の状態をじっくり観察することから行わ
 なくてはならないのです。
 
 
 著者の畑村教授が、「失敗学」を伝える活動を通してまとめた「技術の伝達
 法」は、今まさに技術者が身につけねばならない「基本スキル」であり、組
 織が有すべきツールといえるでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 有名な古典落語、「目黒のさんま」。
 
 あるとき目黒に鷹狩りに出かけた殿様、立ち寄った茶屋でさんまを初めて食
 べた。
 
 当時は庶民しか食べなかったさんまだが、脂が乗った旬の時期なら焼いただ
 けでも絶品だ。
 
 殿様、その美味が忘れられず、城に帰ってから家来にさんまを出すように命
 じる。
 
 しかし城の料理方は、殿様が食べるのだからと気を利かせてさんまの脂を抜
 き、食べやすく骨抜きして蒸し焼き状態で出した。
 
 そんなさんまが美味しいはずもなく、興ざめした殿様曰く、「さんまは目黒
 に限る」。
 
 
 多くの技術の現場で、これと似たことが起きている。
 
 料理方が「食べやすく」配慮をしているつもりだが、そのことがさんまを「
 おいしくないもの」にしているが如く、技術を伝える伝達者は、「わかりや
 すく」気を使ったつもりが「つまらないもの」にしてしまっている。
 
 「わかりやすいためには客観的でなくてはいけない」と思うあまり、話し自
 体を整理しすぎてつまらないものにして、結果として伝わらないものにして
 しまうのだ。
 
 注意すべきは、その知識を構成する要素や構造がきちんとあるかどうかであ
 って、それさえしっかりしていれば、大いに主観でものを語ったほうが良い
 のだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「伝え方」よりも「受け心」を問題にせよ。
 伝えたい人が与えるのではなく、欲しい人がむしり取れ。
 
 「伝達量」よりも「伝達効率」を問題にせよ。
 ダラダラ同じことを繰り返して伝える時間は、もはやない。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 序章 「技術」とは何か
 第1章 なぜ伝えることが必要か
 第2章 伝えることの誤解
 第3章 伝えるために大切なこと
 第4章 伝える前に知っておくべきこと
 第5章 効果的な伝え方・伝わり方
 第6章 的確に伝える具体的手法
 第7章 一度に伝える「共有知」
 終章 技術の伝達と個人の成長
 「技術を伝える」を巡るおまけの章
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 畑村 洋太郎
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『組織を強くする技術の伝え方』
 
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April 05, 2007

製造業崩壊

Seizougyouhoukai
 【今週の一冊】
 ●『製造業崩壊』
  苦悩する工場とワーキングプア

  著:北見 昌朗(東洋経済新報社)
  2006.12 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『必要なのは「1人が100歩進む」ことではなくて
                  「100人が1歩進む」ことである。
 
    製造業はそのほうが業績向上につながる。
    
      人材は、長期的な視野で育てよう。
                  目先の成果主義では人材は育たない』

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 突然ですが、あなたの職場では、こんな項目に当てはまりませんか?
 
 □ 30代前半の男性社員の未婚率が5割以上ある
 □ 男性の新入社員が入社3年以内に5割以上退社している
 □ 工場で働く人の半分以上が「外国人+派遣+高齢者+パートタイマー」
   になっている
 □ 最近は社内の飲み会がめっきり減った
 □ 社長が社員に対して結婚の世話をしたことがない
 
 該当する項目が多ければ、あなたの会社は「内部崩壊が始まっている」と、
 筆者は指摘します。
 
 そんなこと関係あるの?といぶかしく思う向きに対し、独自のデータから、
 皆が漠然と感じている製造業の問題点のあぶり出しを試みています。
 
 
 現在の中小企業の人員構成を、筆者のデータを縮小して「男性社員58人」
 の会社と考えると、平均年齢38歳、勤続年数10年となります。
 
 つまり、「中途入社」が多いことが見て取れます。
 
 また、入社3年以内という新人が18人、入社4年以上10年未満が16人
 で、合わせて6割を占めます。
 
 一方で、入社20年以上のベテランは10人しかおらず、「一部の古手社員
 +多数の新人」という人数構成が見えてきます。
 
 この団塊世代に代表されるベテランは、間もなく退職を迎え、一方で若手社
 員は「3K」を嫌い、入社3年目までに半数が転職していくのです。
 
 これが現在、最も潤う愛知県でのデータというのですから、暗澹たる気持ち
 にさせられます。
 
 
 この現状を破るには、やはり「人づくり」が原点です。
 
 会社に対する愛着を持つ社員とするためには、新卒を採用して育てることが
 ポイントですが、大都市部ほど中小企業の求人は困難を極めます。
 
 そこで会社の「採用力」を構成する方程式を挙げましょう。
 
  採用力=待遇のよさ×ホームページ×求人費用×企業イメージ×立地
 
 いずれも「金」のかかる項目ですが、すぐに辞めてしまうような新入社員し
 か雇えなければ、1人年間1,000万円にも及ぶ「投資」が無駄になるのですか
 ら、目先にとらわれてはなりません。
 
 
 日本のものづくりの足元を支えている町工場に、ひたひたと迫っている「崩
 壊」を、今、食い止めねば、大企業も、地方も国も雪崩に巻き込まれます。
 
 苦言から目をそらさず、我がこととして凝視せねばなりません。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「技能伝承」の問題が指摘されて久しい。
 
 日本のものづくりにおいて不足間の強い技術職とはどんなものだろうか。
 
 2006年の「ものづくり白書」によれば、以下が挙げられる。
 
 ・設計
 ・製毛、紡績、製織、剪毛、編成、縫製又は染色
 ・切削
 ・溶接
 ・熱処理
 
 これらの基盤技術において一人前になるまで要する期間は「5~10年」とい
 う長期間がかかることもあるので、今後中長期的に見て、日本のものづくり
 のネックとなりかねない。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「最近の若い者は」と嘆くだけでは済まされない。
 まずは「我が子」「我が後輩」に「ものづくり」の喜びを伝えよ。
 
 「楽しい仕事」「自分にあった仕事」の青い鳥の尾を追うな。
 一所懸命(一つ所で命を懸ける)の君の横に、青い鳥がやってくる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 異変あり!独自調査が明かす「中小製造業の就労問題」
 第2章 「ものづくり」は「人づくり」という原点に戻ろう
 第3章 「こんな若者に誰がした!」製造業崩壊の原点を探る
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 北見 昌朗
 ・出版社 東洋経済新報社
 ・アマゾン 『製造業崩壊』
 
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March 07, 2007

なぜおいしいアイスクリームが売れないの?

Nazeoishiice
 【今週の一冊】
 ●『なぜおいしいアイスクリームが売れないの?』
  ダメな会社をよみがえらせる3つのレッスン

  著:S. チョウドリ (訳)中山 宥(講談社)
  2006.11 / ¥1,260

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『たいがいの人間は、現実を眺めて“なぜこうなのか?”と問う。
   
      しかし自分は、まだ現実になっていない事柄を見すえて

                “なぜ現実化できないのか?”と考える』


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 『今回、契約を取り付けられるかどうかは、うちの会社の死活問題だ。
  どうしても、契約を結ばねば!』
 
 「デイリー・クリーム」という小さなアイスクリーム会社で工場長を務める
 ピーターは、人気スーパーマーケットの「ナチュラル・フーズ」に体当たり
 の営業に飛び込むところから、この物語は始まります。
 
 「ナチュラル・フーズ」の店長マイクは、「デイリー・クリーム」のアイス
 を仕入れない理由を尋ねられ、こう答えています。
 
 『きみの会社の場合、はたして品質が“売り”なんだろうか?
 
  社内の努力をすべて品質向上に向けているだろうか?』
 
 こうして、マイクの指導を仰ぎながら、ピーターは「デイリー・クリーム」
 の建て直しに着手するのです。
 
 
 まず、「質の高さ」の土台は「部下を大切にすること」とマイクは説きます。
 
 部下に責任を与えて、ビジネスの大事な一部分として扱えば、それにふさわ
 しい反応が返ってくる。
 
 そして部下を大切にすればするほど、部下たちは例外なく、客を大切にする
 ようになる、と。
 
 
 この「質の高さ」を企業文化として根づかせるのが「LEO」です。
 
 Liten(聞く)、Enrich(価値を高める)、Optimize(最適化する)の頭文字
 であり、客の声をよく聞く、製品やサービスを強化する、客が完全に満足で
 きるように最適化する。
 
 これらを丁寧に実行したピーターの下で、「デイリー・クリーム」は徐々に
 変化を遂げていくのです。
 
 
 本書のテーマである「品質」について、最初にマイクが語った言葉が印象的
 です。
 
 『“品質重視”はアメリカ社会のDNAに組み込まれていない。しかし、日本企
  業のDNAには組み込まれている。最近は韓国の企業のDNAにも組み込まれつ
  つある。だから、アメリカ企業がつねに新製品を作り、新市場を切り開く
  のに、結局はよその国に負けてしまう』
  
 デイリー・クリームと同じお菓子製造の、老舗の日本企業で起きた不祥事を
 目の当たりにすると、果たして日本企業のDNAには、本当に「品質重視」が組
 み込まれているのか、不安になります。
 
 「シックス・シグマ」の著者として有名な筆者による、この読みやすい物語
 から、今、我々は「品質」の意義を学ばねばなりません。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 業務を最適化するためには、「失敗の代償」を認識することが重要だ。
 
 もし失敗したならば、どれだけ悲惨な状態になり、お金が無駄になるかを考
 えれば、失敗なんかできないぞと死にもの狂いになれる。
 
 スペースシャトル「チャレンジャー号」を思い出すといい。
 
 アメリカきっての優秀な人材が莫大な時間を費やし、20億ドルの資金を使
 って、あのスペースシャトルを完成させた。
 
 ところが、たった900ドルのOリングが不良品だったせいで、7人の宇宙飛行
 士の命を含め、すべてを失った。
 
 エンジニアが事前に警告したのに、改良には費用がかかりすぎるという懸念
 から、無視された。
 
 しかし結局、「チャレンジャー号」の事故の原因調査と部品回収だけで5億
 ドルかかった。
 
 Oリングが50万個以上買える金額だ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「質の高さ」を最優先せよ。
 目先の奇抜さや新規さはすぐ陳腐化する。
 
 結果ではなく、努力に意識を集中せよ。
 改善の結果はすぐには現れないが、種さえ蒔けば芽は生える。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 緊急事態
 第2章 聞き上手になれ
 第3章 「LEO」がカギになる
 第4章 スティーブ・ジョブズは必要ない
 第5章 「完璧」への長い道のり
 第6章 持ち帰ってもいいですか?
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『なぜおいしいアイスクリームが売れないの?』
 
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February 07, 2007

こんなものまでつくれるの?

Konnamonomadetukureruno
 【今週の一冊】
 ●『こんなものまでつくれるの?』
  身近な材料を使ったものづくり

  編:日本機械学会, 日本産業技術教育学会(技報堂出版)
  2006.10 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『「先生!固定の大切さを実感しました。
 
             やはり、体験するとしっかり理解できます」
   
  「そうだニャ!ものづくりのポイントは、
  
           『しっかりけがく、しっかり固定する』だニャ!!』

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 ※本記事は06年末にメルマガで配信した内容です。

 年も押し迫り、子供さんが冬休みに入ったお父さんもたくさんおられること
 でしょう。
 
 恒例の(?)長期休暇企画、「こどもと学ぶものづくり」本を今回も紹介致
 しましょう。
 
 といっても、本書は大人でもなかなか歯ごたえのある、一ひねりしたネタが
 満載です。
 
 
 なにしろ、丸太のベンチを作るために、まず材木の伐採から!始めます。
 
 「倒したい方向にのこぎりとなたで切り込みを入れ、3分の1くらいまで入
  ったら、今度は逆側からのこぎりで切って・・」と、気合が入ってます。
 
 けがきの方法として「墨つぼ」も登場してきますから、下手な日曜大工では
 間に合わないくらい本格的です。
 
 
 更に、古代の「銅鏡」を再現しよう!というコーナーでは、銅板を切り出し
 て磨くのかと思いきや、なんと「鋳造」から始める、これまた本格的な造り
 方です。
 
 しかし、平易な言葉で砂型作りを説明してくれているお陰で、鋳造の基礎知
 識(抜き勾配のつけ方、砂型の固め方等)を、実感を持って理解することが
 できます。
 
 ネコのキャラクターに、「鋳込みのポイントは、あわてないことニャ。湯の
 温度が少し下がるのを待ってから流し込むんニャ」とか、ノウハウを解説さ
 れるとは、恐れ入ってしまいます。
 
 
 また、動力も、定番の直流モータのみならず、形状記憶合金を用いたエンジ
 ンやスターリングエンジン、更に蒸気タービンまで手作りしてしまいます。
 
 正直、熱力学や電磁気の得意でない やまさん としては、こうした「工作」
 レベルのものづくりこそが、原理を「体感」できる最短コースのように感じ
 ます。
 
 
 「科学技術立国」を標榜する日本において、実は義務教育においてものづく
 り教育はほとんど行われておらず、世界的にみて後進国の中に入っているの
 が現状です。
 
 この現状の打開策の一つとして企画されたのが本書ですが、こんな楽しく、
 工夫の余地がたくさんある「ものづくり」を小中学生が経験したならば、き
 っと彼らの人生に、大きな変化が起きるのではないか―
 
 そんな可能性を感じさせる、最新の「ものづくりの教科書」です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「手づくり磁石」を作ろう、というコーナーがある。
 
 原材料は酸化鉄の粉(バリウム・フェライト磁性粉末)95gと粘土粉末5g、そ
 して20ccの水だ。
 
 粉を混ぜて水を加えて練り固め、好きな形にしてから焼き固める。
 
 その後、着磁をすれば完成だ。
 
 これは工業的には「加圧成形」するところを「バインダ混合」「粘土成形」
 に置き換えただけで、その他は基本的に同じだ。
 
 特に上記の配分で「焼き固める」と、粘土が溶けて磁性粉末の「焼結」がで
 きる。
 
 しかもこの粘土の抜けた空隙を利用して、色が塗れる楽しい「磁石」が作れ
 るのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 複雑な機械も、原理はシンプルだ。
 手づくりで体験したことが、設計・製造技術の基礎となる。
 
 木材のぬくもり、金属の光沢、切削の難しさ。
 こどもの生々しい体験が、未来の「えんぢに屋」を育てる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 古代の鏡をつくって顔を映そう
 丸太のベンチをつくろう
 暖めるだけで動くエンジンをつくろう
 形状記憶合金で車が走る
 ペットボトル風力発電機でLEDを光らせよう
 線にそって走る車をつくろう
 自然に優しい木のおもちゃをつくって遊ぼう
 アルミ缶で飛行機をつくろう
 自分だけの手づくり磁石をつくろう
 磁石の列をたどって走る車をつくろう〔ほか〕
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・日本機械学会
 ・日本産業技術教育学会
 ・出版社 技報堂出版
 ・アマゾン 『こんなものまでつくれるの?』
 
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January 24, 2007

絵とき ポカミス撲滅大全

Pokamiss
 【今週の一冊】
 ●『絵とき ポカミス撲滅大全』

  著:エスピイエス経営研究所(日刊工業新聞社)
  2001.9 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『実際に品質改善をすすめていくには、現場をよく知っている貴方が
 
                       やってみせることである。
 
   ワンタッチゲージやポカミス対策ができるようになったら、
   
               仲間を増やすこと・・・それが仕事である』


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 月曜日、会社に行くと時々、作業着ではなくGパンを履いた人が、バツの悪
 そうな顔で朝礼に出てくることがあります。
 
 そう、洗濯した作業着を「うっかり」忘れてくるのです。
 
 うっかり寝過ごしたり、うっかり落し物をしたり。
 
 我々は、日頃、数えられないほど「うっかり」を繰り返している「八兵衛」
 です。
 
 しかし、ものづくりの現場では、一度「うっかり」=ポカミスをやらかし、
 流出してしまうと、品質を損ない、ユーザーを傷付け、企業に甚大な損害を
 もたらすことに繋がります。
 
 この「ポカミス」を「よける」、「ポカヨケ」のノウハウをまとめた指南書
 が、今回取り上げる書籍です。
 
 
 「ポカミス」は「間違い」と「忘れる」の二つに大別できます。
 
 これらは確かにオペレータのヒューマン・エラーとして計上されますが、果
 たしてオペレータだけの問題なのでしょうか。
 
 「なぜ、間違うのか?」
 
 それは、見にくい・小さい・似ている・並んでいる・動きが大きすぎる・中
 断・壊れている・記憶・騒音・照明、などに原因があります。
 
 「なぜ、忘れるのか?」
 
 それは、疲れている・記憶力、注意力の低下・集中力がなくなる・作業の中
 断・慣れ・惰性、などに原因があるのです。
 
 これらの問題を引き起こす状況、環境を具体的に調べてみることで、ポカミ
 スの真因を洗い出し、対策へと繋がっていきます。
 
 
 ここで、不良の原因を潰すことが重要なのであり、ブザーやカウンタ・ゲー
 トを作ることは「手段」であることを忘れてはなりません。
 
 すなわち、どんな良いポカヨケを設置しても、良品・不良品はラインでの工
 程、作業、設備で決まります。
 
 ポカヨケでは、不良流出防止はできても、決して良い製品を作ることはでき
 ないことを、ハッキリ認識せねばなりません。
 
 
 安価で簡単なポカヨケを設置して、不良を選別することは、カイゼンのステ
 ップです。
 
 そして、源流の品質改善を実施して、早くポカヨケを外せるようにすること
 こそ、ポカヨケを設置する真の目的と言えるでしょう。
 
 本書に掲載された多彩なポカヨケのアイデアは、そのカイゼンステップを、
 ぐっと加速させる知恵の結晶の数々です。

-----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 組立作業では、左手を治具にしている場合が多い。
 
 手は治具にあらず。
 
 本来「治具」とは、投げ込めば「治(おさ)め具」にセットされるべきもの
 である。
 
 すなわち、ラフガイドと本セットの二段構えの治具にすべきである。
 
 そこにポカヨケなり、検査装置なり、跳ね出しの道具なりの知恵をつけて、
 ノウハウにすることが求められている。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 ポカヨケを積極的に取り入れよ。
 次にポカヨケがいらない(ポカが起きない)状態に、源流を改善せよ。
 
 5Sのないところに、現場改善は始まらない。
 徹底的に実施すれば、次々にやるべきことが「看えて」くる。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 1 ポカミスとは、ポカヨケの真の狙いとは
 2 ポカミスの真因に迫り、ポカヨケ対策の根本を考える
 3 ポカミス撲滅のための体質改善と仕組みづくり
 4 チェックシートによる改善着眼の仕方
 5 フローチャートによるポカミス対策・改善の進め方
 6 センシング機器を活用した簡便ポカヨケ
 7 絵で見るポカミス撲滅事例
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『絵とき ポカミス撲滅大全』
 
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December 13, 2006

トヨタの口ぐせ

Toyotanokuthiguse_1
 【今週の一冊】
 ●『トヨタの口ぐせ』

  OJTソリューションズ (中経出版)
  2006.9 / ¥1,365

----ものづくりを応援!技術士やまさんの「えんぢに屋本舗」-----

 ◆ 燃える一言 ◆

 『製造現場にいるわれわれは商売人じゃないのです。
 
         安く仕入れることが仕事ではありません。
 
                  安くものをつくることが仕事です。』

-----------------------------------

 「習慣」には、力があります。
 
 生活習慣病、なんていうのは、まさに悪い習慣が蓄積された、恐ろしい結果
 ですよね。
 
 良きにつけ、悪しきにつけ、身についた習慣はなかなか離れるものではあり
 ませんから、積み重ねた結果は、大きな差が生まれてくるものです。
 
 世界No.1を伺うトヨタの「言葉の習慣」=「口ぐせ」は、ほんの一言で
 はあっても、おらが会社との大きな差を生む「分岐点」かもしれません。
 
 
 例えば、冒頭の言葉は、「一円でも安く、ものができんか」という口ぐせに
 ついて加えられたコメント。
 
 トヨタと言えば原価低減が有名ですが、それは「材料を一円でも安く仕入れ
 ろ」という意味ではありません。
 
 むしろ、カイゼンの着眼点として「材料のグレードアップをして寿命を延命
 できないか」という項目が明記されているほどであり、材料費高騰でヒーヒ
 ーいって買い叩く姿勢とは一線を画します。
 
 ちょっとした知恵を加えることで、つくり方によってコストを下げるのがト
 ヨタ流であり、一方では壊れた設備を自分たちで徹底的に直し、再利用する
 ことなどで原価低減を進めているのです。
 
 
 現地・現物・現実を大切にせよ、という意味の「三現主義」は、色々なとこ
 ろで聞きますが、それを表す「口ぐせ」に、「者に聞くな、物に聞け」があ
 ります。
 
 現場の班長が作業者からトラブルの報告を受け、それを監督者に報告すると、
 トヨタの監督者は「本当にそうか?」と聞きます。
 
 そこで「たぶん・・・でしょう」という曖昧な言葉が出てくると、すぐに現
 場に行き、実際に現場が異なっていると「自分で見ろ!」と大目玉を食らう
 ことになるのです。
 
 
 そして「三現主義」を身につかせるために言われる口ぐせが「マルを描いて
 立っていろ!」
 
 班長を指導するときに、監督者は工場内に直径1メートルほどの「マル」を
 描き、「ここに立っていろ!」と言うのです。
 
 30分ほど立って現場をじっとみていると、動いていると見えない、作業の
 ムダやムリが見えてくるのです。
 
 こうしたものの見方を、トヨタでは端的な言葉で脈々と伝えているのです。
 
 
 「トヨタ生産方式」「カンバン方式」では分からない、トヨタの強さの源泉
 は、実はこうした言葉が自然と出てくる「習慣」にこそあると気付かされる
 一冊でしょう。

-----------------------------------
 ◇ カンドコロ! ◇
 
 2S(整理・整頓)とか、5S(+清掃・清潔・躾)も、現場の基本として
 言われるが、分かりにくい。
 
 トヨタの口ぐせはこうだ。
 
 
 『1週間ものが動かんかったら捨てろ』
 
 
 「整理」とは、現場でいるものといらないものを区別し、いらないものはす
 ぐに廃棄すること。
 
 「整頓」とは、いるものとして残したものを、必要なときに必要なだけをす
 ぐに取り出せるようにすること。
 具体的には、所・番地を定めて並べることである。
 
 端的な言葉で表すことで、ハッキリとしたイメージと、何をすべきかが伝わ
 る「口ぐせ」だ。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 本質は細部に宿る。
 たかが口ぐせと侮るな。口ぐせになるほど実践している恐ろしさを知れ。
 
 現場を変えたければ、「口ぐせ」を作れ。
 口ぐせになるほど繰り返し言い続ければ、必ず変わる。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 「リーダー」を育てるトヨタの口ぐせ
  (おまえ、あそこ行ったか俺は行ってきたぞ/者に聞くな、物に聞け ほか)
 第2章 「できる人」を育てるトヨタの口ぐせ
  (あなたは、誰から給料をもらうの?/何もしないより何かやって失敗した
  ほうがいい ほか)
 第3章 「コミュニケーション」をよくするトヨタの口ぐせ
  (陸上のバトンリレーのようにやりなさい/横展しよう ほか)
 第4章 「問題」を解決するトヨタの口ぐせ
  (マルを描いて立ってろ/モグラがよく出るところからまず手をつけなさい
   ほか)
 第5章 「会社」をよくするトヨタの口ぐせ
  (売れるスピードより速くつくらない/一円でも安く、ものができんか
   ほか)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 OJTソリューションズ
 ・出版社 中経出版
 ・アマゾン 『トヨタの口ぐせ』
 
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December 12, 2006

Make

Make
 【今週の一冊】
 ●『Make』
  Technology on Your Time Volume 01

  編:オライリー・ジャパン(オライリー・ジャパン)
  2006.8 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『コンピュータプログラムを作成することと機械を組み立てることの
 
       大きな違いは、機械には「コピーアンドペースト」や
 
               「取り消し」が利かないことです。
 
             一部でも動かない場合は、作り直す必要がある』

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 壊れたラジオや自転車を分解するのが(たとえ元に戻らなくても!)好きだ
 った人、手を上げて!
 
 ・・はい、たくさんの手が上がりましたね!
 
 やっぱりこのブログの読者の9割は、やんちゃな「えんぢに屋」のようですね。
 
 そんなテクノロジーを創造するえんぢに屋=「Maker」のための雑誌、
 「Make」の日本語版を紹介しましょう。
 
 
 最近は音楽CDやDVDも、自由に編集し、個人の好みで編集できるのが当
 たり前になりました。
 
 ブログやSNS、ポッドキャストなどで、メディアまでも自分で生み出す時
 代です。
 
 ところが、「ハード」については、既製品は「分解」や「改造」を拒む強固
 なカバーで覆われ、実装された基板はおいそれと手を出せません。
 
 そんなお仕着せの「モノ」を、自分達の手で自分の生活の中に取り込むため
 に、「ハック」してしまおう!というのが本書の記事です。
 
 
 実用的なところ?では、「カイトフォト」が興味をそそります。
 
 航空写真ほど高くはなく、さりとて目線よりは高い、高度10mほどの高さ
 から見下ろす写真をとる方法として、凧にぶら下げたカメラで写す「カイト
 フォト」があります。
 
 まるで鳥の目から眺めたような写真の数々は、新鮮な驚きです。
 
 さぞや立派な無線装置やジャイロシステムなどが搭載されているのかと思い
 きや、インスタントカメラと木工細工(!)で手作りする方法がこと細かに
 紹介されており、遊び心がビンビン刺激されます。
 
 特に、ダンパーとゴムでできた「粘性タイマー」シャッターのアイデアには
 にやりとさせられます。
 
 
 ジャンクパーツで金をかけずに作る「ハイテクガラクタ」こそ、手作りの醍
 醐味でしょう。
 
 秀逸なのが、ビデオデッキで作る「猫の給餌機」。
 
 古いビデオのヘッド用モーターを、配線はそのまま取り出し、減速ギアを介
 して、肉ひき機のような、らせん状押し出し部を接続します。
 
 すると、ビデオの録画タイマーで、好きな時間に自動的に餌を押し出す「給
 餌機」の出来上がり!
 
 録画時間の長さで、餌の量までコントロールできるスグレモノ。
 
 笑ってしまうようなガラクタですが、面白くて、安上がりで・・ついでにち
 ゃんと動くのです!
 
 
 以前に紹介した、物質世界を「プログラム」するMITのファブラボの活動
 も紹介されており、これから訪れる「Monozukuri 2.0」を覗き見る、ユーモ
 アと好奇心にあふれた一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「電気自動車(EV)」は、環境負荷の低い自動車として昔から注目はされ
 ているが、普及には至っていない。
 
 それは、ガソリンエンジンの自動車に比べ、走行可能距離が極端に短いから
 だ。
 
 大企業がEVを世に出そうとすれば、これを解決すべく、巨大なバッテリー
 を搭載し、そのために内部の空間は占領され、過大な重量となるのだ。
 
 
 ところが、EVを「ガレージ」で作る人たちは、そんな失敗はしない。
 
 現在のバッテリー技術の限界を認識し、重量と費用を低減して、走行性能を
 引き出すために、走行距離は犠牲にする。
 
 それでも日常生活には十分なのだ。
 
 彼らは5,000ドルから10,000ドルの費用で、エンジンや燃料タンクを放り出し
 て、バッテリーとモータを積み込んだ、快適なEVを作ってしまう。
 
 まるで携帯電話やiPodのように充電したEVで、颯爽とガソリンスタンドの
 横を通り過ぎながら、優越感たっぷりに彼らは言う。
 
 「中東の石油?あぁ、燃やすのに使っていたよ。でももうやめた」

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 ◆ 熱い行動 ◆
 我々はテクノロジーを消費するだけの存在ではない。
 テクノロジーを創造する「えんぢに屋=Maker」になろう。
 
 粗大ゴミの家電を、ばらしてみよう。
 子供の好奇心と、技術者の知恵で、オリジナルの「モノ」を作ってみよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 Make創刊に寄せて
 ユーザーがモノを作る時
 News From Future(ティム・オライリー)
 ライフハック:ヤク毛刈り
 Made On Earth
 Maker:現実世界を「プログラム」するところ、ファブラボにようこそ
 Maker:すべての家庭に核融合炉を
 Proto:ビットと生身の肉体の出会い
 エアルームテクノロジー:過去の遺産の継承
 ダ・ヴィンチに息づくコード(ブルース・スターリング)
 ミスター・ジャロピーのガレージ
 世界最大のMP3プレイヤー
 エンジニア最後の世代(コリィ・ドクトロウ) (ほか)
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・カイトフォト 日本カイトフォトグラフィー協会
 ・出版社 オライリー・ジャパン
 ・アマゾン 『Make』
 
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October 04, 2006

あしたの発想学

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 【今週の一冊】
 ●『あしたの発想学』

  著:岡野 雅行(リヨン社)
  2006.8 / ¥893(新書)

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『不可能なんて冗談じゃないよ。
 
   所詮、人間が判断したことで不可能なんてことは、実は、
   
     この世の中にはあまり多くないようにあたしは思うんだけどねぇ』

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 「痛くない注射器」という画期的な製品を生み出したことで有名な、岡野工
 業の岡野社長。
 
 金型とプレス機という、どこの工場にもある設備から、想像を超えた製品を
 生み出す「発想」は、どこから生まれてくるのでしょうか。
 
 名物社長、いや自称「代表社員」の岡野雅行氏に尋ねてみましょう。
 
 
 岡野工業の代名詞ともなった「痛くない注射器」とは、外径200μm、従来の
 2/3の太さで、かつ従来と同じ注射液を流せる注射針です。
 
 これまでの針はパイプを細かく切っていましたが、これでは内径に凹凸が大
 きく、また細くすれば流量が落ちてしまうため、「皮膚に刺さる部分は細く、
 それ以外は太い」針を思いつきます。
 
 これを実現するまで、1年半、岡野氏は自ら試行錯誤を繰り返し、失敗を重
 ね、寝る間も惜しんで考えて、ついに「板を丸めて針をつくる」という発想
 にたどり着くのです。
 
 
 では、ここまで種明かしをされれば、誰でもこの注射針を作れるのでしょう
 か?
 
 否、それを実現するための技術こそ、それまでに蓄積された「プレス技術」
 の賜物です。
 
 プレスに必要なものといえば、材料である板金、金型、そしてプレス機、と
 考えますが、実はミソは「潤滑油」にあるのです。
 
 例えば、もう一つ岡野工業で有名な「リチウムイオン電池のケース」は、伸
 びの悪いSUS304に2μmの厚みのニッケルメッキが張られた材料を、
 そのメッキがはがれないように「深絞り」したものです。
 
 岡野社長はこの潤滑油も、スイスなどから取り寄せた油を自らブレンドして、
 こうした難加工を実現しているのです。
 
 
 更に、注射針は当然、液漏れがあってはなりませんから、プレスで丸めた後
 どの部分もぴったりくっつくようにするために、あらかじめ切断しておく形
 状を決めるのは至難の業です。
 
 その計算には、あまりに加工の精度が高いため、パソコンでは計算の桁数が
 足りず、スーパーコンピューターまで引っ張り出してきたのです。
 
 ローテク、手の技術ばかりと思いきや、社長曰く、「必要とあらばスーパー
 コンピューターだって何だって使うよ。コンピューターだって道具の一つな
 んだから」。
 
 
 若い頃に十分遊んだから、今は仕事より楽しいことはないという岡野氏にと
 って、他の誰もができないことを自らの手で現実化すること以上の喜びはあ
 りません。
 
 モーレツ、気合、根性、根気、勤勉。
 そして正直、誠意、義理、本気。
 
 根っからの職人気質の岡野氏の、「絶対につくってみせる!」という信念と
 不断の努力、長年の技術の蓄積が、夢の製品を生み出す秘訣なのです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 岡野工業は、難しい仕事や値段の高い仕事しかしていないように思われてい
 るが、決してそんなことはない。
 
 安くて人がやらない仕事もやっている。
 
 ただし、頭を使って儲かるようにしている。
 
 たとえば、1個1円の利益にしかならないプレス製品でも、毎月100万個つく
 れば1年で1,200万円になる。
 
 しかし、今までのやり方では採算が合わないから、工程を減らしたり工夫す
 る。
 
 最もいいのは自動機をつくることだ。
 
 ローレット加工という、円柱に筋をつけていく加工の場合、熟練工でも3分
 も4分もかかる作業だが、それを他社の半分の工賃で受けたこともあった。
 
 それも、やはり自動機を開発したお陰で、材料を入れてスイッチを入れれば
 1秒足らずで加工できるようになった。
 
 時間は1/200、しかもパートの主婦でもできるから一石二鳥の自動機となった。
 
 安い仕事でも利益を上げる構造を組み立てて仕事をしているから、新しい技
 術の開発に挑戦する資金的な余裕も生まれるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 ものづくりの技術力は、企業の大きさに比例しない。
 現実に向き合う技術者の信念とは、大きく関係する。
 
 現場は「4K」たれ。
 「根気」「根性」「勘」「渾身」さえ実行すれば、道は開ける。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 発想と応用―なぜ、可能になるのか?
 自由気まま―不真面目と莫迦は似て非なるもの
 打破―世の中には最初から実績のあるやつなんていない
 習慣―つくる発想、できる発想
 周期―いま取り組んでいるものが未来をつくる
 反骨―手を動かせば解決方法が見えてくる
 勘―図面がないとできないのは本当の職人ではない
 縁―その名人は無名人
 忍耐―転んでもただでは起きない
 秘守―人気のラーメン屋がスープの秘密を教えるわけがない〔ほか〕
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・岡野工業株式会社
 ・出版社 リヨン社
 ・アマゾン 『あしたの発想学』
 
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September 20, 2006

現場はもっと強くなる

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 【今週の一冊】
 ●『現場はもっと強くなる』
  超トヨタ式・チーム力最大化の技術

  著:村上 豊
  2006.07 / \1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『諦めることは誰でもできる。
 
   誰でもできることは、誰もができる程度の結果しか生まない。
   
     誰もができないことをやろうとするからこそ、他の人には
      真似ができないような素晴らしい結果を生み出すことができる』

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 いまや世界一の座が射程に見えてきたトヨタ自動車。
 
 そのトヨタを、そして世界中の自動車メーカーを支える世界最大の部品メー
 カー「デンソー」もまた、「トヨタ生産方式」を基に、日々カイゼンを続け
 ています。
 
 本書は、著者のデンソーでの30年の経験を基に、限界を超えて改善し続ける、
 その生産方式の秘訣を探っています。
 
 
 現在のデンソー社長・深谷氏はかつて、「一人光る、皆光る、何もかも光る
 」とのメッセージを投げかけ、筆者はそこに「マインド」の大切さを知りま
 す。
 
 つまり、トヨタ生産方式は、成果やスキルの向上だけではなく、そのベース
 となる「マインド」の成長を共に進めるシステムなのです。
 
 
 例えば、仕事の進め方の基本である「PDCA」。
 
 言うまでもなく、「P(計画の作成)」「D(計画の実行)」「C(進捗の
 確認)」「A(計画の見直し)」の一連の流れを指しています。
 
 ここに加えて、それぞれを遂行する上での「マインド」として、「思いやり
 」「学び」「反省」「向上心」というキーワードを当てて、スキルの向上と
 人間的な成長を共に勧めています。
 
 この、スキルとマインドの成長サイクルを、共に回すのがポイントです。
 
 
 このように書くと、「PDCA?ああ、知っている」という気になりますが、
 分かったつもりが一番危険だと、著者は指摘します。
 
 トヨタグループが強いのは、スーパーマン的な人が多数いるから、ではなく、
 基本中の基本であるPDCAを、明けても暮れても、飽きもせずに、ひたす
 ら地道に取り組んでいるからです。
 
 「当たり前」にやるべきことを、毎日毎日きっちりと、着実にやり遂げてい
 る「だけ」なのです。
 
 
  “おそろしや たゆまぬ歩み カタツムリ”
 
 トヨタ式は、PDCAに始まり、PDCAに終わるといっても過言ではない、
 と語られるように、形だけではなく、心からの「トヨタ生産方式」ほど、恐
 ろしい、そして頼もしいカイゼンはないのでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 一人ひとりが成長サイクルを回したとしても、各自がばらばらでは、職場全
 体としての成長はありえない。
 
 「環境・風土」が大切だ。
 
 
 「麻の中の蓬(よもぎ)」という例えがある。
 
 麻は生育するときは、天に向かってまっすぐに伸びる。
 
 蓬は「もち草」ともいわれ、若葉が草もちに使われる植物だ。
 
 蓬は麻の中で育てると、麻と同じようにまっすぐ天に向かって育つという。
 
 生育が周りの環境・風土の影響を受けることはもちろん、方向性の影響も受
 けるのだ。
 
 
 職場の環境・風土も、方向性の合致した「成長」を進める上で、きわめて重
 要な要素なのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 新入社員に語る理念を、中堅もベテランにも語れ。
 「絵に描いた餅」を、噛み付きたくなるほどリアルに描け。
 
 計画して実行だけでは、カルシウム(Ca)不足。
 骨が折れないように、チェックと見直しが不可欠だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 火 |   | (炎3つが満点)
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 第1章 強い現場とは何か
 第2章 強い現場のつくり方―成果と成長のマネジメント
 第3章 「ユートピア指数と自己実現力」の総合診断(ワークシート)
 第4章 超「トヨタ式」改善活動の実践ノウハウ
 第5章 職場の「磁場」の整え方
 第6章 成果を出すための心のマネジメント
 第7章 職場ユートピア、リーダーの使命
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・アマゾン 『現場はもっと強くなる』
 
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July 11, 2006

あなたの機械設計ココが足りない!

Kikaisekkeikokogatarinai
 【今週の一冊】
 ●『あなたの機械設計ココが足りない!』
  潜在技術力アップのための実務対策ヒント集

  著:和田 肇(日刊工業新聞社)
  2006.05 / ¥2,310

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『製図からはじまり、ものづくりは「理論+鈍臭い知識と知恵」により
 
                       良い製品が生まれます。』

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 「機械設計」と一言では言うものの、その中身たるや、広く深いものです。
 
 歯車やバネのような機械要素一つでも、分厚い専門書がゴロゴロあり、材料
 はお馴染みの鉄系から樹脂、流体や接着剤と多種多様。
 
 それらを構成して、所望の動作をさせ、様々な使用環境で評価し、しかもコ
 ストは削らねばならない。
 
 まさに逆立ちで綱渡りをするような、ギリギリのバランス感覚の持ち主でな
 ければ務まらないオシゴトです。
 
 いきおい、「前例」や「習慣」で設計してしまい、トラブルが発生すること
 も、うなずける気がします。
 
 
 しかし、エレベータ事故の例を挙げるまでもなく、一度世に製品が出てしま
 えば、もはや設計者個人の問題では収まりません。
 
 なればこそ、現場の目線で、設計者のスキルアップに直結する、本書のよう
 な「よきアドバイス」が必要になります。
 
 長年、カーステレオのテープの駆動機構やCDドライブなどの設計に従事し
 た筆者の経験からの「使える」事例から、大いに学ばせてもらいましょう。
 
 
 車載用CDチェンジャーのメカニズムユニットの駆動部が、錆びついて動作
 しなくなるトラブルが発生しました。
 
 元素分析の結果、当該箇所に「食塩」があったことが分かり、関係すると思
 われる洗浄液やグリース、切削油など調査しましたが、いずれからも塩素・
 ナトリウムは検出されません。
 
 履歴を追うと、不具合品は特定の3日に生産したことを突き止めました。
 
 探偵のように調査した結果、この3日は工場近くは海からの強風が吹いてい
 たことが分かり、海風の塩分が原因と分かったのです。
 
 
 こう書くとスムーズに原因究明されたように思いますが、関係者は「その道
 」の人間ですから、工程中の要因に眼が行き、実際は測候所へ過去録を問い
 合わせるには、なかなか至りませんでした。
 
 もし、「その道」の見方でもっともらしい原因が成立してしまうと、検討が
 終了してしまい、再び忘れた頃に同じ問題を起こすことになります。
 
 「経験」も、「現場現物現実」も、問題解決には重要なことを気付かせてく
 れる教訓です。
 
 
 また、「ジャイロ効果とCDドライブの関係」「フライス加工で生じる膨ら
 み」「公称寸法と損得勘定」などの知識を「雑学」と呼び、専門書ではとっ
 つきにくい歯車やネジの実用的なオリジナル計算式を紹介しているのも、面
 白いところです。
 
 もちろん、これらで「機械設計」が網羅できることは到底ありません。
 
 しかし、筆者の「観て、感じて、考え、実行」した末の様々な事例から、機
 械設計者のあるべき姿を学ぶことで、自身の「足りない」点は、きっと補え
 ることでしょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 よく事故の説明に「スイスチーズ・モデル」が使われる。
 温度測定に用いる「熱電対」を使った経験のある人は多いだろう。
 
 しかし、その使用方法を正しく理解しているだろうか。
 
 異なる2本の金属線を接合し、接合点に温度を与えると線間に電圧が発生す
 る「ゼーベック効果」を利用したのが熱電対だ。
 
 200℃くらいまでの場合は、2本の線をねじって測定箇所に貼り付けたりする
 が、測定される温度は「ねじり部の測定器側位置」の温度だ。
 
 つまり、5mmの長さでねじって、先端を測定物に取り付けても、測定して
 いるのは測定物から5mm離れた位置になってしまう。
 
 
 また、200℃を超える温度の場合、溶接した熱電対接合部の玉を、測定物にス
 ポット溶接したりするが、これが至難の業だ。
 
 溶接どころか、熱電対の玉を飛び散らせてしまう。
 
 しかし、熱電対の原理を考えれば、別に熱電対を接合してから溶接する必要
 はない。
 
 2本の線を、少し離してそれぞれ接合しても構わないわけだ。
 
 これまでの熱電対のイメージから離れ、原理に立脚して考えると、意外に簡
 単な方法に行き着くことが理解できるだろう。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 自分の知恵と工夫を書きとめて、「ノウハウ集」を作ろう。
 まとめようとすることで、気付きが増える。
 
 知恵を絞って、適材適所の測定法を考え出そう。
 「測れないものは作れない」。学術ではなく、現場に合う測定器を作ろう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 まずはここから設計を変えよう
 第2章 数値の意味を知ろう
 第3章 メカニズムの要素設計を成功と失敗の事例で見直そう
 第4章 知恵を絞って測定法を考え出そう
 第5章 加工法に雑学を加えよう
 第6章 図面についての雑学で得をしよう
 第7章 補助的材料の性質を実感しよう
 第8章 長年の知恵による問題解決法で技術力を付けよう
 第9章 生産ラインに関心を持とう
 第10章 設計者サイドの特許出願を知ろう
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 和田 肇
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『あなたの機械設計ココが足りない!』

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