August 03, 2007

モノづくりで150億円を生む独創発想術

Monodukuride150okuenn
 【今週の一冊】
 ●『モノづくりで150億円を生む独創発想術』

  著:中西 幹育(プレジデント社)
  2007.1 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『失敗と挫折は、開発者にとって大切な経験である。
 
          失敗は肥やしになる。
 
                 いや、失敗を肥やしにするのである。』


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 スポーツシューズの靴底に埋めて衝撃を和らげる「αゲル」。
 
 20メートルの高さから「αゲル」の上に玉子を落としても割れないほどの衝
 撃吸収性能は、スペースシャトルの衝撃吸収材にも用いられました。
 
 身近なところでは、皆さんの手に握られたボールペンのグリップにも使われ
 ていますね。
 
 
 携帯電話やクルマのダッシュボードのような、曲面のプラスチック表面に、
 木目などのデザインを印刷する「曲面印刷」。
 
 今では様々な製品に用いられている技術ですが、30年前には「不可能」と考
 えられていた技術です。
 
 この「αゲル」と「曲面印刷」、何の関連性もなさそうな、しかしいずれも
 独創的で、「儲かる」技術を生み出したのは実は同一人物であり、本書の著
 者なのです。
 
 これら2大発明を筆頭として、氏の開発人生の中から導き出した、「独創」
 の秘訣を伺いましょう。
 
 
 αゲル発想のきっかけとなったのが、衝撃吸収材に思い悩んでいるうちに、
 熱を出して寝込んでしまった著者が、溶けた「アイスノン」の感触でした。
 
 早速、スーパーに並んだゲル状の食品―寒天、ゼリー、こんにゃく、プリン
 等々、片っ端から買い込んで、玉子を落とす実験をしたのです。
 
 すると最も優れた衝撃吸収性を示したのが「イチゴゼリー」であり、このゼ
 リーに似た素材を探して作られたのが「αゲル」だったのです。
 
 
 ・・とこのように書くと、いかにも「タナボタ」式にひらめいたり、ちょっ
 と実験して新素材が見つかったかのように思えますが、発想のプロセスを詳
 しく読み解けば、そんなエレガントなものではないと分かります。
 
 筆者は「発想力は感性、観察力、自問力、気力、体力、そして知力から構成
 される総合力だ」と説きます。
 
 発想の発火点はアイスノンの奇妙な感触に触れた「感性」でした。
 
 そこに自ら厨房に立ち、各地の市場を訪ね歩く程、素材に対して好奇心を持
 つ「観察力」と、学生時代、オリンピック候補にまでなったウェイトリフテ
 ィングで鍛えた「気力・体力」が加わり、独創が生まれたのです。
 
 
 こうして生まれた発想を形にするときには、あれこれ批判する前に、すぐさ
 ま得た情報を加工する「行動」に移すことが重要です。
 
 その際「特許公報」を活用し、先人達の膨大な特許の隙間を見つけ出そうと
 する探偵精神で、自らの独自性を付加していくのです。
 
 
 そして「ひらめく人」に終わらず、「ひらめいて、つくって、売る人」こそ
 開発を、そして人生を楽しく豊かにできると氏は説きます。
 
 自らの特許を数々のビジネスに育て上げたエジソンを師と仰ぐ著者が、発想
 力を身につけ、形にし、ビジネスに結びつける道筋を、誰にでも分かりやす
 く著した一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 衝撃吸収に、「イチゴゼリー」が適していることは分かった。
 
 しかしイチゴゼリーを衝撃吸収材にするわけにはいかない。
 
 筆者の関心事は、イチゴゼリーの分子構造に移った。
 
 そこで製造メーカーに熱心に尋ねると、研究所の技術者が丁寧に教えてくれ
 たお陰で、分子構造が網目状に絡み合っていることがポイントだと分かった
 のだ。
 
 
 一般の人にはイチゴゼリーは子供のおやつの一つにすぎない。
 
 この中に、スポーツシューズの靴底の衝撃吸収材から宇宙船の実験装置にま
 で使われるほどの、どんでもない情報が詰まっていると、知りながら食べて
 いる人など皆無だったはずだ。
 
 この瞬間から、イチゴゼリーは筆者にとっては、単なる食べ物ではなく、貴
 重な情報を満載した「モノ」となったのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「誰でも発想の達人にはなれる」≠「何もしないで達人になれる」
 誰にでもできる、努力と創意と工夫を「実行」するかしないかだ。
 
 モノをモノとして見るな。
 モノについている情報を読み取ることが、発想を形にする第一歩だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 発想力は、どうすれば身につくのか?
 第2部 発想力を、「形」にするには!?
 第3部 発想力を、ビジネスにするには!?
 第4部 特別補講
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 中西 幹育
 ・出版社 プレジデント社
 ・アマゾン 『モノづくりで150億円を生む独創発想術』
 
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July 20, 2007

フェラーリと鉄瓶

Ferarritotetsubin
 【今週の一冊】
 ●『フェラーリと鉄瓶』
  一本の線から生まれる「価値あるものづくり」

  著:奥山 清行(PHP研究所)
  2007.3 / ¥1,365

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『ものを通して人を感動させるというのは、
 
            ものづくりに携わる人にとって究極の成果です。
            
    買ってくれたものを通して、自分が直接会うことのないお客さんに
    
                   言葉ではないメッセージが伝わる。
  
  これが作り手にとってとても重要なことだし、
  
                  ものすごく幸せなことだと思います』

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 フェラーリが創立55周年記念として世に送り出した、創業者の名を冠した
 クルマ「エンツォ・フェラーリ」。
 
 市販価格7,500万円、限定生産399台!
 650馬力、最高速度350キロ以上!
 
 ・・という色々な意味で「バケモノ」のようなこのマシンを、一人の日本人
 がデザインしたことはご存知でしょうか。
 
 イタリアのカーデザイン工房で八面六臂の活躍をされた筆者が語る、ものづ
 くりとデザインの関係について、耳を傾けてみましょう。
 
 
 カーデザインと言うと、新車の発表時に出てくる、あのラフなイラストを描
 いて形の概略を決めるだけの仕事、と思いがちです。
 
 しかし「絵」は開発の手段として存在するのであり、それだけがデザイナー
 の仕事ではありません。
 
 例えば8人乗りの乗用車を開発する場合、人間を長さ5メートル、幅1.8メー
 トルの箱の中に乗せるにはどうしたらいいか、8人分の荷物をどこに積むか、
 真ん中の席の人は窓を開けたいと思うかどうか、後ろの席までエアコンの冷
 気が届くか、それを150万円以内で作るにはどんなことが必要か―
 
 等々の要素を全て出し、それをまとめて設計するのが「デザイン」の仕事な
 のです。
 
 
 つまり、カーデザイナーは設計者やエンジニアと「対立」する立場ではなく、
 船頭のようにプロジェクトの舵取り役を担っているのです。
 
 もちろん、デザイナーは自動車の全ての要素について専門家ではありません
 し、その必要もありません。
 
 一方、クセのある専門家達の見解を聞き、矛盾する意見の山をかき分けて、
 整理しながら進める「コミニュケーション能力」や、トップやクライアント
 に対する「プレゼンテーション能力」がデザイナーには必要です。
 
 ですから、7,500万円の名車をも生み出す、あのたった一枚の「デザインスケ
 ッチ」の後ろには、何千枚の試行錯誤と、何年もの格闘があるのです。
 
 
 現在、地元の山形に帰り、地場産業のデザインを請け負う事務所を開いてい
 る著者は、「イタリアでフェラーリを作るのも、山形で工業製品を作るのも
 根本は一緒」と語ります。
 
 曰く、「未来のお客さんのために、一生懸命にアイデアを出して、スケッチ
 を描いて、職人さんたちと議論しながらものを作っていく」のだと。
 
 世界最高のデザイナーの一人が日本人であることを誇りとし、彼の開発型の
 ものづくりに学びましょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 世界中の自動車メーカーで新しいモデルを開発するときには、粘土の実物大
 模型を作るのが普通だ。
 
 しかし粘土は簡単に盛ったり削ったりできるので、結構いい加減に始めてし
 まいがちだ。
 
 適当に作って、後で修正すればいいやと思うからだ。
 
 
 「エンツォ・フェラーリ」を作ったとき、試作モデルに使ったのは粘土では
 なく「エポウッド」という材料だった。
 
 これはエポキシ樹脂でできた硬い素材で、ノコギリとノミとカンナとサンド
 ペーパーで加工する。
 
 つまり、「真剣勝負」が要求される素材なのだ。
 
 きっちり下準備をしてから硬い素材を削っていき、作り始めたら、もう変更
 はきかない、という姿勢だ。
 
 そういう緊張感の中で仕事をすることが、いいものを作るための条件になっ
 ているのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 フェラーリの赤は、ワインやポモドーロの赤ではない。
 亡くなったドライバーや、デザイナーの努力の「血の色」なのだ。
 
 デザイナーのアイデア創出の道具は「言葉」と「手」だ。
 手を動かし、議論を深めることで、アイデアのレベルを上げていこう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1章 カーデザインで諸国を遍歴
 第2章 日本人の知らないイタリア
 第3章 イタリアのものづくりに学ぶ
 第4章 コミニュケーションとしてのデザイン
 第5章 なぜフェラーリは高くても売れるのか
 第6章 クリエイティブであり続けるために
 第7章 カロッツェリア的ものづくりへの挑戦
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 奥山清行
 ・出版社 PHP研究所
 ・アマゾン 『フェラーリと鉄瓶』
 
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July 04, 2007

我らクレイジー☆エンジニア主義

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 【今週の一冊】
 ●『我らクレイジー☆エンジニア主義』

  編:リクナビNEXT Tech総研(講談社)
  2007.1 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『私は生まれ変わっても、エンジニアになりたいです。
 
   だって、欲しいものがあれば、自分でつくれるのがエンジニアだから。
   
     誰かがつくってくれるのを待っている必要はない。
     
                    自分でつくれてしまえるんです』


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 NHKの「プロフェッショナル」は、やまさんの好きな数少ない番組の一つ
 ですが、最近火曜日夜に時間帯が変わってちょっと残念。
 
 (なぜって?まあ、メルマガをもっと早く書けば良いだけなんですが・・)
 
 あの番組の中でも登場した、「タンジブル」の石井教授や、これまで「燃え
 る100冊」で紹介した、恒星500万個プラネタリウムの大平貴之氏、ロボット
 デザイナーの高橋智隆氏など、現在の日本で最も「突き抜けた」プロフェッ
 ショナル・エンジニア15名のインタビューがまとめられています。
 
 
 一見、人間と見紛う精巧な「アンドロイド」を生み、ロボットと人間のコミ
 ニュケーションを研究する石黒浩氏。
 
 表面的に人間に「似せる」のではなく、「人間とは何か」という哲学的なア
 プローチが独自の研究に繋がっています。
 
 氏は、「開発予算がないから新しいことが出来ない!」と嘆く研究者に、「
 今、目の前に1億円ポンと詰まれて、新しいことをやれといわれて、すぐに
 できるだけの準備をしておけ」とアドバイスします。
 
 お金があることと、ちゃんと技術ができるかは、全く別問題であり、切り離
 して結果を出すのがエンジニアなのです。
 
 
 電車に乗るときも、食事中も、講義のときにも一日中、額にヘッド・マウン
 ト・ディスプレイ(HMD)を付けて生活している塚本教授は、人呼んで「
 ウェアラブルの伝道師」。
 
 「来年こそ流行する!」と予言し続けながら、自ら広告塔になって普及を狙
 う姿は特異ですが、彼が10年前に「10年後、歩きながらコンピューターを使
 うようになる」と予言した言葉は、現在ノートPC、ケータイとなり現実の
 ものとなっています。
 
 「HMD?ああ、知ってるよ」と軽く流そうとする向きは多くても、実際に
 見て、触って、装着してみた人はどれだけあるでしょうか。
 
 開発者にとって恐ろしいのは「評論家」になってしまうことであり、評論だ
 けでは、新しいものは生まれません。
 
 「10年先どうなるか」を語る占い師は未来はつくれません。
 「こうしよう!」と、自分が未来を決めるのが、我らエンジニアなのです。
 
 
 「苦しかったときは?」という問いかけに、トップエンジニア達は、口をそ
 ろえて「苦しいと思ったときなどない。好きなことができて楽しい!」と答
 えます。
 
 彼らのような燃えるエンジニアを「クレイジーエンジニア」と呼ぶならば、
 喜んで「クレイジー」になろうじゃありませんか!

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 慶応大学で、時速370キロの8輪駆動車「Eliica」を作った清水教授。
 
 かつて彼がレーザーレーダーの開発をしていた時のこと。
 
 
 重要な研究テーマは、「どこまで遠い大気中の状況が見られるか」。
 
 遠くなるほど測定が難しくなるため、誰もがレーザーパワーを上げることに
 必死で取り組んだ。
 
 これを10倍にすることはとんでもなく大変なことだ。
 
 しかし、レーザーの光を大気中の分子や粒子に当てて跳ね返ってくる光を受
 信する望遠鏡を大きくすることでも遠くまで測定することが可能だった。
 
 面積10倍の望遠鏡を作ることは、レーザーパワーを10倍にすることに比べて
 容易だった。
 
 この方法で、教授は世界で一番遠くまで測定できる装置を開発した。
 
 
 誰もが考えれば分かることだが、発想が縛られてしまうと思いつかない。
 
 自動車のエンジンから開放された電気自動車のアイデアも、清水教授らしい
 発想から生まれたのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「ワクワク」「ドキドキ」の、寝食忘れるものづくりをしているか。
 自分が楽しいものでなければ、人を感動させることはできない。
 
 朱に交われば、赤くなる。
 烏合の衆から飛び出し、トップエンジニアの生きざまに学べ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 ◎ 目 次 ◎
 01 石井裕  39歳でMIT教授に転身。まったくのゼロから創造した「タンジ
        ブル」の世界
 02 石黒浩  自分そっくりロボットに世界が驚愕。「人間とは何か」求め
        てアンドロイド開発
 03 稲見昌彦 SFアニメが鍵。透明人間を実現した「光学迷彩」でインター
        フェース革命
 04 内山太郎 度肝抜く空中立体映像。「日の当たらない研究」が次世代広
        告媒体を生む
 05 大平貴之 たった一人で恒星数500万個のプラネタリウム。すべてケタ
        外れに考える
 06 小濱泰昭 飛行機で新幹線。時速500キロの未来列車「エアロトレイン」
        という発想
 07 山海嘉之 人体密着型ロボットスーツが実用化へ。医療分野にも広がる
        ビジネスビジョン
 08 清水浩  世界最速、時速370キロ。8輪駆動のクルマ「Eliica」の快感
        は加速感にあり
 09 高橋智隆 設計図なし。実家2階の寝室兼工房が舞台のクレージーなロボ
        ット製作現場
 10 塚本昌彦 ウエアラブル伝道師の予言。「ヘッド・マウント・ディスプ
        レイが未来を変える」
 11 苫米地英人 面白いことだけやるために脱・洗脳せよ! 天才脳機能学者
         のエンジニア論
 12 富田拓朗 ケータイ動画変換で世界を制す。カリスマプログラマが挑む
        情報伝達の指針技術
 13 八谷和彦 「ポストペット」大ヒットのアーティストが語る、感動を仕
        事に変える技術
 14 古田貴之 ロボット界の異才が仰天発想。8本足のクルマが手探りで段差
        、坂道を登る
 15 由井啓之 ビル・ゲイツを驚嘆させたスピーカー「タイムドメイン」不
        屈の開発秘話
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・Tech総研 我ら“クレイジー☆エンジニア”主義!
 ・アマゾン 『我らクレイジー☆エンジニア主義』
 
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April 13, 2007

西堀流新製品開発

Nishiboriryu
 【今週の一冊】
 ●『西堀流新製品開発』
  忍術でもええで

  著:西堀 栄三郎(日本規格協会)
  2003.11 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『能力というものは変えられる。
 
     その人に与える環境次第によっていくらでも変えられる。
    
              その人の能力を上げる方法はいくらでもある』


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 日本の品質管理の創始者であり、真空管技術、第一次南極越冬隊長、原子力
 の研究・開発と、多方面に渡って多大な功績を残した西堀栄三郎氏。
 
 4年前、氏の生誕100周年を記念して復刊されたのが本書であり、初出は約
 30年前です。
 
 そんな数世代も前の本でありながら、西堀流の「新製品開発」手法は、全く
 色あせることなく、その先見性に驚くばかりです。
 
 
 まずこれからの製品は「多種少量生産をこなせ」と指摘します。
 
 「欧米はコストの面から画一化に向かっているが、これからの日本は何とか
 して多種少量生産をやるべき」との言は、まさに現実となっています。
 
 更に、人間も「多種少量生産」、つまり専門家より多能工を目指せと説き、
 北極点到達に植村直己氏が1人でやっていたことを、専門家10人かかりで分
 業する愚を引き合いに出しています。
 
 
 会社にとって、新製品開発は「企業経営者にとって最大の任務」であり、企
 業を伸ばすのも、企業を潰すのも新製品です。
 
 すなわち、「企業即新製品」とまで言い切ります。
 
 これは製品のライフサイクルには、遅かれ早かれ必ず最後に衰退があるから
 であり、この衰退のタイミングに新製品を投入せねば会社も衰退する運命に
 あるからです。
 
 となれば、新製品開発は部下任せにできるものではなく、トップが「新製品
 の種」を育てる責任を負わねばならないのです。
 
 
 ここで大事なのは、「新製品の種」を即座に評価してはならない、というこ
 とです。
 
 そうではなく、どうすればその「種」が育つかを考え、要領よく実験をして
 着想の実現可能性を試してみないことには良し悪しは分からないのです。
 
 簡単にアイデアを絞らずに、評価をした上で「冷凍庫」にたくさん保存して
 おき、使えるようにしておくのです。
 
 
 ではその「新製品の種」をたくさん出すためにはどうしたらよいのでしょう
 か?
 
 それには「知識」だけではなく、着想を求める「強い切迫感」が加わって、
 アイデアが生まれます。
 
 そして切迫感は、報酬や生活苦からよりも、「創造する喜び」を潤滑油に、
 「責任感」をエンジンとして生まれてくるものなのです。
 
 担当を明確にして責任を与え、手段は「忍術を使ってもええで」と、相手の
 自由にさせ、考えさせる。
 
 これが「西堀流」新製品開発の極意です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 着想が生まれてくるまでには、二つの発明の仕方がある。
 
 一つはエジソン式発明であり、他の一つはラングミヤー式発明である。
 
 エジソンは小学校しか卒業していない人であり、ラングミヤーはノーベル賞
 を受賞したような大学者である。
 
 2人は電球を研究していたGEの創始者であり関係者である。
 
 
 エジソン式発明は、要求(切迫感)が先にあって、知識がそれに追従してい
 くというやり方であり、ラングミヤー式発明では、知識が先にあってその知
 識を応用して要求を満たすというやり方である。
 
 一般論として言えば、エジソン式のほうがラングミヤー式よりも成功の確率
 が高い。
 
 別の言い方をすれば、街の発明家式の方がずっと成立しやすいということだ。
 
 ところが、ラングミヤー式の方は、一たび発明が成立すれば大発明になる可
 能性がある。
 
 つまり基本的レベルでの特許を獲得できるのである。
 
 しかし、そうした発明はそうざらにあるものではない。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 新製品開発はCAD、CAEで進むものではない。
 タイムリーで要領のよい「ネタだし」「実験」こそ開発の要諦だ。
 
 研究・開発はステージごとに切り分けよ。
 それぞれに合わせた運営・予算・目標を設定せねば、成果は得られない。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
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 1 新製品開発精神
 2 科学・技術と研究の促進
 3 新製品開発の心がけ
 4 新製品開発のやり方
 5 私の新製品開発
 6 西堀栄三郎博士生誕100年に寄せて
-----------------------------------
 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 西堀栄三郎
 ・出版社 日本規格協会
 ・アマゾン 『西堀流新製品開発』
 
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February 15, 2007

負けるな町工場

Makerunamachikoujyo
 【今週の一冊】
 ●『負けるな町工場』
  ハンデをプラスに変える発想法

  著:中里 良一(日刊工業新聞社)
  2002.6 / ¥1,890

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『今日、長引いた不況で町工場の経営に夢も希望も
 
              なくしている経営者は大いに違いない。
   
  しかし、町工場の一番大きな財産は、
  
    “小さいからこそ自分の好きな夢がみられる”ことであろう。
      
                     その夢をなくしてはいけない』

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 「町工場」と聞いて、イメージするのはどんな姿でしょうか。
 
 狭い路地裏にある油にまみれた薄暗い工場。
 納期に追われ、薄汚れた作業服で、黙々と働く年老いた社員。
 仕事量の確保や、資金繰りに汲々とする経営者―。
 
 そんな、夢も希望もない、いわゆる「3K(暗い、汚い、きつい)」職場の
 代表のように描かれることが多いことでしょう。
 
 しかし、本書の著者が経営する「中里スプリング」は、規模こそ「町工場」
 ではあるものの、どんな大企業にも劣らない「楽しい、夢の溢れる」工場で
 す。
 
 
 例えば、一年間で最も頑張った社員に対する報酬は、金一封、なんてもので
 はなく、「会社の設備と材料を自由に使って自分の好きなものを作ることが
 できる権利」が一つです。
 
 ばね材料を利用して、ロボットやカブトムシなど自由に作って良い権利であ
 り、これが新たに「ワイヤーアート」という新しい事業のベースにもなって
 いるのです。
 
 さらにもう一つ与えられる権利が、自分の担当しているお客さんの中で、自
 分が親しみを持てない取引先を「リストラ」する権利です。
 
 ちょっと驚くべきことですが、これも社員が楽しく仕事をするためであり、
 「取引先は取引額でなく、好き嫌いで判断する」のが中里流なのです。
 
 
 また、コンサルタントのセンセイに言わせれば、町工場は「作業環境が悪い」
 「整理が悪い」「いい設備がない」など問題点だらけですが、それを「欠点
 だらけ」ではなく「個性に溢れている」のだと、発想の転換を促します。
 
 もし小さくて薄汚いけれど行列のできるウマいラーメン屋と、オシャレで広
 々としているが、食べに行ってもこれといった特徴のないレストランとであ
 れば、多くの人は前者に行くでしょう。
 
 町工場も、同じ労力をかけるのならば、不慣れな社員教育や生産管理に向け
 るより、徹底して得意な分野を盛り上げていった方が社員も楽しいし、変に
 ぎくしゃくしたところがなくなります。
 
 本当に優秀な技術や製品ならば、町工場のつまらない欠点なんか、どうでも
 いいのです。
 
 
 町工場が本当に何とかしなくてはいけない「3K」とは、「企画力がない」
 「既成概念から抜け出せない」「希望がない」の3つであり、この3Kから
 抜け出すことが、町工場の未来を拓くのです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 ハンデをプラスに変える発想法は、「負けるな町工場!勝ち上れ!」
 
  負 負の連鎖から抜け出し
  け 健全な経営をして
  る 留守番役の脇役で終わるのではなく
  な なるほどと思わせる技術を持ち
  町 町にとって必要不可欠な大きな歯車となり
  工 工程を楽しむモノづくりを行う
  場 場所であると自覚すべし
  ! !
  勝 勝利を目指して
  ち 力を合わせて
  上 上昇気流の風を呼び寄せ
  れ 劣等感を自信に変えよう
  ! !

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 ステレオタイプな批評や講釈は、現場では間に合わない。
 「中小企業だから」「下請けだから」と、愚痴をこぼさず汗こぼせ。
 
 ものづくり、人づくりは楽しいもの、楽しませるものだ。
 会社を大きくするのは、金を儲けるのは何のためか。原点を忘れるな。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 生きている町工場
 第2章 求められる経営者像
 第3章 小さな会社がやるべきこと
 第4章 情報化時代の町工場
 第5章 負けるな町工場
 第6章 五〇音別経営名言集
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 中里スプリング
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『負けるな町工場』
 
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January 31, 2007

世界の自動車を造った男

Sekainojidousya
 【今週の一冊】
 ●『世界の自動車を造った男』
  荻原映久、50年のモノづくり人生

  著:生江 有二(日刊工業新聞社)
  2006.10 / ¥1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『技術は日々、先進する。
 
    コストを下げることを忘れ、研究に力を注がず、
           現状に満足していると、すぐに追い抜かれてしまう。
  
      前進か死か。
  
               これは製造業の全てにいえることなんです』

-----------------------------------

 2004年に世界各国で生産された自動車台数は63,956,415台(日本自動車工業
 会調べ)。
 
 この年、世界では8億3681万台の車が走っており、これは世界の人口で7.5人
 に1台の割合です。
 
 その8億台あまりのクルマのうち、1億台を越える車を日本の1つの会社が
 造っていることを、ご存知でしょうか。
 
 
 その会社とは、金型メーカ「オギハラ」。
 
 正確には、「オギハラの製作した金型でボディを製造した車が1億台以上」
 ということです。
 
 この途方もない膨大な自動車生産を支えるために、オギハラは、日本、アメ
 リカは当然として、実に5大陸全てに工場を構える、グローバル企業なので
 す。
 
 オギハラと、その金型技術を支えた荻原映久氏の技術者の半世紀は、世界の
 中の日本のものづくりを語るに欠かせない、貴重な歴史です。
 
 
 オギハラの海外進出第1号は、意外なことにオーストラリアでした。
 
 昭和39年、当時のフォードオーストラリアの金型は、主に米国から輸入して
 おり、日本で100万円程度の型が800万から1,000万円ほどしていたため、日本
 の金型メーカが注目されていました。
 
 通常の3倍ほどの見積価格にしても安すぎると疑問に思われ、現場まで見に
 来た上での受注となったのでした。
 
 このときに、米国等に通用する、インチ単位の図面や部品のノウハウを手に
 したことが、後の海外進出の足がかりとなったのです。
 
 
 更にその後、旧ソ連の自動車メーカにトラック用の金型を納め、アメリカの
 現地工場立ち上げ、BIG3との丁々発止の交渉、中国・台湾・韓国の急成
 長との格闘など、めまぐるしい世界展開が続きます。
 
 更にはタイ、インド、そして南アフリカ、メキシコなど、ごく最近注目され
 始めた国々にも、「声がかかった翌朝の出社時間までに飛んでいく」ほどの
 フットワークで営業・進出を繰り返し、今日の「オギハラ」となったのです。
 
 
 しかし、グローバル化の波は、日本的な家族経営のオギハラも飲み込み、20
 03年に外資との提携直前まで追い込まれ、結局、大和証券による資本参加と
 なったことは、記憶に新しいところです。
 
 最新加工機で無人24時間加工が可能な、大手自動車メーカの金型技術、また
 躍進著しい新興国の安価な金型など、オギハラの優位は脅かされつつありま
 す。
 
 綺麗事ばかりではない、グローバルなものづくりの「過去・現在・未来」が
 見える一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 70年前まで、職人の「手作り」で金型は造られた。
 
 一体、数トンにも及ぶ鉄の塊から、どうやって「手作り」するのか。
 
 特殊な鋳物でできたカマボコ型の金型の原材に、タガネを用いて、深さ5ミ
 リ程度の溝を約100ミリピッチで縦横につけていく。
 
 溝と溝の間は100ミリ×100ミリ程度の切り餅大の山が残るが、これを再びタ
 ガネ(多くは鉄砲と呼んだエアコンプレッサを使った自動タガネ)で削り取
 っていく。
 
 おそろしく地味な作業だ。
 
 しかも1000分の1ミリ以下の誤差で削らないと、プレス機にかけてから鉄板
 が裂けたり、皺ができたりすることになる。
 
 それを手作業で作り出してきた時代が長く続いていたのである。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「グローバル化」は、日米欧だけではない。
 BRICs、東南アジア、そしてアフリカの「今」を知れ。
 
 ものづくりも、ビジネスも、「人と人」がつくる。
 本音で付き合わなければ、いいもの、いい仕事はできない。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 ビッグ3
 第2章 鉄工所の映画館
 第3章 初受注
 第4章 海を越えて
 第5章 紊乱のデトロイト
 第6章 TJ、世界自動車市場を行く
 第7章 中台韓・激動するアジア市場
 第8章 五大陸に吹く風―南ア、メキシコ
 第9章 環境へのまなざし
 第10章 世界市場、ふたたび
 終章(あとがきに代えて) 培った技を継承するまで
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・オギハラ
 ・出版社 日刊工業新聞社
 ・アマゾン 『世界の自動車を造った男』
 
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January 11, 2007

この国の魂

Konokuninotamashii
 【今週の一冊】
 ●『この国の魂』
  技術屋が日本をつくる

  著:立花 啓毅(二玄社)
  2006.10 / ¥1,260

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『低迷する日本のモノ作りに必要なのは、作り手の「美学」である。
 
   「美学」とはイコール、人の「器」のことであり、
                   「器」とは「魂」のことである。
 
       この「魂」が今、日本経済を支える技術者に求められている』

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 以前、米経済紙『ビジネスウィーク』に、「日本車は日本人のイメージとそ
 っくりで、おもしろくない」と書かれたことがあるそうです。
 
 それこそ「おもしろくない」記事ですが、レクサスが苦戦し、欧米高級車が
 依然、人気を誇っている現状を見及ぶに、頷かざるを得ない部分もあります。
 
 筆者は、「我々自身が面白みや文化、哲学を持たないからクルマもそうなっ
 てしまう」と断じます。
 
 日本車の中でも名車と謳われる、ユーノス・ロードスターやRX-7のプロジェ
 クトリーダーを歴任した筆者ならではの、辛口「ものづくり」論に耳を傾け
 てみましょう。
 
 
 繊維産業はイギリスの産業革命を機に機械化され、大量生産されるようにな
 ると、イギリスからコストの安いアメリカ東海岸に移りました。
 
 次に西海岸へ、そして日本へ。更に韓国、中国へと移行しました。
 
 家電も同じ運命をたどっているように、商品は完成域に達すると、人件費の
 安い地域へ流れていきます。
 
 これを「商品循環論」といい、この風は否応なく世界中に吹き荒れています。
 
 
 クルマも技術的には完成域に達しており、ヨーロッパでは影の薄いメーカー
 は姿を消し、アメリカではビッグスリーも苦境に立たされています。
 
 では日本のメーカーがこの「商品循環論」の風に吹き消されないためには、
 どうすればよいのか。
 
 今や中国の独壇場となった繊維産業であっても、西陣織や紬など、個性や文
 化的背景のあるものは生き残り、世界から尊敬されています。
 
 この個性や文化こそ、「美学」であり「魂」です。
 
 世界一の品質と生産台数を誇る日本車に足りないもの、それがこの「魂」だ
 と筆者は声高に叫んでいるのです。
 
 
 過去の実績の積み重ねから、コンピュータの解析で試作車の完成度は、初め
 から80%程度にまで到達できるようになりました。
 
 しかし、「ニッパチの法則」と言われるように、残りの2割を高めるには、
 8割の力が必要とされ、現在のクルマは、まさに最後の詰めにエネルギーを
 かけるか否かで決まります。
 
 最後の20%を持ち上げる力こそが、技術屋の「魂」であり、クルマを総合
 的に判断できるセンスなのです。
 
 
 筆者はこの「魂」を、教育論や国家論まで掘り下げて語っているように、も
 のづくりの原点は、小手先ではない、人間性に深く根ざしたものであること
 を気付かせてくれる一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 デザインとは、「行動原理」に沿ったものでなければならない。
 
 「行動原理」とは、例えば次のようなことだ。
 
 ドアのインナーハンドルを搭乗者により近づけると、使い勝手は悪いが、身
 体をひねってドアを開けようとする。
 
 すると上半身が後ろを向き、自然に後方を確認してからドアを開くことにな
 る。
 
 意識せずとも安全を確認することができるわけだ。
 
 デザインとは、人の動きの中に溶け込んだ造詣でなければならないのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 流行を追うな。大衆に媚びるな。
 人の意見を取り入れすぎると、平均点のつまらないものにしかならない。
 
 器は感動の量に比例する。
 器は愛することの喜びと、悔し涙の回数に比例するのだ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 第1章 モノってなんだろう?
 第2章 魂あるクルマ
 第3章 モノ作りの要諦
 第4章 日本は腑抜けになった
 第5章 オトコとしての価値
 第6章 視点を変えると世界が見える
 第7章 作り手としてのプライドを見せよ
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・マツダ ロードスター
 ・出版社 二玄社
 ・アマゾン 『この国の魂』
 
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October 04, 2006

あしたの発想学

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 【今週の一冊】
 ●『あしたの発想学』

  著:岡野 雅行(リヨン社)
  2006.8 / ¥893(新書)

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『不可能なんて冗談じゃないよ。
 
   所詮、人間が判断したことで不可能なんてことは、実は、
   
     この世の中にはあまり多くないようにあたしは思うんだけどねぇ』

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 「痛くない注射器」という画期的な製品を生み出したことで有名な、岡野工
 業の岡野社長。
 
 金型とプレス機という、どこの工場にもある設備から、想像を超えた製品を
 生み出す「発想」は、どこから生まれてくるのでしょうか。
 
 名物社長、いや自称「代表社員」の岡野雅行氏に尋ねてみましょう。
 
 
 岡野工業の代名詞ともなった「痛くない注射器」とは、外径200μm、従来の
 2/3の太さで、かつ従来と同じ注射液を流せる注射針です。
 
 これまでの針はパイプを細かく切っていましたが、これでは内径に凹凸が大
 きく、また細くすれば流量が落ちてしまうため、「皮膚に刺さる部分は細く、
 それ以外は太い」針を思いつきます。
 
 これを実現するまで、1年半、岡野氏は自ら試行錯誤を繰り返し、失敗を重
 ね、寝る間も惜しんで考えて、ついに「板を丸めて針をつくる」という発想
 にたどり着くのです。
 
 
 では、ここまで種明かしをされれば、誰でもこの注射針を作れるのでしょう
 か?
 
 否、それを実現するための技術こそ、それまでに蓄積された「プレス技術」
 の賜物です。
 
 プレスに必要なものといえば、材料である板金、金型、そしてプレス機、と
 考えますが、実はミソは「潤滑油」にあるのです。
 
 例えば、もう一つ岡野工業で有名な「リチウムイオン電池のケース」は、伸
 びの悪いSUS304に2μmの厚みのニッケルメッキが張られた材料を、
 そのメッキがはがれないように「深絞り」したものです。
 
 岡野社長はこの潤滑油も、スイスなどから取り寄せた油を自らブレンドして、
 こうした難加工を実現しているのです。
 
 
 更に、注射針は当然、液漏れがあってはなりませんから、プレスで丸めた後
 どの部分もぴったりくっつくようにするために、あらかじめ切断しておく形
 状を決めるのは至難の業です。
 
 その計算には、あまりに加工の精度が高いため、パソコンでは計算の桁数が
 足りず、スーパーコンピューターまで引っ張り出してきたのです。
 
 ローテク、手の技術ばかりと思いきや、社長曰く、「必要とあらばスーパー
 コンピューターだって何だって使うよ。コンピューターだって道具の一つな
 んだから」。
 
 
 若い頃に十分遊んだから、今は仕事より楽しいことはないという岡野氏にと
 って、他の誰もができないことを自らの手で現実化すること以上の喜びはあ
 りません。
 
 モーレツ、気合、根性、根気、勤勉。
 そして正直、誠意、義理、本気。
 
 根っからの職人気質の岡野氏の、「絶対につくってみせる!」という信念と
 不断の努力、長年の技術の蓄積が、夢の製品を生み出す秘訣なのです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 岡野工業は、難しい仕事や値段の高い仕事しかしていないように思われてい
 るが、決してそんなことはない。
 
 安くて人がやらない仕事もやっている。
 
 ただし、頭を使って儲かるようにしている。
 
 たとえば、1個1円の利益にしかならないプレス製品でも、毎月100万個つく
 れば1年で1,200万円になる。
 
 しかし、今までのやり方では採算が合わないから、工程を減らしたり工夫す
 る。
 
 最もいいのは自動機をつくることだ。
 
 ローレット加工という、円柱に筋をつけていく加工の場合、熟練工でも3分
 も4分もかかる作業だが、それを他社の半分の工賃で受けたこともあった。
 
 それも、やはり自動機を開発したお陰で、材料を入れてスイッチを入れれば
 1秒足らずで加工できるようになった。
 
 時間は1/200、しかもパートの主婦でもできるから一石二鳥の自動機となった。
 
 安い仕事でも利益を上げる構造を組み立てて仕事をしているから、新しい技
 術の開発に挑戦する資金的な余裕も生まれるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 ものづくりの技術力は、企業の大きさに比例しない。
 現実に向き合う技術者の信念とは、大きく関係する。
 
 現場は「4K」たれ。
 「根気」「根性」「勘」「渾身」さえ実行すれば、道は開ける。
-----------------------------------
 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 発想と応用―なぜ、可能になるのか?
 自由気まま―不真面目と莫迦は似て非なるもの
 打破―世の中には最初から実績のあるやつなんていない
 習慣―つくる発想、できる発想
 周期―いま取り組んでいるものが未来をつくる
 反骨―手を動かせば解決方法が見えてくる
 勘―図面がないとできないのは本当の職人ではない
 縁―その名人は無名人
 忍耐―転んでもただでは起きない
 秘守―人気のラーメン屋がスープの秘密を教えるわけがない〔ほか〕
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・岡野工業株式会社
 ・出版社 リヨン社
 ・アマゾン 『あしたの発想学』
 
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September 20, 2006

自動車と私 カール・ベンツ自伝

Karlbenz
 【今週の一冊】
 ●『自動車と私 カール・ベンツ自伝』

  著:カール・ベンツ 訳:藤川芳郎(草思社)
  2005.10 / \1,785

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 ◆ 燃える一言 ◆

 『どうか信じていただきたいのだが、
 
   私にとって「発明の成果」よりも「発明すること」の方が
                     はるかにすばらしいのだ。
   
    ああ!もしも必要ならもう一度最初からだって喜んで始めるだろう』

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 燃料電池車が開発され、ハイブリッドカーの生産が急増している現在でも、
 「自動車」の基本は、エンジンで生み出した動力で「走る」「曲がる」「止
 まる」機能を備えた機械です。
 
 その実用的な「自動車」を120年前に生み出した、偉大なる発明家「カール・
 ベンツ」氏の自伝を紹介しましょう。
 
 
 高等工業学校で、機械の理論と実習を学びながら、彼はすでに「馬なしで走
 る車」を作り上げるという「とてつもない」目標を胸に抱きます。
 
 そのため、自ら技能を修得するため工場労働者として、薄暗い現場で12時間、
 旋盤や研磨の腕を磨きつつ、「線路のない機関車」の構想を練っていきます。
 
 そして次に働いた設計事務所で、製図の経験を積んだ上で、いよいよ「ガス
 エンジン(内燃機関)」の製造に取りかかります。
 
 奥さんとの必死の開発により、定置式の2サイクルエンジンは完成し、事業
 は軌道に乗ります。
 
 そしていよいよ、念願のエンジン駆動車の開発に着手したのです。
 
 
 最重要課題は、軽量で高回転なエンジンを製造することでした。
 
 ここでベンツ氏は、複雑な2サイクルエンジンから軽量化が可能な4サイク
 ルエンジンに変更し、そして「電気火花式」の点火装置を発明します。
 
 これはバッテリーの電圧を昇圧して、プラグの電極間に火花を飛ばすという、
 まさに現在のエンジンの技術そのものでした。
 
 さらに、ガソリンを適度に気化させるキャブレータ、そして高温のエンジン
 を冷ます水冷の冷却器という基礎技術も、彼は発明しています。
 
 
 そして動力伝達に不可欠なクラッチや、前輪操舵のためのアッカーマン・ス
 テアリング、ゴムタイヤなども、既に盛り込まれていました。
 
 圧巻は、デファレンシャル・ギア(差動装置)です。
 
 自動車の後輪は、曲がる際には内側と外側で移動距離が変わるため、その差
 を調整する必要があり、これを解決するための機構が差動装置であり、これ
 こそ現在の自動車にも不可欠な技術です。
 
 これらの機構がすでに「最初の自動車」に搭載されていたことを、文章と写
 真から見るにつけ、ベンツ博士の卓抜した想像力と、「自動車」の安全に当
 初から配慮した先見性に、ただ恐れ入るばかりです。
 
 
 こうした新技術の開発もさることながら、これまでにない移動手段を世に送
 り出したときの嘲笑や非難、警察や法律の壁などを乗り越えていった「信念
 」に、また驚かされます。
 
 その熱き想いは、ひとえに「人類に新しい交通手段をプレゼントしたい」と
 生み出した、自動車に対する自信、確信から溢れ出ていたのです。
 
 
 最後に、偉大な発明家であり、そして技術者であった氏から、若きエンジニ
 アへのメッセージを挙げましょう。
 
 「どうか立派な技術者になってください!
 
  なぜなら技術者は―哲学かぶれの連中や言葉の軽業師とは異なり―よりよ
  き未来の開拓者なのです」

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 最初の自動車は、3輪車であった。
 
 当初から4輪車をベンツ氏は作りたかったが、運転の安全性が難問だった。
 
 馬車のように、車軸全体を動かす方法はには、彼は反対だったのだ。
 
 その理由の一つは、馬車方式では、カーブを曲がるときに極めて大きな摩擦
 が生じ、運転に大きな力を必要とするからである。
 
 もう一つの理由は、4輪で直進する場合は4隅に車輪があって安定するが、
 曲がろうと前の軸を動かすと、4つの車輪が乗り物を支える面が3角形に近
 づき、安定性が低下するからだ。
 
 自分の車は街角に差しかかるたびに途方に暮れるような未完成なものにした
 くない。
 
 そこで完全に正しい解決法が見つかるまで、運転に申し分のない3輪自動車
 を彼は作り続けたのである。
 
 やがてこの問題を解決する、アッカーマン・ステアリング方式を実用化する
 ことで、「自動車の基本的な技術は完成した。」
 
 さらっと彼は書いているが、この一文の意義は極めて深い。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 発明の発想という壁、その実現化という壁。
 そして世の中の「常識」という壁。3枚の壁を突き破るのは信念だ。
 
 起こりうることに細心の注意を払い、対策を講じよ。
 そこに発明(特許)のタネがある。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 村の鍛冶屋の炎に照らされて
 父と母
 幼年時代のカール
 夏休みの楽しみ
 ギムナジウム時代
 「若いころはおいらも怖いもの知らずで、途轍もない目標を心に秘め、つぶ
 らな瞳で人生を覗いていたものさ」
 遍歴時代
 ボーン・シェイカー型自転車に乗って
 自分の家と作業場
 生涯で最高の大晦日〔ほか〕
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・メルセデスベンツ
 ・出版社 草思社
 ・アマゾン 『自動車と私 カール・ベンツ自伝』
 
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July 26, 2006

本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録

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 【今週の一冊】
 ●『本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録』
  人生に「自分の哲学を持つ人」になれ!

  著:岩倉信弥(三笠書房)
  2006.06 / ¥1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『君たちは、腹が減って死にそうな人に、
 
          『すき焼きの肉を買いに行きます』なんて言うのか!』

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 2006年も半分を過ぎました。
 
 当然、年初に立てた目標も、半分以上達成している・・はずですが・・。
 
 未達成な人も、取り組めてない人も、はたまた目標を忘れてしまった人も、
 ここは一つ、中だるみを反省して、本田先生に叱って頂きましょう。
 
 
 冒頭の言は、自動車のデザインを担当していた筆者が、ホンダが勢いを失っ
 ていた時に、宗一郎に一喝された言葉です。
 
 当時、上級車志向が進んでいたときで、ホンダは従来よりも高性能なクルマ
 や、アメリカ向けの大型車を日本市場に投入しており、お客様の動向をとら
 え切れていませんでした。 
 
 「腹が減っている人には、先々の『すき焼き』より、いまの『おにぎり』だ。
 
  やれ技術だ、性能だなどと頭でっかちになって、今この瞬間にお客さんが
  本当に欲しいと思っているものを、提供できていない!」
 
 という、的確な鋭い指摘に、著者は「モヤモヤが一掃され」、以後、仕事が
 うまくいかなくなると、「おにぎり」「おにぎり」と言いまくったそうです。
 
 
 また、筆者がデザインした試作車を、宗一郎が「格好悪い!」と言い、早速
 呼びつけられたときのこと。
 
 「ずっと見ていたんだろう?」と問われ、「いえ、はじめてです」と答える
 と、「すぐ直すんだ!」と怒り爆発。部屋を飛び出していきました。
 
 筆者がデザインしたモデルとは試作車は格好が異なっており、設計者に噛み
 つくと、モデルは人や荷物の乗った状態であって、試作車とは車高が異なる
 ことが原因と分かりました。
 
 こんなクルマのイロハも知らなかったことを恥じるとともに、宗一郎の怒り
 は、試作の過程を「見ていない」点にあったことに気付きます。
 
 自分の仕事は「モデルまで」と思っていた筆者に、「会社で働いているもの
 は、全員が商品に責任を持っている」のだから、完成車になるまで自分の目
 で確かめるのが責任だと、痛切に教えられたのです。
 
 
 「君は人殺しか!」
 
 強烈なカミナリは、接合に使うハンダを削る作業を、宗一郎が見た時に落ち
 ました。
 
 デザイン上、表面の凹凸は削らねばならず、また他社もやっていることでし
 たが、ハンダの削りカスの鉛の粉塵が、職人の肺を悪くすると感じた本田は
 黙っていませんでした。
 
 今から思えば、環境問題への取り組みの走りとも言えますが、彼はただただ、
 人間を愛し、従業員の身体を心配しただけなのです。
 
 
 人間関係が希薄になり、殺伐としたニュースがめぐる今、身体を震わせるほ
 ど真っ赤になって叱ってくれる人があるでしょうか。
 
 本田宗一郎が生まれて100年。
 
 彼のきつく、暖かい「叱咤激励」に、我々も耳を傾けましょう。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 本田は、「叱り上手」であると同時に「たとえ話上手」でもあった。
 
 「スタイルの基本は、やっぱり四角だな。
 
  世の中には『形』は3つしかないんだ。丸と三角と四角だよ。
  
  『丸』は円満、『三角』は革新を連想させるよな。
  
  それでいうと『四角』は堅実な感じがする。
  
  企業の経営も、円満だけでは会社はつぶれる。
  
  革新だけを追い求めるのも危険だ。
  
  やはり、基本は堅実で、そのうえで時代の動きをよく見て、円満さや革新
  を適量混ぜ合わせていくことが大事なんだよ」
  
 一見、本田は「革新」のイメージだが、実際は「堅実」に「円満」、「革新」
 を混ぜ合わせるさじ加減に心を砕いていた。
 
 名車シビックのデザインは、基本の四角に、丸、三角を取り入れた、宗一郎
 お気に入りのバランスだった。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 言い訳の前に、現物を見よ!
 手を動かす前に、考えよ!
 
 叱ってもらって喜べるほど、素直な人間はいない。
 しかし、叱ってもらえることは、喜ぶべきことだ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 1章 仕事には「哲学」が必要だ
   ―原理原則の貫き方を覚える
 2章 「見ていて飽きないもの」をつくれ
   ―「人間好き」がいい仕事をする
 3章 本当にそういうことをしたいと思っているのか
   ―考えて考えて、考え抜く
 4章 自分が感動できないものは、人を感動させられない
   ―「夢と目標と志」は高く、大きく!
 5章 一歩先でなく半歩先
   ―大事なのは、先見、先取、先進!
 6章 休みの日には「高いもの」を見てこい
   ―現場・現物・現実がすべて
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 岩倉信弥
 ・出版社 三笠書房
 ・アマゾン 『本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録』

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