August 03, 2007

モノづくりで150億円を生む独創発想術

Monodukuride150okuenn
 【今週の一冊】
 ●『モノづくりで150億円を生む独創発想術』

  著:中西 幹育(プレジデント社)
  2007.1 / ¥1,470

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『失敗と挫折は、開発者にとって大切な経験である。
 
          失敗は肥やしになる。
 
                 いや、失敗を肥やしにするのである。』


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 スポーツシューズの靴底に埋めて衝撃を和らげる「αゲル」。
 
 20メートルの高さから「αゲル」の上に玉子を落としても割れないほどの衝
 撃吸収性能は、スペースシャトルの衝撃吸収材にも用いられました。
 
 身近なところでは、皆さんの手に握られたボールペンのグリップにも使われ
 ていますね。
 
 
 携帯電話やクルマのダッシュボードのような、曲面のプラスチック表面に、
 木目などのデザインを印刷する「曲面印刷」。
 
 今では様々な製品に用いられている技術ですが、30年前には「不可能」と考
 えられていた技術です。
 
 この「αゲル」と「曲面印刷」、何の関連性もなさそうな、しかしいずれも
 独創的で、「儲かる」技術を生み出したのは実は同一人物であり、本書の著
 者なのです。
 
 これら2大発明を筆頭として、氏の開発人生の中から導き出した、「独創」
 の秘訣を伺いましょう。
 
 
 αゲル発想のきっかけとなったのが、衝撃吸収材に思い悩んでいるうちに、
 熱を出して寝込んでしまった著者が、溶けた「アイスノン」の感触でした。
 
 早速、スーパーに並んだゲル状の食品―寒天、ゼリー、こんにゃく、プリン
 等々、片っ端から買い込んで、玉子を落とす実験をしたのです。
 
 すると最も優れた衝撃吸収性を示したのが「イチゴゼリー」であり、このゼ
 リーに似た素材を探して作られたのが「αゲル」だったのです。
 
 
 ・・とこのように書くと、いかにも「タナボタ」式にひらめいたり、ちょっ
 と実験して新素材が見つかったかのように思えますが、発想のプロセスを詳
 しく読み解けば、そんなエレガントなものではないと分かります。
 
 筆者は「発想力は感性、観察力、自問力、気力、体力、そして知力から構成
 される総合力だ」と説きます。
 
 発想の発火点はアイスノンの奇妙な感触に触れた「感性」でした。
 
 そこに自ら厨房に立ち、各地の市場を訪ね歩く程、素材に対して好奇心を持
 つ「観察力」と、学生時代、オリンピック候補にまでなったウェイトリフテ
 ィングで鍛えた「気力・体力」が加わり、独創が生まれたのです。
 
 
 こうして生まれた発想を形にするときには、あれこれ批判する前に、すぐさ
 ま得た情報を加工する「行動」に移すことが重要です。
 
 その際「特許公報」を活用し、先人達の膨大な特許の隙間を見つけ出そうと
 する探偵精神で、自らの独自性を付加していくのです。
 
 
 そして「ひらめく人」に終わらず、「ひらめいて、つくって、売る人」こそ
 開発を、そして人生を楽しく豊かにできると氏は説きます。
 
 自らの特許を数々のビジネスに育て上げたエジソンを師と仰ぐ著者が、発想
 力を身につけ、形にし、ビジネスに結びつける道筋を、誰にでも分かりやす
 く著した一冊です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 衝撃吸収に、「イチゴゼリー」が適していることは分かった。
 
 しかしイチゴゼリーを衝撃吸収材にするわけにはいかない。
 
 筆者の関心事は、イチゴゼリーの分子構造に移った。
 
 そこで製造メーカーに熱心に尋ねると、研究所の技術者が丁寧に教えてくれ
 たお陰で、分子構造が網目状に絡み合っていることがポイントだと分かった
 のだ。
 
 
 一般の人にはイチゴゼリーは子供のおやつの一つにすぎない。
 
 この中に、スポーツシューズの靴底の衝撃吸収材から宇宙船の実験装置にま
 で使われるほどの、どんでもない情報が詰まっていると、知りながら食べて
 いる人など皆無だったはずだ。
 
 この瞬間から、イチゴゼリーは筆者にとっては、単なる食べ物ではなく、貴
 重な情報を満載した「モノ」となったのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「誰でも発想の達人にはなれる」≠「何もしないで達人になれる」
 誰にでもできる、努力と創意と工夫を「実行」するかしないかだ。
 
 モノをモノとして見るな。
 モノについている情報を読み取ることが、発想を形にする第一歩だ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1部 発想力は、どうすれば身につくのか?
 第2部 発想力を、「形」にするには!?
 第3部 発想力を、ビジネスにするには!?
 第4部 特別補講
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 中西 幹育
 ・出版社 プレジデント社
 ・アマゾン 『モノづくりで150億円を生む独創発想術』
 
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May 24, 2007

ゼムクリップから技術の世界が見える

Zemuclip
 【今週の一冊】
 ●『ゼムクリップから技術の世界が見える』
  アイデアが形になるまで

  著:ヘンリー・ペトロスキー 訳:忠平 美幸(朝日新聞社)
  2003.8 / ¥1,365

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『われわれは、自然界や既存の人工物について考えをめぐらせ、
 
   それらをどう作り変えたり改善したりすれば人類に有益な目標を
   
    よりよく達成できるか、という問いに答えを出さなければならない』


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 今、皆さんの目の前にあるもので、「人工物」にどんなものがあるでしょう
 か?
 
 そもそも、この文章を目にしているのはPCのモニターや携帯電話のはずで、
 間違いなく100%、工学的な製品です。
 
 いや、おそらくは部屋の片隅の観葉植物と「人間」以外は、ほとんど人工的
 なものばかりでしょう。
 
 本書では、ごくごく身近な文具やアルミ缶から始まり、橋や高層建築に至る
 まで、それらを生み出した「工学」的な背景を、描き出しています。
 
 
 おそらく今、机上で最も単純な「製品」の一つが「ゼムクリップ」でしょう。
 
 あまりに単純で、クリップの「取扱説明書」なんて見たこともないような分
 かりきった製品ですが、クリップが「機能」するために必要な「弾性」が明
 確に理解されたのは、さほど昔のことではありません。
 
 ロバート・フックが「張力は力に比例する」という「フックの法則」発見し
 たのは1660年のことであり、クリップのみならず、橋や飛行機の翼、高層ビ
 ルなど、技術者が設計するほとんど全ての構造物に影響しています。
 
 
 この弾性を超えて、長さ10センチ程の針金を3回折り曲げたらクリップは出
 来上がりですが、これで「紙を留める」製品として「完成」した、とは言え
 ません。
 
 おそらく、だれでも取り出そうとしたクリップが絡まったり、クリップの針
 金の先で紙を破った経験はあるでしょう。
 
 こうした「欠点」をあげつらって、「改良した」と言い張るのが「発明」で
 あり、事実、これまでにゼムクリップを批判し、特許を取得した「クリップ
 」は、何百もあります。
 
 針金の先で紙を破る対策としては、針先を丸くつぶす、先をリング状に丸め
 る、針の足をクリップの円弧よりも長くする・・などなど、枚挙に暇があり
 ません。
 
 逆に言えば、最良の「クリップ」の探求が、今もって困難であることは明ら
 かであり、複数の相容れない目的の「妥協案」を提供することが、ものづく
 りであると言えるでしょう。
 
 
 クリップやジッパー、アルミ缶などを通じて語られる材料力学や発明、加工
 機械や環境への影響など、製品と我々エンジニアを取り巻く世界を知る一冊
 です。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 シャープペンシルの芯や、削ったばかりの鉛筆の芯がポキポキ折れることほ
 どイライラするものはない。
 
 カリフォルニアの工学者ドン・クロンキストも手書きレポートを仕上げる間
 に何度もこのイライラに遭遇した。
 
 レポートを書き終えて机の上を見ると、鉛筆の折れた芯先がたくさん転がっ
 ているのを見つけた。
 
 彼の目を引いたのは、その数の多さではなく、「どれもこれも大きさと形が
 ほぼ同じだったことだ」。
 
 そこでこの理由を、彼は「円錐形の片持ち梁」のモデルを作って計算してみ
 た。
 
 すると、なるほど計算した「折れた鉛筆の芯」の大きさは、机の上で見つけ
 た「芯」の大きさにごく近かった。
 
 しかし、彼は破断面が「傾いている」ことは満足のいく説明をしておらず、
 吟味した人々も気に留めていなかった。
 
 それは鉛筆の幅方向に加わる「せん断力」を考慮しなかったことが原因であ
 ったが、解析の前提となるモデルの「仮定」が間違っていたためだ。
 
 同じような怠慢による過誤は、分析に取り組む「方法」がどんなに精巧なコ
 ンピュータ・モデルを使うようになっても、起こりえるのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 机の上の文房具を、どう作っているか考察せよ。
 その構造を、力学的に記述してみよう。
 
 「ゼムクリップ」より作りやすく、使いやすいクリップを考案せよ。
 「鉛筆の折れた芯」の大きさを計算せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 |   | (炎3つが満点)
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 1 ペーパークリップと設計
 2 鉛筆の先と分析
 3 ジッパーと開発
 4 アルミニウム缶と失敗
 5 ファクシミリとネットワーク
 6 飛行機とコンピュータ
 7 水と社会
 8 橋と政治
 9 建物とシステム
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・出版社 朝日新聞社
 ・アマゾン 『ゼムクリップから技術の世界が見える』
 
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February 21, 2007

発明家たちの思考回路

Hatumeikatashinosikoukairo
 【今週の一冊】
 ●『発明家たちの思考回路』
  奇抜なアイデアを生み出す技術

  著:エヴァン・I・シュワルツ (訳)桃井緑美子(ランダムハウス講談社)
  2006.1 / ¥1,995

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『知性にパワーをそそぐエネルギーを誰でも同じだけもっている。
   
     それを正しい経路に導き、
          思いがけない神経回路の結合をつくりつづければ、
  
                発明という特別な創造性が生まれるのだ』


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 エジソンよりも数ヶ月も先に、スワンが白熱電球の実演をしてみせたのは、
 有名な話です。
 
 しかし、白熱電球の「発明者」として、富と名声を受けたのがエジソンであ
 ったのはなぜでしょうか。
 
 一般に発明家とは、ヒット製品のアイデアを最初に思いついた人と思われて
 いますが、筆者は「さまざまな分野からさまざまなアイデアを集めて、他人
 の思い描いたことを実現するもののことだ」と言います。
 
 だから、発明とは特定の分野の科学者やエンジニアだけの才能ではなく、「
 発明は学び取ってどんな領域にも応用できる分野」と考えるべきであり、そ
 の手法を、古今東西の事例から本書は紹介しています。
 
 
 発明は「解決する問題」が新しくなくてもかまわないのです。
 
 新しくなければならないのは、「問題のとらえ方」です。
 
 例えば、電話があったら便利だ、と最初に気付いたのはグラハム・ベルでは
 なく、ベルが通話に成功する15年も前から、電話をつくろうとしていた発明
 家たちがいました。
 
 しかし、彼らは「トン・ツー」の電信装置の延長に考えていたため、複雑で
 振幅のある人間の話し声を送信することはできませんでした。
 
 一方、ベルは電気や電信の知識はなかったものの、耳の不自由な母をもった
 ために、「耳と音」を理解しようとする欲求から、音の振動を「連続した」
 電流のパターンで遅れることを発見したのです。
 
 
 また、すばらしい可能性を創出し、解決すべき問題を正しく突きとめても、
 問題解決への正しい道を知っているとは限りません。
 
 発明家はこのような窮状をバネとして、同じ障害に取り組んだ者が試みて行
 き詰った原因を調べ、前進します。
 
 古くは、ライト兄弟は初飛行を成功させるまでに、あらゆる飛行に関する文
 献を調査し、問題は「動力」ではなく「制御とバランスの維持」であると気
 づき、翼の位置を制御する「たわみ翼」を発明しました。
 
 最近の事例であれば、CTスキャン装置は従来、全身を走査するのに何分も
 かかり、患者が呼吸をするだけで画像が乱れるやっかいな代物でした。
 
 その解決策は「X線検出装置を増やすか、検出器の速度を上げる」ことと考
 えられていましたが、カール・クロフォードは、「間を空けて1枚ずつ断層
 撮影するのではなく、らせん状に検出器を回転させて連続的に撮影する」新
 たな方法に置き換えました。
 
 それは次なる新たなデータ処理方法という問題を生みましたが、これらの壁
 をよじ登ってこそ、世の中を変える「発明」となったのです。
 
 
 「イノベーション」が合言葉のようになっている今こそ、「研究・開発」の
 前に、「発明」を積極的に生み出す努力が求められています。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 「アナロジー(類推)」は、発明家の発想のエネルギーだ。
 
 問題の解決(ターゲット)に、過去の類似した経験や知識(ベース)を利用
 するのがアナロジーの応用だ。
 
 発明家はこの対応付けが得意だが、パターン認識ができれば誰にでもできる。
 
 レオナルド・ダ・ヴィンチが思いついた「空飛ぶ機械」は、回転して木材を
 持ち上げる「ねじ」のアナロジーで、「エアスクリュー(プロペラ)」の着
 想を得た。
 
 ウディ・ノリスはオーディオシステムに最後に残った機械部品、「スピーカ
 ー」をなくすための方法を、アナロジーで探した。
 
 そして持ち込んだのは、アートの分野からだった。
 
 画家が絵の具を混ぜて新しい色を作り出す、「混ぜる」と言う行為から、空
 気中で音を作るには、周波数の異なる「音」を混ぜて新しい音波をつくれば
 いい、と考えた。
 
 10万ヘルツと10万1,000ヘルツの超音波を足したら、可聴域の1,000ヘルツの
 音が作れないかと。
 
 もちろん、テストは簡単にはできず、同じ着想で研究した大企業は次々と断
 念したが、ついにノリスは二つの超音波発信器からなる、スピーカーの一切
 ない「ハイパーソニック・サウンド」を作り出したのだ。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 「必要は発明の母」ではない。「発明は必要の母」だ。
 問題を感じていないところに問題を見つけてこそ、必要が明らかになる。
 
 「インスピレーション」も「セレンディピティ」も偶然ではない。
 偶然は準備のできている者だけに訪れる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 炎 | (炎3つが満点)
-----------------------------------
 発明の原動力は何か
 可能性を創出する
 問題をつきとめる
 パターンを認識する
 チャンスを引き寄せる
 境界を横断する
 障害を見極める
 アナロジーを応用する
 完成図を視覚化する
 失敗を糧にする
 アイデアを積み重ねる
 システムとして考える
 エピローグ―もっと上を、もっと外をめざして
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・ハイパーソニック・サウンド
 ・出版社 ランダムハウス講談社
 ・アマゾン 『発明家たちの思考回路』
 
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January 19, 2007

誰が本当の発明者か

Daregahontounohatumeisyaka
 【今週の一冊】
 ●『誰が本当の発明者か』
  発明をめぐる栄光と挫折の物語

  著:志村 幸雄(講談社)
  2006.8 / ¥987

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 ◆ 燃える一言 ◆


 『我々は発明の恩恵によらねば生きてゆけないのであり、
 
     単に既になされた発明に依存するだけでなく、
        
       新しい未だ存在しない未来の発明の見込みにも依存している』

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 これまで、各国毎に出願しなければならなかった特許について、相互認証す
 るための検討が始まろうとしています。
 
 日欧の「先願主義」に対し、アメリカの「先発明主義」が大きく制度が異な
 っていましたが、前者への統一が図られようとしています。
 
 今後の紆余曲折が予想されますが、発明者にとって、企業にとって、大きな
 ニュースとなっています。
 
 
 ところで、「発明者」とは、一体誰のことでしょう?
 
 「そんなん、最初に発明したもんのことやないけ!」と怒られそうですが、
 そう簡単に特定できないことが、本書を読めば分かります。
 
 きらびやかな発明家の裏に見え隠れする、人間臭く、利害が複雑に絡んだ舞
 台裏を覗いてみましょう。
 
 
 まず、「発見」と「発明」、また「発明」と「改良」が明確でないことに、
 理由の一つがあります。
 
 一般には、科学的な新知見が発見、技術的な新規物が発明とされますが、科
 学技術が深化、多様化している今日では、科学と技術は互いに接近し、その
 境界は明確ではなくなっています。
 
 例えば、「青色発光ダイオード」で一躍名を馳せた、中村修二氏の場合、最
 初に窒化ガリウムで発光現象を確認した、赤碕勇氏と、実用化に供した中村
 氏の役割の評価は、難しいところです。
 
 
 また、世界を変えるような大発明が、異なる発明者によってほぼ同時期に、
 まったく別々に成し遂げられることがあります。
 
 例えば、ダイムラーとベンツが、同じドイツの100キロ程しか離れていないと
 ころで、ほぼ同時期にガソリンエンジン車を発明しています。
 
 また、電話の発明と言えばベルの名が挙がりますが、同じ米国内で独自に電
 話を考案したグレイが、ベルと同日にわずか2時間遅れで特許を申請してい
 るのです。
 
 さらに無線電信の発明者についても、西(イタリア)のマルコーニか、東(
 ロシア)のポポフか、先行性が議論されるところです。
 
 このように、同じ頃に同じ発明がなされるのは、単なる偶然の一致というよ
 り、その時代ならではのシーズ(種)とニーズ(要求)に根ざした必然的な
 出来事とも捉えられるでしょう。
 
 
 エジソンやアークライトなど歴史上「発明者」と呼ばれる人たちの裏側や、
 日本が誇る発明家でありながら、しいたげられた高峰譲吉や西澤潤一など、
 古今東西の特許論議は、一読の価値ありです。

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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 本当の発明者は誰かという議論になって、よく異論・反論が出るのが「映画
 」である。
 
 米国人ならば「エジソン」と答えるが、フランスでは「リュミエール兄弟」
 と主張して譲らない。
 
 エジソンは、ローラにかかったフィルムを回して覗き込む「覗き箱方式」の
 発明者とされ、一方、今日の映画の方式である「映写方式」はリュミエール
 兄弟が発明者とされる。
 
 
 ところが、エジソンにもリュミエール兄弟にも、その下地となった先見的発
 明があった。
 
 英国の写真研究家、エドワード・マイブリッジは、競馬審判用に競争路の片
 側に12台のカメラを並べ、馬がその前を通ると順次糸が切れ、シャッター
 が連続的に切れる仕掛けを作った。
 
 マイブリッジはこの成果を全米講演旅行で披露し、その途中でエジソンを訪
 問しているのだ。
 
 
 また、フランスのエティンヌ・マレーは、円形の写真乾板を回転写真を撮る
 「マレーの写真銃」を発明している。
 
 引き金を引くと乾板が間欠的に回転し、被写体を撮影する仕組みで、映写機
 にかけると文字通り「動く写真」となり、原理的には世界最初の「映画」で
 ある。
 
 発明から4年後、マレーはこのカメラを携えてエジソンを訪問し、その詳細
 を語りつくし、エジソンに数日貸し出しまでしているのである。
 
 
 こうした一連の出来事が、エジソンの発明に無関係だったはずはない。
 
 しかし、今日では、マイブリッジもマレーも、映画の発明者とはされていな
 い。

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 ◆ 熱い行動 ◆
 発明は、発明者の情熱と、「時代」が生む。
 時には非情とも思える「同期性」を持って。
 
 あなたが今、考えていることを、きっと誰かも考えている。
 オリジナリティとスピードで、出願を急げ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 序章 なぜ発明者の特定がむずかしいのか
 第1章 発明か改良かをめぐる攻防
 第2章 特許裁判が分けた明暗
 第3章 巨人の影に泣いた男たち
 第4章 国の威信をかけた先陣争い
 第5章 並び立つ発明者
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 ◆ 関連ページ ◆
 ・著者 志村 幸雄
 ・出版社 講談社
 ・アマゾン 『誰が本当の発明者か』
 
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January 25, 2006

これだけは知っておきたい「職務発明制度」

syokumuhatumei
 【今週の一冊】
 ●『これだけは知っておきたい「職務発明制度」』
  技術者のための特許法の常識

  著:帖佐 隆(日刊工業新聞社)
   2002.09 / 1,575

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 ◆ 燃える一言 ◆

『特許の創出、そして知的財産の創出は、個人レベルから国家レベルまで
 
        非常に大きな意味を持つものである。
 
                ぜひ特許創出活動に燃えるべきである。』

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 エンジニアにとって、「特許」は、良きにつけ悪しきにつけ、切っても切り
 離せないものです。
 
 年も改まり、「今期中に○件出願!」というプレッシャーを、日々感じてい
 る方もいることでしょう。
 
 さて、そもそも「特許」とは何のためにあるのでしょう?
 
 
 著者曰く、「特許」は「お金が儲かるかもしれない」というニンジンです。
 
 このニンジンをぶら下げて発明を促すことで、技術を進歩させ、産業を発達
 させようというのが「特許法」という制度です。
 
 ということは、我々が発明をして特許出願するということは、ある種国策、
 世の中に貢献することであり、それで自分も「儲かるかもしれない」という、
 なかなか「いい話」なのです。
 
 
 この文脈からすると、当然特許は「発明者」のものでしかありえません。
 
 たとえば第三者が、発明にかかる費用を負担したから「特許権」を得られる
 とすると、発明者の「儲かるかもしれない」という発明の意欲を削がれるこ
 とになり、特許制度の理念に反するからです。
 
 つまり、発明者は「特許権は、本来的に自分のもの」という権利意識を持つ
 べきなのです。
 
 
 しかし、企業に勤める技術者の場合、登録された特許の「発明者」ではあっ
 ても「権利人」ではないことがほとんどでしょう。
 
 これは「職務発明制度」と言われ、従業者である発明者が、使用者である企
 業に、その発明の特許権等を使用者に「譲渡」したためです。
 
 そしてこの場合、発明者には「相当の対価」を受ける「権利」があることが、
 はっきり規定されています。
 
 ですから、この「対価」は、特許による独占性のお陰で、通常の利益以上に
 儲かった分について、貢献度に応じて決められるのが「スジ」なのです。
 
 
 ところが、主には雇用主側の意見として、「対価は雇用者側が総合的に決め
 るべきだ」「技術者には賃金を払っているのに対価を払うのは二重取りだ」
 などの声が聞こえます。
 
 前者の意見は、特許を使用者側のみのものと考え、「対価」を処遇とする誤
 解から生まれたもので、発明者が譲渡した際に得ている「権利」であること
 を忘れています。
 
 また後者は、利益の全てを発明者が持っていけ!と言っているのではなく、
 発明の特許権がたたき出す、独占による利益のうち、発明者の貢献分が「対
 価」であることの理解不足から生じた間違いといえます。
 
 
 これら「職務発明」に関して、中村修二氏の「青色発光ダイオード特許」裁
 判で、大いに注目を集めましたが、果たしてどれだけ特許法の趣旨に沿った
 議論が展開されていたか、はなはだ疑問です。
 
 (ちょうどホリエモンの容疑が何かを理解せぬまま、いたずらに騒ぎ立てて
  いる現状に似ています。)
 
 技術者にとっつきにくいのが法律ですが、こと「特許」に関しては、我々こ
 そが主役であることを自覚しなければなりません。
 
 本書は、特許法が昨年、改正施行される以前に記されたものですから、併せ
 て最新の知識を身につけましょう。
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 ◇ カンドコロ! ◇
 
 研究開発活動に疲れたら、話題の特許や面白い特許に触れてみるとよい。 
 
 おすすめは、「ドクター中松」。
 
 「特許電子図書館」で、発明者「中松義郎」として検索すると、彼の特許が
 何件も出てくる。
 
 これらは、とても楽しく読むことのできる特許だ。
 
 (参考になるかはわからないが…。)
 
 
 例えば、特開平06-189801「翔ッ靴」。
 
 ご存知、ピョンピョン靴こと、フライングシューズだ。
 
 また、「腕電話」なるものがある(特登録3227362)。
 
 あまりに名前のままで、図面も「そのまま」。笑ってしまった。
 
 普通の人には、いま一つ理解しにくいものもある。
 
 「生活リズム変更装置」というものは、堂々と特許として成立している(特
 登録2881690)が、本当にこの発明で効果があるのかは考えてしまう。
 
 
 氏の特許を見ていて考えるのは、発明を楽しく成すことや、特許を楽しく書
 くことの重要性だ。
 
 その発明を行うことで、世の中が便利になる。世の中が変わるかもしれない。
 
 そのような希望をもって発明活動に臨みたいものである。

───────────────────────────────────
 ◆ 熱い行動 ◆
 「特許」は発明者のものであり、「対価」を得るのは権利だ。
 誇りを持って、堂々と、そして紳士的に権利は主張しよう
 
 特許はエンジニアの技術の蓄積であり、軌跡であり、指標だ。
 技術者の評価として、特許の役割は高くなることを自覚せよ。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 第1章 特許制度とは何だろう
 第2章 特許の世界を取り巻く環境とトピック
 第3章 知っておきたい職務発明制度のこと―職務発明で堂々と稼ごう
 第4章 職務発明制度ケーススタディー
    ―発明で堂々と稼ぐために(従業者が発明をした時の行動のヒント)
 第5章 自分で出願してみよう
 第6章 職務発明制度の立法論―改正論議へ向けて

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February 02, 2005

「発明力」の時代

hatumeiryokunojidai
 【今週の一冊】
 ●『「発明力」の時代』
  夢を現実(かたち)に変えるダイナミズム

  著:志村 幸雄(麗沢大学出版会)
   2004.10 / ¥1,680

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『発明は恋愛と同じ。苦しいと思えば苦しい。
               楽しいと思えばこれほど楽しいことはない』
-----------------------------------
 冒頭の燃える一言は、本田宗一郎の至言です。
 
 終戦直後、無線機発電機用のエンジンを見て、若き日の宗一郎がひらめいた
 のが、自転車に補助動力を載せた、通称「バタバタ」でした。
 
 その後、数々の開発品で戦後の日本を導き、世界のホンダとなったことは周
 知の通りです。
 
 本書は、技術立国の原動力「発明」の方法論を、こんな豊富な事例を通して
 展開しています。
 
 
 発明のプロセスの第1段階は、「目的設定期」であり、「好奇心・ロマン」
 から出てきます。
 
 ソニーの創業者 井深大は、「真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せし
 むべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」を目指し、ソニーの前身、
 東京通信工業を設立しました。
 
 「技術で日本を再建する」という夢を高らかに掲げ、当時、補聴器くらいに
 しか使えないとされたトランジスタの開発に挑戦し、安価で高性能なトラン
 ジスタラジオの製品化に成功したのです。
 
 夢やロマンが発明のモチベーションであり、技術者は「夢追い人」です。
 
 
 第2段階は「熟考期」で、「非常識への挑戦」「仮説の構想」そして「集中
 力・持続力」が必要です。
 
 適切な仮説が形成されるためには、専門的な知識に、類推や想像、直感が結
 びつかねばなりませんが、誤った仮説でも、無方針な観察よりも適切な示唆
 を与えることがあります。
 
 例えば、熱の本質を「熱素」という物質とする説は、今日「エネルギー保存
 則」から否定されますが、理論サイクルで有名なカルノーの説明は、実は熱
 素説から導き出されたものでした。
 
 また、日立製作所の中央研究所 初代所長は「エンジニアはヘンジニアたる
 べし」と言い、独創的な研究をするためには、ある意味変人と言われるほど
 のひたむきさ、一徹さが必要である事を教えています。
 
 
 次の第3段階は「ひらめき期」であり、通常これが「発明」と考えられます
 が、バックボーンに2段階があった事を知らねばなりません。
 
 ひらめきというと、奇抜な、突拍子もないものが多いですが、それも「記憶
 の断片がひらめきのもと」と考えられています。
 
 理詰めの左脳が窮地に立つと、直感的な右脳が、大脳の奥の海馬から記憶の
 断片を拾い出し、ひらめきを生むのであり、「左脳をいじめ抜いたもののみ
 が享受する果報」とさえ言われます。
 
 
 細菌を培養したシャレーに紛れ込んだカビから、ペニシリンを発見したフレ
 ミングのように、「予想外の幸運な発見を偶然にする才能」を「セレンディ
 ピティ」と言い、最近のノーベル賞授賞者も好んで使います。
 
 しかし、偶然がただの偶然ではなく、発見となるのは、誰もが見ている事を
 見て、誰もが考えなかったことを考えたときであり、日頃から周到に準備し
 ている者だけが「発明・発見」へと転化できるのです。
 
 
 最後が「成熟完成期」であり、せっかくの発明を製品化するための「死の谷
 」とまで呼ばれるギャップを超えるための環境が必要であり、また発明の失
 敗をフィードバックする「失敗学」も重要です。
 
 
 本書の前半は発明力の方法論を述べ、後半では豊田佐吉からエジソンまで、
 古今東西の20名の発明家を紹介しています。
 
 西堀榮三郎、田中耕一、中村修二、また鉛フリーはんだの末次氏など、これ
 まで「燃える100冊」で紹介した技術者も数多く登場し、「ものづくり」
 に「発明」という横串を通す一冊となりました。
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 ◆ 熱い行動 ◆
 自分が生み出すもので、世界を豊かにする、熱き「夢と志」はあるか。
 
 仮説を真理とすべく、考えて考えて、ヘンジニアとなろう。
 きっと、セレンディピティは舞い降りる。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第Ⅰ部 発明力の方法論
  第1章 発明力は日本再生の原動力
  第2章 非常識への挑戦
  第3章 仮説の構想力
  第4章 好奇心とロマン
  第5章 集中力発揮の方法論
  第6章 ひらめきの発明学
  第7章 セレンディピティ
  第8章 創造的失敗のすすめ
  第9章 発明力向上のための企業環境
  第10章 プロパテント時代の知財戦略
 
 第Ⅱ部 哲人エンジニア列伝
  豊田佐吉 ロバート・N・ノイス 志田林三郎 ジョン・R・ピアーズ
  佐々木正 ヘンリー・フォード 杉浦睦夫 ライト兄弟 木原信敏
  ジェームズ・ワット 田中久重 ジャック・キルビー 本田宗一郎
  二コラ・テスラ 高野鎮雄 ジョン・V・アタナソフ 嶋正利
  トーマス・アルバ・エジソン 舛岡富士雄 アルバート・アインシュタイン
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 ● ひとこと ●
 今回の書籍にも登場する「本田宗一郎と井深大展」に行ってきました。
 大阪で開催していた最終日に駆け込みましたが、行った甲斐がありました。
 
 左手でまともなのは小指だけ、潰したり切ったりの傷だらけの宗一郎の左手
 のスケッチに、ものづくりに捧げた一生を垣間見ました。
 
 丁度彼らの活躍を読んでいたこともあり、熱い技術者魂をビンビン感じまし
 たよ!

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January 19, 2005

怒りのブレイクスルー

ikarinobreakthrough
 【今週の一冊】
 ●『怒りのブレイクスルー』
  「青色発光ダイオード」を開発して見えてきたこと

  著:中村 修二(集英社)
   2004.5 / ¥560

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『世界最高レベル、世界初の技術を超えてしまえば、
                そこからは前人未到の領域に入ります。
  それは宇宙探検のようなものです。世界の先頭に立って、ひとりだけで
        新しいブレイクスルーに挑戦しなければならないのです。』
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 600億円から、一転、6億円へ―。
 
 青色発光ダイオードの発明対価を巡る「中村裁判」は、賛否両論、大きな問
 題提起をして、一応終結しました。
 
 企業・技術者の両者に「職務発明」の位置付けを問い、特許法の改正にも一
 石を投じましたが、なぜ、彼はこの裁判を起こさねばらなかったのか。
 
 「技術者 中村修二」の原点を、本書を通して覗いてみましょう。
 
 愛媛県の漁村で生まれ育った修二少年は、真っ黒になって自然の中を駆けず
 り回っていました。
 
 中学・高校は、受験勉強に明け暮れる周りを横目に、6年間バレーボールで
 泥だらけになっていましたが、それは楽しさよりも、勝てない悔しさが原動
 力でした。
 
 徳島大学に入って、3年生の時に履修した「固体物性」の授業で、物性物理
 学の楽しさに目覚めたのと同じ頃、最愛の妻とめぐり合います。
 
 大学院卒業後に電機メーカーへ就職し、結婚しようと考えていたところが、
 学生時代に「できちゃった結婚」。
 
 それからは、家族との時間と、一人静かに思索する時間を大切にするように
 なり、一旦は「京セラ」の内定を受けながら、地元徳島の企業「日亜化学」
 に就職したのです。
 
 当時の日亜科学には、半導体を製造するノウハウも装置も全くなく、中村氏
 は入社後6年間で、ガリウム燐、ガリウム砒素、そして赤外LED・赤色L
 EDをほとんど手作りで製品化していきます。
 
 根っからの理論好きでありながら、電気炉やガラス管を切った貼ったで自作
 し、大爆発を起こしながらの実験を繰り返し、またあるときは自ら営業で接
 待までこなします。
 
 独力で半導体を製品化したことに、大手メーカのドクターも驚嘆しますが、
 社内では赤字でお荷物扱いで、昇進もなく、論文も特許も出せないため社会
 的にも認められない、と彼の中で不満が大きくなっていきます。
 
 そしてプツンと「キレ」、「人が正しいと言うことと逆のことをやればいい
 」と、世界中の研究者の夢「高輝度青色LED」の開発に没頭するようにな
 ります。
 
 社長に直訴し三億円の開発費を得て、海外留学で経験を深め、以後は就業規
 定などが曖昧な日亜の社風も手伝って、会議も出ずに実験装置の改造と、実
 験・評価を一年近く繰り返します。
 
 当時「窒化ガリウムでは難しい」と、どんな論文にも書いてあった、その物
 質をあえて選び、ツーフローMOCVDという装置を作り上げ、世界最高レ
 ベルの結晶薄膜、そして世界初の高輝度青色LEDを完成させたのです。
 
 その後中村氏が、日亜での自身の立場に疑問を感じ、渡米したことはよく知
 られるところですが、2001年春に発刊された、単行本の終わりには、アメリ
 カでの生活と研究に、不安と期待に胸膨らませた様子が描かれています。
 
 そして、文庫版に際し、巻頭に東京高裁での判決を受けての心境が追記され
 ています。
 
 現在の量産では、ツーフローMOCVD装置は用いられておらず、また製品
 化は、中村氏のような「天才」ではなく、多くの「秀才」エンジニアの努力
 があってこそ実現しています。
 
 ですから、特許の対価として妥当な額がどれだけであるかは、議論を尽くさ
 ねばなりません。
 
 しかし、今の白熱電球がエジソンの発明から大きく発展していても、エジソ
 ンの功績が不変であるように、誰も実現できなかった「青い光」を輝かせた
 「ブレイクスルー」と、その一点突破の執念が、次代の「ものづくり」を拓
 く貴重な礎となったことは間違いありません。
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 ◆ 熱い行動 ◆
 「常識」「前例」で、手を動かす前にあきらめていないか。
 とことん自分で調べ、作り、考えているか。
 壁に体当たりでぶち当たらなければ、突破はできない。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1章 モノ作り時代
 第2章 青色へ
 第3章 疑問と決断
 第4章 アメリカン・ドリーム
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 ● ひとこと ●
 先週ご紹介した、私もちょこっと出ている、松山しんのすけさんの著書
  『マインドマップ読書術』
 大好評で、増刷だそうです!
 
 ぜひ、ご覧になってみてくださいね~!

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November 17, 2004

キヤノン特許部隊

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 【今週の一冊】
 ●『キヤノン特許部隊』

  著:丸島儀一(光文社新書)
   2002.2 / ¥714

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 ◆ 燃える一言 ◆
 『特許のような知的財産権というのは、攻撃にも使えるし防御にも使える、
        そうやって事業を有利に展開するというのが本来の使い方』
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 年間の特許収入が200億円を越え、アメリカでの特許登録数がIBMに次ぎ
 2位を誇る、キヤノンの特許ビジネス。
 
 同社が特許戦略を重視するきっかけとなったのは、特許部門を入社以来築き
 上げた丸島氏による、複写機事業でのゼロックスとの一戦でした。
 
 当時、「20年間は破られない」と言われた、ゼロックスの複写プロセスの
 600件に登る関連特許を原文で徹底的に読み破り、何をすれば抵触するか
 を熟知します。
 
 その上で、開発の現場に特許担当者が自ら入り込むことで、開発担当者と一
 体になって、事業展開を考えながら特許網を構築していったのです。
 
 こうして、わずか3年でキヤノン独自の複写方式の開発に成功すると、今度
 は相手の参入を阻止し、事業を守る「攻め」の特許戦略を進めます。
 
 そして、ついにゼロックスとのクロスライセンス(互いの特許の仕様許諾)
 を結び、「勝利」を収めたのです。
 
 初めて外国を相手とし、しかも鉄壁の特許を誇っていたゼロックスと闘った
 生々しい記録は、丸島氏、そしてキヤノンが早くから特許ビジネスの世界で
 揉まれ、今日の礎を築いたことを物語っています。
 
 一方、「特許収入200億円」というと、特許を切り売りしているような印象
 を持ちますが、「企業における特許は商品ではない」と言い切ります。
 
 現に特許で稼いでいながら、稼ぐ事を目的に特許部門は仕事をしていない。
 
 つまり、「技術を稼ぎ」「事業で稼ぐ」ために、相手が持っている有効な技
 術をもらうのが特許ビジネスのあるべき姿であり、そのときのクロスライセ
 ンスの差額として、現金の収入があるのです。
 
 だから、多額のライセンス料を得ることが知的財産部門の手柄ではなく、「
 いかに自分たちの技術を出さないで、相手の重要な技術をもらうか」を考え
 ろ、と説きます。
 
 例えば、他社の特許が使いたい場合には、相手の特許や製品を調べ尽くした
 上で、先に相手が自社の特許を侵害している、と攻撃します。
 
 その上でクロスライセンスに持ち込んで、相手の特許をスーッ、ともらって
 くる。
 
 あんなことに使われたのか、と相手が思うようのは契約した後。
 
 実に巧妙な、しかし合理的な交渉手法に唸ってしまいます。
 
 逆に、訴訟に持ち込むのは、自分で解決する能力がないからであり、妥協こ
 そが特許交渉の本質だとも言います。
 
 開発の現場と連携し、欲しいものは頂いて、一切損せずに妥協するのが交渉
 の「勝利」なのです。
 
 やはり、修羅場をくぐって世界の先端の特許戦略を構築してきた「交渉術」
 は一筋縄ではありません。
 
 国家としてのプロパテント(特許重視)政策や昨今の職務発明の問題などに
 も言及した、特許を考える格好の入門書です。
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 ◆ 熱い行動 ◆
 ライバルメーカの特許内容を、一度じっくり調べてみよう。
 自身の技術や製品の、パテントマップを特許担当者と作り、強み・弱みを認
 識しよう。
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 ◆ 燃えるゲージ ◆ | 炎 | 炎 | 火 | (炎3つが満点)
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 ◎ 目 次 ◎
 第1章 巨人ゼロックスとの闘い
 第2章 戦略的特許ビジネスとは
 第3章 交渉
 第4章 何のためのプロパテントか
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 ● ひとこと ●
 キヤノンといえば、プリンター。
 プリンターと言えば・・年賀状!
 
 1ヵ月後には完成しているくらいの余裕を、今年は持ちたいと思います。
 (と、毎年思っているのですが・・・。)

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